建設省住指発第一三六号
平成八年三月二九日

特定行政庁建築主務部長あて

建設省住宅局建築指導課長通達


既存住宅に設置するホームエレベーターについて


建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号。以下「法」という。)の昇降機に係る規定に適合しないホームエレベーターについては、「ホームエレベーターについて」(昭和六二年五月一六日付け建設省住指発第一七三号建設省住宅局建築指導課長通達)により、その取扱いについて通知したところであるが、近年、ホームエレベーターの既存住宅への設置に対する要望が増えてきたことから、今般、別添のとおり「既存住宅へのホームエレベーター設置指針」(以下「指針」という。)を策定したところである。
今後、既存住宅に設置するホームエレベーターについては、当該指針を参考にして、機種ごとに法第三八条に基づく認定(以下「一般認定」という。)の審査を行うこととしているので通知する。なお、既に、新築の住宅に設置することができるものとして一般認定を受けているホームエレベーターであっても、当該指針を参考として一般認定を受けた場合には、既存住宅に設置する際に個々の建築物ごとに法第三八条に基づく認定(個別認定)を受けることを要しないものとするので、貴職におかれては、その取扱いについて留意されたい。



別添

既存住宅へのホームエレベーター設置指針

第1 適用範囲

この指針は、建築基準法第三八条の規定に基づき一般認定を受けたホームエレベーターを、既存の住宅に設置する場合に適用する。

第2 ホームエレベーターの分類

ホームエレベーターを、荷重及び外力の支持条件により、構造上以下の様に分類する。
一 自立型

ホームエレベーターに作用する全ての荷重及び外力を建築物の構造耐力上主要な部分以外の自立する部分によって支持するもの。

二 半自立型

ホームエレベーターに作用する荷重及び外力のうち、固定荷重、積載荷重又は積雪荷重を建築物の構造耐力上主要な部分以外の自立する部分によって支持し、地震力又は風圧力を建築物の構造耐力上主要な部分によって支持するもの。

三 構造躯体依存型

ホームエレベーターに作用する全ての荷重及び外力を建築物の構造耐力上主要な部分によって支持するもの。

第3 設置条件

1 共通事項

一 基本的な考え方

ホームエレベーターの設置により、既存住宅の構造安全性を損なわないよう計画すること。

二 地盤条件

適切な方法により地盤調査を行い、地耐力を確かめること。

三 基礎の構造

1) ホームエレベーターの基礎は、建築基準法施行令(昭和二五年政令第三三八号。以下「令」という。)第三章第八節第二款に規定する荷重及び外力によって、基礎の断面に生ずる長期及び短期の各応力度を計算し、令第三章第八節第三款の規定による長期の応力に対する許容応力度(以下「長期の許容応力度」という。)及び短期の応力に対する許容応力度(以下「短期の許容応力度」という。)を超えないことを確かめるとともに、基礎の底部に生ずる応力度が地耐力を超えないことを確かめること。
2) 建築物の基礎及びホームエレベーターの基礎が、不同沈下を生じないことを確かめること。ただし、ホームエレベーターの基礎を建築物の基礎と一体となった鉄筋コンクリート造の布基礎とした場合は、この限りでない。
3) 構造躯体依存型の場合にあっては、建築物の基礎についても第一号と同様に長期及び短期の各応力度が長期の許容応力度及び短期の許容応力度を超えず、かつ、基礎の底部に生ずる応力度が地耐力を超えないことを確かめること。

2 ホームエレベーターの分類に応じた設置の条件

一 自立型

自立型のホームエレベーターを設置する場合には、次に掲げる条件を満たすこと。
1) 隙間の確保

建築物の構造耐力上主要な部分とホームエレベーターを支持する部分との間には、令第八八条第一項に規定する地震力によって生ずる建築物の構造耐力上主要な部分の水平方向の変位と、地震力の生ずる部分に対応する次の表の右欄に掲げる設計用標準震度により求めた地震力によって生ずるホームエレベーターを支持する部分の水平方向の変位との合計値に相当する構造的な隙間を確保すること。


地震力の生ずる部分
設計用標準震度
昇降路内の可動機器
〇・六
昇降路内の固定機器
〇・三
機械室の機器(一階及び地階)
〇・四
機械室の機器(二階以上)
一・〇

2) 建築物の構造耐力上主要な部分の水平方向の変位

1)の建築物の構造耐力上主要な部分の水平方向の変位は、構造計算により求めること。ただし、構造計算によることが困難な場合には、建築物の基礎の上端から水平方向の変位を求める当該部分までの高さに、次の値を乗じて得た値とみなすことができる。
イ 木造住宅、鉄骨造住宅にあっては、一二〇分の一。ただし、準耐火建築物の場合にあっては、一五〇分の一。
ロ 鉄筋コンクリート造住宅にあっては、二〇〇分の一。

二 半自立型

半自立型のホームエレベーターを設置する場合には、次に掲げる条件を満たすこと。
1) 令第三章第八節第二款に規定する荷重及び外力並びにエレベーター各部に作用する一の1)によって求められる地震力によって、建築物の構造耐力上主要な部分(基礎を除く。)の断面に生ずる令第八二条の表の暴風時及び地震時における短期の応力度を計算し、短期の許容応力度を超えないことを確かめること。ただし、木造の建築物の場合で次のイ及びロに適合する場合は、この限りでない。

イ エレベーターを支える構造耐力上主要な軸組又は耐力壁(剛床でつながった軸組又は耐力壁を含む。)の長さに、令第四六条の表一又は昭和五七年建設省告示第五六号「枠組壁工法の技術的基準」表1若しくは表1―2の軸組又は耐力壁の種類に応じた倍率を乗じて得た数値が、地震力及び風圧力に対して必要なものとして計算で求めた数値(地震力又は風圧力が一三〇kgにつき必要な数値は一として計算する。)よりも大きいことを確認すること。ただし、床を剛とし、地震力に対して必要な数値の一・一倍以上を建築物全体として確保している場合には、地震力に対する確認は要しないこととする。
ロ エレベーターの機器、ガイドレール、エレベーターを支持する部分を取り付ける建築物の構造耐力上主要な部分については、エレベーター各部に作用する一の1)によって求められる地震力によって、当該部分に生ずる短期の応力度が短期の許容応力度を超えないことを確かめること。

2) エレベーターの設置後の建築物の構造耐力上主要な部分は、釣合い良く配置すること。

三 構造躯体依存型

構造躯体依存型のホームエレベーターを設置する場合には、次に掲げる条件を満たすこと。
1) 令第三章第八節第二款に規定する荷重及び外力によって、建築物の構造耐力上主要な部分(基礎を除く。)の断面に生ずる長期及び短期の応力度を計算し、それぞれ長期の許容応力度及び短期の許容応力度を超えないことを確かめること。
2) エレベーターの設置後の建築物の構造耐力上主要な部分は、釣合い良く配置すること。


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport