近年、液化石油ガスを使用した暖房施設等の普及やSOx、NOx等の排出量が比較的少なく環境負荷の小さい液化石油ガス自動車の普及促進等を背景に液化石油ガスの消費量が増加傾向にあり、その供給形態においても、大規模集中型の貯蔵による供給や一般消費先において従来のような容器ではなく貯槽を設置する供給形態も普及してきているところである。
一方、液化石油ガス等の危険物の貯蔵又は処理に供する建築物については、住居の環境、商業の利便等を保護する観点から、建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号。以下「法」という。)の用途規制上、工業地域及び工業専用地域以外において一定量を超える危険物の貯蔵又は処理に供する建築物を建築する場合には特定行政庁の許可が必要とされている。
しかしながら、火災・爆発等による周囲の住居の環境等への影響を抑えるために地下貯蔵を行うなど適切な措置がとられた下記に該当する液化石油ガスの貯蔵又は処理に供する建築物については、各々の用途地域に応じて、住居の環境、商業の利便等を害するおそれがないものとして、法第四八条第四項から第一〇項までの規定に関する許可制度の活用により建築を認めることが適切と思われるので、運用に当たっては十分留意されたい。
なお、本通知は、地下貯槽により貯蔵される液化石油ガスの貯蔵又は処理に供する建築物に係る法第四八条第四項から第一〇項までの許可に関する一般的な考え方を示すものであるので、建築計画の内容等からこれによることが必ずしも適切でないと考えられる場合は、総合的な判断に基づいて弾力的に運用されたい。
一方、当該建築物の存する敷地が広幅員道路により囲まれている場合等周囲の土地利用の状況等から判断して住居の環境、商業の利便等を害するおそれがないものについては左記によらず建築を認めていくことが適切である。
許可の対象となる建築物は、火災・地震等の影響を受けにくい等の理由により、貯蔵する危険物の火災・爆発等の危険性が低いことから、周囲の住居の環境、商業の利便等への影響の小さい地下貯槽により貯蔵される液化石油ガスの貯蔵又は処理に供する建築物であること。
また、これらの建築物は、以下の区分に応じた基準に従っていること。
1 バルク貯槽その他の消費先に設置される貯蔵施設
一般消費者等(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和四二年法律第一四九号)第二条第二項に規定する一般消費者等をいう。)が液化石油ガスを消費する場合において、その消費先に設置するバルク貯槽(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(平成九年通商産業省令第一号)第一条第二項第二号に規定するバルク貯槽をいう。)等の貯蔵施設については、以下の基準によること。
(1) 当該貯蔵施設における供給先の消費量を考慮して、必要な量の液化石油ガスを貯蔵するものであること。
(2) 地下貯槽の払出し元弁付近に緊急遮断弁を設け、地震感震器及びガス漏洩警報設備を連動させることにより、ガス漏洩検知時に緊急遮断弁を閉止し液化石油ガスの漏洩量を最小限にする措置が講じられていること。
(3) 地下貯槽と敷地境界線との間に第二種設備距離(液化石油ガス保安規則(昭和四一年通商産業省令第五二号)第二条第一項第一七号に規定する第二種設備距離をいう。)以上の距離を確保すること。なお、これによることが困難な場合は、敷地境界線と地下貯槽の間の適当な位置に厚さ一二センチメートル以上の鉄筋コンクリート造り又はこれと同等以上の強度を有する構造の障壁(以下「障壁」という。)を設置することにより、周囲の住居等の安全を確保するための措置が講じられていること。
2 液化石油ガススタンド
液化石油ガススタンド(液化石油ガス保安規則第二条第一項第二〇号に規定する液化石油ガススタンドをいう。)に設置する貯蔵施設については、以下の基準によること。
(1) 当該液化石油ガススタンドにおける平均的な払出し量を考慮して、必要な量の液化石油ガスを貯蔵するものであること。
(2) 地下貯槽の払出し元弁付近に緊急遮断弁を設け、地震感震器及びガス漏洩検知警報設備を連動させることにより、ガス漏洩検知時に緊急遮断弁を閉止し液化石油ガスの漏洩量を最小限にする措置が講じられていること。
(3) 地下貯槽は、蓋、壁及び底の厚さがそれぞれ三〇センチメートル以上の防水措置を施した鉄筋コンクリート造りの室(以下「貯槽室」という。)に設置されていること。
(4) 地下貯槽と敷地境界線との間に、第二種設備距離又は液化石油ガス保安規則第六条第一項第二号及び第三号の規定により障壁を設置した場合に確保することとされている距離(以下「離隔距離」という。)以上の距離を確保することにより、周囲の住居等の安全を確保するための措置が講じられていること。
(5) 出入口は、交差点の近接部、急勾配の道路、バス停の近接部等自動車の出入りが道路交通の支障となる場所又は自動車の出入りが困難な場所を避け、極力周囲の居住環境や道路交通に対する影響が少ない場所に設けられていること。
(6) 敷地が十分な幅員を有する前面道路に接することにより、自動車の出入りが円滑に行われ、道路交通に支障がないこと。
3 液化石油ガス充てん所
(1) 当該液化石油ガスの充てん所からの配送の対象である区域の液化石油ガスの需要量を考慮して、必要な量の液化石油ガスを貯蔵するものであること。
(2) 地下貯槽の払出し元弁付近に緊急遮断弁を設け、地震感震器及びガス漏洩検知警報設備を連動させることにより、ガス漏洩検知時に緊急遮断弁を閉止し液化石油ガスの漏洩量を最小限にする措置が講じられていること。
(3) 地下貯槽は、貯槽室に設置されていること。
(4) 地下貯槽と敷地境界線との間に、第二種設備距離又は離隔距離以上の距離を確保することにより、周囲の住居等の安全を確保するための措置が講じられていること。
(5) 地下貯槽と充てん場の間に隔壁を設置し火炎遮断をしていること。
(6) 出入口は、交差点の近接部、急勾配の道路、バス停の近接部等自動車の出入りが道路交通の支障となる場所又は自動車の出入りが困難な場所を避け、また、敷地内に搬入車両による充てんのためのスペースを確保することにより、極力周囲の居住環境や道路交通に対する影響を少なくするための措置が講じられていること。
(7) 敷地が十分な幅員を有する前面道路に接することにより、自動車の出入りが円滑に行われ、道路交通に支障がないこと。
(資料)
液化石油ガスの貯蔵又は処理に供する建築物に関する用途規制
第一種低層住居専用地域
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建築不可※
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第二種低層住居専用地域
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第一種中高層住居専用地域
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第二種中高層住居専用地域
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三・五?dを超えるものは建築不可
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第一種住居地域
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第二種住居地域
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準住居地域
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近隣商業地域
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七?dを超えるものは建築不可
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商業地域
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準工業地域
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三五?dを超えるものは建築不可
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工業地域
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建築可
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工業専用地域
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建築可(物品販売店舗併用は不可)
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※ 液化石油ガス販売事業の用に供する供給設備である建築物(三・五?d以下)は建築可
●用語の定義一覧
・「一般消費者等」
液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律
(昭和四二年一二月二八日法律第一四九号)
第二条
2 この法律において「一般消費者等」とは、液化石油ガスを燃料(自動車用のものを除く。以下この項において同じ。)として生活の用に供する一般消費者及び液化石油ガスの消費の態様が一般消費者が燃料として生活の用に供する場合に類似している者であって政令で定めるものをいう。
液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行令
(昭和四三年二月七日政令第一四号)
第二条 法第二条第二項の液化石油ガスの消費の態様が一般消費者が燃料として生活の用に供する場合に類似している者であって政令で定めるものは、次に掲げる者(高圧ガス保安法(昭和二六年法律第二〇四号)第二四条の三第一項の特定高圧ガス消費者である者を除く。)とする。
一 液化石油ガスを暖房若しくは冷房又は飲食物の調理(船舶その他経済産業省令で定める施設内におけるものを除く。)のための燃料として業務の用に供する者
二 液化石油ガスを蒸気の発生又は水温の上昇のための燃料としてサービス業の用に供する者(前号に掲げる者を除く。)
・「バルク貯槽」
液化石油ガスの保安び確保及び取引の適正化に関する法律施行規則
(平成九年三月一〇日通商産業省令第一一号)
第一条
2 この規則において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
二 バルク貯槽 第一九条第三号イ及びハ(1)から(8)まで又は第五四条第二号イ及びホ(第一九条第三号ハ(1)から(8)までに係る部分に限る。)に規定する技術上の基準に適合するものであって、地盤面に対して移動することができないもの
・「第二種設備距離」、「液化石油ガススタンド」
(昭和四一年五月二五日通商産業省令第五二号)
第二条 この規則において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一六 第一種設備距離 次の図における貯蔵能力(単位 キログラム)に対応する距離(単位 メートル)であって、L一によって表されるもの
備考
一 Xは、貯蔵能力(処理設備又は減圧設備にあっては、当該設備に接続する貯蔵設備の貯蔵能力をいう。単位 キログラム)を表すものとする。
二 L一、L二、L三、L四、L五及びL六とXとの関係は、それぞれ次の表のとおりとする。
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X
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0≦X<10,000
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10,000≦X<52,500
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52,500≦X<990,000
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990,000≦X
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L
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L1
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12 2
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0.12 X+10,000
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30(低温貯槽にあっては、0.12X+10,000)
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30(低温貯槽にあっては、120)
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L2
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9.6 2
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0.096 X+10,000
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24
|
24
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L3
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8.4 2
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0.084 X+10,000
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21
