建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号。以下「法」という。)に規定する国土交通大臣の承認事務の実施に当たり、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二五〇条の二第一項の趣旨を踏まえ、その基準を左記のとおりとりまとめたので、地方整備局等における委任事務の処理に当たり遺憾のないようにされたい。
第1 法第四九条第二項の規定による特別用途地区内の用途制限の緩和条例の承認の基準について
(1) 特別用途地区の指定により実現を図るべき特別の目的に応じて定めることとし、条例による制限の緩和の内容が明確にされていること。
(2) 条例の規定によって用途制限を緩和する場合においては、当該条例による制限の緩和が、地域の特殊性からやむを得ないものであり、かつ、例えば別荘地のような住居専用地域等において、寮、保養施設、旅館等の立地を認めること、地場産業の集積している住居地域において一定規模以下の工場の立地を認めること等、当該条例の適用が予定されている区域に定められている用途地域の目的に背離しないものであること。
(3) 前項の場合においては、建築基準法第五〇条の規定を活用し、当該条例によって緩和される用途に供される建築物に対して、その敷地、構造又は建築設備について新たな制限を附加し、用途制限の緩和に伴う環境悪化又は利便性の低下を防止すること。
(4) 特別用途地区の指定の目的に応じて、条例において、緩和される用途の建築物の規模の上限及び階数又は高さにより立体的に用途の制限を定めることは差し支えのないこと。また、法第四九条第一項の規定に基づく条例において、建築物の建築の制限又は禁止をあわせて定めることは差し支えのないこと。
第2 法第八五条の二の規定による伝統的建造物群保存地区内の建築制限の緩和条例の承認の基準について
伝統的建造物群保存地区は、伝統的建造物群及びこれと一体をなしてその価値を形成している環境を保存するために市町村が定める地区であり、当該地区内の建築物について改築、大規模の模様替等を行う場合に、法をそのまま適用することにより、歴史的、民俗的な価値の高い建築物群の保存が困難となる場合があるため、条例により法の一定の規定について適用除外又は緩和を行うことができるものとしているところであるので、以下の基準に適合するものであること。
条例による適用除外又は緩和措置は、伝統的建造物群を構成する建築物が法の目的とする交通、安全、防火、衛生等の市街地の環境について同等以上の環境を確保することをもって認められるものではなく、伝統的建造物群の保護の必要性から認められたものであるため、適用除外の条項、緩和の程度は、伝統的建造物群保存のため必要とされる最小限のものに限られるべきものであること。
適用除外又は緩和を行う場合には、それぞれの条項の趣旨及び伝統的建造物群保存地区の実状に照らして次の考え方を参考としつつ必要に応じて相当と認められる代替措置を確保すること。
・各条項についての適用除外又は緩和に際しての基本的考え方
(第二一条)
現に存する建築物又は当該建築物の修繕を行う場合について制限の緩和が適用されるものであり、制限の緩和の要件として、主要構造部の防火上の措置を講じるとともに、火災時における倒壊及び周囲への危害を抑制するためスプリンクラー等の設置や隣接する建築物との間隔の確保等の措置を講じることが条例等において明記されており、当該措置により安全上及び防火上著しい支障がないこと。
(第二二条から第二五条まで)
現に存する建築物又は当該建築物の修繕を行う場合について制限の緩和が適用されるものであり、制限の緩和の要件として、屋根、外壁又は軒裏(以下「屋根等」という。)の防火上の措置を講じるとともに、火災時における周囲からの延焼を抑制するためドレンチャー等の設置や塀及び植栽等の遮蔽物の設置等の措置を講じることが条例等において明記されており、当該措置により安全上及び防火上著しい支障がないこと。
(第二八条)
現に存する建築物又は当該建築物の修繕を行う場合について制限の緩和が適用されるものであり、制限の緩和の要件として、照明設備又は換気設備の設置等の措置を講じることが条例等において明記されており、当該措置により衛生上著しい支障がないこと。
(第四三条)
適用除外又は緩和をすることを条例等において明記する場合は、建築物の用途、規模、位置及び構造等を勘案し、災害などの非常時の避難あるいは消防活動の確保について著しい支障がないこと。
(第四四条)
現に道路内に建築されている建築物の部分を越えるものではないことが条例等において明記されていること。ただし、伝統的景観を保持するため軒の位置をそろえる、伝統的建造物を復元する等の必要がある場合は、現に道路内に建築されている建築物の部分を越えることは差し支えないことが条例等において明記されていること。
前記いずれかの場合は、道路内の交通及び建築物の通風、日照等の環境について著しい支障がないこと。
(第五二条)
現に存する建築物の容積率を超えるものではないことが条例等において明記されていること。ただし、伝統的景観を保持する、伝統的建造物を復元する等の必要があり、やむを得ないと判断される場合は、現に存する建築物の容積率を超えることは差し支えのないことが条例等において明記されていること。
前記いずれかの場合は、道路、下水道等の公共施設の供給能力又は処理能力のバランス及び市街地の環境に著しい支障がないこと。
(第五三条)
現に存する建築物の建ぺい率を超えるものではないことが条例等において明記されていること。ただし、伝統的景観を保持する、伝統的建造物を復元する等の必要があり、やむを得ないと判断される場合は、現に存する建築物の建ぺい率を超えることは差し支えのないことが条例等において明記されていること。
前記いずれかの場合は、建築物の採光、通風、防火及び当該地区の市街地大火等の災害に対する防災性能に著しい支障がないこと。
(第五五条)
現に存する建築物の高さを超えるものではないことが条例等において明記されていること。ただし、伝統的景観を保持するため建築物の高さをそろえる、伝統的建造物を復元する等の必要がある場合は、現に存する建築物の高さを超えることは差し支えのないことが条例等において明記されていること。
前記いずれかの場合は、建築物の採光、通風等の環境に著しい支障がないこと。
(第五六条)
斜線制限に適合しない建築物の部分が増加することのないものであることが条例等において明記されていること。ただし、伝統的景観を保持するため軒の位置をそろえる、伝統的建造物を復元する等の必要がある場合は、斜線制限に適合しない建築物の部分が増加することは差し支えのないことが条例等において明記されていること。
前記いずれかの場合は、建築物の採光、通風等の環境に著しい支障がないこと。
(第六一条、第六二条第一項)
現に存する建築物又は当該建築物の修繕を行う場合について制限の緩和が適用されるものであり、制限の緩和の要件として、主要構造部及び外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の防火上の措置を講じるとともに、火災時における倒壊及び周囲への危害を抑制するためスプリンクラー等の設置や隣接する建築物との間隔の確保等の措置を講じ、かつ、周囲からの延焼を抑制するためドレンチャー等の設置や塀及び植栽等の遮蔽物の設置等の措置を講じることが条例等において明記されており、当該措置により安全上及び防火上著しい支障がないこと。
(第六二条第二項、第六三条、第六四条)
現に存する建築物又は当該建築物の修繕を行う場合について制限の緩和が適用されるものであり、制限の緩和の要件として、屋根等及び外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の防火上の措置を講じるとともに、火災時における周囲からの延焼を抑制するためドレンチャー等の設置や塀及び植栽等の遮蔽物の設置等の措置を講じることが条例等において明記されており、当該措置により安全上及び防火上著しい支障がないこと。
第3 建築基準法施行令第一四四条の四第三項の規定による法第四二条第一項第五号の位置指定道路の基準の緩和の承認について
建築基準法施行令第一四四条の四第三項の規定による位置指定道路の基準の緩和については、同条第一項の基準が建築基準法上の道路としての最低限の基準であることにかんがみ、例えば、急傾斜地の多い市街地において縦断勾配の基準を緩和するなど、特殊な区域に適用すること。