賃金の支払の確保等に関する法律(昭和五一年法律第三四号。以下「法」という。)は、昭和五一年五月二七日公布され、法の規定中第三章等未払賃金の立替払事業に関する部分については、昭和五一年七月一日から施行されることとなった。
このため、立替払事業の実施に必要な政省令等として別添の「賃金の支払の確保等に関する法律施行令(昭和五一年政令第一六九号。以下「令」という。)」、「船員に係る未払賃金の額の確認等に関する省令(昭和五一年厚生省・運輸省令第一号。以下「共同省令」という。)」、「未払賃金の立替払事業に係る船員の立替払賃金の請求の手続等に関する省令(昭和五一年厚生省令第二七号。以下「厚生省令」という。)」、「船員に関する賃金の支払の確保等に関する法律施行規則(昭和五一年運輸省令第二六号。以下「運輸省令」という。)」及び「賃金の支払の確保等に関する法律施行令の規定によって算定し得ない場合の立替払賃金算定基礎額の算定の方法等を定める件(昭和五一年七月厚生省告示第一五七号。以下「厚生省告示」という。)」が、公布され、昭和五一年七月一日から施行されることとなったので、左記の事項に留意して、その円滑な実施に努められたい。
また、立替払の請求手続については、社会保険庁の通達(昭和五一年七月一日付庁保発第二八号「賃金の支払の確保等に関する法律による船員に係る未払賃金の立替払事業の実施について(通知)」を添付するので了知の上、関係都道府県と密接な連携を保ちながら、その運用を取り計らわれたい。
第一 立替払の法律関係について
一 一般的事項
(一) 法第七条(法第一六条の規定により読み替えられたものをいう。以下同じ。)は、船員保険法(昭和一四年法律第七三号)第一七条の規定による被保険者(同法第一五条第一項に規定する組合員たる被保険者を除く。)を使用する事業の事業主が破産の宣告を受ける等一定の事由に該当することになった場合において、当該事業の船員のうち一定の期間内に当該事業を退職した者に係る未払賃金があるときには、民法第四七四条第一項ただし書及び第二項の規定にかかわらず、未払賃金の額その他の事項について地方運輸局長の確認又は裁判所等の証明を受けた者の請求に基づき、当該未払賃金に係る債務のうち一定の範囲内のものを当該事業主に代わって政府が弁済することを規定したものである。
(二) 立替払に係る事業主の意思
法第七条の規定による未払賃金に係る債務の弁済(以下「立替払」という。)は、第三者である政府が賃金の支払を受けることができない者を保護するため行うものであることから立替払に対する民法第四七四条第一項ただし書及び第二項の適用は排除され、当該事業主の意志に反する場合であっても行われることとされているので、立替払について事業主の同意は不要である。
(三) 政府と事業主の関係
立替払は、船員保険法第五七条の二第一項の福祉施設として行われるものであるが、立替払が原則として事務管理として行われるので、政府は立替払と同時に事業主に対して事務管理による費用償還請求権を取得する(民法第七〇二条第一項)とともに、債権者である立替払を請求した者(以下「立替払請求者」という。)の承諾を得て立替払に係る賃金請求権を取得するものである。(民法第四九九条第一項)
このように政府が弁済により立替払請求者に代位することとしたのは、1)賃金の支払は事業主の基本的義務であり、倒産し、立替払が行われた場合であってもその義務を免れ得るものとすべきでないこと、2)立替払は船員に二重の利得を得させうるものとすべきでないこと等の理由によるものである。
2 立替払の要件
(一) 事業主に係る要件
イ 船員保険法の被保険者を使用する事業の事業主であること。
立替払の対象となる事業主は、船員保険法第一七条の被保険者を使用する事業の事業主に限られるが、船員保険の被保険者であっても同法第一五条の組合員たる被保険者を使用する事業の事業主は対象とはならない。(法第七条、第一六条)
なお、船員保険の被保険者を使用する事業の事業主が被保険者資格の取得届を提出せず、船員保険料を滞納している場合であってもその者に係る未払賃金が立替払の対象となることはいうまでもない。
ロ 一年以上の期間にわたって事業を行っていた事業主であること。事業主が事業を行っていた期間は、一年以上であることを要する(厚生省令第一条)が、この期間には船員保険の被保険者を使用しないで事業を行っていた期間も含むものとする。
また、一部漁業のように有期的又は季節的性質の事業を営む事業主については、休漁期・禁漁期等当該事業の性質上当然予想される中断期間をも含めて一年以上あれば、対象事業主として取扱うこととする。
ハ 次に掲げる事由(VI)に掲げる事由にあっては中小企業事業主に係るものに限る。)に該当するに到った事業主であること。(法第七条、第一六条、令第二条第一項、第五条)
(I) 破産の宣告を受けたこと。 (清算型)
(II) 特別清算開始の命令を受けたこと。 (〃)
(III) 整理開始の命令を受けたこと。 (更正型)
(IV) 和議開始の決定があったこと。 (〃)
(V) 更生手続開始の決定があったこと。 (〃)
(VI) 以上に掲げる事由のほか、事業活動が停止し、再会する見込みがなく、かつ、賃金支払能力がない状態(厚生省令第二条)になったことについて、地方運輸局長の認定があったこと。 (清算型)
