自旅第六三号
昭和五五年三月二九日

各陸運局長・沖縄総合事務局長あて

運輸省自動車局長通達


ハイヤー・タクシー事業に係る自動車交通共済協同組合の適正運営について


近年ハイヤー・タクシー事業者が、自動車事故に係る損害賠償についての相互援助等のため、自動車交通共済協同組合(以下「共済組合」という。)を設立し、共済事業を営む例が多くなっているが、かかる事故賠償金についての共済事業は第三者たる被害者が存在するため優れて公共的色彩を有するものであり、万一経営が破綻したときは、その影響がきわめて広範に及ぶことが予想され、経営の健全性、継続性が特に要請される。
従って、今後この種の共済組合の設立の認可及びその運営の指導にあたっては、左記事項に十分留意のうえ、遺憾のないよう配慮願いたい。
なお、社団法人全国乗用自動車連合会々長、全国個人タクシー連合会々長及び日本個人タクシー連合会々長に対して、別添〔略〕のとおり通達したので、申し添える。

1 事業の主体

(1) 設立の準拠法

共済組合は、中小企業等協同組合法(以下「法」という。)第三条第一号の事業協同組合として設立すること。
なお、前記の共済組合以外の団体等が一定規模以上の交通共済事業を営むことは原則として好ましくないので、現在このような事業を営んでいる団体等が存在する場合には、共済組合の設立を指導すること。

(2) 交通共済事業の独立性

交通共済事業の独立性を保持するため、既存の事業協同組合がその事業の一部として交通共済事業を営んでいる場合には、交通共済事業を独立して営むための共済組合の設立を指導する(当面共済組合の設立が困難な場合には、交通共済事業と他の事業との区分経理を厳正に行うよう指導する。)とともに、既存の事業協同組合が交通共済事業を営むための定款の変更は原則として認めないこと。

2 設立認可及び運営指導等の基準

交通共済事業の公共性及び健全性を確保する必要にかんがみ、共済組合の設立認可及び運営指導にあたっては、法の定め及びその精神を遵守するとともに、次の諸点に十分留意して行うこと。
(1) 事業の範囲

共済組合の営むことのできる事業は、次のとおりとすること。
イ 自動車対人事故賠償で自動車損害賠償責任保険による支払額を超える部分の共済事業
ロ 対物賠償共済事業
ハ 車両共済事業
ニ 損害保険会社の営む各種損害保険事業の代理店事業
ホ 前記イ、ロ、ハ及びニに附帯する事業

(2) 対象地区

共済組合の対象地区は、同一陸運局管内であり、かつ、原則として一都道府県単位以上とし、可能な限り対象地区が広いものとなるよう指導すること。
また、既認可の共済組合についても、逐次対象地区の拡大を図るよう指導すること。

(3) 対象事業者及び対象車両

共済組合に加入することのできる者は、道路運送法に基づく免許を受けた一般乗用旅客自動車運送事業者であって、当該組合の地区内に事業所を有する者とすること。
また、共済契約の対象とすることができる車両は、組合員が保有し、かつ、組合の地区内の陸運事務所に登録されている自動車とすること。

(4) 出資の額

共済組合への出資額は車両単位とし、当該共済組合への結合強化及び財産的基盤確立の見地から十分な額とし、出資の払込みは分割払込みによらず、全額払込み制とすること。

(5) 脱退者に対する持分の払い戻し

組合員が脱退したときは、出資額を限度としてその持分を払い戻すこと。

(6) 役員

共済組合の健全な運営を行うに十分な人格、識見及び能力を有する者が役員として選任されていること。

(7) 共済規約等の承認

共済組合の共済規約、共済約款、損害額査定基準及び経理基準の設定及び変更については、陸運局長の承認を得て実施するものとする。

(8) 共済掛金の額及び納入方法

共済組合への共済掛金は、交通共済事業の健全性を維持し、安定した共済金の給付を可能ならしめるため、一般的な類似の保険料に比し著しく下廻らないものとすること。
また、共済掛金は一括納入を原則とするとともに、共済組合による共済掛金の立替え払いは認めないこととする。

(9) 共済金の限度額

共済金の限度額は、損害賠償金額の水準に応じたものであり、かつ、事業運営の健全性に配慮したものであること。

(10) 重複契約の取扱い

不当な利得と故意による共済事故の発生を防止するため、損害額を超える共済(保険)金額が支払われることのないように重複契約の場合の調整を行うものとすること。

(11) 責任準備金等の積立

自動車による事故賠償、特に対人事故賠償の解決には、相当長期の年月を要するのが通例であるから、共済組合は、別紙基準(「責任準備金及び支払備金の積立に関する基準」)に基づいて責任準備金及び支払備金を積み立るとともに、組合の財産的基礎を安定させるため、剰余金についてもできるだけ内部蓄積にあてること。

(12) 資産の運用

共済組合は、その資産の運用にあたっては、共済金の支払いに支障をきたすことのないよう、健全性、流動性確保に留意し、運用の対象は、銀行、郵便局、商工中金等への預け金、国債、金融債、公社債(社債については政府がその元利を保障しているものに限る)等の買入れに限るものとすること。

(13) 事務経費の節減

事業経営の健全性を確保するため、共済組合は極力事務経費の節減に努めること。

(14) 報告の徴収及び指導監督

陸運局は、法の規定に基づき決算関係書類の提出等を求めるほか、必要に応じ、随時、検査を実施すること。

(15) 自治監査

共済組合は、事業経営の健全性を維持するため、内部の自治監査機能を充実強化することとし、このため定期的に自治監査を実施するとともに、その結果を陸運局長に報告すること。

(16) 損害査定体制の充実

共済組合は、損害査定を迅速、かつ、適正に行うため、損害査定員の資質の向上に努める等損害査定体制の充実を図ること。

(17) 審査委員会の設置

共済組合には、共済責任の有無、共済金額等についての不服の申出を審決するため、審査委員会を設置することとし、審査委員を選任したときは陸運局長に届け出るものとすること。

(18) 定款記載事項

共済組合の定款には、法第三三条第一項に掲げる事項のほか、次の事項について明記すること。
イ 共済規約、共済約款、損害額査定基準及び経理基準の設定変更について陸運局長の承認を受けることに関する事項
ロ 積立金の種類及び資産の運用方法に関する事項
ハ 自治監査の実施方法及びその結果の陸運局長への届け出に関する事項
ニ 審査委員会の設置及び審査委員の陸運局長への届け出に関する事項


(別紙)

責任準備金及び支払備金の積立に関する基準

1 責任準備金

次の(1)の金額と(2)の金額のうちいずれか多額な金額
(1) 毎事業年度において収入した共済掛金から、その年度において共済掛金を収入した共済契約の為に支払った共済金その他の金額およびその契約の為に積立てるべき支払備金ならびにその年度の事業費および一般管理費を控除した残額
(2) その年度の共済掛金について、未経過部分を次の方法により月別に計算した合計額

R=P×((N−M)/N)
R=当該月の未経過共済掛金額
P=当該月の共済掛金額
N=当該事業年度に属する月数
M=共済掛金を収納した月の翌月から当該事業年度末までの月数

2 支払備金

次の各項の金額の合計
(1) 当該共済組合の共済契約に基づき支払うべき共済金額は確定しているが、未だ支払っていないものがあるときは、その金額
(2) 当該共済組合の共済契約に基づきすでに発生した共済事故に対し、共済金を支払う義務があると認める場合(その支払に関して、訴訟係属中の場合を含む)、その支払に必要と認められる金額


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