

自保第二四八号
昭和四七年一月一八日
運輸省自動車局長通達
自動車損害賠償保障法の政府保障事業に係る債権の回収事務について
自動車損害賠償保障法(昭和三〇年法律第九七号。以下「自賠法」という。)第七二条の規定に基づき、いわゆるひき逃げ事故による被害者、無保険車による事故の被害者等に対しては、運輸大臣が、政府保障事業として損害のてん補をし、他方無保険車による事故の加害者等からは、自賠法第七六条第一項又は第二項の規定に基づいて代位取得し、又は同条第三項の規定に基づいて返還を請求することができる国の債権(以下「自賠債権」という。)の回収を図つていることは御承知のとおりである。
一般に国の債権は、「国の債権の管理等に関する法律」(昭和三一年法律第一一四号。以下「債管法」という。)により厳重に管理すべきことが定められているが、特に自賠債権については、無保険車の運行者が結果的に附保車の運行者よりも有利になることのないよう積極的な債権管理が望まれるところである。
自賠債権の管理については、従来昭和三一年八月二九日付官会第一四四四号(自動車損害賠償保障法第七六条第一項による求償権の行使及び同算第七九条による過怠金徴収の協力方依頼について)及び昭和三二年八月二一日付自保第一九七一号(回収債権に係る履行延期申請書の様式等について)により協力していただいてきたところであるが、その後の情勢の変化等もあり、今後自賠債権の管理については、左記によることとしたので、事務処理に遺憾のないようにされたい。
また自賠債権の管理に当たつては、事務の性格上職員を特定してこれに当たらしめることが適当であると考えられるので、各陸運局ごとに自賠債権担当官及び自賠債権担当官代理をそれぞれ一名指定するとともに、当該職員の官職、等級、氏名及び所属部課名を報告されたい。(当該職員に変更があつた場合も同様とする。)
なお、本通達の施行に伴い、前記通達(昭和三一年八月二九日付官会第一四四四号及び昭和三二年八月二一日付自保第一九七一号)は、廃止する。
追つて、貴局管内各陸運事務所長に対しても、本通達の趣旨を周知徹底されたい。
(本通達については、法務大臣官房訟務部と打合せ済である。)
(1) 納入告知後再三にわたる督促にもかかわらず債務の履行が全くなされず、時効中断事由に当たるその他の行為もなされないため、時効完成時点の到来が切迫している自賠債権(時効完成まで一年程度の債権)のうち必要と認めるものについては、歳入徴収官(自動車局長)から、当該債務者の住所・氏名及び当該債務の発生原因等を示す資料を当該債務者の住所地を管轄する陸運局長に送付するので、自賠債権担当官を通じて、電話、面接等の方法により当該債務の履行を求めることとされたい。
(2) 債務者が納入告知書に指定された納付場所(日本銀行本店、支店、代理店及び歳入代理店)ではなく直接陸運局又は陸運事務所に債務の全部又は一部を履行すべく現金を持参したときは、出納官吏事務規程(昭和二二年九月二七日大蔵省令第九五号)第一二条及び第一三条の定めるところにより、収入官吏又は分任収入官吏にこれを受領させ、その旨歳入徴収官に報告させられたい。
(3) 債務者が債管法第二四条第一項第一号の規定に該当する場合(具体的には、昭和三四年六月一九日付蔵計第一九八三号「国の債権の管理等に関する法律第三八条第一項ただし書及び第二項ただし書の規定による基準の実施について」三(1)に該当する場合)には、歳入徴収官は債管法第二四条から第二七条までの規定により履行延期の特約を行なうことになる(この場合には国の債権の管理等に関する法律施行令第三〇条第一号の規定により延納利息を免除する。)ので、別紙一の履行延期申請書の正本及び写二部を提出させ、そのうち写一部を貴局において保存し、正本及び写一部を歳入徴収官に送付することとされたい。歳入徴収官が上記の履行延期申請を承認したときは、履行延期承認通知書を当該債務者に交付するとともにその写を陸運局に送付することとする。
(4) 債務者が債管法第二四条第一項第二号、第三号及び第五号の規定に該当する場合であつて、債務者の資力、収入等からみて自賠債権を短期間に回収することが困難と認められる場合等、債管法第二八条の規定により民事訴訟法第三五六条の即決和解によることが相当である場合には、歳入徴収官は、法務局長(地方法務局長を含む。以下同じ。)に対して即決和解の手続を依頼することになるので、債務者との間で和解の内容について合意を得るようあらかじめ折衝し、合意が得られた場合には別紙一の履行延期申請書の正本及び写二部を提出させ、そのうち写一部を貴局において保存し、正本及び写一部を歳入徴収官に送付することとされたい。この場合和解の内容は、次のとおりとすることとされたい。
1) 履行延期の期限は、五年以内とする。
2) 分割納入とする場合、一回の納入金額は、債務者の資産・収入からみて妥当なものとする必要があるが、最低でも収入の一〇%程度を目途とする。
納付時期については、事務処理上なるべく年払又は半年払等とすることが望ましいが、やむを得ない場合は月払でも差し支えない。
3) その他、延納利息、弁済充当の順序等については、別紙二の「運輸省の和解条項案」によるものとする。
なお、即決和解は簡易裁判所で行なわれるものであるが、後日裁判所から和解の期日の呼出しを受けたときは、債務者側が必ず出頭するよう厳に申し伝えることとされたい。
(5) 債務者が債務の一部履行、履行延期の申請等時効中断事由に当たる行為をなさない場合には、歳入徴収官は債権の時効完成時点の少なくとも六ケ月前までには法務局長あてに債管法第一五条第三号の規定による訴訟手続の依頼をすることとなるので、時効完成時点(時効完成時点は、(1)の歳入徴収官からの通知文書中に明示する。)の少なくとも八ケ月前までには、当該債権の回収に関する折衝の経過を必ず報告されたい。
(6) 歳入徴収官が法務局長あてに債管法第一五条第三号又は第二八条の規定による訴訟手続又は即決和解の手続の依頼をする場合、貴局管内に住所を有する債務者に係る事案については、上記の依頼文書の写を貴局にも送付するので、関係法務局から事案の処理について協力を要請されたときは、当該法務局と密接な連絡をとりこれに十分協力されたい。なお、同依頼文書中には依頼省側で連絡の任に当たる職員の氏名等を記載する必要があるが、今後は本省の担当官のほか関係自賠債権担当官及び自賠債権担当官代理の氏名を記載することとする。また、事案の性格等により、依頼省側からも国の指定代理人を出す必要があると認められる場合には、自賠債権担当官を指定代理人として指名するよう法務省側に依頼することがあるので、この点お含みおきありたい。
|
別紙二
運輸省の和解条項案
一 相手方 は申し立て人に対し次の債務を負担することを確認すること。
イ 元金 円
ロ 右元金に対する平成 年 月 日から和解成立の日まで年五分の割合による遅延損害金
ハ 右元金に対し、和解成立日の翌日から支払ずみに至るまで、年八・二五パーセントの割合による延納利息
二 相手方 は、申し立て人に対し、前項イ、ロの合計額を、次のとおり分割して支払い、これをロ、ハ、イの順序により充当すること。
イ 平成 年 月 日から平成 年 月 日まで毎月 日限り、金 円あて、
ロ 平成 年 月
三 相手方 が、前項の弁済を滞りなく完了したときは、申し立て人は、相手方 に対し第一項ハの部分を免除すること。
四 次の場合において、申し立て人が第一項の債務のうち、支払い未了の部分の全部又は一部について、その履行期限を繰り上げる旨を相手方 に通知したときは、相手方 は当該金額の範囲内において、期限の利益を失い、即時これを申し立て人に支払うこと。
イ 相手方 が第二項の分割弁済を怠り、その遅滞額が二回分以上に達したとき、
ロ 相手方 が、強制執行をうけ、租税その他の公課について、滞納処分をうけ、又は、相手方 の財産について競売の開始があつたとき、
ハ 債務者について、相続の開始があつた場合において、相続人が限定承認したとき。
五 本件和解費用は、各自自弁のこと。
|
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport
|