運輸省鉄総第六七五号
昭和四五年一一月二〇日

陸運局長・国鉄総裁あて

鉄道監督局長通達


踏切道の緊急保安対策について


去る一〇月九日発生した東武鉄道伊勢崎線における踏切事故に鑑み、別添「ダンプカーによる事故の防止対策および踏切道の緊急保安対策について」が一〇月二七日交通対策本部決定され、これに基づき緊急対策が講ぜられることとなったので、都府県踏切道改善促進協議会を通じ、その具体的措置の促進を図られたい。
なお、交通対策本部決定(以下「本部決定」という。)の趣旨は、今後とも踏切道の整理統合、立体交差化を促進することはもちろんであるが、当面の緊急対策としては、原則として、遮断機が未整備の踏切道について、おおむね五百メートル間隔でこれを整備するとともに、それ以外の踏切道について、車両の通行の禁止又は制限をすることによって、その安全を確保しようとするものである。従って、五百メートル間隔で遮断機の整備をすべき踏切道を選別する場合も、付近の踏切道の整理統合若しくは立体交差化又はこれらの予定等を充分勘案して審議を進められたい。
また、本部決定の運用は、左記事項に留意のうえ行なわれたい。これらの事項については、警察庁交通局および建設省道路局と打合せずみである。

1 自動車の通行を認める踏切道の選別等について

(1) 本部決定II二(1)中「既に遮断機が設置されている踏切道」には、昭和四五年一〇月二七日現在において遮断機が設置されていなくとも、踏切道改良促進法に基づく指定及び鉄軌道事業者の自主的判断により昭和四六年三月三一日までに遮断機が設置されることが確実であると認められる踏切道を含めて取扱うこと。
(2) 本部決定II二(1)により、おおむね五百メートル程度に自動車通行を認める踏切道を選別する際に、基準となる踏切道から五百メートル付近に複数の踏切道がある場合には、国道若しくは都道府県又は特に重要な道路を優先的に選びだすこと。
(3) 本部決定II二(1)のただし書による「特に住民の生活に支障を及ぼす踏切道」の認定は、交通量、迂回路の有無、近隣の自動車通行を認める踏切道との間隔等を考慮して、厳格に行なうこと。
(4) 本部決定II二(1)及び(2)による自動車の通行禁止等の交通規制は、道路交通法第七条第一項の規定により都道府県公安委員会が必要な道路標識等を設置して行なうが、その実効を確保するため従来どおり鉄軌道事業者も当該踏切道に杭等を設けることができること。

2 遮断機の設置等について

(1) 本部決定II二(1)の本文により選別されて自動車の通行を認められる踏切道及びただし書により自動車の通行を認められる踏切道のうち、幅員三・五メートル以上のものは遮断機を、幅員二・三メートル以上三・五メートル未満のものは踏切道の保安設備に関する省令(以下「省令」という。)に定める基準に従い踏切保安設備を整備すること。なお、三・五メートル未満の踏切道については、大型車の通行禁止をする旨警察庁および建設省と了解ずみである。
(2) 本部決定II二(2)のなお書による踏切保安設備の整備は、省令の基準に従い行なうこと。
(3) 遮断機を設置すべきものとされた踏切道については、本年度からすみやかに整備を始めるものとし、本年度において整備されなかった踏切道については、そのうち、おおむね半数の踏切道は昭和四六年度に、残りの踏切道は昭和四七年度に整備するものとし、整備の順位は、原則として幅員の大きなものからとすること。
〔添付資料〕
1 「ダンプカーによる事故の防止対策および踏切道の緊急保安対策について」交通対策本部決定〔別記1〕
2 警察庁交通局長通達写〔略〕
3 建設省道路局長通達写〔略〕
4 総理府交通安全対策室長通達写〔別記2〕


