国自旅第七八号
平成一三年九月一二日

各地方運輸局長・沖縄総合事務局長あて

国土交通省自動車交通局長通達


一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーに限る。)の申請に対する処分に関する処理方針


1 一人一車制個人タクシー事業(以下「個人タクシー」という。)は、昭和三四年に「自動車運転者に将来の希望を与えるとともに、タクシー業界に新風を注入する」ことを目的として導入された特別な制度であるが、個人タクシーでは、運行管理、整備管理等の全てを運転者自らが責任を持って行わなければならないことから、これまでも優秀適格者に限って本事業の免許を付与してきたところである。

今般、改正道路運送法の施行により、タクシー事業の参入規制が免許制から許可制へ移行することとなったが、個人タクシーについては、同法の国会審議における附帯決議等を勘案し、今後も引き続き、制度創設時の趣旨を維持し、優良・優秀な運転者に限って認める特別な制度として位置づけることとするので、左記の点に留意しつつ運用していくこととされたい。

2 個人タクシーの申請に対する処分の処理については、その具体的な方針を別紙のとおり定めたので、各地方運輸局(沖縄総合事務局を含む。以下同じ。)においては、その趣旨を十分理解の上、各地方運輸局で定めている審査基準について、所要の改正を行い、速やかにこれを公示することとされたい。

なお、各地方運輸局において、本処理方針に基づき新たな審査基準を定めるときは、その内容を事前に本省と調整されたい。

3 その他の個人タクシーに係る取扱いについては、追って通達することとする。
4 また、本件については、社団法人全国個人タクシー協会会長あて別添〔略〕のとおり通知したので申し添える。

1 許可に際しては、個人タクシー事業が特別な制度であることに鑑み、事業者及び運転者としての両側面を加味した厳格な資格要件を課すこととする。
2 許可を行う地域については、人口が概ね三〇万人以上の都市を含む営業区域等で、いわゆる流し営業が成り立つ地域として地方運輸局長又は沖縄総合事務局長が認めた地域とし、原則として法人タクシーの営業区域と同一の地域とする。


(別紙)

一般乗用旅客自動車運送事業(一人一車制個人タクシーに限る。)の申請に対する処分に関する処理方針

I 許可(道路運送法(以下「法」という。)第四条第一項)

以下の方針の定めるところにより行うものとする。
1 営業区域

道路運送法施行規則(昭和二六年運輸省令第七五号)第五条に基づき地方運輸局長(沖縄総合事務局長を含む。以下同じ。)が定める営業区域とするものであること。

2 年齢

申請日現在の年齢が六五歳未満であること。

3 運転経歴等

(1) 有効な第二種運転免許(普通免許又は大型免許に限る。以下同じ。)を有していること。
(2) 申請日現在における別表の左欄に掲げる年齢区分に応じて、右欄に定める国内の自動車運転経歴、タクシー又はハイヤーの運転経歴等の要件すべてに適合するものであること。

4 法令遵守状況

(1) 申請日以前五年間及び申請日以降に、次に掲げる処分を受けていないこと。また、過去にこれらの処分を受けたことがある場合には、申請日の五年前においてその処分期間が終了していること。

1) 法又は貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八三号)の違反による輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分
2) 道路交通法(昭和三五年法律第一〇五号)の違反による運転免許の取消し処分
3) タクシー業務適正化特別措置法(昭和四五年法律第七五号)に基づく登録の取消し処分及びこれに伴う登録の禁止処分
4) 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律(平成一三年法律第五七号)の違反による営業の停止命令又は営業の廃止命令の処分
5) 刑法(昭和四〇年法律第四五号)、暴力行為等処罰に関する法律(大正一五年法律第六〇号)、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二八年法律第一四号)、覚せい剤取締法(昭和二六年法律第二五二号)、売春防止法(昭和三一年法律第一一八号)、銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三三年法律第六号)、その他これらに準ずる法令の違反による処分
6) 自らの行為により、その雇用主が受けた法、貨物自動車運送事業法又はタクシー業務適正化特別措置法に基づく輸送施設の使用停止以上の処分

(2) 申請日以前三年間及び申請日以降に、道路交通法の違反による処分(同法の規定による反則金の納付を命ぜられた場合又は反則点を課せられた場合を含む。)を受けていないこと。ただし、申請日の一年前以前において、反則点一点を付された場合(併せて同法の規定による反則金の納付を命ぜられた場合を含む。)又は反則金の納付のみを命ぜられた場合のいずれか一回に限っては、処分を受けていないものとみなす。
(3) (1)又は(2)の違反により現に公訴を提起されていないこと。

5 資金計画

(1) 所要資金の見積りが適切であり、かつ、資金計画が合理的かつ確実なものであること。なお、所要資金は次の1)〜4)の合計額とし、各費用ごとに以下に示すところにより計算されているものであること。

1) 設備資金(3)を除く。)

原則として七〇万円以上(ただし、七〇万円未満で所要の設備が調達可能であることが明らかな場合は、当該所要金額とする。)

2) 運転資金

原則として七〇万円以上

3) 自動車車庫に要する資金

新築、改築、購入又は借入等自動車車庫の確保に要する資金

4) 保険料

自動車損害賠償保障法に定める自賠責保険料(保険期間一二ケ月以上)、並びに、対人八、〇〇〇万円以上及び対物二〇〇万円以上の任意保険又は共済に係る保険料の年額

(2) 所要資金の一〇〇%以上の自己資金(自己名義の預貯金等)が、申請日以降常時確保されていること。

6 営業所

個人タクシー営業上の管理を行う事務所であって、次の各事項に適合するものであること。
(1) 申請する営業区域内にあり、原則として住居と営業所が同一であること。
(2) 申請する営業区域内に申請日前継続して一年以上居住しているものであること等、居住する住居に永続性が認められるものであること。
(3) 使用権原を有するものであること。

7 事業用自動車

使用権原を有するものであること。

8 自動車車庫

(1) 申請する営業区域内にあり、営業所から直線で二キロメートル以内であること。
(2) 計画する事業用自動車の全体を収容することができるものであること。
(3) 隣接する区域と明確に区分されているものであること。
(4) 土地、建物について、三年以上の使用権原を有するものであること。
(5) 建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)、都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)、消防法(昭和二三年法律第一八六号)、農地法等(昭和二七年法律第二二九号)の関係法令に抵触しないものであること。
(6) 計画する事業用自動車の出入りに支障がなく、前面道路が車両制限令(昭和三六年政令第二六五号)に抵触しないものであること。なお、前面道路が私道の場合にあっては、当該私道の通行に係る使用権原を有する者の承認があり、かつ、当該私道に接続する公道が車両制限令に抵触しないものであること。
(7) 確保の見通しが確実であること。

9 健康状態及び運転に関する適性

(1) 公的医療機関等の医療提供施設において、胸部疾患、心臓疾患及び血圧等に係る診断を受け、個人タクシーの営業に支障がない健康状態にあること。
(2) 自動車事故対策センター等において運転に関する適性診断を受け、個人タクシーの営業に支障がない状態にあること。

10 法令及び地理に関する知識

申請する営業区域を管轄する地方運輸局長が実施する法令及び地理の試験に合格した者であること。なお、法令及び地理の試験の実施については、別に定めるところにより行うものとする。
ただし、申請する営業区域において、申請日以前継続して一〇年以上タクシー・ハイヤー事業者に運転者として雇用されている者で、申請日以前五年間無事故無違反であった者については、地理試験を免除できることとする。

11 その他

申請日前三年間において個人タクシー事業を譲渡若しくは廃止し、又は期限の更新がなされなかった者でないこと。

12 申請及び処分の時期等

(1) 申請の受付

毎年一回一定の時期とする。ただし、法第八条に基づく緊急調整地域に指定されている地域を営業区域とする申請の受付は行わない。

(2) 法令及び地理の試験の実施

全国一斉の時期に実施する。

(3) 申請内容の確認

申請内容の確認のため、(2)の試験に合格した者について必要に応じヒアリングを実施するものとする。

(4) 処分の時期

各地方運輸局長が定める時期とする。

II 許可等に付す期限及び条件(法第八六条第一項)

1 新規許可等に付す期限

新規許可又は譲渡譲受認可若しくは相続認可に当たっては、当該許可又は認可後三年間とする期限を付すこととする。

2 新規許可等に付す条件

新規許可又は譲渡譲受認可若しくは相続認可に当たっては、少なくとも次の条件を付すこととする。
(1) 引き続き有効な第二種運転免許を有するものであること。なお、当該第二種運転免許の取り消し処分を受けた場合には許可を取り消すものであること。
(2) 使用する事業用自動車は一両であり、他人に当該事業用自動車を営業のために運転させてはならないこと。
(3) 患者輸送等の特殊な需要に特化した運送のみを行うものでないこと。
(4) 事業用自動車の両側面に見やすいように「個人タクシー」と表示すること。
(5) 月に二日以上の定期休日を定めること。
(6) 地方運輸局長等が日時及び場所を指定して出頭を求めたときは、特別の事情がない限りこれに応じること。
(7) 営業中は運転日報を携行しこれに記入を行い、一年間は保存すること。
(8) 氏名等の記載とともに写真を貼付した事業者乗務証を車内に掲示すること。
(9) 刑法、暴力行為等処罰に関する法律、麻薬及び向精神薬取締法、覚せい剤取締法、売春防止法、銃砲刀剣類所持等取締法のいずれかに抵触する行為により処罰を受けた場合には、許可を取り消すことがあること。
(10) 年齢が満六五歳に達した場合には、旅客自動車運送事業運輸規則(昭和三一年運輸省令第四四号)第三八条第二項に定めるところにより同項の認定を受けた適性診断を受けるとともに、公的医療機関等の医療提供施設において健康診断を毎年受診すること。
(11) 年齢が満七五歳に達する日以降の期限を付す更新は行わないものであること。

