建設省住指発第三二九号・住街発第七一号
平成一〇年六月三〇日

都道府県知事あて

住宅局長通達


建築基準法の一部を改正する法律の公布について


建築基準法の一部を改正する法律は、第一四二回国会(通常国会)において成立し、去る六月一二日、平成一〇年法律第一〇〇号として公布され、日照規定の廃止については公布の日から、指定確認検査機関による建築確認・検査制度の創設、中間検査制度の創設、準防火地域内における木造三階建て共同住宅に係る規制の緩和、一定の複数建築物に対する制限の特例等並びに台帳の整備及び閲覧制度の整備に関する部分については公布の日から起算して一年を超えない範囲内において各規定につき政令で定める日から、建築物の敷地、構造及び建築設備に関する規定の性能規定化、採光及び地下居室に係る規制の緩和並びに型式適合認定制度の創設に関する部分については公布の日から起算して二年を超えない範囲内において各規定につき政令で定める日から施行されることとなった。
建築基準法の一部を改正する法律は、建築基準法がその制定以来約五〇年を経過した今日、経済社会の構造的変革を背景とした規制緩和及び官民の役割分担の見直しの要請、建築市場の国際化を背景とした建築基準の国際調和の要請、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた安全性の一層の確保に対する要請、土地の合理的利用の推進の要請等に的確に対応するため、建設大臣又は都道府県知事の指定を受けた機関による建築確認、検査等の実施、建築物が満たすべき性能基準の明示とこれを確保するために必要な建築規制の弾力化、社会経済情勢の変化を踏まえた衛生及び防火に関する規制の合理化、建築物に関する型式が建築基準へ適合することをあらかじめ認定することによる建築確認等の審査の簡略化、施工中の一定の建築物についての中間検査の導入、一定の複数建築物に対する建築規制の適用の合理化等の改正を行ったものである。
今回の改正法律の概要及び今後の運用方針は、次に述べるとおりである。運用方針の詳細については追って通知するが、貴職におかれては、当面以下の運用方針に留意するとともに、関係市町村に対してもこの趣旨を十分周知徹底させ、今後の建築基準法の運用及び改正法の施行の準備に万全を期されたい。
第1 改正法律の概要

1 指定確認検査機関による建築確認・検査制度の創設

建設大臣又は都道府県知事の指定を受けた者(指定確認検査機関)は、建築主事と同様に、建築確認及び検査を行うことができることとした。この場合において、指定確認検査機関において建築確認及び検査を実施する者について、資格検定を行うとともに、その登録制度を設けることとした。

2 中間検査制度の創設

特定行政庁が、区域、期間及び建築物の構造、用途又は規模を限り、施工中に検査することが必要な工事の工程を特定工程として指定した場合において、建築主が、当該特定工程に係る工事を終えたときは、建築主事又は指定確認検査機関による中間検査を受けなければならず、特定行政庁が定める特定工程後の工程の工事は、建築主事等又は指定確認検査機関が工事中の建築物等が建築基準関係規定に適合すると認めて中間検査合格証を交付した後でなければ、施工してはならないこととした。

3 建築物の敷地、構造及び建築設備に関する規定の性能規定化等

特定の工法、材料、寸法等の仕様により建築基準を規定する従来の規制方式に加えて、単体規制のうち必要な技術的知見が得られた規制項目について、建築物が満たすべき性能を基準として明示し、当該性能を有することを一定の方法により検証する規制方式を導入することとした。
併せて、準防火地域内における木造三階建て共同住宅、採光及び地下居室に係る規制の緩和、日照規定の廃止を行うこととした。

4 型式適合認定制度の創設

建設大臣が一定の建築設備等について、あらかじめその型式が一連の建築基準に適合することを認定した場合には、建築主事等による建築確認・検査の段階での審査を簡略化し、申請者及び建築主事の負担軽減を図り、手続きの円滑化に資するものとした。

5 一定の複数建築物に対する制限の特例等

一定の一団の土地の区域内に現に存する建築物の位置及び構造を前提として、総合的見地からした設計によって当該区域内に建築物が建築される場合において、特定行政庁がその位置及び構造が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認める各建築物については、同一敷地内にあるものとみなして建築基準法の関係規定を適用することとした。

6 台帳の整備及び閲覧制度の整備

特定行政庁は、建築基準法令の規定による処分に係る建築物に関する台帳を整備するものとし、閲覧の請求があった場合には、その記載事項のうち一定のものを閲覧させなければならないこととした。

第2 今後の運用方針

1 指定確認検査機関による建築確認・検査制度の創設

一 建築規制制度の実効性を確保するため執行体制の整備

今回の改正における指定確認検査機関による建築確認・検査制度の創設は、官民の役割分担の在り方を見直し、民間の創意と活力を活用することにより、建築規制の執行体制の整備・充実と、建築主の需要に即した検査が行われることを促進するとともに、行政が違反建築物対策等、本来行政でしかできない業務に重点を置くことを可能とし、建築規制の実効性確保のための体制強化を図ることを目的とするものである。
建築規制制度を適確に執行し、その実効性を確保するためには、執行体制の整備・充実が重要であること、また、建築行政は国民から多大の期待をかけられているものであることから、貴職におかれても、引き続き、執行体制の強化と建築主事その他の職員の資質の向上に努められたい。

二 指定確認検査機関の指定の促進

指定確認検査機関の指定基準の詳細については、追って建設省令において規定するが、改正法の施行に合わせて速やかに指定を行えるよう、指定確認検査機関において建築確認・検査を行う建築基準適合判定資格者の養成及び確保を図る等の措置を講じられたい。
また、今回の改正においては、指定確認検査機関による建築確認・検査制度の創設に併せ、指定確認検査機関が建築確認を行う場合において道路の状況等に関する判断を適切に行えるよう、特定行政庁に対する照会及び情報提供に関する規定を整備しているところであり、貴職においては、改正法の施行後、速やかに指定確認検査機関に対する円滑な情報提供等ができるよう、建築基準法令の規定による処分に関する書類の調製等の措置を講じられたい。

三 建築基準適合判定資格者の登録制度等の創設

改正法の施行の際現に市町村の長又は都道府県知事により命じられている建築主事である者は、改正後の建築基準法の規定により市町村の長又は都道府県知事により命じられている建築主事とみなされること、また、改正法の施行前に建築主事の資格検定に合格した者は、改正後の建築基準法の建築基準適合判定資格者検定に合格した者とみなされることに留意されたい。

2 中間検査制度の創設

建築物の安全性確保のためには、適切に工事監理がなされることが基本であることから、今回の改正において、適切な工事監理が行われていない蓋然性の高い建築物等を対象として特定工程の指定を行い、当該建築物について施工段階における現場検査の受検を義務化することとしたものである。
貴職におかれては、改正法の施行に合わせて速やかに特定工程の指定を行えるよう、建築基準法第一二条による検査その他の巡察を推進し、建築物の建築の動向、施工及び工事監理に関する状況等の的確な把握に努められたい。

3 日照規定の廃止

日照規定の廃止は、公布の日から施行することとされているので、十分留意されたい。

4 一定の複数建築物に対する制限の特例等

本制度の運用方針については追って通知するが、本制度の創設と併せて、一団地の総合的設計制度についても手続規定を整備することとし、特に、附則第五条に規定されているように、改正法の施行後六か月以内に、改正前の建築基準法第八六条第一項の規定が適用されている建築物について、改正後の同条第六項の対象区域、各建築物の位置その他の事項の書類を縦覧する必要があるので、縦覧書類の準備に遺憾なきを期されたい。

5 台帳の整備及び閲覧制度の整備

閲覧制度は、建築物の購入者等が建築物の工事監理や検査の履歴を把握し的確な判断を行うことを可能とするものであり、違反建築物の防止に重要な意義を有するものである。
台帳の記載事項及び閲覧の対象については、追って建設省令において定めることとしているが、貴職におかれては、本改正の趣旨にかんがみ、改正法の施行に合わせて台帳の整備がなされるよう、建築基準法令の規定による処分に関する書類の調製等の措置を講じ、台帳の整備に遺憾なきを期されたい。

6 違反建築物対象の推進

今回の改正は、指定確認検査機関による建築確認・検査制度、中間検査制度、台帳の整備及び閲覧制度の整備に見られるように、違反建築物対策の推進も主要な目的の一つである。
貴職におかれては、これらの制度の執行体制の整備・充実を図るとともに、違反建築物に関与した建築士、建設業者及び宅地建物取引業者等についての建築基準法第九条の三による通知の徹底、建築士事務所への立入り検査、同法第一二条の検査・報告徴収の推進を図り、違反建築物の未然防止に努められたい。
また、同法第七条第二項の規定による工事完了検査が不徹底な現状にかんがみ、同条第一項の規定による届出の徹底を図るための巡察等の措置を講じるなど、工事完了検査の的確な実施に努められたい。
さらに、建築士及び建築士事務所の開設者が改正法の趣旨を理解し、自覚と責任をもって業務を行うよう、関係団体への周知徹底を図られたい。


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