建設省住指発第一三五号
平成八年三月二九日

都道府県建築主務部長あて

建設省住宅局建築指導課長通達


屎尿浄化槽の構造基準の改正について


昭和五五年建設省告示第一二九二号(以下「旧告示」という。)の一部が別添のとおり平成七年一二月二七日建設省告示第二〇九四号により改正され、平成八年四月一日から施行されることとなった。
近年、公共用水域の水質汚濁の防止や、生活環境の保全に対する社会的要請の高まりの中、海域や湖沼、河川等の公共用水域における富栄養化対策が求められているところである。とりわけ、内湾、湖沼等の閉鎖性水域における富栄養化を防止するため、生活系排水に含まれる窒素や燐への対応が重要な課題となっており、また、BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)等についても、より高度な処理が要求されてきているところである。
このような状況の中、都道府県においては、水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号)第三条第三項の規定に基づき、同法第三条第一項の規定に基づき排水基準を定める総理府令(昭和四六年総理府令第三五号)より厳しい排水基準を条例により定め、水質汚濁の防止を図っているところである。
このため、本改正においては、主として水質汚濁防止法に基づく排水基準に対応するため、建築基準法施行令(昭和二五年政令第三三八号)第三二条第三項の規定に基づく屎尿浄化槽の指定の実績及び汚水を処理する最新の技術的知見を踏まえ、屎尿と雑排水とを併せて処理する方法による構造の屎尿浄化槽(以下「合併処理浄化槽」という。)について、窒素や燐を除去する性能又はBOD若しくはCODを高度に処理する性能を有する構造の屎尿浄化槽(以下「高度処理型合併処理浄化槽」という。)の構造基準を新たに定めることとするほか、併せて、従来から定められていた構造について、屎尿浄化槽を構成する各槽、設備等(以下「単位装置等」という。)に係る基準の見直しを行うこととしたものである。
改正後の告示(以下「改正告示」という。)の概要及び今後の運用方針は左記のとおりであるので、貴職におかれては、関係市町村に対してもこの趣旨を徹底されるとともに、改正告示の施行に遺憾なきよう取り計らわれたい。

I 改正告示の概要及び運用上の留意点

1 改正告示の概要
(1) 処理対象人員が五〇人以下の合併処理浄化槽について、生活系排水に含まれる汚濁負荷の低減を図るため、種々の研究成果及び最新の技術的知見を踏まえ、窒素を除去する性能を有する屎尿浄化槽の構造基準を新たに位置づけた。
(2) 処理対象人員が五一人以上の合併処理浄化槽について、建築基準法施行令第三二条第三項の規定に基づく建設大臣によるこれまでの指定の実績を踏まえ、水質汚濁防止法第三条第三項に基づき条例により定められる排水基準に対応する高度処理型合併処理浄化槽の構造基準を新たに位置づけた。
(3) 従来から定められていた処理方式について、現在までの設置及び維持管理の状況を踏まえ、より安定した処理性能を得るために必要な要件を集約し、単位装置等に係る基準の見直しを行った。
2 運用上の留意点
(1) 第1第一号、第二号及び第三号、第4並びに第5関係

第1第一号、第二号及び第三号、第4並びに第5に係る改正は、屎尿浄化槽の構造自体に直接関わるものではないため、旧告示の規定に適合している屎尿浄化槽は、告示改正後も依然として適法な状態にある。

(2) 第1第六号関係

第1第六号に新たに追加した処理方式(脱窒濾床接触ばつ気方式)は、窒素を除去する性能を有するもので、槽内部の汚水の温度、BOD濃度に対する窒素濃度の比等が適切な範囲内に保たれた状態において、BODの除去率が九〇パーセント以上で、かつ、屎尿浄化槽からの放流水のBOD及び窒素含有量(以下「T―N」という。)が一リットルにつき二〇ミリグラム以下の処理能力を有するものである。

(3) 第7及び第8関係

第7及び第8に新たに追加した処理方式は、BOD又はCODについて高度に処理する性能を有するもので、通常の使用状態において、以下の処理能力を有するものである。
1) 第7第一号「接触ばつ気・砂濾過方式」及び第二号「凝集分離方式」

BODの除去率が九五パーセント以上で、かつ、屎尿浄化槽からの放流水のBODが一リットルにつき一〇ミリグラム以下

2) 第8第一号「接触ばつ気・活性炭吸着方式」及び第二号「凝集分離・活性炭吸着方式」

BODの除去率が九五パーセント以上で、かつ、屎尿浄化槽からの放流水のBODが一リットルにつき一〇ミリグラム以下及び放流水のCODが一リットルにつき一〇ミリグラム以下

(4) 第9、第10及び第11関係

第9、第10及び第11に新たに追加した処理方式は、窒素及び燐を除去する性能を有するもので、通常の使用状態において、以下の処理能力を有するものである。
1) 第9第一号「硝化液循環活性汚泥方式」及び第二号「三次処理脱窒・脱燐方式」

BODの除去率が九五パーセント以上で、かつ、屎尿浄化槽からの放流水のBODが一リットルにつき一〇ミリグラム以下、放流水のT―Nが一リットルにつき二〇ミリグラム以下及び放流水の燐含有量(以下「T―P」という。)が一リットルにつき一ミリグラム以下

