道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)の施行に伴い、一般乗合旅客自動車運送事業における運賃及び料金の設定及び変更に関しては、認可を受けた運賃等の上限の範囲内での事前届出制に移行することとなった。
事前届出制への移行により、従来以上に利用者のニーズ及び地域の実情に即した多様な運賃及び料金の設定が可能になるとともに、その迅速な実施が図られることとなるが、一方で公正競争の確保及び利用者保護の観点から不当な運賃及び料金の設定については、変更命令の発動等による是正を機動的に行う必要がある。
以上の趣旨を踏まえ、一般乗合旅客自動車運送事業における実施運賃の届出及び変更命令に関する処理要領を左記のとおり定めたので、その趣旨を十分理解の上、事務処理上、遺漏のないよう取り計らわれたい。
第1 用語の定義
この処理要領中、次に掲げる以外の運賃及び料金関係の用語の定義については、「一般乗合旅客自動車運送事業の運賃及び料金の上限の認可に関する処理方針」(平成一三年一二月五日付け国自旅第一一六号)(以下「上限認可処理方針通達」という。)及び「一般乗合旅客自動車運送事業の運賃及び料金に関する制度の全部改正について」(平成一三年一二月五日付け国自旅第一一八号)(以下「制度通達」という。)に定めるところによる。
(1) 「基本運賃」:「上限認可処理方針通達」第2・1(1)〜(3)の運賃をいう。
(2) 「一般割引運賃」:基本運賃を基礎として、適用する旅客の区分に応じて一定率又は一定額を減じて設定する運賃(適用する期間に限定のないものに限る。)をいう。
(3) 「営業割引運賃」:需要喚起等を目的として、適用する期間又は区間その他の条件を付して設定する運賃であって一般割引運賃以外のものをいう。
第2 実施運賃の届出に関する手続
1 届出書の提出
(1) 新規許可との関係
新規許可申請の場合における実施運賃の実施日は、道路運送法施行規則(以下「規則」という。)第九条第二項により当該路線について他の事業者が現に適用している運賃等と同一の運賃等の設定を届け出る場合を除き、上限の認可の日から三〇日を経過した日以降となる。
(2) 事業計画変更認可及び運行計画届出との関係
路線の延長、系統の新設等による事業計画の変更の認可に伴う実施運賃の届出は、当該認可の申請と同時に提出させるものとし、実施運賃の届出の実施予定日は「認可に基づき事業計画の変更の認可を実施する日」と記載するものとする。
また、運行計画の変更の届出に伴う実施運賃の届出についても、これを当該運行計画変更の届出と同時に提出させるものとし、実施運賃の届出の実施予定日は「届出に基づき運行計画を実施する日」と記載するものとする。
なお、事業計画の変更の認可に伴う実施運賃の届出又は運行計画の変更の届出に伴う実施運賃の届出にあたっては、それぞれその実施する日の少なくとも七日前には、旅客自動車運送事業運輸規則第六条の規定による所定の掲示をしなければならないものとする。
(3) 届出書様式
上限認可を受けた運賃等の範囲内で実施運賃を届け出る場合は、別紙1の届出書によるものとする。
(4) 提出先
道路運送法施行令第一条第一項第三号に定めるとおりとする。
2 届出の受理
規則第九条第一項又は第一〇条第二項に掲げる記載事項が正しく記載されているか確認の上、受理するものとする。
第3 実施運賃の内容
1 実施運賃は、適用範囲、区間等に応じた確定額によるものとし、運賃表(いわゆる三角表等)の表記は、設定の届出にあっては上限運賃額及び実施運賃額、変更の届出にあっては上限運賃額、現行実施運賃額及び変更実施運賃額の別を明確にするものとする。
なお、改正法附則第五条の規定により、認可を受けた若しくは届け出たとみなされる運賃等を引き続き適用しようとする場合は、現行運賃表の訂正等は求めないものとする。
この場合において、自社の基準賃率等により算出される額を下回る現行運賃額については、自社の基準賃率等により算出される額を上限運賃額とみなし、この処理要領を適用するものとする。
第4 実施運賃の変更命令の検討等に関する基準
1 変更命令の発動を検討する数値基準
運賃等の種別に応じ、以下のとおりとする。
なお、競合区間等で各事業者の運賃制定形態が異なる場合にあっては、上限認可処理方針通達別表の換算方式により換算した額により判断するものとする。
(1) 基本運賃
上限運賃(競合路線にあっては運賃額又は基準賃率の最も低いもの。)を二〇%を超えて下回るもの。
ただし、以下に該当する運賃については、変更命令の発動を検討するに際し、弾力的な取扱いをするものとする。
イ 鉄道等他の交通機関と並行している区間の運賃(当該他の交通機関の運賃の額を下回らない場合に限る。)
ロ 単独路線で運賃額の調整を必要とする区間において当該調整を行った運賃
ハ 特別初乗運賃
(2) 一般割引運賃
基本運賃(競合路線にあっては運賃額の最も低いもの。)を五〇%を超えて下回るもの。
(3) 営業割引運賃
原則として数値基準による検討は行わない。
(4) 運輸に関する料金
原則として数値基準による検討は行わない。
2 変更命令発動の要否を判断する基準
(1) 変更命令を発する具体的対象事例を列記すれば、次のとおりである。
1) 法第九条第五項第一号に該当する場合(規則第一〇条第一項に規定する料金のみ対象)
・物価変動の状況、その他の社会経済的状況を勘案し、合理的かつ正当な理由なく、利用者に過度の負担を強いる料金であると認められるとき等が該当する。
2) 法第九条第五項第二号に該当する場合
・法第九条第三項又は第四項により、一般乗合旅客自動車運送事業者が届け出た運賃又は料金(以下「届け出た運賃等」という。)が、合理的かつ正当な事由なく、特定の旅客を優遇又は冷遇するものであるとき等が該当する。
なお、合理的かつ正当な理由とは、個別具体的な事例ごとに判断されるものであるが、具体的には、運賃又は料金体系における整合性、社会政策上の観点、社会通念等を勘案し、総合的に判断するものとする。
3) 法第九条第五項第三号に該当する場合
・届け出た運賃等が、一般乗合旅客自動車運送事業者間の公正な競争を阻害するおそれのあるものであるとき等が該当する。
なお、公正な競争を阻害するか否かについては、個別具体的な事例ごとに判断されるものであるが、基本的には届け出た運賃等について、原価を償うことが可能かどうか、路線の特性、その設定又は変更の意図、継続性及び届け出た運賃等が他の一般乗合旅客自動車運送事業者に与える影響の度合等を勘案し、総合的に判断するものとする。
第5 実施運賃の変更命令の発動に係る手続
1 変更命令の発動に係る調査
(1) 調査の実施
届け出た運賃等について、第4・1の数値基準に該当する場合にあっては、法第九条第五項各号の規定(以下「変更命令の要件」という。)のいずれかに該当するか否かについて、第4・2の基準に沿って判断するために必要となる調査を実施するものとする。
なお、第4・1(3)(4)の運賃等についても、変更命令の要件に該当するおそれが極めて高い場合にあっては、前記の調査を実施するものとする。
(2) 調査の内容
届け出た運賃等の調査にあたっては、原価計算書等の関係資料の提出を求め、関係者へのヒアリング、関係官署への照会等を行い、運賃算出方法の妥当性、あるいは安全運行の確保の観点から不当な労働条件等によるコスト削減を前提としたものでないか等を確認するものとする。
(3) 調査の結果、届け出た運賃等が変更命令の要件に該当すると認められる場合には、2に従い変更命令の発動に係る具体的手続に入るものとする。
なお、調査の結果、変更命令の発動までには至らない事案であっても、必要と認められる場合においては、受理後、一定の期間経過後に、監査等を利用して再調査を行うものとする。
2 変更命令の発動に係る留意事項及び具体的手続
(1) 変更命令を発動しようとする場合で、国土交通大臣の権限に係る事案については、あらかじめ、法第八八条の二第三項の規定に基づき、運輸審議会へ諮ることとする。
(2) 変更命令の発動に当たっては、行政手続法(平成五年法律第八八号)第一三条第一項に規定する弁明の機会を付与(相当と認める場合は聴聞)の手続を経るものとする。
(3) その他具体的手続及び留意点
1) 変更命令の内容は、届け出た運賃等の事案ごとに決定するものとする。
2) 変更命令は原則として、実施予定日の七日前までに行うこととする。
3) 変更命令は、変更命令の要件に照らし、その理由を具体的に示して行うものとする。
4) 既に実施している運賃及び料金に対して変更命令を発動する場合においては、変更命令を発した日から原則として三〇日以内の日を指定して変更すべきことを命ずるものとする。
第6 その他
1 当分の間、地方運輸局長(沖縄総合事務局長を含む。)が前記第5の変更命令を発動するに当たっては、本省と事前に連絡調整の上、これを行うものとする。
2 本取扱要領は、平成一四年二月一日以降に処分するものから適用する。