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21
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L4
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8 2
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0.08 X+10,000
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20(低温貯槽にあっては、0.08X+10,000)
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20(低温貯槽にあっては、80)
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L5
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6.4 2
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0.064 X+10,000
|
16
|
16
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L6
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5.6 2
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0.056 X+10,000
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14
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14
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一七 第二種設備距離 前号の図における貯蔵能力(単位 キログラム)に対応する距離(単位 メートル)であって、L四によって表されるもの
二〇 液化石油ガススタンド 液化石油ガスを燃料として使用する車両に固定した容器に当該液化石油ガスを直接充てんするための処理設備を有する定置式製造設備
・「離隔距離」
液化石油ガス保安規則
第六条
二 製造施設は、貯蔵設備及び処理設備であって次の表に掲げるもの(低温貯槽を除く。)以外の貯蔵設備及び処理設備(貯蔵設備内におけるものを除く。以下この号において同じ。)の外面から、第一種保安物件に対し第一種設備距離以上、第二種保安物件に対し第二種設備距離以上の距離を有すること。
貯蔵設備又は処理施設の区分
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貯蔵設備又は処理施設の外面から最も近い第一種保安物件までの距離
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貯蔵設備又は処理設備の外面から最も近い第二種保安物件までの距離
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貯蔵設備
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(イ)
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L2以上
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L6以上 L5未満
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(ロ)
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L3以上 L2未満
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L6以上
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(ハ)
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L1以上
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L5以上 L4未満
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(ニ)
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L2以上 L1未満
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L5以上
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処理設備
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(イ)
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L1以上
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L5以上 L4未満
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L2以上 L1未満
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L5以上
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備考 L1、L2、L3、L4、L5及びL6は、それぞれ第二条第一項第一六号に規定するL1、L2、L3、L4、L5及びL6を表すものとする。
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三 前号の表に掲げる貯槽設備(イ)及び(ロ)(低温貯槽を除く。)にあっては当該貯蔵設備を地盤面下に埋設し、かつ、次のイに掲げる基準に適合し、同号の表に掲げる貯蔵設備(ハ)及び(ニ)(低温貯槽を除く。)並びに処理設備にあっては当該貯蔵設備若しくは処理設備を地盤面下に埋設し、かつ、次のロに掲げる基準に適合し、又は次のロ及びハに掲げる基準に適合すること。
イ 貯蔵設備には、第一種設備距離内にある第一種保安物件又は第二種設備距離内にある第二種保安物件に対し厚さ一二センチメートル以上の鉄筋コンクリート造り又はこれと同等以上の強度を有する構造の障壁を設けること。
ロ 貯蔵設備又は処理設備には、第一種設備距離内にある第一種保安物件又は第二種設備距離内にある第二種保安物件に対し厚さ一二センチメートル以上の鉄筋コンクリート造り又はこれと同等以上の強度を有する構造の障壁を設けること。
ハ 貯蔵設備又は処理設備には、水噴霧装置又はこれと同等以上の防火上及び消火上有効な能力を有する設備を設けること。