貨陸第一〇八号
平成二年一一月一四日

各地方運輸局長・沖縄総合事務局長あて

貨物流通局長通達


民間団体等による貨物自動車運送の適正化に関する事業の推進について


貨物自動車運送事業法(以下「法」という。)の施行に伴い、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関の制度が設けられることとなったが、これは、貨物自動車運送事業の適正化を図るための民間団体等による自主的な活動を運輸大臣の指導監督の下で確実かつ効率的に実施していくことにより、貨物自動車運送に関する秩序の確立を強化することをねらいとしたものである。
ついては、記1に従い、申請により地方貨物自動車運送適正化事業実施機関の指定を行うとともに、記2に従い、貨物自動車運送事業者に対する許可後の指導監督の強化及び不適正な事業活動の防止の観点から、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関の有効活用を図り、適正化事業が公正かつ着実に実施されるよう当該実施機関に対する指導監督の徹底を図られたい。
なお、「貨物自動車輸送秩序改善指導員に対する委嘱について」(昭和五七年四月二六日付け自貨第六三号)及び「貨物自動車輸送秩序改善指導員委嘱制度の運用について」(昭和五七年四月二六日付け自貨第六四号)は一一月三〇日限りで廃止する。
記1 地方貨物自動車運送適正化事業実施機関の指定
1 地方貨物自動車運送適正化事業実施機関(以下「地方実施機関」という。)の指定は、貨物自動車運送に関する秩序の確立に資することを目的として設立された民法第三四条の法人であって、法第三九条に規定する地方適正化事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、地方運輸局長が各都道府県の区域に一を限って行うものとする。

また、地方適正化事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものとは、
1) 貨物自動車の運送秩序の改善についてすでに実績があること
2) 地方適正化事業の実施のための組織及び運営方法が適切であること
3) 地方適正化事業の実施のための経理的基礎及び要員が確保されていること

の条件に合致するものとする。
2 12)を担保するため、地方実施機関の組織及び運営方法について、以下の事項について指導されたい。

(1) 地方適正化事業を適正かつ確実に行うため、地方実施機関の内部組織として、地方適正化事業実施本部を置くべきこと。
(2) 地方適正化事業実施本部に、地方適正化事業を統括する地方適正化事業実施本部長を置くべきこと。
(3) 地方適正化事業実施本部長は、地方実施機関の指定の申請を行う民法法人の役員のうち、地方適正化事業を強力かつ適確に遂行・指導する能力のある者とすること。
(4) 地方適正化事業実施本部長の下に、地方適正化事業の実施に関し、本部長を補佐する常勤役員を置くべきこと。
(5) 地方適正化事業実施本部に、地方適正化事業を実施するため、適正化事業部(又は適正化事業課)を置くべきこと。
(6) 適正化事業部(又は適正化事業課)には、地方適正化事業を円滑かつ適確に行うために、当該区域内の事業者及びその営業所等の数に応じた必要な人員を常置するものであること。
(7) 法第三九条第一号及び第二号に掲げる業務(以下「適正化事業指導業務」という。)を行わせるため、専任の適正化事業指導員(以下「指導員」という。)を選任するものであること。
(8) 指導員は、貨物自動車輸送秩序改善指導員の経験を有するなど、輸送の安全を阻害する行為の防止その他貨物自動車の輸送秩序の改善に関し知識及び経験を有し、かつ、地方適正化事業を適確かつ公正に遂行できるものであること。
(9) 予算管理その他の経理、就業、賃金等について必要な規程等について定められていること。

記2 地方実施機関の有効活用
1 地方適正化事業とは、法第三九条各号に掲げる事業を指すが、具体的な事例を挙げれば次のとおりである。

(1) 第一号事業(輸送の安全を阻害する行為の防止その他法又は法に基づく命令の遵守に関して行う貨物自動車運送事業者に対する指導)―――事業所の巡回又は街頭パトロール方式を通じての輸送の安全の確保及び運行管理違反並びに名義貸し、営業区域外運送等の重大な違反行為に対する注意喚起及び指導。
(2) 第二号事業(貨物自動車運送事業者(特定第二種利用運送事業者を含む。)以外の者の貨物自動車運送事業を経営する行為の防止のための啓発活動)―――街頭パトロール方式等を通じての自家用貨物自動車による営業類似行為等の違法行為の防止のための啓発活動。
(3) 第三号事業(貨物自動車運送に関する秩序の確立に資するための啓発活動及び広報活動)―――荷主懇談会等を通じての荷主業界等に対する貨物自動車運送秩序の改善についての広報活動。元請事業者の下請事業者に対する違法行為の防止等貨物運送取扱事業者に対する啓発活動。
(4) 第四号事業(貨物自動車運送事業に関する貨物自動車運送事業者又は荷主からの苦情処理)―――荷主による適正な原価を下回る不当な運賃の要求等貨物自動車運送事業者からの苦情受付及び当該荷主に対する協力要請。引越輸送、宅配便その他貨物自動車運送事業に関する利用者からの苦情の受付及び当該貨物自動車運送事業者に対する指導。
(5) 第五号事業(輸送の安全を確保するために行う貨物自動車運送事業者への通知その他運輸大臣が法の施行のためにする措置に対する協力)―――無許可営業、過労運転、過積載、名義貸し等の悪質な法令違反についての地方運輸局及び陸運支局への情報提供。行政機関が実施する街頭取締りに対する協力。

2 貨物自動車運送事業者に対する許可後の指導監督を強化するとともに、適正な原価を下回る運賃の収受等不公正な取引を防止し、貨物自動車運送の秩序の確立に資するため、地方実施機関の有効活用が求められているが、具体的には次の対策を講じられたい。

(1) 地方運輸局及び陸運支局は、地方実施機関との連携を緊密にし、あらかじめ、指導員が指導を行おうとしている事業者に対して協力依頼文書を発出するなど、指導員による適正化事業指導業務が円滑に行えるよう配慮すること。
(2) 地方運輸局及び陸運支局は、指導員が行う適正化事業指導業務に資するため、全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が地方運輸局単位で開催する輸送秩序改善のための研修、具体的事例についての意見交換等を内容とする指導研修会等に担当官を派遣するなど、積極的に参画すること。

3 適正化事業実施機関として社団法人を指定することとなる場合には、当該社団法人は公益性を有する一方、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする事業者団体でもある。

したがって、地方運輸局においては、当該社団法人の会員である貨物自動車運送事業者等に対しても、地方適正化事業が公正かつ着実に実施されるよう当該実施機関に対する指導監督の徹底に努められたい。


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