都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律(平成九年法律第七九号)、都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整理等に関する政令(平成九年政令第一九六号)等については平成九年六月一三日付け建設省住街発第七二号をもって建設事務次官から通達されたところであるが、本改正のうち、共同住宅の共用の廊下又は階段に係る容積率制限の合理化に関する細目は前記のとおりであるので、関係市町村に対してもこの趣旨を十分周知されるとともに、今後の運用に遺憾のないよう措置されたい。
1 対象となる共同住宅の範囲について
建築基準法(以下「法」という。)第五二条第四項の規定により共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積を延べ面積に不算入とする措置(以下「共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置」という。)の対象となる共同住宅は、共用の廊下又は階段の用に供する部分を有する全ての共同住宅であり、分譲の共同住宅及び賃貸の共同住宅を含むものである。
また、共同住宅の住戸で、事務所等を兼ねるいわゆる兼用住宅については、本制度の対象となる共同住宅には該当しないものである。
2 対象となる共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分(以下「共用廊下等の部分」という。)について
共同住宅の共用の廊下等に係る容積率の不算入措置の対象となる共用の廊下等については、以下のとおり取り扱うものとする。
(1) 共用の廊下の用に供する部分には、いわゆるエントランスホール及びエレベーターホールで共用のものを含むものであり、収納スペース、ロビーとして区画された部分等の居住、執務、作業、集会、娯楽又は物品の保管若しくは格納その他の屋内的用途に供する部分を含まないものであること。
(2) 共用の階段の用に供する部分には、階段に代わる共用の傾斜路の部分を含むものであり、昇降機機械室用階段その他特殊の用途に用いる階段の部分を含まないものであること。
3 共同住宅の用途に供する部分とその他の用途に供する部分が複合している建築物の取扱いについて
共同住宅の用途に供する部分とその他の用途に供する部分が複合している建築物に対する本規定の適用については、以下のとおり取り扱うものである。
(1) 専ら住戸の利用のために供されている共用廊下等の部分は本規定の対象とすること。たとえば、一定の階の専用部分の全てが共同住宅の用途に供されている場合には、その階の共用廊下等の部分は本規定の対象とすること。
(2) 専ら住戸以外の利用のために供されている共用廊下等の部分は本規定の対象としないこと。
(3) (1)及び(2)以外の共用廊下等の部分については、その床面積の合計に、当該建築物における住戸の用に供されている専用部分等(住戸の用に供されている専用部分及び共用部分のうち、専ら住戸の利用のために供されている部分)の床面積の合計と住戸以外の用に供されている専用部分等(住戸以外の用に供されている専用部分及び共用部分のうち、専ら住戸以外の利用のために供されている部分)の床面積との合計のうち住戸の用に供されている専用部分等の床面積の合計が占める割合を乗じて得た面積を共用廊下等の部分の床面積に含めて取り扱うこと。
4 その他の容積率に関する特例制度等との関係について
既存の容積率に関する特例制度等と共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置との関係については、以下のとおり取り扱うものである。
(1) 建築基準法施行令第二条第一項第四号に規定する専ら自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設の用途に供する部分の床面積を延べ面積に不算入とする措置は、共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置と併せて適用されること。
(2) 法第五九条に規定する高度利用地区、法第五九条の二に規定する総合設計制度、法第六〇条に規定する特定街区、法第六八条の三に規定する地区計画、法第六八条の四に規定する住宅地高度利用地区計画、法第六八条の五に規定する再開発地区計画、法第六八条の五の二に規定する沿道地区計画、法第六八条の九に規定する都市計画区域以外の区域内の建築物に対する制限及び法第八六条第九項に規定する一団地の住宅施設に関する都市計画において容積率の最高限度が適用される場合、共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置を適用した上でそれぞれの規定に基づく制限が適用されること。
(3) 共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置は、容積率の最高限度を適用する場合において延べ面積を算定する際に限るものであること。すなわち、法第五九条に規定する高度利用地区、法第六八条の三に規定する地区計画、法第六八条の五の二に規定する沿道地区計画及び法第六八条の九に規定する都市計画区域以外の区域内の建築物に対する制限において容積率の最低限度を適用する場合の延べ面積の算定に当たっては、共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置は適用せず、その延べ面積には、共用廊下等の部分も含めて算定すること。
5 住宅部分に係る用途転用防止策等について
共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置については、共同住宅から共同住宅以外への用途変更による容積率制限に関する違反建築物の出現を防止するため、次の点に留意すること。
(1) 建築基準法施行規則を改正し、建築確認申請書の記載事項に、共同住宅の共用の廊下等の部分の床面積が追加されたところであるので、建築確認の審査においては、当該共同住宅が台所、風呂、便所など居住するために必要な機能を備えていること、各住戸の界壁が遮音上有効な構造となっていること等、共同住宅の用途に供されることが確実であることを慎重かつ適正に判断し、共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置の適用を受ける建築物については、その前提となる共同住宅の用途に供する部分を特定したうえで、建築物の概要、共同住宅の用途に供する部分及び容積率の不算入措置の適用を受ける共用廊下等の部分の配置等を記載した台帳を作成すること。
(2) 共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置を適用した建築物については、建築基準法第一二条第一項の規定に基づき特定行政庁が定める報告事項として、建築物の用途に関する事項を定めるとともに、当該建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合については、管理者)に対し、共同住宅及び共用廊下等の部分の用途の現況等の状況について、定期的に特定行政庁に報告を求め、また、定期的に表札等の調査を行うなどの現地調査を行うことにより、その用途の現況等の状況を十分把握すること。
また、建築主に対して、前記の定期報告を行うべき旨を確認時に告知するとともに、当該建築物の譲渡等が行われた場合には、建築主が、当該建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合については、管理者)に対して、前記の定期報告を行うべき旨を伝達するよう、告知すること。
(3) 当該建築物について違反が発見された場合には、その是正のため、迅速かつ適切に措置命令、使用禁止等の必要な措置をとるものとすること。