特定行政庁建築主務部長あて
記
問合せ先:住宅局建築指導課 建設専門官 青木 仁
|
|
![]() |
三五八〇―四三一一 内線 三九四三
|
課長補佐 越海興一
|
|
内線 三九四六
|
|
![]() |
五二五一―一九一二 (夜間直通)
|
![]() |
(別添) 兵庫県南部地震における建築物の被害状況等について
(平成七年三月二八日)
(建築震災調査委員会)
I 被害状況及び推定される原因
兵庫県南部地震における建築物の被害状況、推定される被害原因について、現時点での中間的な整理をすると、以下の通りである。
1 木造建築物について
(1) 被害の状況
1) 古い老朽化した建築物は、総じて被害が大きかった。
2) 最近建てられたと思われる建築物には、大きな被害を受けたものとそうでないものがあった。
3) 木造建築物で被害のない、または軽微なものには次のようなものがある。
・壁量、壁配置が適切な在来構法(軸組構法)建築物
・枠組壁工法(ツーバイフォー)、プレファブ構法による建築物
・最近建てられた新耐震基準に適合し適切な施工管理が行われたと思われる建築物
(2) 推定される被害原因
1) 壁量の不足、不適切な壁配置、柱・土台の結合力不足、筋交い端部の不適切な接合、腐朽・蟻害等が被害原因として考えられる。
2 鉄骨造建築物について
(1) 被害の状況
1) 被害建築物の多くは、新耐震設計法以前の建築物と見られる。ただし、2)、3)の被害は、新耐震設計法以降の建築物にも見られた。
2) ペンシルビルタイプの建築物において、柱脚コンクリートの部分破壊、アンカーボルトの破壊といった柱脚の被害が見られた。
3) 柱・梁接合部の溶接破断やその他の接合部の被害がみられた。
4) 軽量形鋼を用いた建築物の被害がみられた。
(2) 推定される被害原因
1) 柱脚の被害の原因としては、転倒モーメントによる大きな軸力変動に対し強度不足であった可能性がある。
2) 柱・梁接合部等の被害の原因としては、溶接サイズの不足、不適切な隅肉溶接の採用等の溶接方法、継手位置の詳細設計や施工が不適切であったこと等による可能性がある。
3) 軽量形鋼を用いた建築物の被害の原因としては、耐力・剛性の不足、錆などによる劣化の可能性がある。
3 鉄筋(鉄骨)コンクリート造建築物について
(1) 被害の状況
1) 被害建築物の多くは、新耐震設計法以前の建築物と見られる。ただし、2)の被害は、新耐震設計法以降の建築物にも見られた。
2) ピロティのある建築物において、一階ピロティ部の層崩壊、ピロティ柱のせん断破壊等の被害が見られた。
3) 剛性率の小さい建築物や、偏心率の大きな建築物において、柱のせん断破壊等の被害が見られた。
4) 中高層建築物において、特定の中間階の層崩壊が見られた。
(2) 推定される被害原因
1) ピロティ部の被害の原因としては、剛性率や偏心率の影響や柱の軸力の影響等により、十分な靭性が得られなかった可能性がある。
2) 剛性率の小さい建築物、偏心率の大きな建築物の被害の原因としては、地震時の変形がある特定の部分で大きくなった可能性がある。
3) 中間階の層崩壊の原因としては、
・新耐震設計法以前の基準におけるせん断力係数は、以降の基準に比べ上層階ほど耐力不足が生ずる可能性があるが
・最小配筋規定等により最上階近傍ではかなりの耐力を有しており、
これらの結果、顕著な耐力不足となった中間階の特定階に被害が集中した可能性がある。
4 基礎・地盤について
(1) 被害の状況
1) 基礎被害の全体像はよくわからないが、杭頭部が破損しているものが見られた。
2) 埋め立て地盤において、液状化による地盤沈下、側方流動が見られた。液状化対策を行ったところでは、これらの被害はほとんど見られなかった。
5 非構造部材について
(1) 被害の状況
1) はめ殺し窓ガラスの破損や鋼製玄関ドア開閉不能の被害が見られた。
2) 層崩壊を伴う場合を除いては、カーテンウォールの被害は軽微であった。
(2) 推定される被害原因
1) はめ殺し窓ガラスや鋼製玄関ドアの被害の原因としては、各非構造部材が保有する変形性能より大きな層間変形が作用したことが考えられる。
II 応急的対応に対する提言
1 古い建築物についての被害程度が大きいことにかんがみ、既存建築物の耐震診断、及びその結果耐震性が著しく劣ると判断された建築物の耐震補強を全国的な課題として推進すべきである。
2 新しい建築物の被害状況からは、新耐震設計法はおおむね妥当と思われるが、今回の被害にかんがみ、建築物の特定の階や平面計画において弱点が生じないようバランスを考慮し、かつ余裕のある設計を心がけると同時に、丁寧な施工及び綿密な検査を励行すべきである。
III 今後の調査
1 木造建築物、鉄骨造建築物、鉄筋(鉄骨)コンクリート造建築物、基礎・地盤、非構造部材について、建築物内部や基礎等の詳細調査及び構造計算図書等に基づく詳細分析を今後一層進める予定である。
2 また、これらと併せ、地震動についても、強震記録の収集分析や建築物への入力等の検討を進める予定である。
|
![]() |
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport |