国住街第一一〇号
平成一四年一二月二七日

各都道府県知事あて

住宅局長通知


建築基準法等の一部を改正する法律の一部の施行について


建築基準法等の一部を改正する法律(平成一四年法律第八五号。シックハウス対策のための規制の導入に関する部分を除く。以下「改正法」という。)、建築基準法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成一四年政令第三三一号。以下「改正政令」という。)及び建築基準法施行規則等の一部を改正する省令(平成一四年国土交通省令第一二〇号。以下「改正省令」という。)は、いずれも、平成一五年一月一日から施行されることとなった。
今回の改正法、改正政令及び改正省令のうち建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)に関する部分(シックハウス対策のための規制の導入に関する部分を除く。)の運用について、地方自治法第二四五条の四第一項の規定に基づく技術的助言として左記のとおり通知する。
貴職におかれては、貴管内の特定行政庁及び指定確認検査機関(国土交通大臣並びに北海道開発局長、地方整備局長及び沖縄総合事務局長指定のものを除く。)に対しても、この旨周知方お願いする。

第1 用途地域における前面道路幅員による容積率制限、道路高さ制限等の多様化

1 前面道路幅員による容積率制限の選択肢の充実等(改正後の建築基準法(以下「法」という。)第五二条関係)

近年、建築物の利用状況の変化や経済社会情勢の変化を背景として、従来の選択肢の枠内では市街地環境の確保、土地の高度利用の要請等地域の特性に十分対応できない事例がみられることに鑑み、用途地域内における各地域の特性を適切に反映した多様な容積率を指定できるよう、用途地域に関する都市計画で指定する容積率の数値を追加するとともに、以下のとおり前面道路幅員に乗ずる数値を追加することとした。
(1) 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域及び準住居地域において、特定行政庁が都道府県都市計画審議会(市町村都市計画審議会が置かれている市町村の長たる特定行政庁が行う場合にあっては、当該市町村都市計画審議会。以下同じ。)の議を経て指定する区域内の建築物について、建築物の前面道路の幅員が一二m未満である場合における当該前面道路の幅員のメートルの数値に乗じる数値を、〇・六とすることができることとした。
(2) 近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域及び工業専用地域において、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内の建築物について、建築物の前面道路の幅員が一二m未満である場合における当該前面道路の幅員のメートルの数値に乗じる数値を、〇・八とすることができることとした。
これら数値の適用に当たっては、都市計画担当部局と連携を図り、交通、安全、衛生等の居住環境の悪化が生じないよう十分配慮しつつ、制度の適切な運用に努められたい。

2 建ぺい率に係る用途地域に関する都市計画で指定する数値の追加等(法第五三条関係)

近年、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域及び商業地域を除く用途地域で、建築物の利用状況の変化や経済社会情勢の変化を背景として、従来の選択肢の枠内では防災機能の向上、市街地環境の確保、土地の高度利用の要請等地域の特性に十分対応できない事例がみられることに鑑み、用途地域内における各地域の特性を適切に反映した多様な建ぺい率を指定できるよう、建ぺい率に係る都市計画で指定する数値を追加し、これにより近隣商業地域及び商業地域外の区域でも建ぺい率の数値として八〇%を指定することができることとしたことに伴い、以下の措置を講じることとした。
具体的には、これらの区域内にあり、かつ、防火地域内にある耐火建築物については、従来の近隣商業地域及び商業地域内にあり、かつ、防火地域内にある耐火建築物と同様に、建ぺい率制限の適用除外措置を講じることとするとともに(法第五三条第五項第一号)、法第五三条第三項第一号に規定する建ぺい率の緩和措置についても併せて見直した。

3 最低敷地面積制限を定めることができる用途地域の拡充(法第五三条の二関係)

これまで、用途地域に関する都市計画において最低敷地面積の制限を適用することができる地域は第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域に限定してきたところであるが、第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域以外の地域においても敷地の細分割に伴い、市街地環境上問題を生じていることに鑑み、最低敷地面積の制限を全ての用途地域において適用できることとした。
最低敷地面積として定めることができる規模の上限は、二〇〇m2とすることとした。また、当該制限の適用を除外する建築物の敷地として、従来の公益上必要な建築物及び敷地の周囲に広い空地を有する建築物であって、市街地の環境を害するおそれがないと認めて許可したもののほか、建ぺい率制限の適用を除外する建築物及び自動車車庫、小売店舗、物置等、公益上必要とは言えない用途に供する小規模な建築物であって、その用途上又は構造上、敷地面積を小規模とすることがやむを得ないと特定行政庁が認めて建築審査会の同意を得て許可したものを位置付けることとした。
本制度の運用に当たっては、以下の点に留意の上、制度の適切な運用に努められたい。
(1) 法第五三条の二第三項柱書に規定する「現に存する所有権その他の権利に基づいて建築物の敷地として使用するならば同項の規定に適合しないこととなる土地」については、同項第一号又は第二号に該当する場合を除き、その全部を一の敷地として使用する場合においては同条第一項の規定は適用しないこととしているものであり、都市計画の決定又は変更の時点以後における相続、売買等による権利の主体の変更が直ちに同条第一項の適用除外に影響を及ぼすものではないこと。

なお、改正後の建築基準法施行規則(以下「規則」という。)第一条の三第二項において、当該土地に存する権利関係を明らかにするために建築確認申請書に併せて必要な書面を提出することとしており、不動産登記簿謄本、売買契約書の写し等の提出を求めることにより、土地に係る権利関係の適切な把握に努められたい。

(2) 敷地面積の最低限度規制を実施する地区内においては、敷地の二重使用等を防止するため、必要に応じ、建築物に関する台帳の整備等の措置を講ずることが望ましい。
(3) 法第五三条の二第一項第一号の「その他これらに類する建築物で公益上必要なもの」には、以下に掲げる建築物が含まれるものであること。

1) 郵便局
2) 電気事業法(昭和三九年法律第一七〇号)第二条第五項に規定する電気事業の用に供する同条第七項に規定する電気工作物
3) ガス事業法(昭和二九年法律第五一号)第二条第七項に規定するガス工作物
4) 熱供給事業法(昭和四七年法律第八八号)第二条第四項に規定する熱供給施設
5) 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和四二年法律第一四九号)に規定する供給設備

4 道路高さ制限及び隣地高さ制限に係る制限内容の多様化(法第五六条関係)

