建設省住街発第五三号
平成七年五月二五日

特定行政庁あて

建設省住宅局長通知


住宅地等における壁面線制度の積極的かつ弾力的活用について


建築基準法(以下「法」という。)第四六条及び第四七条に基づく壁面線制度は、街区内における建築物の位置を整え、その環境の向上を図るための制度であるが、今般の建築基準法の一部改正により特に住居系用途地域における本制度の充実を図ったところである。
従来、壁面線は主として商店街等において指定されてきたが、本制度が質の高い市街地環境の形成に極めて有効な制度であることにかんがみ、左記の点に留意のうえ、今回の制度充実を機に、住宅地等における壁面線の指定を積極的かつ弾力的に行うことにより、その一層の活用を図られたい。

1 壁面線制度の趣旨とその積極的な活用

壁面線は、平成五年三月現在、全国で約七〇箇所、約一二〇kmで指定されており、それぞれの地域において市街地環境の向上に寄与してきたところであるが、全国的には、必ずしも制度の十分な活用がなされてきたとは言い難い状況にある。
しかしながら、壁面線制度は、建築物の位置を整えることによって質の高い街並みの形成を図るための有効な手法であるとともに、敷地内に道路に沿って連続した有効な空間を確保し、市街地における防災上も重要なオープンスペースの創出を可能にするものである。このため、壁面線制度の活用が従来必ずしも十分ではなかった住宅地等において、街区内の生活道路に沿って壁面線を指定することが安全で快適なまちづくりを進めるうえで極めて効果的であると考えられる。今般、本制度については、建築基準法の一部改正により次のとおり制度拡充を行ったところであるので、これらの趣旨を十分踏まえ、その積極的な活用を図られたい。
(1) 土地の有効利用がふさわしい地域において、市街地環境を確保しながら前面道路幅員による容積率制限の緩和を可能としたものであること。これについては、従来の法第五二条第七項に基づく許可によるものに加え、新たに同条第八項に基づき住居系用途地域内における確認手続による緩和制度を設けたものであること。
(2) 法第五六条第六項の規定により、道路斜線制限の合理化措置を講じる場合における前面道路の取扱いについては、今回建築基準法施行令第一三一条の二に新たに第三項を設け、特定行政庁の認定により、前面道路の境界線を壁面線にあるものとみなす制度を設けたものであること。

特に、住居系用途地域においては、道路斜線制限の勾配を一・五とする前面道路幅員の要件(一二メートル以上)について、前面道路の境界線を壁面線にあるものとみなしてその幅員を算定することができることとしたものであること。

2 壁面線指定の弾力的運用

壁面線の指定については、以下の点に留意のうえ、市街地の状況及び特性に対応した弾力的な運用を図られたい。
(1) 壁面線は、街並みの連続性を確保する観点から、一定の程度の延長が必要であるが、必ずしも幅員の広い道路と両端が接続する生活道路の全延長にわたり指定することに限られるものではなく、街区内の生活道路のうち、一定の連続性が認められる空間において指定する等弾力的な運用が可能であること。
(2) 建築物の低層部における歩廊状の空間の確保等のために、高さにより異なった壁面の位置を指定する等立体的な指定が可能であること。
(3) 壁面線の指定は、道路の両側のみならず、片側において行うことも可能であること。

3 壁面線指定に当たっての留意事項

(1) 制度の普及促進

壁面線制度の積極的かつ円滑な運用を図るため、制度の趣旨等について、広く一般に対して周知を図り、その普及に努めること。

(2) 事業制度との連携

まちづくりに関する地域住民等の合意形成や、生活道路に沿った連続的なオープンスペースの整備をより効果的に促進するため、まちなみデザイン推進事業、街なみ環境整備事業、街並み・まちづくり総合支援事業等の事業制度を併せて活用すること。


(参考図)(2関係)
<別添資料>


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport