運輸省国総第二四六号
昭和三六年四月一〇日

各陸運局長あて

自動車局長通達


自動車運送事業等運輸規則の一部を改正する省令及び道路運送車両の保安基準の一部を改正する省令の施行について


運行管理者制度、運行の安全の確保及び車掌の乗務に関する規定の新設・整備を図るため、二次にわたって自動車運送事業等運輸規則の一部改正(昭和三六年二月二日運輸省令第五号及び昭和三六年二月一七日運輸省令第七号)を行ない、また臨時乗車定員に関する規定を新設するため、道路運送車両の保安基準の一部改正(昭和三六年二月一七日運輸省令第八号)を行なった。
これらの改正は、一部を除きすでに施行されているが、その取り扱いについては、左記の諸点に留意し、業務の実施に遺憾のないよう取り図らわれたい。

乗車定員をこえて乗車させることは、道路交通法の禁ずるところであるが、乗合バスについては輸送の需給の関係上、従来の乗車定員が守られ難い場合もみうけられる現状にかんがみ、陸運局長は、運行のため必要な保安上の制限を附して臨時乗車定員を定めうることとし、この保安上の制限に従って運行する場合には、従来の乗車定員をこえて臨時乗車定員まで乗車させてもよいこととしたものである。(道路運送車両の保安基準第五三条の二)
なお、今回の措置は、通勤、通学時等いわゆるラッシュ時の輸送の需給調整を目的とするものであり、原則として、本来の乗車定員により運送することが望ましいことであるから、しばしば本来の乗車定員をこえて旅客を輸送しなければならないおそれのある運行系統については、運行回数の増加等輸送力の増強を図るよう事業者を強力に指導するとともに、交通取締及び道路事情等により運行回数の増加が制限されているような場合などには、必要に応じて関係各官庁と密接に連絡打合せを行ない輸送力の増強に努められたい。
この臨時乗車定員については、次により取り扱われたい。
1 臨時乗車定員の定め方

(1) 臨時乗車定員は、路線を定めて定期に運行する旅客自動車運送事業者の申請に基づき、当該事業者の事業用自動車(乗車定員三〇人以上のものに限る。)ごとに定めるものとする。

この場合申請書は、陸運事務所長を経由して申請するものとする。

(2) 臨時乗車定員は、保安基準第二二条の規定により計算した座席定員と保安基準第二四条第二項の規定を適用しないで計算した(座席の前縁二五〇ミリメートルの床面は立席の用に供するものとして計算した)立席定員との合計をこえない範囲内であり、かつ、総重量、軸重、制動能力等が保安基準に適合するように定めるものとする。
(3) 陸運局長は、臨時乗車定員を定めたときには、申請者に対して、臨時乗車定員を定めた旨を証する書面を交付するものとする。

2 運行のため必要な保安上の制限について

臨時乗車定員を定めるにあたっては、必ず保安上の制限を附さなければならないが、保安上の制限としては、例えば次のようなものが考えられる。
(1) 当該自動車が非常口を有し、十分な数のつり皮又は握り棒などがあり、かつ、換気にも相当な考慮が払われていること。
(2) 当該自動車を使用してよい又は使用してはならない路線の指定をすること。

この指定は、路面の状態、長坂路、屈曲の有無、その他路線の状況を考慮してされたい。
なお、保安上の制限を付した場合の通知は、個々の車両に対してでなく包括的にすれば足りるものとする。

3 事業者の指導監督について

本来の乗車定員をこえて旅客を運送するときは、乗客が転倒その他の危険を受けやすい状態にあるので、次の点に留意し事業者を十分指導監督されたい。
(1) 陸運局長によって付された保安上の制限を守るとともに、旅客の数に応じた運転方法及び車内秩序の維持方法などについて乗務員を教育するように指導すること。
(2) 満員のため乗車できない旅客の生ずることを防ぐため、運行回数について十分考慮するとともに、必要により臨時運行のできるよう予備車の配置等について万全を期するよう指導すること。
(3) 臨時乗車定員(定められていないものにあっては、本来の乗車定員)に達したときは、その旨の表示(臨時乗車定員を附記することが望ましい。)をする等の方法によりそれ以上旅客が乗車しないための措置を講ずること。
(4) 扉を閉じないで発車することは、旅客にとって非常に危険なことであるので運輸規則により禁じられているところであるが、本来の乗車定員をこえて乗車している場合は、このような事態が生ずるおそれが多いので、特にこの点について乗務員を教育すること。
(5) 車内及びその他必要な場所に満員などの表示のあるバスには乗車しないよう要請する旨の掲示(車内又は車体に掲示する際には、臨時乗車定員を附記すること。)をする等旅客に対しても、乗車定員を遵守するようPRすること。

4 自動車検査証との関係について

(1) 臨時乗車定員は、乗車定員欄に(臨○○○人)と附記すること。

なお、保安上の制限は、自動車検査証に記入する必要はない。

(2) 現に使用されている事業用自動車について

陸運局長が、臨時乗車定員を定めた場合は、道路運送車両法第六七条第一項の規定による自動車検査証の記載事項の変更をすること。
なお、自動車検査証の記載事項の変更の時期については、継続検査等の際にするように指導すること。

5 その他

(1) 臨時乗車定員を定められた自動車については、陸運局長が附した保安上の制限に従って運行する場合には、当該臨時乗車定員が道路交通法第五七条第一項の乗車人員に該当する。
(2) 臨時乗車定員は、特定の場合の乗車定員であり、一般的に適用されるものではないので、事業監理上及び許認可申請事案処理上事業者の供給輸送力を判断するときは、本来の乗車定員を基礎とする。
(3) 臨時乗車定員を定めた自動車が、路線を定めて定期に運行するものでなくなったとき又は保安上の制限の基準に合致しなくなったときは、臨時乗車定員の指定を取り消すこと。なお、保安上の制限は、必要に応じ、附加又は緩和することができる。

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