今般、航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律(平成一三年法律第三四号)の制定による鉄道事業法(昭和六二年法律第九二号)の改正に伴い、鉄道事故等報告規則等の一部を改正する省令(平成一三年国土交通省令第一二三号)、軌道事故等報告規則の一部を改正する告示(平成一三年国土交通省告示第一三八六号)及び鉄道事故等報告書の様式を定める告示(平成一三年国土交通省告示第一三八七号)が制定されたが、その運用等について、左記のとおりとりまとめたので、遺漏なきよう取り計らわれたい。
第一 運転事故、輸送障害及びインシデント
一 鉄道及び軌道関係
(一) 鉄道事故等報告規則(昭和六二年運輸省令第八号。以下「鉄道規則」という。)第三条第一項第三号及び軌道事故等報告規則(昭和六二年運輸省・建設省告示第一号。以下「軌道規則」という。)第一条第一項第三号中「火災」とは、車両に生じた燃焼現象であって、車体にまで及ぶもの又は乗客に死傷を生じるおそれのあるものをいう。
(二) 鉄道規則第三条第一項第四号から第六号まで及び軌道規則第一条第一項第四号から第六号までに掲げる運転事故にあっては、自殺によるものを除く。
(三) 鉄道規則第三条第一項第五号及び軌道規則第一条第一項第五号中「衝突し、又は接触し」とは、人の死傷を生じるおそれのある程度以上の衝撃を伴った衝突又は接触をいう。
(四) 鉄道規則第三条第一項第六号及び軌道規則第一条第一項第六号中「運転により人の死傷を生じた事故」にあっては、次のものを除く。
(ア) ホームから転落したために死傷したもの(運転中の列車(軌道における本線路を運転する車両を含む。以下同じ。)又は車両に接触したものを除く。)
(イ) 列車に乗降する際に死傷したもの(運転中の列車若しくは車両に接触したもの又は車両の扉に手等をはさまれたまま列車に引きずられて生じたものを除く。)
(ウ) 危険品等の爆発、非常制動作用(ブレーキの故障により異常な制動力が働いたためのものを除く。)、棚の荷物の転落、満員の際の窓ガラスの破損等により乗客が死傷したもの
(エ) 鉄道係員又は軌道係員が、入換作業中に車両から転落したために死傷したもの(運転中の列車又は車両に接触したものを除く。)
(オ) その他前記に類するもの
(五) 鉄道規則第三条第一項第七号及び軌道規則第一条第一項第七号中「五〇〇万円以上の物損」とは、鉄道又は軌道以外の物を含めた損害額の合計が五〇〇万円以上となった場合をいう。
(六) 鉄道規則第三条第三項及び軌道規則第一条第二項の「輸送障害」には、労働争議行為による列車又は車両の遅延及び運転休止は含まないものとする。
(七) 鉄道規則第四条第一項第五号中「列車の運転を停止して行うべき工事又は保守の作業」とは、線路閉鎖により行う工事若しくは保守の作業又はその過程において鉄道施設を列車が安全に運転できない状態にする工事若しくは保守の作業をいう。
(八) 鉄道規則第四条第一項第六号中「側線に特有の設備又は取扱い」とは、車輪止め、転車台等の設備及び突放入換え作業、手動の転てつ器の転換作業等の取扱いをいう。
(九) 鉄道規則第四条第一項第七号における「列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等を生じた事態」とは、施設等に重大な故障、損傷、破壊等が生じ、又は生じるおそれがある場合であって、事前に列車の抑止、徐行、注意運転等の措置をとることなく、列車がその箇所を走行し又はその直前で停止したものをいう。ただし、地震発生直後に列車が施設の故障等を生じた箇所を走行したものを除く。
(一〇) 鉄道規則第四条第一項第八号及び軌道規則第二条第五号における「列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等を生じた事態」とは、故障等により機能を著しく低下し若しくは喪失し、又は誤作動を起こした場合であって、列車の衝突、脱線、火災その他の重大な事故を発生するおそれのある状態を生じたものをいう。
(一一) 鉄道規則第四条第一項第九号及び軌道規則第二条第六号中「危険品、火薬類等」とは、鉄道運転規則(昭和六二年運輸省令第一五号)第二条に規定する危険品(ディーゼル動車の燃料を含む。)、火薬類、核原料物質、核燃料物質及び放射性同位元素をいい、「著しく漏えいした事態」とは、人への危害、施設の損壊等を及ぼすおそれがあるほど漏れたものをいう。
