建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成七年法律第一二三号。以下「法」という。)、建築物の耐震改修の促進に関する法律施行令(平成七年政令第四二九号。以下「令」という。)及び建築物の耐震改修の促進に関する法律施行規則(平成七年建設省令第二八号。以下「規則」という。)の施行については、「建築物の耐震改修の促進に関する法律等の施行について」(平成七年一二月二五日付け建設省住指発第四三七号建設事務次官通達)により通達されたところであるが、その細目は左記のとおりであるので、関係市町村に対してもこの趣旨を十分周知されるとともに、今後の運用に遺憾のないよう措置されたい。
第1 特記建築物に係る措置
1 特記建築物の所有者の努力義務(法第二条及び令第一条関係)
学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所等多数の者が利用する建築物で、階数が三以上で、かつ、床面積の合計が一、〇〇〇m2以上のもののうち、建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)上耐震関係規定について既存不適格建築物であるもの(以下「特定建築物」という。)の所有者は、耐震診断を行い、必要に応じ、耐震改修を行うよう努めなければならないこととした。
2 建設大臣による耐震診断及び耐震改修の指針の策定・公表(法第三条関係)
建設大臣は、耐震診断及び耐震改修の指針を定め、これを公表することとし、耐震診断及び耐震改修の努力義務が課されている特定建築物の所有者に対し、耐震診断の基準及び耐震改修の方法を具体的に示すこととした。
3 所管行政庁による指導及び助言(法第四条第一項及び令第二条関係)
所管行政庁(建築主事を置く市町村若しくは特別区の長又は都道府県知事のことであり、建築基準法上の特定行政庁と同じ地方公共団体の長のことである。)は、特定建築物の耐震診断及び耐震改修について必要な指導及び助言をすることができることとした。
4 不特定多数の者が利用する特定建築物に対する措置
(1) 指示(法第四条第二項及び令第三条関係)
所管行政庁は、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店等不特定かつ多数の者が利用する特定建築物のうち床面積の合計が二、〇〇〇m2以上のものについて必要な耐震診断又は耐震改修が行われていないと認めるときは、当該特定建築物の所有者に対し、必要な指示をすることができることとした。
(2) 報告徴収又は立入検査(法第四条第三項から第五項まで及び令第四条関係)
所管行政庁は、指示に必要な限度において、特定建築物の所有者に対し、特定建築物の設計及び施工に係る事項のうち地震に対する安全性に係るもの並びに特定建築物の耐震診断及び耐震改修の状況について報告させ、又はその職員に、特定建築物、特定建築物の敷地又は特定建築物の工事現場に立ち入り、特定建築物並びに特定建築物の敷地、建築設備、建築材料及び設計図書その他の関係書類を検査させることができることとした。
第2 住宅をはじめとする建築物全般に対する措置
1 耐震改修の計画の認定(法第五条関係)
建築物の耐震改修をしようとする者は、建築物の耐震改修の計画について所管行政庁の認定を申請することができることとし、所管行政庁は、当該計画が耐震関係規定等に適合していると認めるときは、認定をすることができることとした。
(1) 耐震関係認定に準ずるものとして建設大臣が定める基準(法第五条第三項第一号及び第六項関係)
建築物の耐震改修の事業の内容が耐震関係規定に適合しなくても耐震関係規定に準ずるものとして建設大臣が定める基準に適合している場合には、計画の認定をすることができることとし、また、耐震関係規定について既存不適格建築物であるものが当該基準に適合しているものとして計画の認定を受けたものは工事後も引き続き既存不適格建築物として取り扱うこととした。
(2) 建築主事の同意等(法第五条第四項及び第八項関係)
建築物の耐震改修の計画が建築確認又は計画通知を要するものである場合、計画の認定をしようとするときは、あらかじめ、建築主事の同意を得なければならないこととし、計画の認定をしたときは、その旨を建築主事に通知することとした。