III 事業計画の変更の認可(法第一五条第一項)

Iに定めるところに準じて審査することとする。

IV 譲渡譲受及び相続の認可(法第三六条第一項及び第三七条第一項)

1 譲渡譲受の認可

(1) 譲渡人の資格要件

申請日現在において、次のいずれかに該当するとともに、有効な第二種運転免許を有していること。
1) 年齢が六五歳以上七五歳未満であること。
2) 年齢が六五歳未満で、傷病等により事業を自ら遂行できない正当な理由がある者。
3) 年齢が六五歳未満で、二〇年以上個人タクシー事業を経営している者であること。

(2) 譲受人の資格要件

Iに定める基準を満たす者であること。

(3) 申請及び処分の時期等

1) 申請の受付

毎年三回程度とする。

2) 法令及び地理の試験の実施

毎年三回程度、全国一斉の時期に実施する。

3) 申請内容の確認

申請内容の確認は、2)の試験に合格した者について必要に応じたヒアリングを実施するものとする。

4) 処分の時期

各地方運輸局長が定める時期とする。

2 相続の認可

(1) 被相続人の死亡時における年齢が七五歳未満であること。
(2) 相続人がIに定める基準を満たす者であること。
(3) 申請の受付、法令及び地理の試験並びに処分は、随時行うこととする。ただし、申請が被相続人の死亡後六〇日以内になされるものであること。

V 運送約款の認可(法第一一条第一項)

(1) 公衆の正当な利益を害するおそれがないものであること。
(2) 道路運送法施行規則第一二条各号に掲げる記載事項が明確に定められていること。

VI 運賃及び料金の認可(法第九条の三第一項)

別に定めるところにより行うものとする。

VII 挙証等

申請内容について、客観的な挙証等があり、かつ、合理的な陳述がなされるものであること。

VIII 実施時期

本処理方針は、平成一四年二月一日以降に申請を受け付けたものから適用するものとする。
なお、地域の実情に応じて、所要の経過措置を設けることができるものとする。



(別表)

個人タクシーの申請に係る運転経歴要件

申請時の年齢
運転経歴要件
A 三五歳未満
1 申請する営業区域において、申請日以前継続して一〇年以上同一のタクシー又はハイヤー事業者に運転者として雇用されていること。
2 申請日以前一〇年間無事故無違反であること。
B 三五歳以上四〇歳未満
1 申請日以前、申請する営業区域において自動車の運転を専ら職業とした期間(他人に運転専従者として雇用されていた期間で、個人タクシー事業者又はその代務運転者であった期間を含む。)が一〇年以上であること。この場合、一般旅客自動車運送事業用自動車以外の自動車の運転を職業とした期間は五〇%に換算する。
2 1の運転経歴のうちタクシー・ハイヤーの運転を職業としていた期間が五年以上であること。
3 申請する営業区域においてタクシー・ハイヤーの運転を職業としていた期間が申請日以前継続して三年以上であること。
4 申請日以前一〇年間無事故無違反である者については、四〇歳以上六五歳未満の要件によることができるものとする。
C 四〇歳以上六五歳未満
1 申請日以前二五年間のうち、自動車の運転を専ら職業とした期間(他人に運転専従者として雇用されていた期間で、個人タクシー事業者又はその代務運転者であった期間を含む。)が一〇年以上であること。この場合、一般旅客自動車運送事業用自動車以外の自動車の運転を職業とした期間は五〇%に換算する。
2 申請する営業区域において、申請日以前三年以内に二年以上タクシー・ハイヤーの運転を職業としていた者であること。

(適用)

(1) B1及びC1の「自動車の運転」に係る自動車については、道路運送車両法施行規則(昭和二六年運輸省令第七四号)別表第一に規定する普通自動車(四輪以上の自動車に限る。)、小型四輪自動車(四輪以上の自動車に限る。)及び軽自動車(民間患者輸送事業の用に供する自動車に限る。)とする。
(2) B3及びC2の「タクシー・ハイヤーの運転を職業」については、当初、タクシー又はハイヤー運転者として雇用され、引き続き運行管理者又は整備管理者として選任された場合を含む。
(3) 三五歳以上四〇歳未満の者に対する四〇歳以上六五歳未満の要件の適用について、B4の要件によるか、すべての者についてCの要件を適用するかについては、地域の実情を踏まえ地方運輸局長の判断によることができるものとする。


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