(一二) 鉄道規則第四条第一項第一〇号及び軌道規則第二条第七号中「前各号に掲げる事態に準ずる事態」とは、車両又は保守用車の運転、係員の取扱い等に起因して生じた鉄道規則第四条第一項第一号から第九号まで及び軌道規則第二条第一号から第六号までに掲げる事態に準ずる事態であって、事態を分析することにより鉄道及び軌道の安全性の向上を図ることができるものをいう。
(一三) 鉄道規則第五条第一項第一号及び軌道規則第三条第一項第一号中「乗客、乗務員等」とは、運転事故が発生したときに、当該列車内又は車両内に乗車していた者をいう。
(一四) 鉄道規則第五条第一項第五号及び軌道規則第三条第一項第五号中「特に異例と認められるもの」とは、次に掲げるものをいう。
(ア) 旅客が列車又は車両の扉に手等をはさまれたまま列車に引きずられて死傷したもの
(イ) 身体障害者に係るもの
(ウ) 動力車操縦者が乗務しない鉄道及び軌道に係るもの
(エ) 新幹線鉄道に係るもの
(オ) 長時間にわたり乗客が車内に閉じ込められたもの
(カ) その他これらに類するもので社会的反響が多大であると認められるもの
(一五) 鉄道規則第五条第二項第二号及び軌道規則第三条第二項第二号中「特に異例と認められるもの」とは、長時間にわたり乗客が車内に閉じ込められたものその他これに類するもので社会的反響が多大であると認められるものをいう。
(一六) 鉄道運転事故等報告書等の様式を定める告示(平成一三年国土交通省告示第一三八七号)及び軌道規則第一号様式裏面中「衝撃物」の自動車は、それぞれ自動車登録規則(昭和四五年運輸省令第七号)別表第二に規定する自動車をいう。
なお、軽自動車にあっては、その用途に応じ「小型貨物」、「小型乗用」、「特種、特殊」に分類する。
(一七) 複数の鉄道事業者が存在する線区における事故等の報告主体については次のとおりとする。
(ア) 鉄道運転事故及び輸送障害の報告を行う事業者は、当該鉄道運転事故又は輸送障害に係る列車又は車両を鉄道事業の用に供している鉄道事業者とする。ただし、関係の鉄道事業者において主たる原因が明らかな場合は、主たる原因を有する鉄道事業者とする。
(イ) 鉄道規則第四条第一項に規定する事態の報告は、主たる原因を有する鉄道事業者とする。ただし、主たる原因を有する者が明らかでない間は、当該事態を知った鉄道事業者とする。
二 索道関係
(一) 鉄道規則第三条第二項第四号中「火災」とは、搬器に生じた燃焼現象であって、乗客に死傷を生じるおそれのあるものをいう。
(二) 鉄道規則第三条第二項第五号に掲げる運転事故にあっては、自殺によるものを除く。
(三) 鉄道規則第三条第二項第五号中「搬器の運転により人の死傷を生じた事故」にあっては、次のものを除く。
(ア) ホームから転落したために死傷したもの(運転中の搬器に接触したものを除く。)
(イ) 搬器に乗降する際に死傷したもの(運転中の搬器に接触したもの又は搬器の扉に手等をはさまれたまま搬器に引きずられて生じたものを除く。)
(ウ) 危険品等の爆発、非常制動作用(制動装置の故障により異常な制動力が働いたためのものを除く。)、棚の荷物の転落、満員の際の窓ガラスの破損等により乗客が死傷したもの
(エ) その他前記に類するもの
(四) 鉄道規則第四条第二項第八号「前各号に掲げる事態に準ずる事態」とは、係員の取扱い、自然現象等に起因して生じた鉄道規則第四条第二項第一号から第七号までに掲げる事態に準ずる事態であって、事態を分析することにより索道の安全性の向上を図ることができるものをいう。
(五) 鉄道規則第六条第一項第一号中「乗客、乗務員等」とは、運転事故が発生したときに、当該搬器に乗車していた者をいう。
(六) 鉄道規則第六条第一項第四号中「特に異例と認められるもの」とは、長時間にわたり乗客が搬器内に閉じ込められたものその他これらに類するもので社会的反響が多大であると認められるものをいう。
第二 災害
一 鉄道規則第三条第五項中「鉄道施設」及び軌道規則第一条第四項中「軌道施設」には、工事中のものを含む。
二 鉄道規則第八条及び軌道規則第五条中「当該災害に対する応急処置が完了した」とは、小規模な災害においては復旧工事が完了したこと、大規模な災害においては応急工事又は復旧計画の策定が完了したこと、即ち当該災害に対する処置が一段落したことをいう。