法第五六条第七項第一号に掲げる規定による高さの制限(以下「道路高さ制限」という。)及び同項第二号に掲げる規定による高さの制限(以下「隣地高さ制限」という。)に係る制限内容は、これまで用途地域ごとに一律に定められてきたところであるが、土地の高度利用の要請や、同一の用途地域内における多様な市街地の出現等を背景として、従来の数値のみでは地域の特性に十分対応できない事例がみられることに鑑み、用途地域内における各地域の特性を適切に反映した多様な高さ制限ができるよう、道路高さ制限及び隣地高さ制限の制限内容を選択できることとした。
(1) 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域及び準住居地域における道路高さ制限及び隣地高さ制限に係る制限内容の数値の多様化(法第五六条、別表第三)

1)第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域で用途地域に関する都市計画において指定された容積率(以下「指定容積率」という。)が四〇〇%若しくは五〇〇%の区域又は第一種住居地域、第二種住居地域若しくは準住居地域で、特定行政庁が都市計画審議会の議を経て指定する区域内において、道路高さ制限の勾配を一・二五から一・五へ変更できることとした。(法別表第三の備考三)
2) 第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域で指定容積率が四〇〇%若しくは五〇〇%の区域又は第一種住居地域、第二種住居地域又は準住居地域で、特定行政庁が都市計画審議会の議を経て指定する区域内において、隣地高さ制限の勾配と立上げ高さを、隣地高さ制限の勾配が一・二五かつ立上げ高さが二〇mとされている地域について、二・五かつ三一mへ変更できることとした。(法第五六条第一項第二号イ)

(2) 近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域若しくは工業専用地域内の建築物又は高層住居誘導地区内の建築物(その住宅の用途に供する部分の床面積の合計がその延べ面積の三分の二以上であるものに限る。)で特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内にあるものに係る隣地高さ制限の適用除外(法第五六条第一項第二号柱書)
(3) 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域等における道路高さ制限の適用距離の見直し(法別表第三(は)欄)

1) 第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域における指定容積率四〇〇%及び五〇〇%並びに第一種住居地域、第二種住居地域及び準住居地域における指定容積率五〇〇%の追加に伴い、これら指定容積率に応じた道路高さ制限の適用距離(法第五六条第一項第一号に規定する前面道路の反対側の境界線からの水平距離をいう。以下同じ。)の数値を追加した。(法別表第三の(は)欄一の項)
2) 商業地域における指定容積率一一〇〇%、一二〇〇%及び一三〇〇%の追加に伴い、これら指定容積率に応じた道路高さ制限の適用距離の数値を追加した。(法別表第三の(は)欄二の項)
3) 準工業地域における指定容積率五〇〇%の追加に伴い、これら指定容積率に応じた道路高さ制限の適用距離の数値を追加した。(法別表第三の(は)欄三の項)
4) (1)1)に記した、第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域で指定容積率が四〇〇%若しくは五〇〇%の区域又は第一種住居地域、第二種住居地域若しくは準住居地域で、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内における、道路高さ制限の勾配の変更に伴い、適用距離の数値を変更した。(法別表第三の備考三)

こうした趣旨を踏まえ、交通、安全、衛生等の居住環境の悪化が生じないよう十分配慮しつつ、制度の適切な運用に努められたい。

5 日影規制に係る日影測定面の高さの数値の多様化(法第五六条の二関係)

近年、都心地域及びその周辺地域における土地利用の混在・複合化、建築物単体での用途混在・高層化等が進行しており、都心居住の推進等の視点からも市街地内での住宅の多様な立地状況に対応した居住環境の確保を図る必要があることを踏まえ、日影規制に係る日影測定面の高さを追加し、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域及び準工業地域での日影測定面については、六・五mを選択して条例で指定できることとした。この数値は、建築物の低層部が非住宅用途である区域への適用が想定されている。当該数値を指定するに当たっては、市街地内での住宅の立地状況等を総合的に勘案しつつ、良好な環境の確保の目的を達成できるよう、制度の適切な運用に努められたい。
なお、経過措置として、改正法による改正前の建築基準法(以下「旧建築基準法」という。)別表第四(い)欄の二の項又は三の項に掲げる地域で改正法の施行の際現に旧建築基準法第五六条の二第一項の規定により条例で指定されている区域については、改正法の施行の日以後地方公共団体が法第五六条の二第一項の規定に基づき条例で法別表第四(は)欄の二の項又は三の項に掲げる平均地盤面からの高さを指定するまでの間は、当該平均地盤面からの高さが四mに指定されたものとみなすこととされているので、留意されたい。

第2 混在型の用途地域における住宅に係る容積率の緩和制度の導入(法第五二条第七項、改正後の建築基準法施行令(昭和二五年政令三三八号。以下「令」という。)第一三五条の一四、第一三五条の一五関係)

混在型の用途地域におけるその全部又は一部を住宅の用途に供する建築物のうち、その敷地内に一定の空地を有し、かつ、その敷地面積が一定規模以上であるものについて、建築確認の手続により容積率の割増を行えることとした。
具体的には、以下の(1)及び(2)の条件に該当する、全部又は一部を住宅の用途に供する建築物について、指定容積率の一・五倍以下で、かつ、延べ面積に占める住宅の床面積の割合に応じて政令で定める方法により算出した数値(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内では、指定容積率から当該算出した数値までの範囲内で特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て別に定めた数値)を指定容積率の数値とみなして法第五二条第一項及び第三項から第六項までの規定を適用することとした。(法第五二条第七項本文)
ただし、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入されない住宅の地下室を有する場合は、当該部分の床面積を含んだ容積率が指定容積率の一・五倍以下でなければならないこととした。(法第五二条第七項ただし書)

(1) 第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域若しくは準工業地域(高層住居誘導地区及び特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。)又は商業地域(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。)内にあること。(法第五二条第七項第一号)
(2) 敷地内に政令で定める規模以上の空地(道路に接して有効な部分が政令で定める規模以上であるものに限る。)を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上であること。(法第五二条第七項第二号)

なお、法第五二条第七項第一号の特定行政庁が指定する区域としては、今後、法第五二条第七項が適用されない用途地域へ都市計画を変更することが予定される区域等が考えられる。
これらの規定における政令で定める数値等については、以下の一から四までのとおり規定されている。
1 法第五二条第七項に規定する建築物の容積率の上限の数値の算出方法(令第一三五条の一四)

Vr=3Vc/3−R
(Vr:法第52条第7項の政令で定める方法により算出した数値)
(Vc:指定容積率の数値)
(R :建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計のその延べ面積に対する割合)

2 法第五二条第七項第二号の政令で定める空地の規模(令第一三五条の一五第一項)

法第五二条第七項第二号の政令で定める空地の規模は、法第五三条の規定による建ぺい率の最高限度(以下「建ぺい率限度」という。)に応じて、当該建築物の敷地面積に以下の表(ろ)欄に掲げる数値を乗じて得た面積とする。
ただし、地方公共団体は、道路、公園等の公共施設が不足し、また建築物が相当程度立て込むことにより市街地全体の空地が比較的少ない場合等、土地利用の状況等を考慮し、条例で、同表(は)欄に掲げる数値の範囲内で、当該建築物の敷地面積に乗ずべき数値を別に定めることができる。
なお、建築物が建ぺい率に関する制限を受ける地域又は区域の二以上にわたる場合の取扱いを定めた法第五三条第二項の規定が適用される場合にあっては、当該規定に基づき算定した数値が建ぺい率限度となる。

(い)
(ろ)
(は)
建ぺい率限度が四五%以下の場合
一〇〇%−建ぺい率限度+一五%
一〇〇%−建ぺい率限度+一五%を超え、八五%以下
建ぺい率限度が四五%を超え、五〇%以下の場合
 
一〇〇%−建ぺい率限度+一五%を超え、一〇〇%−建ぺい率限度+三〇%以下
建ぺい率限度が五〇%を超え、五五%以下の場合
六五%
 
六五%を超え、一〇〇%−建ぺい率限度+三〇%以下
建ぺい率限度が五五%を超える場合
一〇〇%−建ぺい率限度+二〇%
一〇〇%−建ぺい率限度+二〇%を超え、一〇〇%−建ぺい率限度+三〇%以下
建ぺい率限度が定められていない場合
二〇%
二〇%を超え、三〇%以下

3 法第五二条第七項第二号に規定する道路に接して有効な空地の部分の規模(令第一三五条の一五第二項)

法第五二条第七項第二号に規定する道路に接して有効な空地の部分の規模は、2の空地の規模に二分の一を乗じて得たものとする。この道路に接して有効な空地の部分とは、以下の(1)、(2)及び(3)に該当するものをいう。
(1) 道路に面していること。
(2) 敷地の奥行の二分の一の範囲内にあること。
(3) 道路境界線から二m以上、隣地境界線から四m以上の幅を有すること。
ただし、建築物と道路との間に工作物が設置され道路からの見通しが妨げられる場合等工作物の設置により道路に接して有効な空地の部分の有効性が損なわれる場合は、これに該当しない。
なお、法第五二条第七項が適用される建築物については、規則第一条の三第一項の表一の(ほ)項の規定により、建築確認申請書に添付する図書に、敷地の接する道路、道路に接して有効な空地の部分及び敷地内における工作物の位置等を明示することとしており、当該図書により道路に接して有効な空地の部分の適切な把握に努められたい。

4 法第五二条第七項の政令で定める敷地の規模(令第一三五条の一五第三項)

(1) 法第五二条第七項の政令で定める敷地の規模は、以下の数値であること。ただし、地方公共団体は、街区の形状、宅地の規模その他土地の状況によりこれらの数値によることが不適当であると認める場合においては、条例で、以下のかっこ書の数値の範囲内でその規模を別に定めることができること。

1) 第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域又は準工業地域(高層住居誘導地区及び特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。):二、〇〇〇m2(五〇〇m2以上四、〇〇〇m2未満)
2) 近隣商業地域(高層住居誘導地区及び特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。)又は商業地域(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域を除く。):一、〇〇〇m2(五〇〇m2以上二、〇〇〇m2未満)

(2) 建築物の敷地が(1)1)の地域又は(1)2)の地域とこれらの地域として指定されていない区域にわたる場合においては、その全部について、これらの地域に存するものとして(1)の規定を適用することとする。
(3) 建築物の敷地が(1)1)の地域と(1)2)の地域にわたる場合においては、その全部について、敷地の属する面積が大きい方の地域に存するものとして(1)の規定を適用することとする。

5 法第五二条第七項の運用に当たっての留意事項

本制度の運用に当たっては、以下の点に留意の上、交通、安全、衛生等の居住環境の悪化が生じないよう十分配慮されたい。
(1) 本規定が適用される建築物のうち、前面道路の幅員が一二m未満である建築物の容積率は、別途、法第五二条第二項の規定により制限されるものであること。
(2) 建築物の敷地が指定容積率の異なる用途地域にわたる場合等割増後の容積率の異なる区域にわたる場合においては、各々の地域等に属する敷地の部分の容積率を敷地の部分の面積に応じて按分して適用すること。
(3) 建築物の敷地が本規定による特例が適用される地域と適用されない区域にわたる場合においては、本規定が適用される地域に属する敷地の部分については本規定による特例が適用され、本規定が適用されない区域に属する敷地の部分については本規定による特例が適用されないものとして、各々の地域等に属する敷地の部分の容積率を敷地の部分の面積に応じて按分して適用すること。
(4) (2)及び(3)の場合における空地の規模の算定に係る建ぺい率限度については、当該敷地全体に係る法第五三条の規定による建ぺい率限度であること。また、これらの場合における敷地規模については、それぞれ4(3)及び(2)が適用されること。
(5) 他の制度との併用について

1) 令第二条第一項第四号に規定する自動車車庫等の用途に供する部分の床面積を延べ面積に不算入とする措置及び法第五二条第五項に規定する共同住宅の共用の廊下又は階段の用に供する部分の床面積を延べ面積に不算入とする措置は、本規定による特例と併せて適用されること。また、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入されない住宅の地下室を有する場合には、第二柱書中のただし書のとおりであること。
2) 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成六年法律第四四号)第一二条の規定による特定施設の容積率制限への不算入措置については、本規定と併せて適用することが可能であること。
3) 高層住居誘導地区は、本規定による一定の住宅系建築物に係る容積率制限の特例の対象となる地域から除かれており、また、用途別容積型地区計画の区域における住宅系建築物に係る容積率制限の特例は、住宅用途に係る容積率割増の考え方が本規定と同様であることから、本規定の特例とこれらの特例を併用して住宅に係る容積率を割増することはできないこと。
4) 高度利用地区内においては、法第五九条第一項の規定において高度利用地区に関する都市計画において定められた内容に適合することとされており、高度利用地区に関する都市計画の容積率の最高限度の数値をさらに割増することはできないこと。また、都市再生特別地区内においても同様の取扱いであること。
5) 市街地の整備改善に資するため、必要に応じ、本規定による特例と、総合設計制度(法第五九条の二第一項の規定による総合設計制度をいう。以下同じ。)、一団地の総合的設計制度(第八六条第一項の規定による一団地の総合的設計制度をいう。以下同じ。)、連担建築物設計制度(法第八六条第二項の規定による連担建築物設計制度をいう。以下同じ。)、一団地型総合設計制度(法第八六条第三項の規定による一団地型総合設計制度をいう。以下同じ。)又は連担建築物総合設計制度(法第八六条第四項の規定による連担建築物総合設計制度をいう。以下同じ。)を併せて適用することが可能であること。ただし、総合設計制度については、その運用の考え方が本規定と同様の場合もあることから、本規定の考え方と重複しない範囲において併せて適用することが可能であること。

6 法第五二条第七項の規定が適用される住宅

(1) 法第五二条第七項の規定が適用される住宅に関しては、その構造、設備等により住宅の用途に供される目的で建築されていることについて、建築確認、完了検査等に当たり適切に審査等を行うこと。
(2) 法第五二条第七項の規定が適用される住宅には、事務所等を兼ねるいわゆる兼用住宅は含まれないものであること。
(3) 住宅の用途に供する部分の床面積の合計の延べ面積に対する割合を算出する場合にあっては、当該延べ面積には、住宅の用途に供する地階の部分の床面積、共同住宅の共用の廊下及び階段の用に供する部分の床面積並びに令第二条第一項第四号に規定する専ら自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設(以下「自動車車庫等」という。)の床面積も含まれること。
(4) 法第五二条第七項の規定が適用される住宅の用途に供する部分の床面積の合計のその延べ面積に対する割合については、原則として住宅の用途に供する部分(以下「住宅部分」という。)の床面積の合計をもとに算出することとなるが、住宅の用途に供する部分とその他の用途に供する部分が複合している建築物に係る住宅部分の床面積の算定に当たっては、原則として以下の取扱いとすること。

1) 住戸の用に供されている専用部分は、住宅部分として取り扱うこと。
2) 共用部分のうち、専ら住戸の利用のために供されている部分は、住宅部分に含めて取り扱うこと。例えば、一定の階の専用部分の全てが住宅の用途に供されている場合の当該階の廊下、階段等の部分、住宅の入居者のための自動車車庫等の用途に供されている部分等は、住宅部分として取り扱うこと。
3) 共用部分のうち、専ら住戸以外の利用のために供されている部分は、住宅部分に含めないこと。
4) 2)及び3)以外の共用部分については、その床面積の合計に、当該建築物における住戸の用に供されている専用部分及び専ら住戸の利用のために供されている共用部分(以下「住戸の用に供されている専用部分等」という。)の床面積の合計と住戸以外の用に供されている専用部分及び専ら住戸以外の利用のために供されている共用部分の床面積との合計のうち住戸の用に供されている専用部分等の床面積の合計が占める割合を乗じて得た面積を共用廊下等の部分の床面積に含めて取り扱うこと。

7 住宅部分に係る用途転用防止策等

法第五二条第七項の規定が適用される建築物については、住宅から住宅以外への用途変更による容積率制限に関する違反建築物の出現を防止するため、以下の点に留意すること。
(1) 法第五二条第七項の規定が適用される建築物については、建築確認申請書に住宅の用途に供する部分の床面積の合計を記載することとしているところである。当該建築物については、法第五二条第七項の規定の適用の前提となる住宅の用途に供する部分を特定した上で、必要に応じ建築物の概要、住宅の用途に供する部分の配置等を記載した台帳を作成することが望ましいこと。
(2) 法第五二条第七項の規定が適用される建築物については、必要に応じ、法第一二条第一項の規定に基づき特定行政庁が指定した上で、規則第五条第二項の規定により特定行政庁が定める報告事項として建築物の用途に関する事項を定めるとともに、当該建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合については、管理者)に対し、住宅の用途の現況等の状況について、定期的に特定行政庁に報告を求めることにより、その用途の現況等の状況を十分把握することが望ましい。
(3) 特定行政庁は、必要に応じ、建築主に対して、(2)の定期報告を行うべき旨を確認時に告知するとともに、当該建築物の譲渡等が行われた場合には、建築主が、当該建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合については、管理者)に対して、(2)の定期報告を行うべき旨を伝達するよう、告知することが望ましいこと。
(4) 住宅から住宅以外への用途変更等により、当該建築物について違反が発見された場合には、その是正のため、迅速かつ適切に措置命令、使用禁止等の必要な措置をとるものとすること。

8 道路に接して有効な部分に係る変更防止策等

法第五二条第七項の規定が適用される建築物の敷地内の空地については、道路に接して有効な空地の部分の変更等による容積率制限に関する違反建築物の出現を防止するため、以下の点に留意すること。
(1) 建築確認申請書に添付することとしている「法第五二条第七項第二号に規定する空地のうち道路に接して有効な部分の配置図」には、道路に接して有効な空地の部分の面積を記載することとされているが、建築確認、完了検査等においては、当該部分が道路に接して有効な空地であるか否かについて適正に審査を行うこと。また、法第五二条第七項の規定が適用される建築物の敷地内の空地については、道路に接して有効な空地の部分を特定した上で、必要に応じ、当該部分の配置等を記載した台帳を作成することが望ましいこと。
(2) 当該部分の変更等により、当該建築物について違反が発見された場合には、その是正のため、迅速かつ適切に措置命令、使用禁止等の必要な措置をとるものとすること。

第3 道路高さ制限、隣地高さ制限及び北側高さ制限と同程度以上の採光・通風等を確保する建築物に係る同制限の適用除外制度の導入(法第五六条第七項関係)

道路高さ制限、隣地高さ制限及び法第五六条第七項第三号に掲げる規定による高さの制限(以下「北側高さ制限」という。)は、市街地における採光、通風等を確保することを目的としている。この採光、通風等を以下により定義される天空率により評価し、建築しようとする建築物(以下「計画建築物」という。)における天空率が、通常の道路高さ制限、隣地高さ制限又は北側高さ制限に適合する各々の建築物における天空率以上である場合には、当該計画建築物について、それぞれ通常の高さ制限を適用しないこととした。
採光、通風等の程度の指標である天空率については、以下のとおり規定されている。

Rs=(As−Ab)/As

(Rs:天空率)
(As:想定半球(地上のある位置を中心としてその水平面上に想定する半球をいう。以下同じ.)の水平投影面積)
(Ab:建築物及びその敷地の地盤をAsと同一の想定半球に投影した投影面の水平投影面積)

天空率の算定に当たっては、以下の点に留意すること。

1) 想定半球に投影した建築物等の投影面を水平面上に垂直方向に投影させる、いわゆる正射影方式により天空率を算定すること。
2) 天空率の算定位置が建築物の敷地の地盤面よりも低い場合には、建築物の敷地の地盤を含めて天空率を算定すること。

1 道路高さ制限を適用しない建築物の基準等

(1) 道路高さ制限を適用しない建築物の基準(令第一三五条の六関係)

道路高さ制限に適合する建築物(以下「道路高さ制限適合建築物」という。)の天空率及び計画建築物の天空率を、法第五六条第七項第一号及び令第一三五条の九に定める位置においてそれぞれ算定・比較し、当該位置の全てにおいて計画建築物の天空率が道路高さ制限適合建築物の天空率以上となること。
また、計画建築物の前面道路の境界線からの後退距離(法第五六条第二項に規定する後退距離をいう。以下同じ。)は、道路高さ制限適合建築物の前面道路の境界線からの後退距離以上であること。
本基準の適用の詳細等については、以下のとおりであること。
1) 計画建築物及び道路高さ制限適合建築物の天空率については、それぞれ道路高さ制限の適用距離の範囲内の部分に限って算定されるものであること。この際、計画建築物及び道路高さ制限適合建築物がセットバックしている場合には、当該建築物に対する道路高さ制限の適用距離は、法第五六条第二項及び第四項の規定による適用距離となること。
2) 道路高さ制限適合建築物の天空率については、令第二条第一項第六号ロの規定により建築物の高さに算入しないとされている階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓等の水平投影面積の合計が建築面積の八分の一以内であって、かつその部分の高さが一二m以内であるもの(以下「階段室等」という。)を除いた部分について算定することとしているが、計画建築物の天空率についてはこれらを含めて算定するものであること。
3) 道路高さ制限適合建築物の天空率については、令第二条第一項第六号ハの規定により建築物の高さに算入しないとされている棟飾、防火壁の屋上突出部等を除いた部分について算定することとしているが、2)と同様に、計画建築物の天空率についてはこれらを含めて算定するものであること。
4) 建築物の敷地が、道路高さ制限による高さの限度として水平距離に乗ずべき数値(以下「道路制限勾配」という。)が異なる地域、地区又は区域(以下「道路制限勾配が異なる地域等」という。)にわたる場合には、道路制限勾配が異なる地域等ごとの計画建築物及び道路高さ制限適合建築物の部分について、それぞれ天空率を算定・比較すること。

具体的には、以下の場合において各々道路制限勾配が異なる地域等ごとに区分し、それぞれ天空率を算定・比較すること。
イ 法別表第三(に)欄に掲げる数値が異なる地域、地区又は区域にわたる場合
ロ 法第五六条第三項又は第四項の規定により水平距離に乗ずべき数値が異なる区域が存する場合
なお、用途地域等が異なっていても、道路制限勾配が同一である場合には敷地を区分して算定・比較する必要はないものであること。

5) 建築物の前面道路が二以上ある場合には、令第一三二条又は令第一三四条第二項の規定により区分される敷地の区域ごとの計画建築物及び道路高さ制限適合建築物の部分で天空率を算定・比較すること。この場合に、各々の前面道路ごとにその面する方向における道路高さ制限適合建築物を想定すること。また、一部の前面道路についてのみ道路高さ制限を適用除外とすることはできないこと。

(2) 天空率の算定位置(法第五六条第七項第一号、令第一三五条の九関係)

天空率の算定位置は、前面道路の路面の中心の高さにある、計画建築物の敷地(道路高さ制限が適用される範囲内の部分に限る。)の前面道路に面する部分の両端から最も近い当該前面道路の反対側の境界線上の位置であり、当該位置の間の境界線の延長が当該前面道路の幅員の二分の一を超える場合にあっては、当該位置の間の境界線上に当該前面道路の幅員の二分の一以内の間隔で均等に配置した位置であることとした。
天空率の算定位置の配置については、以下の点に留意すること。
1) 計画建築物が前面道路の境界線から後退して計画される場合においても、天空率の算定位置は当該境界線上であること。
2) 建築物の敷地が道路制限勾配の異なる地域等にわたる場合においては、建築物の敷地を道路制限勾配の異なる地域等ごとの部分に分け、当該部分について令第一三五条の九第一項の規定を適用して、各々天空率の算定位置を定めること。
3) 道路高さ制限において前面道路が二以上ある建築物についての天空率の算定位置は、(1)5)の区域ごとに、建築物の敷地の当該区域について令第一三五条の九第一項の規定を適用すること。なお、この場合の天空率の算定位置は当該前面道路の反対側の境界線上に配置するのであって、令第一三二条又は第一三四条の規定によりみなされる前面道路の反対側の境界線上に配置するのではないこと。
4) 建築物の敷地の地盤面が前面道路の路面の中心の高さより一m以上高い場合においては、天空率の算定位置の高さは、当該高低差から一mを減じたものの二分の一だけ高い位置にあるものとみなすこと。また、令第一三五条の二第二項の規則で前面道路の位置の高さが別に定められている場合にあっては、当該高さを天空率の算定位置の高さとみなすこと。

2 隣地高さ制限を適用しない建築物の基準等

(1) 隣地高さ制限を適用しない建築物の基準(令第一三五条の七関係)

隣地高さ制限に適合する建築物(以下「隣地高さ制限適合建築物」という。)の天空率及び計画建築物の天空率を、法第五六条第七項第二号及び令第一三五条の一〇に定める位置においてそれぞれ算定・比較し、当該位置の全てにおいて計画建築物の天空率が隣地高さ制限適合建築物の天空率以上となること。
また、計画建築物(隣地高さ制限の立上げ高さを超える部分に限る。)の隣地境界線からの後退距離(法第五六条第一項第二号に規定する水平距離のうち最小のものに相当する距離をいう。以下同じ。)は、隣地高さ制限適合建築物(隣地高さ制限の立上げ高さを超える部分に限る。)の当該基準線からの後退距離以上とすること。
本基準の適用の詳細等については、以下のとおりであること。
1) 計画建築物及び隣地高さ制限適合建築物の天空率については、それぞれ法第五六条第一項第二号かっこ書の区域外の部分に限って算定・比較するものであること。
2) 隣地高さ制限適合建築物の天空率については、1(1)2)及び3)と同様の取扱いであること。
3) 隣地高さ制限適合建築物を想定する際には、当該建築物の地盤面を計画建築物の地盤面と同一となるように想定すること。さらに、計画建築物が周囲の地面と接する位置の高低差が三mを超える場合には、計画建築物が周囲の地面と接する位置の高低差が三m以内となるようにその敷地を区分した区域(以下「高低差区分区域」という。)を想定した上で、高低差区分区域ごとの隣地高さ制限適合建築物の部分について、周囲の地面と接する位置の高低差が三m以内であり、かつ高低差区分区域の地盤面と同一となるよう想定すること。
4) 法第五六条第一項第二号に掲げる隣地境界線からの水平距離に乗ずべき数値(以下「隣地制限勾配」という。)が異なる地域、地区又は区域(以下「隣地制限勾配が異なる地域等」という。)にわたる場合には、隣地制限勾配が異なる地域等ごとの計画建築物及び隣地高さ制限適合建築物の部分について、それぞれ天空率を算定・比較すること。
5) 計画建築物が周囲の地面と接する位置の高低差が三mを超える場合には、高低差区分区域ごとの計画建築物及び高さ制限適合建築物の部分について天空率を算定・比較すること。
6) 隣地境界線が二以上ある場合には、各々の隣地境界線ごとにその面する方向における隣地高さ制限適合建築物を想定すること。この場合に、一部の隣地境界線についてのみ隣地高さ制限を適用除外とすることはできないこと。