別記1

ダンプカーによる事故の防止対策および踏切道の緊急保安対策について

(昭和四五年一〇月二七日)
(交通対策本部決定)
最近において、ダンプカーによる重大事故および踏切道における事故が続発していることにかんがみ、この種事故の再発を防止するため、特に次の対策を強力に実施するものとする。
I ダンプカーによる事故の防止対策

1 ダンプカー事業者の協業化等の促進

ダンプカーを使用して事業を行なっている者(以下「ダンプカー事業者」という。)の大多数がいわゆる一人一車の事業者等の零細事業者であることにかんがみ、国および地方公共団体は、協力して、次の措置を講ずるものとする。
(1) ダンプカー事業者が事業協同組合等を組織し、協業化を図るよう指導すること。
(2) ダンプカー事業者が土砂等を運搬する大型自動車による交通事故防止等に関する特別措置法第一二条に規定するダンプカー事業者自らが事故防止の諸措置を取る団体(以下「ダンプ規制法第一二条団体」という。)を設立し又は加入することを促すため、都道府県交通対策協議会又は地方交通対策協議会において、十分協議のうえ、次に掲げる機関の行なう処分、措置等に際して指導がなされるよう措置すること。
イ都道府県陸運事務所の行なうダンプカー表示番号の指定又は車検証の交付

ロ 都道府県公安委員会の行なう免許効力停止者に対する講習その他交通安全に関する運転者講習
ハ 河川管理者、海岸管理者、港湾管理者又は都道府県知事の行なう砂利等の採取の許可又は認可
ニ 国若しくは地方公共団体又は国若しくは地方公共団体が設立し若しくは出資した団体が行なう大規模な工事の発注

(3) ダンプ規制法第一二条団体に加入している者のダンプカーには、外部から容易に識別できる位置に、統一した標識を表示させること。

2 土砂、工事用資材等の運搬に際しての安全対策の確立公共工事等においてダンプカーによる交通事故の発生を防止するため、国および地方公共団体は、次の措置を講ずるものとする。

(1) ダンプカーによる大量の土砂、工事用資材等の運搬を伴う工事については、十分な交通安全対策がとられるよう、適切な工期および工程を定めるとともに必要な費用を積算するよう配慮すること。
(2) 前号の工事の発注に当たっては、次の事項について仕様書に明示するとともに、その施行に当たっては、それらの事項の履行その他交通安全の確保について十分な指導をすること。

イ 土砂、工事用資材等の搬送計画、通行道路の選定その他車両の通行に係る安全対策について必要な基本的事項
ロ 請負業者は、イの安全対策につき関係機関と十分協議して必要な具体的内容を定め、発注者に提出の上これを誠実に履行すべきこと。

(3) (1)号の工事の請負業者および資材納入業者に対しダンプ規制法第一二条団体の設立又は加入の状況に応じ、当該団体に加入している者のダンプカーを優先的に使用するよう指導すること。
(4) 国又は地方公共団体が設立し又は出資した団体が発注する公共工事についても前各号と同様の措置を講じさせること。
(5) 民間における大規模な工事等についても(1)号から(3)号までの措置と同様の措置を取るよう指導すること。

なお、砂利、砕石等の採取業者又は販売業者及び当該砂利、砕石等の買入業者についても(1)号から(3)号までの措置に準じて同様の措置を取るよう指導すること。

3 運転者の資質の向上とダンプカーの取締りの強化

ダンプカーの無謀運転等を防止するため、国および地方公共団体は、次の措置を講ずるものとする。
(1) 運転者に対する教育施設および教育体制を整備し、その管理および教育の徹底を図るとともに、これらの資質の向上についてはさらに検討を加えること。
(2) スピード違反、過積載等の危険な道路交通法違反行為、違法な時間外労働等の労働基準法違反行為および無免許営業等の道路運送法違反行為を重点的に取締ること。

II 踏切道の緊急保安対策

踏切道の安全確保のため、大都市圏(首都圏および近畿圏の五〇キロメートル圏内並びに中部圏の三〇キロメートル圏内)の踏切道について緊急に次の措置を講ずるものとする。
1 幅員六・五メートル以上の踏切道については、昭和四七年度末までに遮断機を完備すること。
2 一以外の踏切道については、その利用状況、迂回路の状況等を勘案し、できる限り統廃合を進める基本方針のもとに、当面、次の措置を講ずること。

(1) 幅員二・三メートル以上六、五メートル未満の踏切道については、一の踏切道又は既に遮断機が設置されている踏切道からの距離及び今後遮断機を設置することとなる踏切道相互間の距離がおおむね五〇〇メートル程度になるよう自動車の通行を認める踏切道を選別し、これらには原則として昭和四七年度末までに遮断機を設置し、かつ必要な交通規制を行なうこと。

これら以外の踏切道(既に遮断機が設置されているものを除く。)については、昭和四七年度末までに自動車(二輪車を除く。)の通行禁止を行なうものとする。ただし、国道及び都府県道に係る踏切道並びに特に住民の生活に重大な支障を及ぼすと認められる踏切道については、自動車の通行を認め、原則として昭和四七年度末までに遮断機を設置し、かつ必要な交通規制を行なうものとする。

(2) 幅員二・三メートル未満の踏切道については、直ちに自動車(二輪車を除く。)の通行禁止を行なうこと。ただし、特に住民の生活に重大な支障を及ぼすと認められる踏切道については、例外的に農耕用車両等小型の自動車に限り通行を認めるものとする。

なお、歩行者等の交通量が特に多い踏切道については、必要に応じ踏切保安設備を整備するものとする。

3 二の措置の具体的実施は、都府県別の踏切道改善促進協議会において十分協議のうえ、推進すること。



別記2

ダンプカーによる事故の防止対策および踏切道の緊急保安対策について

(昭和四五年一一月二〇日)
(総交第二一六号)
交通対策本部幹事・総理府交通安全対策室長から知事宛
標記については、昭和四五年一〇月二七日交通対策本部決定がなされたところであるが、今回の対策を実効あらしめるため、別紙事項を参考のうえ、都道府県知事が中心となり、これの円滑な実施に努められたい。



別紙

ダンプカーによる事故の防止対策および踏切道の緊急保安対策について

I ダンプカーによる事故の防止対策

1 事業協同組合等による協業化の促進について

(1) ダンプカー事業者とは、自動車運送事業者のみならず、採石業者、砕石業者、砂利採取業者、砂利販売業者、建設業者等で、ダンプカーを使用して事業を行なっている者のすべてを含むものである。
(2) ダンプカー事業者の協業化の促進に当っては、単に、自動車運送業部門での協業化に努めるのみならず、採石業部門、砕石業部門等での協業化の促進を図り、結果としてダンプカー事業者の協業化が生ずるような措置を講じられたい。
(3) 協業化は、事業協同組合のほか、企業組合、協業組合等により実施すること。

2 ダンプ規制法第一二条団体の設立、加入の促進について

(1) ダンプ規制法第一二条団体は、ダンプ規制法がダンプカー事業者自らが交通安全に関する諸活動を行なうことを期待して規定した団体である。

その行なう主な事業は、ダンプ規制法第一二条第一項各号に規定しているところであるが、具体的には、
(イ) 会報による各種安全思想の普及徹底および情報の周知
(ロ) 巡回車による指導
(ハ) 会員標識の配布
(ニ) 交通事故相談
(ホ) 車検手続きの代行等の行政庁への許認可、届出事項の取りまとめ
(ヘ) 行政庁への要望等の取りまとめ

等があり、地域の実情に即した活動を行なうよう指導すること。
(2) 都道府県交通対策協議会、地方交通対策協議会は、昭和三六年八月九日交通対策本部決定に基づき、国の地方支分部局および都道府県機関相互間の連絡を緊密にし、交通問題を効率的かつ現実的に処理し、これが総合的な対策を推進するため設けられた機関である。
(3) 都道府県知事は、早急に都道府県交通対策協議会を開催し、関係機関に対し今回の交通対策本部決定の周知徹底、本決定実施のため関係機関の行なう事項、ダンプ規制法第一二条団体の設立手順の決定等を決定すること。

この場合、都道府県の交通安全対策の総合調整を担当する部局等の長を今回の交通対策本部決定を促進するための担当者に指名すること。

(4) 今回の交通対策本部決定Iの一の(2)のイからニまでに列記した関係機関の行なう事項は、法制上ダンプカー事業者と関係機関との接触が必らず行なわれる場合を例示したものであるので、本決定実施のため関係機関の行なう事項の決定に際してはこれら例示事項以外の行政指導事項でより効果がある事項を積極的に取り入れるように努めること。
(5) ダンプ規制法第一二条団体の設立手順を定めるときは、都道府県ごとに一団体を本年度中に設立するよう定めること。

なお、同団体の支部を各警察署ごと等により設けるのが望ましい。
都道府県ごとに一団体化が困難な場合は、各ブロックごと、大規模工事ごと等で設立していくこともやむを得ないものと認められる。

(6) ダンプ規制法第一二条団体の設立手続きは、ダンプ規制法施行令第二条に定めるところによること。なお、参考までに別添(一)の定款例を添付する。
(7) ダンプ規制法第一二条団体に加入している者のダンプカーに表示させる標識は、全国的に統一する見地から、別添(二)の例によるのが望ましい。

3 土砂、工事用資材等の運搬に際しての安全対策の確立

(1) 今回の交通対策本部決定は、工事発注者である国、地方公共団体、公社、公団等に対して、ダンプカーによる交通事故の発生を防止する措置を講ずるよう義務づけたものである。
(2) 都道府県においても、自己の発注する工事について今回の交通対策本部決定を厳守するよう努めるとともに、管下の市町村長、公社、事業団等に対して本決定の周知徹底を図られたい。また、民間の宅地造成事業者、鉄道事業者、電力事業者等の大規模な工事を行なう者及び砂利採取業者、砂利販売業者等に対しても同様に周知徹底を図られたい。
(3) 今回の交通対策本部決定に関連して、運輸省及び建設省から別添(3)の通達が出されているので参考に供されたい。

II 踏切道の緊急保安対策

(1) 踏切道改善促進協議会は、昭和四二年四月六日交通対策本部決定に基づき、イ構造改良、ロ保安設備の整備、ハ踏切道の統廃合、ニ車両の通行制限に関する計画を策定し、その推進を図るために設けられたものである。
(2) 都府県知事は、今回の交通対策本部決定が昭和四七年度末までという期限を設けた対策、直ちに実施する対策が含まれているため、直ちに踏切道改善促進協議会を開催し、本決定を実施する具体的実施計画を遅くとも本年度中に取りまとめ、来年度から実施の運びになるようにされたい。この場合、都府県の交通安全対策の総合調整を担当する部局等の長を今回の交通対策本部決定を促進するための担当者に指名すること。なお、具体的実施に当っても、本協議会が地元、鉄道事業者等との調整を行ない、本対策が円滑に行なわれるよう努められたい。
(3) 都府県の交通安全対策の総合調整を担当する部局等の長は、今回の交通対策本部決定を実施する具体的実施計画が取りまとまり次第、すみやかに総理府交通安全対策室長に報告すること。
(4) 今回の交通対策本部決定の具体的実施に関連して、別添(4)のとおり、警察庁、運輸省及び建設省から通達が出されているので参考に供されたい。
(5) 踏切道の緊急保安対策が適用される地域は、首都圏及び近畿圏の五〇キロメートル圏内並びに中部圏の三〇キロメートル圏内であるので、念のため申し添える。


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