国自総第四六五号・国自旅第一七二号
平成一四年二月一三日

社団法人日本バス協会会長・社団法人全国乗用自動車連合会会長・社団法人全国個人タクシー協会会長あて

国土交通省自動車交通局長通知


飲酒運転等悪質・危険な運転行為による事故防止の徹底について


平成一一年一一月に東名高速道路で飲酒運転の事業用自動車による追突事故で幼児二名が死亡するという悲惨な事故が発生したことなどを背景に、悪質な交通違反による事故に対する厳罰化の世論が高まり、昨年一二月に刑法が改正され、新たに「危険運転致死傷罪」が設けられたことにより、アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で運転するなど悪質・危険な運転行為により人を死傷させた者に対する罰則が強化されました。
道路交通法につきましても、昨年六月の改正で酒酔い運転等をした者に対する罰則が強化されるとともに、今般、同法施行令の改正により、酒気帯び運転等をした者に対する行政処分の強化等が行われました(本年六月一日施行)。
事業用自動車による事故の防止につきましては、これまでにも機会あるごとに徹底をお願いしてきたところでありますが、悲惨な事故が依然として発生しており、今般の法律等の改正を契機に、改めて貴協会(連合会)会員に対し、左記事項について再度徹底し、飲酒運転等悪質・危険な運転行為による事故の防止に万全を期するよう周知方お願いします。
なお、飲酒運転等の事実が判明した場合には、道路運送法第四〇条に基づく行政処分を既に通知した行政処分等の基準に基づき厳正に行うこととしているので、申し添えます。

1 「別紙」の刑法の一部改正、道路交通法の一部改正及び道路交通法施行令の一部改正の内容について全ての事業用自動車の運転者に周知徹底を図ること。
2 旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針(平成一三年一二月国土交通省告示第一六七六号)に基づき、定期及び随時に指導・監督を行う際に、次のような運転行為をすることがないよう、繰り返し徹底すること。

1) アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2) 進行を制御することが困難な高速度で、又は進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
3) 人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
4) 赤信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
特に、飲酒等については、いかなる理由があろうと、乗務中のみならず、勤務中(休憩中を含む。)の飲酒及び正常な運転に影響を及ぼすおそれのある薬物の服用をしないよう徹底すること。また、勤務時間外における飲酒についても、その後の乗務に影響を与えることのないよう指導すること。
さらに、悪質・危険な運転行為については、運転者の個々の運行状況及び運転適性診断の結果を踏まえつつ、具体的な事故事例を活用しながら指導すること。

3 点呼において、運転者より飲酒等についての報告を求めるとともに、飲酒等により安全な運転をすることができないおそれがないか運転者の身体の状況を観察・確認のうえ、飲酒等の疑いがある場合には、絶対に乗務させないこと。


(別紙)

刑法の一部改正(平成一三年一二月五日公布、同年一二月二五日施行)

自動車運転者による死傷事犯の実情等にかんがみ、事案の実態に即した処分及び科刑を行うため、悪質・危険な運行行為により人を死傷させた者に対する罰則を強化するとともに、過失による軽傷事犯における刑の裁量的免除の規定を設ける。
1 危険運転致死傷罪(新設)

悪質・危険な自動車の運転行為により人を負傷させた者は一〇年以下の懲役に処し、死傷させた者は一年以上の有期懲役に処する。
1) アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2) 進行を制御することが困難な高速度で、又は進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
3) 人又は車の通行を妨害する目的で、通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
4) 赤色信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

2 刑の裁量的免除(新設)

自動車運転による業務上過失傷害罪を犯した者について、傷害が軽いときには情状により刑を免除することができる。
道路交通法の一部改正(平成一三年六月二〇日公布、平成一四年六月一日施行)
道路交通法第六五条(酒気帯び運転等の禁止)の罰則の強化
三月以下の懲役又は五万円以下の罰金→一年以下の懲役又は三〇万円以下の罰金
道路交通法施行令の一部改正(平成一四年二月六日公布、同年六月一日施行)

1 悪質・危険運転者対策等の強化

1) 極めて悪質・危険な運転者に対して、一回目の取消であっても五年の欠格期間が指定できるようにする。
2) 悪質・危険な違反行為に対する点数を引き上げる。

○酒酔い運転、麻薬等運転及び共同危険行為等禁止違反 一五点→二五点
○無免許運転 一二点→一九点
○酒気帯び運転(アルコール濃度〇・二五mg/リットル以上)及び過労運転等 六点→一三点
○酒気帯び運転(アルコール濃度〇・一五mg/リットル以上〇・二五mg/リットル未満) 六点
○救護義務違反(ひき逃げ)(付加点数) 一〇点→二三点

3) 死亡事故の付加点数を引き上げる。 一三点又は九点→二〇点又は一三点
4) 被害の程度が重い重傷事故又は後遺障害が残る交通事故の場合の付加点数を引き上げる。 九点又は六点→一三点又は九点
5) 罰則の対象となる酒気帯び運転のアルコール体内保有濃度の基準値を引き下げる。(0.25mg/リットル→0.15mg/リットル)
6) 酒気帯び運転及び過労運転を下命容認した使用者に対する使用制限期間を最長四月から六月に延長する。


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