第1 事業基本計画の趣旨及び内容
1 事業基本計画とは、鉄道事業を経営しようとする者の事業遂行に関する基本的な計画であり、鉄道事業の許可の可否の判断の重要な資料となるものである。また、許可を取得した事業者は、その後、詳細な調査、設計を行って、具体的な工事計画を策定し、工事施行の認可申請を行うこととなるが、その認可に当たっては、事業基本計画に適合しているか否かを審査することとされており、この意味で事業基本計画は、工事計画による許可内容の具体化の際の判断基準にもなるものである。
2 事業基本計画の記載事項は、鉄道事業法施行規則第五条第一項各号に掲げる事項であるが、同項第二号ニ、第三号及び第四号の内容は次のとおりである。
(1) 設計最高速度及び設計通過トン数(第二号ニ)
設計最高速度及び設計通過トン数は、許可をするに際し、路線の性格等に照らし当該許可に係る区間においては、どの程度の速度が必要か、どの程度の列車重量及び列車頻度に耐え得る鉄道路線が必要かという基本的な条件を示す指標である。
(2) 旅客を運送する区間及び貨物を運送する区間(第三号)
1) 地方鉄道法上の旅客運輸営業及び貨物運輸営業に対応する概念であり、これにより旅客又は貨物の業務区分が限定されるものである。
2) 旅客及び貨物の両方を運送している鉄道事業者が旅客又は貨物の運送を廃止(一部又は全部)する場合は、事業基本計画の変更(鉄道事業法第七条)ではなく、鉄道事業の廃止(鉄道事業法第二八条の二)として処分することとなる。
(3) 計画供給輸送力(第四号)
1) 許可申請時における計画供給輸送力とは、事業開始当初に整備する鉄道施設を用いて供給しようとする一日当たりの輸送力であり、開業時と熟成時において輸送力が異なる場合等必要な場合は一定の幅を持たせるとともに、路線ごと(同一路線中区間ごとに計画供給輸送力が大幅に異なる場合は、当該区間ごと)及び旅客輸送、貨物輸送ごとに記載することとする。
2) 計画供給輸送力の変更は、一般的には複々線化、車両の長編成化に伴うホームの延伸等大規模な設備投資に伴って生ずるものである。したがって、事業基本計画の変更は、鉄道施設の変更等他の手続と同時に処分することとなる。
第2 既存鉄道事業者の事業基本計画記載事項の届出
1 既存鉄道事業者は、昭和六二年六月三〇日までに、当該鉄道事業の種別に応じて事業基本計画に記載すべき事項を記載した書類を運輸大臣に提出する必要がある(鉄道事業法施行規則附則第三条、日本国有鉄道改革法等施行法第三条等)。
2 既存鉄道事業者の届出に際しては、旅客を運送する区間及び貨物を運送する区間について、次に留意すること。
(1) 免許時の起業目論見書に旅客運輸営業とのみ記載している場合、貨物運輸営業の廃止の許可を得ている場合又は現在貨物運輸営業を行っていない場合には、貨物を運送する区間を記載することは認めないこととする。
(2) 手荷物、郵便等の貨物に限って営業を行っている場合には、貨物の種類を限定した上で、「貨物を運送する区間」を記載することとする。
3 計画供給輸送力には、現に供給している輸送力を基準として、今後予定している輸送力増強等投資計画により整備される鉄道施設(鉄道施設の変更の処分等が行われているものに限る。)及び車両を用いて供給しようとする輸送力を記載することとする。