(3) 消防長等の同意等及び図書の閲覧(法第五条第五項関係)
建築物の耐震改修の計画が建築確認又は計画通知を要するものである場合、消防長若しくは消防署長の同意を得、若しくはそれらの者に通知をし、又は保健所長に通知をしなければならないこととするとともに、建築計画概要書を閲覧させることとした。
(4) 計画の変更(法第六条及び規則第六条関係)
計画の認定を受けた計画の変更をしようとするときは、耐震改修の事業の着手又は完了の予定年月日の三月以内の軽微な変更を除き、再度所管行政庁の認定を受けなければならないこととした。
(5) 報告の徴収(法第七条関係)
所管行政庁は、認定建築物の耐震改修の状況について報告を求めることができることとした。
(6) 改善命令及び計画の認定の取消し(法第八条及び第九条関係)
認定事業者が認定を受けた計画に従って耐震改修を行っていない場合には、所管行政庁は、認定事業者に対し、相当の期限を定めて、改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができることとし、認定事業者が当該命令に違反したときは、認定を取り消すことができることとした。
2 計画の認定を受けた建築物についての建築基準法の特例
(1) 既存不適格建築物の制限の緩和(法第五条第三項第三号及び第六項関係)
既存不適格建築物について耐震性の向上のため必要と認められる増築(ピロティ部分に壁を設ける場合に限られる。)、大規模の修繕又は大規模の模様替で、当該工事後も耐震関係規定以外の不適格事項が存続することがやむを得ないと認められ、かつ、当該不適格事項の不適格の程度が増大しないものをしようとする場合には、建築基準法第三条第三項第三号及び第四号の規定にかかわらず、工事後も引き続き既存不適格建築物として取り扱うこととした。
(2) 耐火建築物に係る制限の緩和(法第五条第三項第四号及び第七項並びに規則第五条関係)
耐震性向上のため耐火建築物に壁を設け、又は柱若しくははりの模様替を行うことが必要と認められ、当該工事の結果、耐火建築物に係る建築基準法上の規定に適合しないこととなることがやむを得ないと認められる場合において、壁又は柱若しくははりが不燃材料又は準不燃材料で造られ、又は覆われており、構造計算により構造耐力上安全であることが確かめられた構造であり、火災の発生を有効に感知し、建築物を常時管理する者が居る場所に報知できる装置が設けられているときは、耐火建築物に係る建築基準法上の規定は適用しないこととした。
(3) 建築確認の特例(法第五条第四項及び第八項関係)
建築基準法上の建築確認又は計画通知が必要な耐震改修の計画については、計画の認定をもって建築確認又は適合通知があったものとみなすこととし、手続の簡素・合理化を図ることとした。
3 住宅金融公庫の資金の貸付けの特例(法第一〇条及び令第五条関係)
計画の認定を受けて住宅の耐震改修を行う者に対する住宅金融公庫の貸付金の利率は、当初期間につき年五・五%以内で政令で定める率(平成七年一二月二五日の時点において年三・一%)とすることとした。
第3 その他
1 国・地方公共団体の努力義務
(1) 国及び地方公共団体の資金の融資等の努力義務(法第一一条関係)
国及び地方公共団体は、建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るため、資金の融通又はあっせん、資料の提供その他の措置を講ずるよう努めるものとした。
(2) 国の研究開発の促進のための情報の収集及び提供等の努力義務(法第一二条関係)
国は、建築物の耐震診断及び耐震改修の促進に資する技術に関する研究開発を促進するため、当該技術に関する情報の収集及び提供その他必要な措置を講ずるよう努めるものとした。
(3) 国及び地方公共団体の教育活動、広報活動資等の努力義務(法第一三条関係)
国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、建築物の耐震診断及び耐震改修の促進に関する国民の理解を深めるとともに、その実施に関する国民の協力を求めるよう努めるものとした。
2 罰則(法第一四条から第一六条まで関係)
法第四条第三項の報告徴収及び立入検査並びに法第七条の報告徴収を適切に実施する担保措置として、罰則を設けることとした。