建設省住指発第六七号
平成四年三月四日

都道府県建築主務部長あて

建設省住宅局建築指導課長通知


電動ダムウェーターの取扱いについて

標記については、昭和五九年四月二日付け建設省住指発第一二五号により、建築基準法第一二条第二項に基づき定期検査の対象として積極的に指定するようお願いしているところであるが、近年、電動ダムウェーターに関し若干の事故例も報告されていることにかんがみ、同項の積極的な運用を図るよう重ねてお願いする。
なお、今般、財団法人日本建築センターに設けた検討委員会において、財団法人昇降機安全センター、社団法人日本エレベーター協会等関係各方面の協力の下「電動ダムウェーター構造規準」が別添のとおり策定されたので送付する。本規準は、電動ダムウェーターの安全対策を推進する上で有益なものと考えられるので、行政上の参考とされたい。
貴管下特定行政庁に対しても、周知方お願いする。

「電動ダムウェーター構造規準」

第1 適用の範囲

この規準は、建築物に設ける電動ダムウェーター(昇降路内に設けられたガイドレールに沿って動力によりかごを昇降させる荷物専用の昇降機で、かごの床面積が一m2以下で、かつ、天井の高さが一・二m以下のものをいう。以下同じ。)に適用する。

第2 主索、主鎖、巻胴、支持ばり及びガイドレールの構造

1 主索又は主鎖は、次の各号に定める構造とすること。

一 日本工業規格G三五二五(ワイヤロープ)若しくは日本工業規格B一八〇一(伝動用ローラチェーン及びブシュチューン)に適合するもの又はこれらと同等以上の性能を有するものとすること。
二 二本以上とすること。
三 端部は、主索にあっては一本ごとに鋼製ソケットにバビット詰、楔式止め又はクリップ止めとし、主鎖にあっては一本ごとに鋼製留金具により緊結すること。ただし、巻胴式電動ダムウェーターにあっては、巻胴側の端部を一本ごとにクランプ止めとすることができる。

2 綱車又は巻胴は、次の各号に定める構造とすること。

一 直径は、主索の直径の三〇倍以上とすること。ただし、綱車で、主索に接する部分の長さがその周の長さの四分の一以下であるものの直径は、主索の直径の二五倍以上とすることができる。
二 巻胴式電動ダムウェーターにあっては、かごが最下停止位置にある場合においても、ロープの巻残りが一・五巻以上あること。

3 支持ばりは、鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とすること。
4 ガイドレールは、次の各号に定める構造とすること。

一 鋼製とし、鋼製の支持金物で昇降路に堅固に取り付けること。
二 かごに第七第十号に規定する非常止め装置を設けた場合には、この装置が作動した場合においても安全なようにすること。

第3 かごの構造

かごは、次の各号に定める構造とすること。
1 出し入れ口は、二以上設けないこと。ただし、出し入れ口が同時開放された場合に鳴動する警告ブザーを設ける等安全上必要な措置を講じた場合は、二とすることができる。
2 各部は、荷物の積込み、積卸し又は荷崩れによる衝撃に対して安全なものとすること。
3 構造上軽微な部分を除き、不燃材料で造り、又は覆うこと。

第4 昇降路の構造

昇降路は、次の各号に定める構造とすること。
1 昇降路外の人又は物がかご又はつり合おもりに触れるおそれのない構造とした丈夫な壁又は囲い及び出し入れ口の戸を設けること。
2 1の階における出し入れ口は、一のかごにつき一とすること。ただし、出し入れ口が同時開放されないよう安全上必要な措置を講じた場合は二とすることができる。
3 壁又は囲い及び出し入れ口の戸は、不燃材料で造り、又は覆うこと。
4 出し入れ口先とかごの床先との水平距離は四cm以下とすること。
5 頂部すき間及び底部すき間は五cm以上とすること。
6 昇降路内には、レールブラケットその他の電動ダムウェーターの構造上昇降路内に設けることがやむを得ないものを除き、突出物を設けないこと。
7 ピット下部を居室、通路等に使用する場合は、十分な強度を有するピット床とすること。
8 昇降路の戸は、開き戸としないこと。
9 建築物に設ける給水、排水その他の配管設備は、電動ダムウェーターの昇降路内に設けないこと。ただし、電動ダムウェーターに必要な配管設備は、この限りでない。

第5 原動機、制御器及び巻上機

原動機、制御器及び巻上機は、かごごとに設け、かつ、地震その他の振動によって転倒又は移動しないようにすること。

第6 機械室

機械室は、次の各号に定めるところによること。

一 床面積は、昇降路の水平投影面積以上とすること。ただし、機械の配置及び管理に支障がない場合においては、この限りでない。
二 天井の高さは、一m以上とすること。ただし、機械の配置及び管理に支障がない場合においては、この限りでない。
三 点検口の幅及び高さは、それぞれおおむね六〇cm以上とすること。ただし、機械の配置及び管理に支障がない場合においては、この限りでない。
四 点検口には、施錠装置を有する鋼製戸を設けること。
五 維持管理に支障のないよう機械室の点検口に至る経路を確保すること。
六 昇降機以外の設備に係る機械室と有効に区画されていること。
七 点検用コンセントを点検口近辺に設けること。

第7 安全装置等

安全装置等は、次の各号によること。

一 昇降路のすべての出し入れ口の戸が閉じていなければ、かごを昇降させることができない装置を設けること。
二 昇降路の各出し入れ口の戸には、かごがその戸の位置に停止していない場合においては鍵を用いなければ外から開かない構造としたドアロック装置を設けること。
三 動力が切れたときに惰性による原動機の回転を自動的に制止するブレーキ装置を設けること。
四 かご又はつり合おもりが昇降路の底部に衝突しそうになった場合においてこれに衝突しないうちにかごの昇降を自動的に制止する装置を設けること。
五 走行停止用押ボタン(スイッチ)を各出し入れ口の操作盤又はその近辺に設けること。
六 巻胴式電動ダムウェーターにあっては、主索が緩んだ場合において動力を自動的に切る装置を設けること。
七 手動開閉戸としたものにあっては、戸開放防止警報装置を設けること。
八 積載荷重、人の搭乗禁止等の注意事項を明示した標識を、かご内及び各出し入れ口の見やすい位置に掲示すること。
九 一の階において二の出し入れ口を有するものにあっては、出し入れ口の同時開放を禁止する旨の注意標識を出し入れ口の見やすい位置に設けること。
十 フロアタイプ電動ダムウェーターにあっては、ピット下部を居室、通路等に使用する場合は、必要に応じてかご及びつり合おもりに非常止め装置(主索に緩みが生じた際に作動するもの又は異常降下が生じた際にかごの降下を自動的に制止するもの)を設けること。

第8 積載荷重

かごの最大積載荷重は、次の各号に定める数値とすること。

一 テーブルタイプ電動ダムウェーター 一五〇kg
二 フロアタイプ電動ダムウェーター 五〇〇kg

第9 構造計算

構造計算をする場合においては、次の各号に規定する積載荷重及び許容応力度によるものとすること。

一 支持ばりの積載荷重は、次の式によって計算した数値以上とすること。

P=P1+2P2

ここで、P:支持ばりの積載荷重(kg)

P1:巻上機その他支持ばりに固定して取りつけられるすべての装置の重量(kg)
P2:主索の重量及びこれに作用する荷重(kg)

二 次の表の左欄に掲げる部分に使用する材料の許容応力度は、当該材料の破壊強度をそれぞれ同表の右欄に掲げる数値で除した数値によること。

主索
主鎖
支持ばり


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