建設省住指発第一三七号
平成八年三月二九日

特定行政庁建築主務部長あて

建設省住宅局建築指導課長通達


中低層共同住宅用エレベーターについて


標記については、近年の長寿社会の進展、安全で快適な居住環境への要請の高まり等から、その一層の普及が望まれているところであるが、中低層の共同住宅におけるエレベーターの利用形態、その必要な安全性等を勘案し、今般、建設省において、別添のとおり「中低層共同住宅用エレベーター設計指針」を策定したところである。
今後、建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)の昇降機に係る規定に適合しないいわゆる中低層共同住宅用エレベーターについては、当該指針を参考にして、機種ごとに同法第三八条の規定に基づく認定の審査を行うこととしているので通知する。貴職におかれては、関係各位に対して、この旨周知方お願いする。



(別添)

中低層共同住宅用エレベーター設計指針

(一) 総則

(イ) この指針は、専ら中低層の共同住宅又は共同住宅で事務所、店舗等の用途を兼ねるものの居住の用のみに供する部分に設けられる昇降行程が二〇メートル以下の垂直式昇降装置(以下「中低層共同住宅用エレベーター」という。)に適用する。
(ロ) 中低層共同住宅用エレベーターの構造は、次の規定によるほか、この指針の定めるところによるものとする。

a ロープ式エレベーターにあっては、建築基準法施行令(以下「令」という。)第五章の四第二節中第一二九条の四(第一項第一号及び第二号並びに第二項第一号を除く。)、第一二九条の五(第二号、第四号、第五号及び第六号を除く。)、第一二九条の六(第三号及び第五号の頂部すき間に関する部分を除く。)、第一二九条の七、第一二九条の八(第一号及び第三号を除く。)、第一二九条の九(第一項第五号、第七号及び第一三号を除く。)及び第一二九条の一三(第二項及び第五項のエレベーターのかごに関する部分を除く。)の規定。
b 油圧エレベーターにあっては、令第五章の四第二節中第一二九条の四(第一項及び第二項を除く。)、第一二九条の五(第二号、第四号、第五号及び第六号を除く。)、第一二九条の六(第三号を除くほか、直接式油圧エレベーターにあっては第五号を除き、間接式油圧エレベーターにあっては同号中の「定格速度」とあるのを「下降定格速度」(積載荷重を作用させて下降する場合の毎分の最高速度をいう。)と読み替えて、頂部すき間に関する部分を除く。)、第一二九条の八(第一号から第三号までを除く。)、第一二九条の九(第一項第五号から第九号まで、第一一号及び第一三号並びに第二項を除く。)及び第一二九条の一三(第二項及び第五項のエレベーターのかごに関する部分を除く。)並びに昭和四六年建設省告示第一六八七号(以下「油圧エレベーターの構造基準」という。)第三(第一号イ及びロ並びに第二号イを除く。)、第五、第六(第一号を除く。)、第七、第八及び第九の規定。

(二) 積載荷重

エレベーターのかごの積載荷重は、かごの床面積が一・三平方メートル未満の場合にあっては一平方メートルにつき二五〇キログラムとして計算した数値以上とし、かごの床面積が一・三平方メートル以上の場合にあっては令第一二九条の一三第二項によるものとする。

(三) 昇降行程

昇降行程は二〇メートル以下とする。

(四) 定格速度

定格速度は毎分四五メートル以下とする。

(五) かご

エレベーターのかごは、次に掲げる構造とする。
(イ) 構造上軽微な部分を除き、不燃材料、準不燃材料若しくは難燃材料又はFRP等の容易に燃え広がらないもので造られ、又は覆われていること。
(ロ) 天井及び天井救出口が設けられていること。ただし、非常の場合にかご内の人を容易に救出できるものについては、天井救出口は設けないことができる。
(ハ) 出入口が二ヶ所以下であること。
(ニ) かご内に用途、定員及び積載荷重が掲示されていること。

(六) 昇降路及び機械室

(イ) エレベーターの昇降路及び機械室は、次に掲げる構造とする。

a 昇降路の壁又は囲い及び出入口の戸が、不燃材料又は準不燃材料で造られ、又は覆われていること。ただし、防火上支障がない場合においては、出入口の戸は、難燃材料で造ることができる。
b かごが停止する階において、かごが上昇し得る最上位置に停止したときの頂部の隙間が一〇センチメートル以上であること。
c 機械室に換気上有効な開口部又は換気設備が設けられていること。ただし、(ロ)に該当する場合においては、この限りでない。
d 機械室における主要な機械から柱又は壁までの水平距離が、機械の配置及び管理に支障がないものであること。

(ロ) かごの積載荷重が三二五キログラム未満のエレベーターにあっては、次に掲げる条件に適合する機器点検口、通路及び安全装置が設けられている場合には、機械室を設けずに昇降路内に駆動装置(原動機、制御器、巻上機及び油圧エレベーターにおける油圧パワーユニットをいう。)を設置することができる。この場合において、令第一二九条の八及び「油圧エレベーターの構造基準」第六は適用しない。

a 昇降路周壁等の適切な位置に駆動装置の点検及び必要な操作を容易に行うことができる大きさの機器点検口が設けられていること。
b 機器点検口の戸に自動施錠装置が設けられており、昇降路の外側からは専用の鍵を使用しなければ当該戸を開けることができない構造であること。
c 機器点検口の戸が開いているときに自動的にかごを昇降させることができないよう必要な装置が設けられていること。
d 昇降路内のピットの付近にかごの運転を停止するスイッチが設けられていること。
e 機器点検口部分に幅〇・七メートル以上の通路が確保されていること。

(七) 主索、網車及び巻胴

主索、網車及び巻胴は、次に掲げる構造とする。
(イ) 主索がJIS G 三五二五(ワイヤーロープ)又はJIS G 三五四六(異形線ロープ)に相当する性能を有するものであり、かつ、直径が一〇ミリメートル以上であること。
(ロ) 網車又は巻胴の直径が、昇降行程が一三メートル以下の場合にあっては主索の直径の三六倍以上であり、昇降行程が一三メートルを超える場合にあっては令第一二九条の四第二項第一号に該当するものであること。

(八) 油圧エレベーターのプランジャーの有効細長比

油圧エレベーターのプランジャーの有効細長比は、プランジャーの直径が三〇センチメートル未満の場合にあっては三五〇以下とし、プランジャーの直径が三〇センチメートル以上の場合にあっては、「油圧エレベーターの構造基準」第二によるものとする。

(九) 安全装置

ロープ式エレベーターには、次に掲げる安全装置を設けるものとする。
(イ) かごの速度が異常に増大した場合に、毎分の速度が六三メートルを超えないうちに動力を自動的に切る装置。
(ロ) かごの降下する速度が毎分六八メートルを超えないうちに、かごの降下を自動的に静止する早ぎき非常止め装置。ただし、昇降行程が一三メートル以下のエレベーターにあっては、かごの降下時に主索に緩みが生じた場合において作動する早ぎき非常止め装置とすることができる。
(ハ) 令第一二九条の六第五号の規定による頂部すき間が一・二メートル未満の場合には、かご上運転をする際に頂部安全距離一・二メートル以上を確保し、それ以上のかごの上昇を自動的に停止するための装置。

(一〇) 構造計算

エレベーターのかごに使用する材料の許容応力度は、かごの積載荷重が三二五キログラム未満のエレベーターにあっては当該材料の破壊強度を五で除した数値によるものとし、かごの積載荷重が三二五キログラム以上のエレベーターにあっては令第一二九条の一三第五項によるものとする。


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