建設省住指発第五三八号
平成六年一二月二二日

都道府県建築主務部長あて

建設省住宅局建築指導課長通達


旅館、ホテル等の防災対策について


標記については、かねてよりその推進に努めているところであるが、去る一二月二一日福島県飯坂温泉の若喜旅館本店において発生した火災により五名の死者を出す惨事となったことは、まことに遺憾である。
現在、この事故については、関係当局より事故原因の究明が行われているところであるが、かかる事故の再発を防止するため、左記に留意の上、一層の指導の徹底を図られたい。また、貴管下の特定行政庁にもこの旨指導方お願いする。
なお、本件に関しては、消防庁においても別添のとおり通知されているので、防災査察の実施、是正指導等を行うに当たっては、消防部局との連絡を密接に行われたい。

1 旅館、ホテル等に対する防災査察の重点実施

旅館、ホテル等のうち、過去に行った防災査察、定期報告等で指導した事項が是正されていないもの、定期報告が未提出であるもの等に重点を置いて防災査察の実施を行うこと。
なお、避難階段、防火区画等の防火施設改修工事を行う場合は、日本開発銀行等の政府系金融機関による融資制度があるので、同制度を活用する等により改修の促進を図るよう指導すること。

2 定期報告制度の徹底

防災対策及び維持保全の実効性を確保するためには、定期調査・定期報告の徹底が極めて重要であるので、体制の整備、関係者及び関係団体の指導等について所要の措置を早急に講じ、報告制度の運用の徹底を図ること。


別添

消防予第三二二号
平成六年一二月二二日
各都道府県消防主幹部長殿
消防庁予防課長

旅館・ホテル等に対する防火安全対策の徹底について

一二月二一日、福島県福島市飯坂温泉の若喜旅館において火災が発生し、死者五名、負傷者二名を出す惨事となった。
この度の火災の出火原因及び死者が発生した要因については消防機関により現在調査中であるが、現時点における火災の概要は別紙のとおりである。
旅館・ホテル等の防火安全対策については、従来から再三にわたりその徹底を図るよう指導してきたところであるが、出火した建物については、防火基準適合表示制度による適合表示マークが交付されており、このような旅館・ホテルにおいて多数の死者を出す火災が発生したことは誠に遺憾である。
このため、消防庁としては、「旅館・ホテル等防火安全対策検討委員会」を設置し、今後の対応策を早急に検討することとしているところである。
この種の火災の発生を防止するためには、日常点検の徹底等による出火防止対策の確立を図り、「旅館・ホテル等における夜間の防火管理体制指導マニュアルについて」(昭和六二年八月一日付け消防予第一三一号消防庁予防課長通知)で示した指導マニュアルにより火災の早期発見、早期通報、初期消火、避難誘導等の初動措置が夜間等においても十分に実施できる体制の確立を徹底するとともに、自動火災報知設備を始めとする消防用設備等の機能が常時適正に維持されるよう、維持管理の徹底を図ることが極めて重要である。
特に、年末年始を迎えて利用者数が多くなることを踏まえ、旅館・ホテル等について防火安全性の再確認を行い、その結果、不備事項が認められた場合は所要の措置を講じるなど、防火安全性の一層の確保に努められたい。
なお、建設省においても別添のとおり通知されているので、査察等の実施に当たっては、建築部局との連絡を密接に行われたい。
貴職におかれては、貴管下市町村に対してこの旨示達され、旅館・ホテル等に対する防火安全対策が徹底されるよう、よろしく御指導願いたい。



別紙

福島市飯坂温泉若喜旅館本店火災概要

平成六年一二月二二日九時三〇分現在
1 出火建物

(1) 所在地 福島県福島市飯坂町字十綱町四二
(2) 名称 若喜旅館本店
(3) 出火当時滞在人員 宿泊者 四六名 従業員 六名

2 出火日時 平成六年一二月二一日 (調査中)
3 覚知日時 平成六年一二月二一日 二二時四八分
4 鎮圧日時 平成六年一二月二二日 三時一分
5 鎮火日時 平成六年一二月二二日 三時一四分
6 出火場所及び出火原因

(1) 出火場所 (調査中)
(2) 出火原因 (調査中)

7 死傷者

(1) 死者 五名(男五)
(2) 負傷者 二名(男一 女一)

8 出火建物の状況

(1) 鉄筋コンクリート一部木造モルタル及び鉄筋コンクリート造 地上九階建て(避難階三階)一棟
(2) 建築経過 木造部分 昭和二二年五月

鉄筋部分 昭和三四年五月

(3) 建築面積 一、〇九六m2
(4) 延床面積 五、七二三m2
(5) 収容人員(定員) 五〇六名
(6) 周囲の状況 旅館、ホテル密集地
(7) 焼損面積 全焼
(8) 危険物施設 屋内貯蔵所 重油一四、〇〇〇リッター

9 消防用設備等の状況

消火器、屋内消火栓、自動火災報知設備、漏電火災警報器、非常放送設備、誘導灯、避難はしご

10 避難訓練の状況

平成六年七月一日 一一月四日実施

11 査察経過

消防計画の届出:平成五年八月三一日
実施年月日:平成六年九月二日実施
実施結果:査察時には重大な指摘事項なし

12 表示

「適」マーク交付済み

13 出動人員及び出動車両

(1) 公設消防

出動人員 一〇〇名
出動車両 二四台

(2) 消防団

出動人員 二〇〇名
出動車両 三〇台


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