海定第二二七号
昭和四五年九月三〇日

各地方海運局長あて

運輸省海運局長通達


海上運送法の一部改正及び同法施行規則の一部改正に伴う事務処理について

昭和四五年一〇月一日から海上運送法の一部を改正する法律(昭和四五年六月一日法律第一一三号)及び海上運送法施行規則の一部を改正する省令(昭和四五年九月一一日運輸省令第八〇号)が施行されることになつたので、これに伴う事務処理等は、左記によることとし、遺漏なきよう取り扱われたい。

第一〜第四 〔略〕
第五 運航管理規程の届出について

一 既存業者については、昭和四五年一〇月一日までに届け出させ、同年一〇月一日付けで受理すること。
二 新規業者は、運航開始の日までに届け出させること。
三 一事業者について、当該事業者の経営する航路の所轄海運局長が二人以上になる場合は、それぞれの海運局長に提出させること。
四 変更の届出は、当該変更を実施する日までに届出させること。
五 運航管理規程の作成又は変更の届出があつた場合は、関係管区海上保安本部との話し合いにより必要に応じ、その写しを当該管区海上保安本部に送付すること。

第六 運航管理者の選任の届出について

一 最初の選任の場合は、第四の一及び二に準じて届出させること。
二 運航管理者を解任した場合は、同時に新たな運航管理者を選任して、直ちに運航管理者の選任及び解任の届出をさせること。

第七 運航管理規程の記載事項について

一 船舶の運航管理の組織

(一) 運航管理者の数は必ずしも一名でなくともよく、同一事業者の経営する航路が遠隔の二以上の地域に分れている場合は、それぞれに運航管理者を選任させることが望ましい。
(二) 原則として運航管理者と船長は別人とするが、常時運航している船舶が一隻のみであり、かつ、総トン数がおおむね百トン未満である場合は、船長が運航管理者を兼務して差支えない。また、航路距離が短く、常時就航している船舶数が二〜三隻であつて、一船の船長が他船の運航について管理可能であれば船長が運航管理者を兼務してもさしつかえない。
(三) 運航管理員とは、運航管理者の補助者、副運航管理者及び副運航管理者の補助者をいい、実際に現場において安全確保のための作業をするもの、たとえば陸上作業員、船内作業員は含まない。
(四) 運航管理者の補助者は、必ず選任させること。
(五) 副運航管理者は、航路の数が多数ある場合に現場業務を担当させるため必要に応じて選任させること。
(六) 副運航管理者を選任する場合は、副運航管理者の補助者を選任させることが望ましい。

二 勤務体制

(一) 使用旅客船が運航している間は、原則として運航管理者が勤務している旨定めさせること。
(二) 副運航管理者は、原則として当該営業所の管理下に使用旅客船が運航している間は、勤務している旨定めさせること。
(三) 運航管理者及び副運航管理者が職場を離れるときは、各営業所及びそれぞれの補助者と連絡できる体制をとる旨定めさせること。
(四) 運航管理者が職務を執行することができない場合、連絡不能の場合等において運航管理者の職務を代行する者をあらかじめ、代行者が職務を行なう旨定めさせること。

三 運航管理者の資格及び認定基準

施行規則第七条の二第四号の認定は、当分の間次の基準により行なうこと。
(一) 第一号に掲げる者と同等以上の能力を有することの認定基準

(1) 旅客船の乗組経験

イ 総トン数、経験年数については、それぞれの数値を四分の一まで下回る範囲内にあるときでも同等であると認めることができる。
ロ 総トン数について、当該使用旅客船より大きい総トン数を有する旅客船に乗り組んだ者の経験年数については、船長又は甲板部の職員について次式により算出した経験年数があれば認定してさしつかえない。ただし、船長の場合は一年、甲板部の職員の場合は三年を最低限度とすること。
必要経験年数=(3(5)×最大使用旅客船の総トン数)/乗組経験を有する旅客船の総トン数≧1(3)

注 ( )内は、甲板部職員の場合

ハ 機関部、通信部及び事務部の職員は、七年以上の乗組経験があれば認定することができる。
ニ 上記の経験年数をそれぞれ次の例にならい換算して得た数が省令の年数に達している者であれば認定することができる。

例(船長の場合)船長の経験年数+(3/5)×甲板部職員の経験年数+(3/5)×(5/7)×機関部職員の経験年数≧3

(2) 貨物船の乗組経験

イ 原則として総トン数で同等以上の貨物船に船長又は甲板部の職員として旅客船の必要経験年数の二部の経験年数があれば認定することができる。
ロ 運航の管理を行なおうとする航路のある海域を航海した経験があるときはイにかかわらず、船長として四年以上、甲板部職員として六年以上の乗組経験があれば認定することができる。
ハ 貨物フエリーの使用船舶の乗組経験を有する者が旅客フエリーの運航管理者になろうとする場合は、ロの航海経験がないときでもロと同様の乗組経験があれば認定することができる。

(二) 第二号に掲げる者と同等以上の能力を有することの認定基準

(1) 次に掲げる事項のうちイを含む二つ以上についてそれぞれの数値を四分の一まで下回る範囲内にあれば同等と認定することができる。

イ 使用旅客船の隻数
ロ 使用旅客船の総トン数の合計
ハ 月間旅客輸送量(人キロ)又は月間自動車航送量(台キロ)
ニ 総航路距離

(2) 旅客不定期航路事業の運航の管理の経験のある者が旅客定期航路事業の運航管理者になろうとする場合は、前者の事業の規模が(1)のイを含む三つ以上の事項についてそれぞれの数値が(1)の基準に適合し、かつ、旅客不定期航路事業の運航月数の合計が三年以上であれば認定することができる。
(3) 「運航の管理に関し」の意義

陸上作業員程度の単純作業の経験では足りず、副運航管理者、運航管理補助者等ある程度運航管理者の権限を委任され、陸上作業員等を指揮監督した経験を有することである。

(三) 第三号に掲げる者と同等以上の能力を有することの認定基準

(1) 「旅客船一隻のみ」の意義

常時使用する旅客船が一隻であることをいう。

(2) 「乗り組むことができる資格を有する」の意義

海技従事者の免許を受け、その効力を失つていないことである。

(四) その他の認定基準

(1) 行政官庁において十年以上海事に関する業務に従事した者又は旅客定期航路事業若しくは旅客不定期航路事業において一〇年以上勤務した者であつて、次に掲げる法令その他運航管理に必要な事項について、十分な知識を有すると認められる者(運航部長、船舶部長、船員部長三者により面接試験を行なうこと)は認定することができる。

イ 海上運送法
ロ 船舶安全法
ハ 船員法
ニ 海上衝突予防法
ホ 港則法

(2) 三、〇〇〇総トン以上の船舶を使用する航路事業の特例当該事業に使用する最大の旅客船が三、〇〇〇総トン以上のものであるときは、甲種船長の海技免状を有する者又は五〇〇総トン以上の旅客船を使用する旅客定期航路事業の運航の管理に関し五年以上の実務経験がある者であれば認定することができる。
(3) その他諸般の事情から判断して(一)、(二)、(三)の基準に該当すると認められる者(例えば、船長一年、運航管理に関し二年の経験を有する者等)は、認定することができる。
(4) 現に営業部門の職務に従事している者又は最近において営業部門の職務に従事していた者を認定する場合は、運航管理にあたつては営業優先とならないよう指導すること。

四 運航管理者等の選任及び解任

(一) 運航管理者は、当該事業の責任者が選任又は解任する旨記載させること。
(二) 運航管理員は、運航管理者自らが又は運航管理者の意見を聞いて事業の責任者が選任又は解任する旨記載させること。

五 運航管理者等の職務及び権限

(一) 運航管理者と船長との関係

船員法は、船舶共同体の安全の確保という点から、発航前検査、入出港時等における甲板上の指揮、火災の予防、水密の保持、船内にある海員の指揮監督等の船長の職務権限を定めることにより、一船の最高責任者としての船長が当該船舶の航海の安全に関する最高の責任者であることを明らかにしている。
しかしながら、これらの船長の職務権限は、船長が事業者から船舶の運航を委ねられた後に係るものであり、配船、船員の配乗、船舶の整備、発航前又は離岸後の船客の乗降等の指揮の総括、運航に関する情報の収集等事業者としての安全確保に関する責任体制が法律上明確でない。
このため今回の改正は、これらの事項を統括する責任者として運航管理者を選任させ、船長に対しては、助言又は勧告を与えることにより運航全般を通じ輸送の安全を確保しようとするものであつて、運航管理者は、船員法の船長の職務権限に属する事項以外の事項いわば陸上サイドにおける安全について法律上の責任を負うものである。
したがつて、運航管理者の職務及び権限は、船長の権限に抵触し、又は船長の責任を軽減するものではないので注意すること。
運航管理者の職務及び権限には少なくとも次の事項が含まれていなければならない。
イ 運航管理員及び陸上作業員を指揮監督すること。
ロ 運航計画、配船計画及び配乗計画の作成、改訂及び臨時変更に際し、安全性を検討し、承認すること。
ハ 気象及び海象が運航を中止すべき条件に達した場合に接岸している船舶に対し発航中止の指示をすること。

(発航の指示をする権限は与えられないので注意すること。)

ニ 航路の自然的性質及び海難その他の事故例を調査研究し、航行経路、航海速力等を示した運航基準図の作成及び改訂をすること。
ホ 気象通報、港長公示等官公庁の発する運航に関する情報を収集し、船長に提供すること。
ヘ 危険物の取扱いについて関係法令の実施を確保すること。
ト 陸上における旅客又は自動車の整理及び誘導並びにその乗下船の際及び船舶の離着岸の際の陸上における作業を指揮監督すること。
チ 船舶の点検及び整備の状況を把握し、その他の輸送施設を点検、整備し及び管理すること。
リ 輸送中の船舶における旅客数及び自動車台数並びに船舶の動静を把握すること。
ヌ 海難その他の事故が発生した場合に関係者に通報し、救難その他の作業の指揮をとること。
ル 運航管理員、陸上作業員及び乗組員に対し安全教育を実施すること。

(二) 副運航管理者の職務

副運航管理者は、航路数が多くなり運航管理者が実際にその現場に臨んで職務を行なうことが不可能な場合に現場的な作業を行なわせるために置くものであるから、運航管理規程には、副運航管理者の職務を明確に定めさせること。

六 運航を中止すべき気象及び海象の条件

波高、風速、視界等について航路毎に定めさせること。ただし、同一航路の使用船舶に差異があるときは、必要に応じて船舶ごとに定めさせること。

七 発航中止の指示

(一) 運航管理者による発航中止の指示は、運航管理規程に定める条件に達した場合に船長と運航管理者との二重のチエツクをさせ、安全性の確保を図ろうとするものである。発航の指示は、運航管理者の職務・権限に属さない。
(二) 気象・海象が運航管理規程に定める条件に達しないが、運航に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、運航管理者と船長の協議により運航の中止、寄港地の変更等所要の措置を講ずる旨定めさせること。ただし、この場合には船長の判断を優先させる旨記載させること。

八 運航管理のため必要な情報の収集及び伝達

(一) 運航の管理のため必要な情報とは、気象通報、水路通報、港長公示等官公庁の発する運航に関する情報、港内事情、陸上関連施設の状況、乗船した旅客数及び自動車台数、営業所における乗船待ちの旅客数及び自動車台数、船舶の動静、航路の自然的性質、海難その他の事故例等をいい、運航管理者が船長に連絡するものと、船長が運航管理者に連絡するものをできるだけ区別して定めさせること。ただし、船長と運航管理者が同一人の場合は、区別は不要とする。
(二) 船長と運航管理者の連絡については、通常の場合と緊急の場合に分けてその連絡先及び連絡方法を定めさせること。

九 運航基準図

(一) 運航基準図には、次の事項を記載する旨定めさせること。

イ 起点、終点及び寄港地の位置及びこれら相互間の距離
ロ 航行経路
ハ 標準の運航時刻及び航海速力
ニ 航行経路附近に存在する浅瀬、岩礁等の航行の障害となるものの位置
ホ 船長が甲板上の指揮をとるべき狭水道等の区間
ヘ 通航船、漁船等により通常船舶が輻輳する地点
ト その他航行の安全を確保するため必要な事項

(二) 運航基準図は、各航路及び各船舶ごとに作成し、各船舶及び営業所に備えつける旨定めさせること。

一〇 則第七条の二第一項第一〇号及び第一一号

(一) 昭和四四年七月二一日海定第一三六号をもつて通達したカーフエリーの運航マニユアルは、旅客輸送の安全を期するための具体的作業の基準及び手順であり、運航管理規程の一部又はその細則をなすものである。
(二) フエリー以外の業種についても、これらの作業に関し必要に応じて別に細則を定めても差し支えないが、その場合は、細則をも届け出させること。
(三) 第一〇号の「危険物」とは、危険物船舶運送及び貯蔵規則に規定する危険物をいう。
(四) 第一〇号の「その他の旅客の安全を害するおそれのある物品」とは、刃剣、銃器、兵器、荷造りの不完全なもの、破損しやすいもの等をいう。
(五) 第一〇号に関しては、運送の引受け、積込み、積卸し、積付け、点検に関する作業の方法を定めさせること。(標準運送約款参照のこと。)
(六) 第一一号に関しては、少なくとも次に掲げる作業に関する定めを含めさせること。

イ 船客待合所、駐車場等における旅客又は自動車の整理
ロ 旅客又は自動車の乗降の誘導
ハ 船舶内における自動車の積付け
ニ 発航及び着岸の準備

一一 輸送施設の点検及び整備

(一) 第一二号の「その他の輸送施設」とは、桟橋、浮桟橋、岸壁、可動橋、待合所、駐車場等をいう。
(二) 点検簿、定期的点検及び総点検、定期的整備に関する事項を定めさせること。

一二 旅客等が遵守すべき事項の周知

(一) 「旅客等が遵守すべき事項」とは、法第二三条の五及び則第二三条の六に規定する行為及び運送約款で定める禁示行為等をいう。
(二) 周知の方法は、船舶内及び待合所のそれぞれについて定めさせること。

一三 海難その他の異常事態が発生した場合の処理

少なくとも次の事項について定めさせること。
(一) 海運局、海上保安官署等への連絡に関すること。
(二) 死傷者、行方不明者が生じた場合の措置に関すること。
(三) 事故対策本部の設置に関すること。
(四) 事故処理報告に関すること。

一四 その他

(一) 「はしけ取り」を行なつている場合

当該はしけが独立した航路事業として行なわれている場合を除き、当該航路事業者の運航管理者が直接管理すべきものとして取扱うこと。

(二) 「はしけ取り」の委託、陸上における旅客の取扱い(乗船券の発売、旅客の誘導等)の委託等を行なつている場合は、委託した運航の管理に関する業務を運航管理規程中に明記させること。この場合、当該部分の管理について明記した委託契約書の写しを添付させること。
(三) 運航の委託を行なつている場合には、運航管理者は委託者の職員のなかから選任することが望ましいが、受託者の職員のなかから選任しても差し支えない。しかしながら、運航管理規程は当該委託をした事業者が定め、運航管理者も当該委託をした事業者が選任し、それぞれ届け出なければならない。
(四) フエリー埠頭会社が、埠頭及び陸上関連施設の維持管理のほかに運送の引受け、旅客の誘導、自動車の積込み、積卸し等の陸上作業を行なう場合は、(二)に準じて取扱うこと。この場合、フエリー埠頭会社が行なう運送の引受け、旅客の誘導、自動車の積込み、積卸し等の作業の基準については、当該埠頭を利用する各社がフエリー埠頭会社と個別に定めてもよく、また、各社とフエリー埠頭会社との協議により統一的に定めてもよいが、運航管理規程にその旨記載させること。
(五) 公共埠頭、フエリー埠頭会社の管理する埠頭等における自社の使用する施設については、当該施設の点検及び点検に基づく異常箇所の整備の申し入れに関する業務を運航管理者の業務とすること。
(六) その他の事項は、別添運航管理規程(例)を参考とされたい。

第八 運航管理規程の変更命令、運航管理者の解任命令及び輸送の安全確保に関する命令について

一 法第一〇条の二第三項の運航管理規程の変更命令と運航管理規程の遵守命令(法第一九条第二項の輸送の安全を確保するための命令の一つ)との関係

運航管理規程の変更命令は、運航管理規程そのものの変更を命ずるものであるに対し、運航管理規程の遵守命令は、事業者又はその使用人が自ら定めた運航管理規程を遵守してないときに発する命令である。後者については運航管理規程を遵守しなかつた場合に直接行政処分又は罰則の対象とすることも考えられるが、運航管理規程そのものが事業者の態様、規模等によつて異なるので、これらの処分を直接行なうことは、酷になる場合があり、また、事業者間の処分のバランスを失するおそれもあるので、まず、遵守命令を発しこれに従わなかつた場合に事業の停止等の行政処分(法第十六条)をすることにより運航管理規程の遵守を担保しようとするものである。

二 運航管理者の解任命令は、事業者が当人を解雇することまでを命ずるものではないが、事業者はこれにより解任した場合は、他の者を運航管理者として選任する義務が生ずる。

なお、運航管理者を解任したことのみによつて輸送の安全を害したことについての事業者の責任が解除されるものではない。

三 事業者について当該事業者の経営する航路の所轄海運局長が二以上になる場合であつて運航管理規程の変更命令又は運航管理者の解任命令を出そうとするときは、他の所轄海運局長に協議すること。
以下〔略〕


〔別添〕

運航管理規程(例)

昭和四五年 月 日
○○○○株式会社

四五年九月八日
海運局定期船課

目次
第一章 目的
第二章 運航管理の組織
第三章 運航管理者等の資格並びに選任及び解任
第四章 運航管理者等の職務及び権限
第五章 運航管理規程の変更
第六章 運航計画、配船計画及び配乗計画
第七章 運航の中止
第八章 運航に必要な情報の収集及び伝達
第九章 輸送に伴う安全確保のための作業
第一〇章 輸送施設の点検整備
第一一章 海難その他の事故処理
第一二章 安全に関する教育及び訓練

第一章 目的

(目的)

第一条 この規程は、旅客船の運航業務を適正かつ円滑に処理するための責任体制及び業務の基準を明確にし、もつて輸送の安全を確保することを目的とする。

第二章 運航管理の組織

(運航管理の組織)

第二条 前条の目的を達成するため、次のとおり運航管理者及び運航管理員を置く。

(一) 本社

運航管理者 一名
運航管理補助者 若干名

(二) ○○営業所

副運航管理者 一名
運航管理補助者 若干名

○○営業所 同上

2 各営業所の管理する区域は、次のとおりとする。

○○営業所 ○○航路 ○○航路○○以東
○○営業所 ○○航路 ○○航路○○以西

(運航管理者の勤務体制)

第三条 運航管理者は、原則として使用旅客船が就航している間は本社に勤務する。
2 運航管理者が使用旅客船の就航中に職場を離れる場合には運航管理者と運航管理補助者は、常に連絡できる体制をとつておかなければならない。
3 運航管理者は、あらかじめ本社の運航管理補助者の中から代行者を指名しておかなければならない。
4 第二項の連絡が不能の場合には、あらかじめ前項の運航管理補助者が運航管理者の職務を代行する。

(副運航管理者の勤務体制)

第四条 副運航管理者は、原則として営業所の管理下に使用旅客船が就航している間は、当該営業所に勤務する。
2 副運航管理者が営業所の管理下に使用旅客船が就航している間に職場を離れる場合は、副運航管理者と当該営業所の運航管理補助者は常に連絡できる体制をとつておかなければならない。
3 前項の連絡が不能の場合には、当該営業所の運航管理補助者が副運航管理者の職務を代行する。

第三章 運航管理者等の資格並びに選任及び解任

(運航管理者の資格並びに選任及び解任の手続)

第五条 運航管理者は、次の各号の一に該当する年齢二五歳以上の者で、運輸大臣の解任命令により解任され、解任の日から二年を経過していない者以外のものの中から社長が任命する。

(一) 当社の旅客定期航路事業に使用する旅客船のうち最大のものと同等以上の総トン数を有する旅客船に船長として三年又は甲板部の職員として五年以上乗り組んだ経験を有する者
(二) 当社の旅客定期航路事業と同等以上の規模の旅客定期航路事業における船舶の運航の管理に関し三年以上の実務の経験を有する者
(三) 前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると海運局長が認定した者

2 運航管理者が次の各号の一に該当することとなつた場合には、社長は運航管理者を解任しなければならない。

(一) 運輸大臣による解任命令が出されたとき。
(二) 身体の故障その他やむを得ない事由により職務を引き続き行なうことが困難になつたとき。
(三) 運航管理規程に違反する等により、当該運航管理者がその職務を引き続き行なうことが旅客輸送の安全に支障を及ぼすおそれがあると認められるとき。
(運航管理員の選任及び解任)

第六条 副運航管理者及び運航管理補助者は、運航管理者の推せんにより社長が任命する。
2 副運航管理者及び運航管理補助者は、運航管理者の意見を聞いて社長が解任する。

第四章 運航管理者等の職務及び権限

(運航管理者等の職務及び権限)

第七条 運航管理者の職務及び権限は、次のとおりとする。

(一) この規程に特別の定めがある場合を除き、この規程に定める職務を行なうほか、この規程に定める業務全般を統轄し、その実施の確保を図ること。
(二) 船舶の運航全般を通じ船長と協力して輸送の安全を確保すること。
(三) 副運航管理者、運航管理補助者及び陸上作業員を指揮監督すること。

2 運航管理者の職務及び権限は、船長の従来の職務及び権限を侵し、又は軽減するものではない。
3 副運航管理者は、運航管理者の指揮を受けて当該営業所の管理下にある船舶の運航に関する運航管理者の職務のうち、次に掲げるものを担務する。

(一) 運航計画、配船計画及び配乗計画の臨時変更の際における安全性の確認
(二) 気象通報、旅客数その他船舶の運航の管理のため必要な情報の収集及び船長の伝達
(三) 運航基準図の作成のための資料の収集
(四) 危険物その他旅客の安全を害するおそれのある物品の取扱いに関する作業の指揮監督
(五) 陸上(船舶上以外の陸上及び海上をいう。以下同じ。)における旅客の乗下船又は航送する自動車の積込み及び陸揚げ並びに船舶の離着岸の際における作業の指揮監督並びに船舶上(舷側より内側をいう。以下同じ。)におけるこれらの作業に関する船長への助言
(六) 船舶の点検及び整備の確認、船舶以外の輸送施設の点検及び整備
(七) 旅客等が遵守すべき事項の周知
(八) その他運航管理者の職務の補佐

4 本社及び営業所に置く運航管理補助者は、それぞれ運航管理者又は副運航管理者を常に補佐し、運航管理者又は副運航管理者が職務を執行することが困難となつたときはその職務を代行する。

第五章 運航管理規程の変更

(運航管理規程の変更)

第八条 この運航管理規程の変更は、運航管理者の発案により、関係部局の責任者の意見を聞いて社長が決定する。
2 運航管理者は、前項の発案をしようとするときは船長の意見を十分聴取しなければならない。

第六章 運航計画、配船計画及び配乗計画

(運航計画及び配船計画の作成及び改訂)

第九条 運航計画及び配船計画の作成又は改訂については、○○部が原案を作成し、その安全性について運航管理者の承認を得て、○○が決定する。
2 運航管理者は、前項の承認を与えるにあたつては、使用船舶の性能、使用港の港勢、航路の交通状況及び自然的性質等の見地からその安全性を検討しなければならない。

(配乗計画の作成及び改訂)

第一〇条 配乗計画の作成又は改訂については○○部が原案を作成し、運航管理者の承認を得て○○が決定する。
2 運航管理者は、前項の承認を与えるにあたつては法定乗組員及び適正な予備員が確保されているか、乗組員の過労防止上支障がないものであるか等の見地からその安全性を検討しなければならない。

(運航計画、配船計画及び配乗計画の臨時変更)

第一一条 旅客又は車両の輻輳等営業上の理由により運航計画の臨時変更をする必要がある場合は、○○部が原案を作成しその安全性について運航管理者の承認を得なければならない。運航計画の変更に伴い配船計画又は配乗計画を臨時に変更しようとする場合も同様とする。
2 天候、港湾事情、船舶その他の輸送施設の状況が運航に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合(気象、海象が第一二条の条件に達した場合を除く。)には、船長及び運航管理者は協議により運航休止、寄港地変更等所要の措置をとらなければならない。
3 前項の場合において、両者の協議が調わないときは、原則として船長の判断を優先させなければならない。

第七章 運航の中止

(定義)

第一二条 この章における用語の意義は、次の各号に掲げるとおりとする。

(一) 基準航行 基準経路を基準速力により航行することをいう。
(二) 入港 港の区域又は港湾区域内において、狭水路、関門等を通航して防波堤等の内部へ進航することをいう。
(三) 運航中止 発航、基準航行又は目的港への入港を中止することをいう。
(四) 反転 目的港への航行の継続を中止し、発航港へ引き返すことをいう。
(五) 気象・海象 風速(一〇分間の平均風速)、波高(隣り合つた波の峰と谷との鉛直距離)及び視程(目標を認めることができる最大距離)をいう。
(運航中止)

第一二条の二 船長は、気象・海象が一定の条件に達したと認めるとき又は達するおそれがあると認めるときは、運航中止の措置をとらなければならない。
2 船長は、発航の中止に係る判断を行うにあたつて、自ら直ちに判断することが困難で詳細な検討を行う必要があると認めるときは、運航管理者と協議するものとする。
3 前項の協議において両者の意見が異るときは、発航を中止しなければならない。
4 船長は、運航中止の措置をとつたときは、すみやかに、その旨を運航管理者に連絡しなければならない。
5 運航中止の措置をとるべき気象・海象の条件及び運航中止の後に船長がとるべき措置については、運航基準に定めるところによる。

(運航管理者の指示)

第一二条の三 運航管理者は、運航基準の定めるところにより発航が中止されるべきであると判断した場合において、船長から発航を中止する旨の連絡がないとき又は発航する旨の連絡を受けたときは、船長に対して発航の中止を指示しなければならない。
2 運航管理者は、いかなる場合においても船長に対して発航、基準航行の継続又は入港を促し若しくは指示してはならない。

(気象・海象に関する情報の収集等)

第一二条の四 運航管理者及び船長は、運航中止に関する適正な判断を行うため、気象・海象に関する情報の収集に努め、必要に応じて相互に通報するものとする。

(運航管理者の援助措置)

第一二条の五 運航管理者は、船長から臨時寄港する旨の連絡を受けたときは、当該寄港地における使用岸壁の手配等適切な援助を行うものとする。

第八章 運航に必要な情報の収集及び伝達

(情報の収集及び連絡)

第一三条 運航管理者は、次に掲げる事項を把握し、(四)及び(五)の事項については必ず船長に連絡し、その他の事項については必要に応じ船長に連絡するものとする。

(一) 港内事情
(二) 陸上関連施設の状況
(三) 気象通報
(四) 水路通報、港長公示等官公庁の発する運航に関する情報
(五) 乗船した旅客数及び自動車台数
(六) 営業所における乗船待ちの旅客数及び自動車台数
(七) 船舶の動静
(八) その他航行の安全のために必要な事項

2 船長は、次に掲げる事項を把握し必要に応じ、運航管理者に連絡する。

(一) 定期的にラジオで放送される気象通報
(二) 海上保安官署、航行中の他の船舶等より発せられる運航に関する情報
(三) 航行中の水路の状況

3 船長は、次に掲げる場合には必ず運航管理者に連絡をとらなければならない。

(一) 発航前検査を終えたとき
(二) 運航基準図にあらかじめ定められた地点に達したとき
(三) 船舶の航行中運航に支障があると認められる気象及び海象に関する情報を入手したとき
(四) 機関故障、火災、座礁等の緊急事態が発生したとき
(船長と運航管理者の連絡方法)

第一四条 船長と運航管理者の連絡は、次の方法による。
 
連絡先
連絡方法
(一) 通常の場合
当該船舶が航行している地点を管理する営業所
○○Mc無線電話
(二) 緊急の場合
最寄の営業所
緊急用無線電話無線電信

(航路の性質等の調査)

第一五条 運航管理者は、航路の自然的性質、海難その他の事故例を調査研究し、船長その他の乗組員に周知徹底を図るものとする。

(運航基準図)

第一六条 運航管理者は、船長と協議して次の事項を記載した運航基準図を各航路及び各船舶ごとに作成しなければならない。

(一) 起点、終点及び寄港地の位置及びこれら相互間の距離
(二) 航行経路
(三) 標準の運航時刻及び航海速力
(四) 航行経路附近に存在する浅瀬、座礁等航行の障害となるものの位置
(五) 船長が甲板上の指揮をとるべき狭水道等の区間
(六) 通航路、漁船等により通常船舶が輻輳する地点
(七) 船長が運航管理者と連絡をとるべき地点
(八) その他航行の安全を確保するため必要な事項

2 運航基準図は、各船舶及び各営業所に備えつけるものとする。

第九章 輸送に伴う安全確保のための作業

(作業員の指名)

第一七条 運航管理者は、陸上において輸送の安全を確保するために必要な作業を行なわせるため、あらかじめ陸上作業員を指名する。
2 船長は、船舶上において輸送の安全を確保するために必要な作業を行なわせるため、あらかじめ船内作業員を指名する。

(危険物等の取扱い)

第一八条 危険物(危険物船舶運送及び貯蔵規則に規定する危険物をいう。以下同じ。)の取扱いは、左記によるものとする。

(一) 陸上作業員は、危険物の運送の申込みがあつた場合には、直ちにその分類、項目、品目、品名及び数量を運航管理者に報告し、旅客船への搭載を許されている危険物であるかどうかを確認し、積載方法等について指示をあおぐこと。
(二) 危険物の積卸しには、船長又は船長の指示を受けた船内作業員が立ち合うこと。
(三) 非常の際危険物を投棄しやすい場所に積み付けておくこと。
(四) 危険物が移動し、転倒しないよう固定し、かつ、外部から衝撃を受けないように保護すること。
(五) その他危険物船舶運送及び貯蔵規則等関係法令の定めによること。
(六) 船長及び陸上作業員は、運航管理者に対し、危険物の取扱いについて講じた措置を直ちに報告し、運航管理者は、当該措置が法令に違反していないことを確認すること。

2 陸上作業員は、刀剣、銃器、兵器その他旅客の安全を害するおそれのある物品の運送の申込みがあつた場合は、直ちに運航管理者に報告しその指示を受けて運送を拒絶し、又は一定の条件を附して運送を引き受けるものとする。ただし、刀剣、銃器、兵器その他の危険品は、原則として船室に持ち込むことを拒絶しなければならない。
3 陸上作業員又は船内作業員は、旅客の手荷物、小荷物及び自動車の積載貨物その他の物品が前二項に該当するおそれがあると認めるときは、運航管理者又は船長の指示をうけて、運送申込人の立合いの下に点検を行ない、必要な措置を講ずるものとする。

(旅客及び自動車の整理)

第一九条 陸上作業員は、待合所等一定の場所に旅客を整理し、待機させる。
2 陸上作業員は、自動車が安全に積込まれ、かつ、下船する自動車及び旅客の通行に支障をきたすことのないよう所定の駐車場において自動車を整理する。

(旅客等の遵守すべき事項の掲示)

第二〇条 運航管理者は、船客待合所及び駐車場の見やすい場所に旅客等の遵守すべき事項を掲示しなければならない。

(旅客の乗船)

第二一条 陸上作業員は、船内作業員の乗船開始の合図を受けて自動車の積込みに先立つて旅客の乗船を開始し、旅客を誘導する。
2 自動車の積込み開始後に到着した旅客の乗船は、自動車の積込み完了後行なう。
3 陸上作業員及び船内作業員は、乗船人員の数をチエツクし、旅客定員をこえていないことを確認して運航管理者及び船長にそれぞれ報告する。

(自動車の積込み)

第二二条 陸上作業員は、旅客の乗船完了を確認した後、船内作業員に自動車の積込み開始の合図を送り、船内作業員から自動車の積込みを開始しても差し支えない旨の合図を受けた後自動車の誘導を開始する。
2 船内作業員は、左記の点を配慮して積付場所に自動車を誘導する。この場合、下車して旅客室に移動しつつある乗車人の安全に十分注意すること。

(一) 自動車の負担重量を平均して搭載する。
(二) 自動車の列の両側に幅六〇cm以上の通路を船首尾方向に設ける。

3 船内作業員は、自動車の積付けの際には、次の安全措置をとる。

(一) 積込み後遅滞なく車止めを行ない、状況により必要な場所は固縛装置をする。
(二) 乗車人に対し、エンジンを切りサイドブレーキをひいておくよう指示する。
(三) 危険物を積載する自動車を除いて、車内にとどまらないよう乗車人に指示する。
(離岸準備)

第二三条 陸上作業員は、旅客及び自動車の乗船が完了し、当該船舶の出航時刻が到来したと判断したときは、発航ベル等を原則として三〇秒間鳴らす。
2 発航ベル等が鳴り終わつたときは、陸上作業員は、満載による積込中止のため、すでに通行止めの措置を講じている場合を除いて遮断鎖等により、自動車及び旅客の通行止めの措置を講じ、可動橋の状況が船舶の発航に支障がないことを確認し、その旨を船内作業員に連絡する。
3 船内作業員は、陸上作業員より前項の連絡を受けた後ランプドア手当の遮断鎖等をおろし、ランプゲートを閉める。
4 陸上作業員は、前項の措置が終了したことを確認して迅速、確実に係留索を放し、陸上における離岸の準備を完了する。

(発航前検査)

第二四条 船長は、法令の定めるところにより発航前検査を行ない、発航のためのすべての条件がととのつたとみとめるときは、運航管理者にその旨連絡して発航する。

(船内巡視)

第二五条 船内作業員は、一定時間に旅客室、車両甲板を巡視し、法令及び運送約款に定める旅客等が遵守すべき事項が守られているか、その他異常の有無を確認し、異常のある場合は、船長の指示を受けて所要の措置を講じなければならない。

(注意事項の周知)

第二六条 船長は、離岸後速やかに船内放送により旅客に対して次の注意事項の周知徹底を図らなければならない。

(一) 下船及び非常の際には、係員の指示に従うこと。
(二) 非常の際の避難要領並びに救命胴衣の格納場所及び着用方法
(三) 旅客が遵守すべき事項

2 船長は、船舶内の旅客が見やすい場所に旅客の遵守すべき事項、救命胴衣の着用方法及び非常の際の避難の要領を掲示しなければならない。

(入港準備)

第二七条 船長は、着岸一〇分前に運航管理者に連絡し、港内の状況が入港に支障のないものであるかどうか確認する。
2 運航管理者は、前項の連絡を受けた場合には、陸上作業員に対し、着岸作業に支障をきたさないよう所定の場所に待機するよう指示すると同時に港内の状況が支障がないかどうかを船長に連絡する。

(下船)

第二八条 陸上作業員は、船舶の着岸が完了したのち可動橋、ランプゲート及びタラツプの状況に異常のないことを確認し、通行止めをとく。
2 船内作業員は、船舶の着岸が完了したことを確認したのち順次車止め、又は固縛施設をはずす。この場合において、乗車人自ら車止め等をはずさないよう注意すること。
3 陸上作業員は、第一項の措置が講ぜられたことを確認して船内作業員に下船の合図をする。
4 船内作業員は、前項の合図を受けたときは、第二項の作業が完了したことを確認して通行止めをとき、自動車の下船を開始させる。
5 船内作業員は、自動車の下船が完了したことを確認して、旅客の下船を開始させる。

第一〇章 輸送施設の点検整備

(船舶の点検整備)

第二九条 運航管理者は、船舶の定期検査、中間検査及び臨時検査に立ち合い、当該船舶の検査結果を確認し、指定事項があれば○○部に連絡する。
2 ○○部は、運航管理者より報告を受けた指定事項について整備を行ない、講じた措置を運航管理者に報告する。
3 船長は、次の設備、装置等について点検簿を作成し、それに従つて毎日一回以上点検を実施する。

(一) 船体
(二) 機関
(三) 排水設備
(四) 操舵装置
(五) 係船設備
(六) 揚錨設備
(七) 救命設備
(八) 消防設備
(九) 無線設備
(一〇) 脱出設備
(一一) 非常用警報設備
(一二) 照明設備
(一三) 航海用具
(一四) その他(衛生設備、掲示板等)

4 船長は、前項の点検を実施したときは、直ちに運航管理者に次の事項を報告するものとする。

(一) 異常のある箇所((二)に掲げるものを除く。)及びその状況並びにそれに対して講じた措置
(二) 乗組員のみでは修復整備できない異常のある箇所及びその状況

5 運航管理者は、前項の報告を受けた場合には、直ちに次の措置を講じなければならない。

(一) 点検箇所が十分でないと認める場合は、直ちに船長に点検の必要な箇所の点検を指示する。
(二) 前項(一)の報告があつた場合においては、その措置が十分でないと認めるときは、直ちに船長又は○○部に必要な措置を講ずるよう指示する。
(三) 前項(二)の報告があつた場合は、直ちに○○部に対し、その修復整備を行なうよう指示する。
(陸上施設の点検整備)

第三〇条 運航管理者は、次の施設等について点検簿を作成し、それに従つて毎日一回以上陸上作業員をして点検を実施させる。

(一) 係留施設(防舷材、ダビツト、岸壁等)
(二) 乗降用施設(可動橋、タラツプ等)
(三) 転落防止施設(遮断鎖、遮断機等)
(四) 駐車場施設
(五) 船客待合所(消火設備、掲示板等)

2 陸上作業員は、点検中異常を発見したときは、直ちに運航管理者に報告する。
3 運航管理者は、前項の報告を受けたときは、直ちに○○部にその修復整備を図るよう指示する。

(総点検)

第三一条 運航管理者は、各船舶の船長及び○○部とともに、年一回船舶その他の輸送施設の総点検を行なう。
2 前項の総点検を行なうにあたつては、メーカー等専門家の協力を得るように努める。

第一一章 海難その他の事故の処理

(船長のとるべき措置)

第三二条 船長は、運航中に事故が発生したときは、その状況を運航管理者に速やかに連絡しなければならない。この場合において、第三者の助言又は援助を必要と認めるときは、あわせて海上保安官署等への連絡を行わなければならない。
2 船長は、自船が重大かつ急迫の危険に陥つた場合又は陥るおそれがある場合は、前項の措置に先立ち、直ちに遭難通信(遭難信号)又は緊急通信を発しなければならない。
3 船長は、事故が発生したときは、前二項に定める措置のほか、人命の安全の確保のための万全の措置、事故の拡大防止のための措置、旅客の不安を除去するための措置その他事故処理に必要な適切な措置を講じなければならない。

(運航管理者の指揮する事故処理組織)

第三三条 運航管理者は、船長からの連絡等によつて、事故の発生を知つたとき又は船舶の動静をは握できないときは、必要に応じ次の措置をとらなければならない。この場合においては次条に定める場合を除き、あらかじめ社長の承認を得て定める事故処理組織を発動し、これを指揮して行うものとする。

(一) 事故の実態は握及び救難に必要な情報の収集及び分析
(二) 海上保安官署への協力要請
(三) 行方不明者の捜索又は本船の救助のための捜索船又は救助船等の手配
(四) 必要人員の派遣及び必要物質の補給等
(五) 船長に対する必要事項の連絡及び助言
(六) 医師、病院、宿舎の手配等の旅客の救護のための措置
(七) 乗船客の氏名の確認及びその連絡先への通知
(非常対策本部)

第三三条の二 社長は、事故の規模あるいは事故の及ぼす社会的影響が大きいため、全社的体制でこれを処理する必要があると認めるときは、あらかじめ定める非常対策本部を発動し、これを指揮して行うものとする。
第三三条の三 運航管理者は、事故の発生を知つたときは、速やかに関係海運局及び海上保安官署にその概要及び事故処理の状況を報告しなければならない。
第三三条の四 社長は、事故の再発の防止及び事故処理の改善に資するため、必要に応じ事故調査委員会を設置するものとする。

第一二章 安全に関する教育及び訓練

(非常操練)

第三四条 船長は、毎月一回以上法令の定める非常操作を行ない、その実施状況を運航管理者に報告する。

(安全教育)

第三五条 運航管理者は、乗組員及び陸上作業員に対し、安全教育を実施し、船員法、海上衝突予防法等の関係法令及び運航管理規程の周知徹底を図る。

附 則

この規程は、昭和四五年一〇月一日より実施する。


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport