国自旅第七二号
平成一三年八月二九日

各地方運輸局長・沖縄総合事務局長あて

自動車交通局長通達


一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーを除く。)の申請に対する処理方針


1 需給調整規制の廃止等を内容とする道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法の一部を改正する法律(平成一二年法律第八六号)が平成一四年二月一日から施行されることとなるが、この改正は、需給調整規制の廃止等により事業者間の競争を促進し、事業者の創意工夫を生かした多様なサービスの提供や事業の効率化、活性化を図るとともに、輸送の安全及び利用者利便の確保について十分な措置を講じることを目的としたものである。

改正後の道路運送法の施行に当たっては、その周知徹底に万全を期すとともに、前記の法改正の趣旨目的及び衆議院運輸委員会及び参議院交通・情報通信委員会において行われた附帯決議の趣旨を踏まえ対応することとされたい。
本省においても、これらを踏まえ今後、順次施行に必要な運用基準を示していく予定である。

2 一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーを除く。)の申請に対する処分の処理については、別紙のとおり処理方針を定めたので、各地方運輸局及び沖縄総合事務局(以下「各局等」という。)においては、その趣旨を十分理解の上、各局等において定めている審査基準について所要の改正を行うこととされたい。

各局等において本処理方針に基づき新たな審査基準を定めるときは、その内容を事前に本省と調整されたい。
なお、本件については、社団法人全国乗用自動車連合会会長あて、別添〔略〕のとおり通知したので申し添える。



(別紙)

一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーを除く。)の申請に対する処理方針

以下の方針の定めるところにより行うものとする。

1 許可(道路運送法(以下「法」という。)第四条第一項)

(1) 営業区域

1) 道路運送法施行規則(昭和二六年運輸省令第七五号)第五条に基づき地方運輸局長(沖縄総合事務局長を含む。以下同じ。)が定める営業区域を単位とするものであること。
2) 営業区域に営業所を設置するものであること。

(2) 営業所

配置する事業用自動車に係る運行管理及び利用者への営業上の対応を行う事務所であって、次の各事項に適合するものであること。
1) 営業区域内にあること。なお、複数の営業区域を有するものにあっては、それぞれの営業区域内にあること。
2) 申請者が、土地、建物について三年以上の使用権原を有するものであること。
3) 建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)、都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)、消防法(昭和二三年法律第一八六号)、農地法(昭和二七年法律第二二九号)等関係法令の規定に抵触しないものであること。
4) 事業計画を的確に遂行するに足る規模のものであること。

(3) 事業用自動車

申請者が使用権原を有するものであること。

(4) 最低車両数

1) 申請する営業区域において、次の区分ごとに示す車両数以上の事業用自動車を配置するものであること。

ア 人口五〇万人以上の都市を含む営業区域 一〇両
イ その他の営業区域 五両

2) 1)の車両数については、同一営業区域内に複数の営業所を設置する場合にあっては、当該複数の営業所に配置する車両数を合算できるものとするが、いずれの営業所においても五両以上の事業用自動車を配置するものであること。
3) 1)及び2)については、離島等これらの基準により難いものとして地方運輸局長が認める地域については、これによらないことができるものとする。

(5) 自動車車庫

1) 原則として営業所に併設するものであること。ただし、併設できない場合は、営業所から直線で二キロメートル以内の営業区域内にあっては運行管理をはじめとする管理が十分可能であること。
2) 車両と自動車車庫の境界及び車両相互間の間隔が五〇センチメートル以上確保され、かつ、営業所に配置する事業用自動車の全てを収容できるものであること。
3) 他の用途に使用される部分と明確に区画されているものであること。
4) 申請者が、土地、建物について三年以上の使用権原を有するものであること。
5) 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触しないものであること。
6) 事業用自動車の点検、整備及び清掃のための施設が設けられていること。
7) 事業用自動車の出入りに支障がない構造であり、前面道路が車両制限令(昭和三六年政令第二六五号)に抵触しないものであること。なお、前面道路が私道の場合にあっては、当該私道の通行に係る使用権原を有する者の承認があり、かつ、当該私道に接続する公道が車両制限令に抵触しないものであること。

(6) 休憩仮眠施設

1) 原則として営業所又は自動車車庫に併設されているものであること。ただし、併設できない場合は、営業所及び自動車車庫のいずれからも直線で二キロメートルの範囲内にあること。
2) 事業計画を的確に遂行するに足る規模を有し、適切な設備を有するものであること。
3) 他の用途に使用される部分と明確に区画され、かつ、事業計画に照らし運転者が常時使用することができるものであること。
4) 申請者が、土地、建物について三年以上の使用権原を有するものであること。
5) 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触しないものであること。

(7) 管理運営体制

1) 法人にあっては、当該法人の役員のうち一名以上が専従するものであること。
2) 営業所ごとに、配置する事業用自動車の数により義務づけられる常勤の有資格の運行管理者の員数を確保する管理計画があること。この場合において、旅客自動車運送事業運輸規則(昭和三一年運輸省令第四四号、以下「運輸規則」という。)第二二条第一項に基づき地方運輸局長が指定する地域において法第二三条の二第一項第二号の規定により運行管理者資格者証の交付を受けた者を運行管理者として選任する場合には、申請に係る営業区域において五年以上の実務の経験を有するものであること。
3) 運行管理を担当する役員等運行管理に関する指揮命令系統が明確であること。
4) 自動車車庫を営業所に併設できない場合は、自動車車庫と営業所とが常時密接な連絡をとれる体制が整備されるとともに、点呼等が確実に実施される体制が確立されていること。
5) 事故防止についての教育及び指導体制を整え、かつ、事故の処理及び自動車事故報告規則(昭和二六年運輸省令第一〇四号)に基づく報告等の責任体制その他緊急時の連絡体制及び協力体制について明確に整備されていること。
6) 前記2)〜5)の事項等を明記した運行管理規程が定められていること。
7) 運輸規則第三六条第二項に基づく運転者として選任しようとする者に対する指導を行うことができる体制が確立されていること。
8) 運転者に対して行う営業区域内の地理及び利用者等に対する応接に関する指導監督に係る指導要領が定められているとともに、当該指導監督を総括処理する指導主任者が選任されていること。
9) 原則として、常勤の有資格の整備管理者の選任計画があること。ただし、整備管理者を外部委託する場合は、事業用自動車の運行の可否の決定等整備管理に関する業務が確実に実施される体制が確立されていること。
10) 利用者等からの苦情の処理に関する体制が整備されていること。

(8) 運転者

1) 事業計画を遂行するに足る員数の有資格の運転者を常時選任する計画があること。
2) この場合、適切な乗務割、労働時間、給与体系を前提としたものであって、労働関係法令の規定に抵触するものでないこと。
3) 運転者は、運輸規則第三六条第一項各号に該当する者ではないこと。
4) 定時制乗務員を選任する場合には、適切な就業規則を定め、適切な乗務割による乗務日時の決定等が適切になされるものであること。

(9) 資金計画

1) 所要資金の見積りが適切であり、かつ、資金計画が合理的かつ確実なものであること。なお、所要資金は次の(イ)〜(ト)の合計額とし、各費用ごとに以下に示すところにより計算されているものであること。

(イ) 車両費 取得価格(未払金を含む)又はリースの場合は一年分の賃借料等
(ロ) 土地費 取得価格(未払金を含む)又は一年分の賃借料等
(ハ) 建物費 取得価格(未払金を含む)又は一年分の賃借料等
(ニ) 機械器具及び什器備品 取得価格(未払金を含む)
(ホ) 運転資金 人件費、燃料油脂費、修繕費等の二か月分
(ヘ) 保険料等 保険料及び租税公課(一年分)
(ト) その他 創業費等開業に要する費用(全額)

2) 所要資金の五〇%以上、かつ、事業開始当初に要する資金の一〇〇%以上の自己資金が、申請日以降常時確保されていること。なお、事業開始当初に要する資金は、次の(イ)〜(ハ)の合計額とする。

(イ) 1)(イ)に係る頭金及び二か月分の分割支払金、又は、リースの場合は二か月分の賃借料等。ただし、一括払いによって取得する場合は、1)(イ)と同額とする。
(ロ) 1)(ロ)及び(ハ)に係る頭金及び二か月分の分割支払金、又は、二か月分の賃借料及び敷金等。ただし、一括払いによって取得する場合は、1)(ロ)及び(ハ)と同額とする。
(ハ) 1)(ニ)〜(ト)に係る合計額

(10) 法令遵守

1) 申請者又は申請者が法人である場合にあってはその法人の業務を執行する常勤の役員が、一般乗用旅客自動車運送事業の遂行に必要な法令の知識を有するものであること。
2) 申請者又は申請者が法人である場合にあってはその法人の業務を執行する常勤の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下同じ。)(以下「申請者等」という。)が、次の(イ)及び(ロ)に該当する等法令遵守の点で問題のないこと。

(イ) 法、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八三号)及びタクシー業務適正化特別措置法(昭和四五年法律第七五号)等の違反により申請日前二年間及び申請日以降に輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(当該処分を受けた者が法人である場合における当該処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該処分を受けた法人の業務を執行する常勤の役員として在任していた者を含む。)ではないこと。
(ロ) 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律(平成一三年法律第五七号)の違反により申請日前二年間及び申請日以降に営業の停止命令又は営業の廃止命令の処分を受けた者(当該処分を受けた者が法人である場合における当該処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該処分を受けた法人の業務を執行する常勤の役員として在任していた者を含む。)ではないこと。

(11) 損害賠償能力

対人八、〇〇〇万円以上、対物二〇〇万円以上の任意保険又は共済に計画車両の全てが加入する計画があること。

(12) 適用

1) リフト付きタクシー等特殊なサービスに限る事業については、事業の特性を踏まえて判断することとし、許可に際しては、必要に応じ業務の範囲を当該事業に限定する旨の条件を付すこと。
2) 道路運送法施行規則第四条第四項第三号に規定するハイヤーのみを配置して行う事業については、業務の範囲を当該事業に限定する旨の条件を付すこと。

(13) 申請時期等

1) 申請時期

許可の申請は、随時受け付けるものとする。ただし、道路運送法第八条の緊急調整地域に指定されている地域を営業区域とする申請の受付は行わない。

2) 処分時期

原則として随時行うこととする。ただし、地域の状況に応じて標準処理期間を考慮した上で一定の処分時期を定めることができることとする。

2 事業計画の変更の認可(法第一五条第一項)

(1) 1(1)〜(9)・(11)〜(13)の定めるところに準じて審査すること。
(2) 事業規模の拡大となる申請については、申請者等が以下のすべてに該当するものであること等法令遵守の点で問題のないこと。

1) 法、貨物自動車運送事業法及びタクシー業務適正化特別措置法等の違反により申請日前二年間及び申請日以降に輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた者(当該処分を受けた者が法人である場合における当該処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該処分を受けた法人の業務を執行する常勤の役員として在任していた者を含む。)ではないこと。

ただし、事業規模の拡大に係る営業区域外で受けた自動車等の使用停止以上の処分であって、以下に掲げるものを除く。
(イ) 運転者の道路交通法(昭和三五年法律第一〇五号)の違反(4)に掲げる違反を除く。)による処分(地方運輸局長が定める処分基準の初犯又は初回欄の適用がある場合に限る。)
(ロ) 申請日の一年前より前に受けた処分
(ハ) 申請日前一年間及び申請日以降に地方運輸局長が定める処分基準において二〇日車未満の自動車等の使用停止処分を行うべきものとされている法令違反に係るもの(処分日車数が二〇日車未満に軽減された場合を含み、加重により二〇日車以上となった場合を除く。)

2) 法、貨物自動車運送事業法及びタクシー業務適正化特別措置法等の違反により、輸送の安全の確保、公衆の利便を阻害する行為の禁止、公共の福祉を阻害している事実等に対し改善命令を受けた場合にあっては、申請日前に当該命令された事項が改善されていること。
3) 申請日前一年間及び申請日以降に自らの責に帰する重大事故を発生させていないこと。
4) 申請日前一年間及び申請日以降に特に悪質と認められる道路交通法の違反(無免許、飲酒及び過労に起因する事故、ひき逃げ等)がないこと。
5) 旅客自動車運送事業報告規則(昭和三九年運輸省令第二一号)及び自動車事故報告規則に基づく各種報告書の提出を適切に行っていること。
6) 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の違反により申請日前二年間及び申請日以降に営業の停止命令又は営業の廃止命令の処分を受けた者(当該処分を受けた者が法人である場合における当該処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該処分を受けた法人の業務を執行する常勤の役員として在任していた者を含む。)ではないこと。

3 事業の譲渡譲受の認可(法第三六条第一項)

(1) 事業を譲り受けようとする者について、1(1)〜(13)の定めるところに準じて審査すること。
(2) 事業の全部を譲渡譲受の対象とするものであること。ただし、「タクシー事業に係る事業の分割譲渡の取扱いについて」(平成一〇年一二月一七日付け自旅第一九八号)において認められている場合において分割譲渡が行われる場合は、この限りでない。

4 合併、分割又は相続の認可(法第三六条第二項又は第三七条第一項)

(1) 1(1)〜(13)の定めるところに準じて審査すること。
(2) 分割の認可については、分割後において存続する事業者が、1(4)の基準を満たさない申請については、認可しないこととする。
(3) 分割の認可については、商法等の一部を改正する法律(平成一二年法律第九〇号)附則第五条及び会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成一二年法律第一〇三号)に基づき、会社の分割に伴う労働契約の承継等が行われているものであること。
(4) 事業の一部の分割の認可については、設立会社等が次のいずれかに該当するものであること。

1) 既存のタクシー事業者(一人一車制個人タクシー事業者を除く。)
2) 分割会社の五〇%を超える出資による子会社

5 運送約款の認可(法第一一条第一項)

(1) 公衆の正当な利益を害するおそれがないものであること。
(2) 道路運送法施行規則第一二条各号に掲げる事項が明確に定められていること。

6 運賃及び料金の認可(法第九条の三第一項)

別に定めるところにより行うものとする。

7 許可又は認可に付した条件の変更等

(1) 前記1〜4の許可又は認可に付した条件又は期限について、変更若しくは解除又は期限の延長を行う場合には、前記1〜4の定めるところにより審査すること。
(2) 前記1(12)に基づき付した業務の範囲を一定の事業に限定する旨の条件の解除は、緊急調整地域に指定された地域では行わないこと。

8 挙証等

申請内容について、客観的な挙証があり、かつ、合理的な陳述がなされるものであること。

9 実施時期

本処理方針は、平成一四年七月一日以降に申請を受け付けたものから適用するものとする。


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport