現在、この事故については関係当局により事故原因の究明が行われているところであるが、このような事故の再発を防止するため、平成二年三月から建設省に「建築技術審査委員会長崎屋尼崎店火災調査委員会」を設け、安全対策の検討を行ってきたところであるが、今般、その報告が別紙(略)のとおり取りまとめられたので、通知する。
1 既存建築物の防火改修の推進
「既存建築物の防火避難施設改修指針(平成元年一一月一〇日付建設省住防発第二三号)」を活用し、建築物の用途等を勘案して適切な方法による防火改修を更に推進すること。
また、指針には示されていないが、五階建て程度の物品販売業を営む店舗においては、避難経路の安全確保の上で、階段室等の避難経路に加圧防煙設備を設置することが効果的である。加圧防煙設備の基準は今後整備する考えであるが、それまでの間は個々の建築物について指導を行う際に当職に相談されたい。
なお、当該改修指針に基づく工事に対する日本開発銀行等による融資制度が創設(「既存建築物の防災改修に係る融資の運用について(平成元年一〇月三〇日付建設省住指発第四一二号)」)されているところであり、この融資制度について更に周知を図ること。
2 防火避難設備に関する維持保全、販売店員の教育及び定期報告
(1) 維持保全の徹底及び販売店員等に対する防災教育
防火避難設備の維持保全については、建築基準法第八条に規定され、その推進が図られてきているところであるが、今後更に維持保全計画の作成を指導し、総合的かつ計画的な維持保全を行うよう物品販売業を営む店舗等の所有者等を指導していくこと。
特に、防火戸の周辺に商品等を置くことは、火災時における適切な避難を阻害するだけではなく、閉鎖障害を起こし、煙の拡散や火災を拡大させてしまう可能性があるものであり、防火戸の重要性を十分に周知させること。
またパート・アルバイトを含め販売店員等が在館者の避難誘導、初期消火、消防機関への通報等を適切に行える体制を整備するよう所有者等を指導すること。
(2) 定期報告の推進
建築基準法第一二条に基づく定期報告対象建築物の指定については、「建築基準法第一二条の規定に基づく定期報告対象建築物等の指定について(昭和五九年四月二日付け建設省住指発第一二五号)」により、その規模及び時期の指定指針を通知しているところであるが、この指針に基づき、物品販売業を営む店舗等を対象建築物として指定するよう徹底するとともに、定期報告の対象とならない小規模な物品販売業を営む店舗等についても、防災査察等を通じて、定期的に点検を行うよう所有者等を指導していくこと。
3 増改築等により違反状態となっている建築物の是正指導の推進
店舗の拡張等のため、増改築工事が各所において実施されているところであるが、当該増改築工事により従前の既存不適格の部分が違反状態となっている建築物については、違反建築防止週間におけるパトロール、建築物防災週間における防災査察、建築基準法第一二条第一項に基づく定期報告制度等を活用し、適切な是正を行うよう所有者等を指導すること。