(2) 天空率の算定位置(法第五六条第七項第二号、令第一三五条の一〇関係)

天空率の算定位置は、建築物の敷地の地盤面の高さにある、隣地制限勾配が一・二五とされている区域内の建築物にあっては隣地境界線から一六mだけ外側の線の、隣地制限勾配が二・五とされている区域内の建築物にあっては隣地境界線から一二・四mだけ外側の線の、計画建築物(隣地高さ制限が適用される地域、地区又は区域内にある部分に限る。)の敷地に面する部分の両端上の位置であり、当該位置の間の法第五六条第七項第二号に規定する外側の線(以下「隣地基準線」という。)の延長が、隣地制限勾配が一・二五とされている場合には八m又は隣地制限勾配が二・五とされている場合には六・二mを超える場合にあっては、当該位置の間の隣地基準線上にそれぞれ八m又は六・二m以内の間隔で均等に配置した位置であることとした。
天空率の算定位置の配置については、以下の点に留意すること。
1) 隣地制限勾配が一・二五とされている建築物で高さが二〇mを超える部分又は隣地制限勾配が二・五とされている建築物で高さが三一mを超える部分が隣地境界線から後退して計画される場合においても、天空率の算定位置は隣地基準線上であること。
2) 建築物の敷地が隣地制限勾配が異なる地域等にわたる場合には、建築物の敷地を隣地制限勾配の異なる地域等ごとの部分に分け、当該部分について令第一三五条の一〇第一項の規定を適用して、各々天空率の算定位置を配置すること。
3) 令第一三五条の三第一項第一号の規定が適用される場合の天空率の算定位置は、隣地基準線上に配置することとされており、同号の規定によりみなされる隣地境界線の一六m又は一二・四mだけ外側の線上に配置するのではないこと。
4) 計画建築物が周囲の地面と接する位置の高低差が三mを超える場合においては、高低差区分区域ごとの敷地の部分に面する基準線上に天空率の算定位置を配置すること。
5) 建築物の敷地の地盤面が隣地の地盤面より一m以上低い場合においては、天空率の算定位置の高さは、当該高低差から一mを減じたものの二分の一だけ高い位置にあるものとみなすこと。また、令第一三五条の三第二項の規則で建築物の敷地の地盤面の位置の高さが別に定められている場合にあっては、当該高さを天空率の算定位置の高さとみなすこと。

3 北側道路高さ制限を適用しない建築物の基準等

(1) 北側高さ制限を適用しない建築物の基準(令第一三五条の八関係)

北側高さ制限に適合する建築物(以下「北側高さ制限適合建築物」という。)の天空率及び計画建築物の天空率を、法第五六条第七項第三号及び令第一三五条の一一に定める位置においてそれぞれ算定・比較し、当該位置の全てにおいて計画建築物の天空率が北側高さ制限適合建築物の天空率以上となること。
この場合、北側高さ制限は真北方向に適用されるものであることから、隣地境界線へ面する方向に高さが制限される建築物は必ずしも北側高さ制限適合建築物とはならず、二以上の隣地境界線から制限されることもあり得る。
本基準の適用の詳細等については、以下のとおりであること。
1) 計画建築物及び北側高さ制限適合建築物の天空率については、北側高さ制限が適用される部分に限って算定・比較するものであること。
2) 北側高さ制限適合建築物の天空率については、1(1)4)と同様の取扱いであること。
3) 北側高さ制限適合建築物を想定する際には、2(1)3)及び5)と同様の取扱いであること。
4) 法第五六条第一項第三号に掲げる高さの限度として加える高さ(以下「北側立上げ高さ」という。)が異なる地域にわたる場合には、北側立上げ高さが異なる地域等ごとの計画建築物及び北側高さ制限適合建築物の部分について、それぞれ天空率を算定・比較すること。

(2) 天空率の算定位置(法第五六条第七項第三号、令第一三五条の一一関係)

天空率の算定位置は、計画建築物の敷地の地盤面の高さにある、第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物にあっては敷地境界線から真北方向へ四mだけ外側の線、第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域内の建築物にあっては敷地境界線から真北方向へ八mだけ外側の線の、計画建築物の敷地の真北に面する部分の両端上の位置であり、隣地境界線と法第五六条第七項第三号に規定する外側の線(以下「北側基準線」という。)の真北方向への水平距離が四m若しくは八mの場合においては、当該位置の間の北側基準線上に、それぞれ一m以内又は二m以内の間隔で均等に配置した位置であることとした。
算定位置の配置については、以下の点に留意すること。
1) 北側立上げ高さが異なる地域にわたる場合には、建築物の敷地を北側立上げ高さの異なる地域ごとの建築物の敷地の部分に分け、当該部分について令第一三五条の一一第一項の規定を適用して、各々天空率の算定位置を配置すること。
2) 令第一三五条の四第一項第一号の規定が適用される場合の天空率の算定位置は、北側基準線上に配置することとされており、同号の規定によりみなされる隣地境界線の真北方向への水平距離が四m又は八mだけ外側の線上に配置するのではないこと。
3) 計画建築物が周囲の地面と接する位置の高低差が三mを超える場合においては、高低差区分区域ごとの敷地の部分の真北方向へ面する北側基準線上に天空率の算定位置を配置すること。
4) 建築物の敷地の地盤面が隣地の地盤面より一m以上低い場合においては、天空率の算定位置の高さは、当該高低差から一mを減じたものの二分の一だけ高い位置にあるものとみなすこと。また、令第一三五条の四第二項の規則で建築物の敷地の地盤面の位置の高さが別に定められている場合にあっては、当該高さを天空率の算定位置の高さとみなすこと。

4 その他の留意事項

(1) 道路高さ制限、隣地高さ制限及び北側高さ制限は、法第五六条第七項の規定によりそれぞれ別個に適用除外することができること。
(2) 計画建築物及び高さ制限適合建築物の天空率の算定に当たっては、コンピュータの活用により迅速に審査できるものであるため、これらの活用により適切な審査体制の構築を図ることが考えられる。

第4 一定の複数建築物に対する制限の特例の拡充(法第八六条から第八六条の五まで、令第一三六条の一二、規則第一〇条の一六から第一〇条の二一まで関係)

総合設計制度(法第五九条の二第一項)と一団地の総合的設計制度(法第八六条第一項)又は連担建築物設計制度(法第八六条第二項)は、これまでも併用されてきたところであるが、これらの制度がより使いやすくなるよう、総合設計制度の許可と一団地の総合的設計制度又は連担建築物設計制度の認定を、一の手続で行うことを可能とした。
具体的には、以下のとおり規定した。
(1) 総合設計制度と一団地の総合的設計制度又は連担建築物設計制度に係る審査手続が、一の許可の手続で可能となるように規定を整備した。
(2) 特定行政庁は、許可をする場合においては、あらかじめ、建築審査会の同意を得なければならない。
(3) 許可(法第八六条の二第三項の規定に基づき公告許可対象区域内において許可を申請する場合を除く。)を申請しようとする者は、対象区域内の土地の所有権又は借地権を有する者の同意を得なければならない。
(4) 法第八六条第三項の規定による一団地型総合設計制度においては、地区整備計画等(地区整備計画、特定建築物地区整備計画、防災街区整備地区整備計画又は沿道地区整備計画。以下「地区整備計画等」という。)で地区施設等の配置及び規模が定められること等により、一団地内の複数の建築物の建築を工区を分けて行うことができる。
(5) 特定行政庁は、申請を許可したときは、遅滞なく対象区域等を公告するとともに、対象区域等を表示した図書を一般の縦覧に供さなければならない。
(6) 許可は、(5)の公告によって効果を生じる。
(7) 一団地の総合的設計制度若しくは連担建築物設計制度の認定の公告又は(5)の公告がなされた対象区域の全部を含む土地の区画内の各建築物について、許可の申請があった場合で、特定行政庁が当該申請に係る許可をしたときは、従前の認定又は許可は、新たな公告があった日から、効力を失う。
(8) 本特例の運用に当たっての留意事項

本制度の運用に当たっては、以下の点に留意の上、本制度の適切な活用に努められたい。
1) 法第八六条の二第三項において、公告許可対象区域内において同一敷地内許可建築物以外の建築物を建築する際に特定行政庁の許可を受ける手続を設けた。この場合、公告許可対象区域内にある土地について所有権又は借地権を有する者の同意は不要であること。
2) 本制度の適用にあたり前提となる敷地の規模及び敷地内の空地の規模は、同一敷地内にあるものとみなされる一定の土地の区域全体に対して適用するものであること。また、これらに係る基準は、総合設計制度における基準である令第一三六条を準用していること(令第一三六条の一二)。

第6 地区計画制度の見直し

1 用途制限緩和制度の地区計画等への導入(法第六八条の二第五項関係)

これまで、地区計画、防災街区整備地区計画及び沿道地区計画(以下「地区計画等」という。)を策定する地区の特性に応じて、市町村の条例で、建築物の用途に関する制限を強化することしかできなかったが、今回、特別用途地区内における条例による用途制限の緩和と同様、地区計画等において、用途地域における用途の制限を補完し、当該地区計画等の区域の特性にふさわしい土地利用の増進等の目的を達成するため必要と認める場合においては、市町村が、国土交通大臣の承認を得て、法第六八条の二第一項の規定に基づく条例を定めることにより、用途制限を緩和することができることとした。当該承認事務における国土交通大臣の権限については、地方整備局長、北海道開発局長及び沖縄総合事務局長へ委任されている。

2 再開発地区計画・住宅地高度利用地区計画の地区計画への統合(法第六八条の三、令第一三六条の二の五関係)

今回、地区計画の自由度を高め、よりその活用が図られるよう、再開発地区計画及び住宅地高度利用地区計画を地区計画の再開発等促進区として統合した。
具体的には、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進とを図るため、地区計画において一体的かつ総合的な市街地の再開発又は開発整備を実施すべき区域(再開発等促進区)を定めることができることとし、再開発等促進区内において、従来、再開発地区計画及び住宅地高度利用地区計画により適用されてきたものと同様に、以下の(1)から(5)までの特例措置が適用できるようにした。
(1) 地区整備計画が定められている区域(容積率の最高限度が定められている区域に限る。)内において、当該地区計画の内容に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めたものについては、法第五二条の規定は、適用しない。
(2) 地区整備計画が定められている区域(建ぺい率の最高限度が六〇%以下の数値で定められている区域に限る。)内において、当該地区計画の内容に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めたものについては、法第五三条第一項から第三項まで及び第六項の規定は、適用しない。
(3) 地区整備計画が定められている区域(高さの最高限度が二〇m以下の高さで定められている区域に限る。)内において、当該地区計画の内容に適合する敷地面積が三〇〇m2以上の建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めたものについては、法第五五条第一項及び第二項の規定は、適用しない。
(4) 地区整備計画が定められている区域内において、敷地内に有効な空地が確保されていること等により特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可した建築物については、法第五六条の規定は、適用しない。
(5) 地区計画において定められた土地利用に関する基本方針に適合し、かつ、当該地区計画の区域における業務の利便の増進上やむを得ないと特定行政庁が認めて建築審査会の同意を得て許可した建築物については、法第四八条第一項から第一二項までの制限にかかわらず建築することができる。
こうした趣旨を踏まえ、都市計画担当部局と一層の連携を図りつつ、それぞれの役割を適切に遂行するよう努められたい。

3 公共施設が整備された区域において容積率の緩和が可能となる制度の地区計画への導入(法第六八条の五の二関係)

適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域で、その合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため必要な地区計画の区域において、当該地区計画で定められる様々な規制と併せて、従来、高度利用地区において法第五九条の規定により適用されてきた以下の(1)及び(2)と同様の特例措置を適用できることとした。
(1) 地区整備計画が定められている区域(容積率の最高限度及び最低限度、建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限(壁面の位置の制限にあっては、市街地の環境の向上を図るため必要がある場合に限る。)が定められている区域に限る。)内で、かつ、これらの事項(容積率の最高限度を除く。壁面の位置の制限にあっては、地区整備計画に定められたものに限る。)が法第六八条の二第一項の規定に基づく条例で定められている場合、当該容積率の最高限度を法第五二条第一項各号に掲げる数値とみなして同条の規定を適用する。
(2) (1)に該当する場合、敷地内に道路に接して有効な空地が確保されていること等により、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可した建築物については、法第五六条第一項第一号及び第二項から第四項までの規定は、適用しない。
こうした趣旨を踏まえ、都市計画担当部局と一層の連携を図りつつ、それぞれの役割を適切に遂行するよう努められたい。

4 沿道地区計画及び防災街区整備地区計画への容積率等特例制度の導入(法第六八条の三から第六八条の五の四まで関係)

(1) 沿道地区計画の拡充(法第六八条の三から第六八条の五の四まで関係)