2) 第10第一号「硝化液循環活性汚泥方式」及び第二号「三次処理脱窒・脱燐方式」

BODの除去率が九五パーセント以上で、かつ、屎尿浄化槽からの放流水のBODが一リットルにつき一〇ミリグラム以下、放流水のT―Nが一リットルにつき一五ミリグラム以下及び放流水のT―Pが一リットルにつき一ミリグラム以下

3) 第11第一号「硝化液循環活性汚泥方式」及び第二号「三次処理脱窒・脱燐方式」

BODの除去率が九五パーセント以上で、かつ、屎尿浄化槽からの放流水のBODが一リットルにつき一〇ミリグラム以下、放流水のT―Nが一リットルにつき一〇ミリグラム以下及び放流水のT―Pが一リットルにつき一ミリグラム以下

なお、適正な窒素除去性能を確保するため、以下の点等に配慮して設計及び設置を行うよう設計者等を指導されたい。

(i) 第9第二号の(三)に規定する脱窒用接触槽については、適正量の水素供与体を供給できる構造とすることを(リ)において規定しているが、第9、第10及び第11に定める構造の屎尿浄化槽については、流入水の水質等により、主として脱窒反応が行われる槽においてBOD濃度に対する窒素濃度の比が適切な範囲内に保たれない場合には、窒素除去性能に支障が生じないようにするため、流入水の水質に基づき必要量の水素供与体を供給でき、かつ、当該水素供与体の供給量を維持管理段階において調整できる構造とすること。
(ii) 窒素除去性能に支障が生じないよう、第1第七号の(ル)の規定に基づき、必要に応じて各槽について断熱化を図る等汚水の温度低下を防止する構造とすること。

II 今後の運用方針

1 今回の告示改正においては、旧告示第1第四号及び第五号、第2、第3並びに第6に定める構造上新たに要求される基準が追加されたことから、旧告示第8の規定に基づき、旧告示第1第四号及び第五号、第2、第3並びに第6に定める構造と同等以上の性能を有するものとして認定を受けた屎尿浄化槽については、改正告示に定める構造の屎尿浄化槽と同等以上の性能を有するかどうかの確認を要するものである。なお、旧告示第8の規定に基づき認定を受けた屎尿浄化槽の改正告示の規定への適否については、現在、個別に確認作業を行っているところであり、その結果については、追って通知する予定である。
2 今回の告示改正により新たに追加された構造の屎尿浄化槽で、改正告示の規定に適合するものであっても、当該屎尿浄化槽を工場において製造しようとする者は、浄化槽法(昭和五八年法律第四三号)第一三条第一項の規定に基づき、製造しようとする屎尿浄化槽の型式について建設大臣の認定を受けなければならない。なお、工場生産による屎尿浄化槽の型式について、その処理方式、槽の容量及び寸法、性能、認定の表示その他の事項を取りまとめた性能認定シートの取り扱いについては、従来どおりとされたい。
3 浄化槽法第一三条第一項の規定に基づき、旧告示の規定に適合するものとして型式の認定を受けた屎尿浄化槽(以下「旧告示による型式認定浄化槽」という。)が、改正告示の規定に適合する場合には、浄化槽法第一三条第一項の規定に基づく型式の認定は、告示改正後も有効であるものとする。一方、旧告示による型式認定浄化槽が、改正告示の規定に適合しない場合は、改めて、浄化槽法第一三条第一項の規定に基づく型式の認定が必要となるものである。なお、旧告示による型式認定浄化槽の改正告示の規定への適否については、現在、個別に確認作業を行っているところであり、その結果については、追って通知する予定である。
4 水質汚濁防止法に規定する特定施設又は指定地域特定施設に該当する屎尿浄化槽からの排出水について、水質汚濁防止法第三条第三項に基づく条例(以下「条例」という。)を制定する場合においては、屎尿浄化槽に関する技術水準の実態を勘案し、事前に環境部局と十分な協議を行い、当該条例の施行上支障のないよう排水基準を設定すること。なお、改正告示第6から第12までに規定する屎尿浄化槽の性能が、条例による排水基準を満足できない場合には、建築基準法施行令第三二条第三項の規定に基づく建設大臣の指定を受ける必要があるので念のため申し添える。
5 改正告示第1から第12までに定めるもの以外の構造の屎尿浄化槽その他の特殊な構造の浄化槽については、改正告示第13の規定に基づく建設大臣の認定が必要であることを念のために申し添える。
6 今回の告示改正により、第7から第11までに追加した構造については、汚水を高度に処理するために適切な維持管理を行うことが重要となるので、その旨を設置者等に十分周知し、屎尿浄化槽の設置後において適切な維持管理が行われるよう指導されたい。
7 改正告示の附則において、告示の施行の日(平成八年四月一日)から起算して三月を経過する日(平成八年六月三〇日)までの間は、この告示による改正前の規定による屎尿浄化槽の構造については、なお従前の例によることができることとされているので、留意されたい。
8 今回の告示改正が、公共用水域の水質汚濁防止や生活環境の保全に対する社会的要請の高まりの中、生活排水に含まれる窒素や燐による汚濁負荷を低減し湖沼、内湾等の閉鎖性水域における富栄養化対策を推進することが重要な課題となっていることに対応したものであることにかんがみ、屎尿と雑排水とを併せて処理することができる処理方式である合併処理浄化槽の普及促進、とりわけ窒素や燐を除去する性能又はBOD若しくはCODを高度に処理する性能を有する高度処理型合併処理浄化槽の普及促進を図られたい。

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