沿道地区計画において、当該地域の状況に合わせた柔軟かつ詳細な計画を策定し、道路交通騒音による障害の防止と沿道の適正かつ合理的な土地利用を促進するため、沿道地区計画制度の更なる充実を図った。具体的には、沿道地区計画において、以下の1)から5)までに掲げる地区計画における容積率制限等の特例制度を導入することとした。
1) 土地利用の転換が生じ、公共施設が十分でない土地の区域における高度利用と都市機能の増進を図る制度(沿道再開発等促進区、法第六八条の三)
2) 建築物の容積率の最高限度を区域の特性に応じたものと公共施設の整備状況に応じたものとに区分して定める制度(法第六八条の四)
3) 公共施設を備えた土地の区域におけるその高度利用と都市機能の更新等を図る制度(法第六八条の五の二)
4) 住居と住居以外の用途とを適正に配分する制度(法第六八条の五の三)
5) 区域の特性に応じた高さ、配列及び形態を備えた建築物の整備を誘導する制度(法第六八条の五の四)

(2) 防災街区整備地区計画の拡充(法第六八条の四、第六八条の五の三及び第六八条の五の四関係)

当該地域の状況に合わせた柔軟かつ詳細な計画を策定し、密集市街地における防災機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図るため、防災街区整備地区計画制度の更なる充実を図った。具体的には、防災街区整備地区計画において、以下の1)から3)までに掲げる地区計画における容積率制限等の特例制度を導入した。
1) 建築物の容積率の最高限度を区域の特性に応じたものと公共施設の整備状況に応じたものとに区分して定める制度(法第六八条の四)
2) 住居と住居以外の用途とを適正に配分する制度(法第六八条の五の三)
3) 区域の特性に応じた高さ、配列及び形態を備えた建築物の整備を誘導する制度(法第六八条の五の四)

5 地盤面の上に通路等の地区施設等を定めた場合の建ぺい率制限の緩和(法第六八条の五の五関係)

近年、高層建築物の低層部に、いわゆる「人工地盤」として、通常の地盤面よりも一層から二層分高い位置に平面を設け、歩行者等の通行の用に供する通路等を設ける工作物の例が増大している。
このような人工地盤下の建築物の部分であって、人工地盤が地区計画等において地区施設等として位置づけられること等により、周辺の敷地との連続性の確保等につき担保されている場合には、その特性に配慮しつつ、建ぺい率制限の合理化を図ることのできる規定を設けた。
具体的には、以下の条件に該当する地区計画等の区域内の建築物のうち、以下の(1)1)の地区施設等の下にある部分で、特定行政庁が、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めたものの建築面積は、建ぺい率の算定の基礎となる建築面積に算入しない。
(1) 以下に掲げる事項が定められている地区整備計画等(集落地区整備計画を除く。)の区域であること。

1) その配置が地盤面の上に定められている通路その他の公共空地である地区施設等
2) 壁面の位置の制限(1)の地区施設等に面する壁面の位置を制限するものを含むものに限る。)

(2) 法第六八条の二第一項の条例で、(1)2)に掲げる事項に関する制限が定められている区域であること。

第6 限定特定行政庁及び特別区の事務

今般の改正により設けられた特定行政庁の事務について、法第二条第三二号及び法第九七条の二第四項又は法第九七条の三第三項の規定に基づき、都道府県知事に代わって法第九七条の二の限定特定行政庁たる市町村長又は特別区の長が行う事務を定めた。
1 建築審査会が置かれている市町村の長たる限定特定行政庁の事務

法第五三条の二第一項第四号の規定により用途上又は構造上やむを得ないものとして建築物の敷地面積の最低限度が適用されない建築物の許可を、建築審査会が置かれている市町村の長たる限定特定行政庁の事務とすることとした。

2 特別区の長の事務

以下の事務のうち、延べ面積が一万m2以下の建築物に係る事務を、特別区の長の事務とすることとした。
(1) 法第五三条の二第一項第四号の規定により用途上又は構造上やむを得ないものとして建築物の敷地面積の最低限度が適用されない建築物の許可
(2) 法第六八条の三各項の規定による再開発促進区等内における建築物に係る各種制限の適用除外の認定、法第六八条の四に規定する誘導容積型地区計画の区域内における建築物に係る目標容積率の適用の認定、法第六八条の五の二に規定する高度利用地区型地区計画等の区域内における建築物に係る高さ制限の適用除外の許可、法第六八条の五の四第一項柱書又は第二項の規定による街並み誘導型地区計画の区域内における建築物に係る容積率制限又は高さ制限の適用除外の認定及び法第六八条の五の五の規定による地区計画等の区域内における建築物の建ぺい率の特例の認定
(3) 法第八六条第三項の規定による一団地内に二以上の構えを成す建築物で総合的設計によって建築される建築物又は第四項の規定による連担建築物設計制度に基づく建築物を前提として建築される建築物のうち市街地の環境の整備改善に資する等と認めて容積率制限等を緩和するものの許可及び第八項の規定による当該許可に係る公告等、法第八六条の二第二項の規定による公告認定対象区域内又は第三項の規定による公告許可対象区域内における同一敷地内認定建築物又は同一敷地内許可建築物以外の建築物を建築する際の当該建築物の位置及び構造の許可並びに第六項に規定する当該許可に係る公告等並びに法第八六条の五第三項の規定による一定の複数建築物の許可の取消し及び当該許可の取消しに係る公告
さらに、以下の指定に係る事務を、市町村都市計画審議会が置かれている特別区の長の事務とすることとした。
(4) 法第五二条第二項第二号の規定による前面道路幅員に乗ずる数値を〇・六とする区域の指定並びに第三号の規定による前面道路幅員に乗ずる数値を〇・四又は〇・八とする区域及び数値の指定
(5) 法第五六条第一項第二号柱書の規定による隣地高さ制限を適用除外とする区域の指定、同号イの規定による隣地高さ制限の勾配を二・五とする区域の指定及び法別表第三備考三の規定による道路高さ制限の勾配を一・五とすること等とする区域の指定

第7 その他

1 ガソリンスタンド等の地下貯蔵量規制の緩和(令第一三〇条の九関係)

近年、地下貯蔵タンクの安全基準の整備・充実等により、地盤面下に埋没して設ける専用タンクからの物質の漏洩のおそれ、物質に起因する火災による延焼等に係る懸念が低下しているため、第二種中高層住居専用地域から商業地域までの用途地域において、専用タンクを地盤面下に埋没して第一石油類又はアルコール類を貯蔵する建築物にあっては、容量の合計に関わりなく、立地を認めることとした。

2 高層住居誘導地区内の建築物の容積率の上限の数値の算出方法(令第一三五条の一四関係)

今回、高層住居誘導地区内の建築物の容積率として五〇〇%が追加されたため、従来の容積率四〇〇%のみを前提とした算定式を、高層住居誘導地区内の建築物がある用途地域の都市計画において定められた容積率の数値に応じた建築物の容積率の上限の数値の算出方法へ変更した。

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