なお、前記(I)から(V)までの事由については企業の規模を問わず適用されることになっているが、(VI)の事由については令第二条第二項の中小企業事業主に限られており、当該事業主がこの中小企業事業主に該当するかどうかの判断は令第二条第一項第五号の認定の申請の日のおおむね一年前の状態において判断することとする。(厚生省令第三条は事業活動に著しい支障を生ずるに至った時のおおむね六月前の時としているが、著しい支障を生ずるに至ったときは認定申請時の六月前として取扱う)
また、令第二条第二項の「常時使用する労働者の数」とは、常態として使用する労働者の数をいうものであり、また、この労働者の数は、主たる労務管理の事務を行う事務所単位でなく事業全体の数(船員に限られず陸上労働者をも含む。)をいう。
(二) 労働者の要件
立替払の対象となる船員は、事業主が破産の宣告を受け、又は令第二条第一項各号に掲げる事由に該当することとなった最初の申立てがあった日(同項第五号に掲げる事由に該当することとなった場合においては、最初の申請のあった日)の六月前の日から二年間に退職した船員であることとされている。(令第三条)
なお、「最初の申立てがあった日」とは破産宣告等がなされる基礎となった申立てのうち最初の申立てがあった日で、この最初の申立ての日は、1)裁判所が職権で破産の宣告をした場合にあっては、当該宣告があった日、2)裁判所が職権で特別清算開始の命令をした場合にあっては、当該命令があった日(当該命令が事業主の業務を監督する官庁の通告に基づくものであるときには、当該通告があった日)、3)裁判所が事業主の業務を監督する官庁の通告に基づき職権で整理開始の命令をした場合にあっては、当該通告があった日とする。(令第三条第一号)
また、令第二条第一項第五号の認定のあった後当該事業主が破産の宣告を受け、又は令第二条第一項第一号から第四号までの事由に該当することとなった場合は、令第二条第一項第五号の認定に係る最初の申請があった日とする。(令第三条柱書括弧書)
三 立替払の対象となる未払賃金の額
(一) 立替払の額
立替払される未払賃金の額は、次の算式によって算定される額とされている。(令第四条、第五条)
[未払賃金総額]×80/100
基準退職日における立替払請求者の年齢に応じて、次に掲げる額を限度とする。
三〇歳未満 七〇万円
三〇歳以上四五歳未満 一一〇万円
四五歳以上 一三〇万円
(二) 未払賃金の総額
イ 基準退職日以前の労働に対する船員法第五三条第二項の規定により一定の期日に支払わなければならない給料その他の報酬並びに基準退職日以前の労働に対する割増手当及び歩合金並びに基準退職日の退職に係る補償休日手当及び退職手当で、基準退職日の六月前の日から立替払の請求の日の前日までに支払期日が到来し、当該支払日の経過後まだ支払われていないものの総額をいう。(令第四条第二項、第五条)
なお、この総額が二万円未満であるときは、立替払の対象とならないので注意されたい。
ロ 未払賃金総額の算定対象となる賃金は、船員法第五三条第二項の一定期日払の給料その他の報酬並びに割増手当及び歩合金並びに補償休日手当及び退職手当に限られ、臨時に支払われる賞与その他これに準ずる報酬は除かれているので、その旨留意されたい。
ハ 未払賃金総額に不相当に高額な額がある場合には、当該額を控除した残りの額が未払賃金総額となる(令第四条第二項、第五条)が、この不相当な額とは、事業主が通常支払っていた賃金、当該事業主と同種の事業を営む事業主でその事業規模が類似のものが支払っている額等に照らし、不当に高額と認められる額をいう。(厚生省令第四条)
ニ イの基準退職日とは、令第三条の期間内にした退職(未払賃金のある退職に限る。)の日をいい、当該期間内に同一人について同一事業に係る未払賃金のある退職が二以上ある場合は、これらの退職のうち最初の退職の日をいう。(令第四条第一項、第五条)
第二 立替払の手続
一 立替払の手続の概要
(一) 破産等裁判上の手続がとられている場合(事業主が破産の宣告を受け、又は令第二条第一項第一号から第四号までに掲げる事由のいずれかに該当する場合)の手続の概要は次のとおりである。
1) 立替払請求者は、必要事項(共同省令第三条第一号イからホまでに掲げる事項)について裁判所等の証明書(共同省令第三条第一号)の交付を申請する。
2) 裁判所等は立替払請求者に1)の証明書を交付する。
1)′ 1)の証明書を裁判所等から得られない立替払請求者は、地方運輸局長に対し、証明を得られなかった事項についての確認を申請する。(共同省令第五条)
2)′ 地方運輸局長は、確認通知書を立替払請求者に交付する。(共同省令第六条)
3) 立替払請求者は、地方運輸局(本局以下同じ。)に、立替払請求書に裁判所等の証明又は地方運輸局長の確認通知書を添付し提出する。
4) 地方運輸局におかれた分任資金前渡官吏(船員職業安定所長。以下同じ。)は、立替払の決定をし、都道府県の主任資金前渡官吏に資金の交付要求をする。
5) 都道府県の主任資金前渡官吏は、地方運輸局の分任資金前渡官吏に資金を交付する。
6) 地方運輸局の分任資金前渡官吏は、原則として口座への振込により立替払請求者に送金する。
7) 都道府県は、事業主に対して求償する。
裁判上の手続がとられている倒産の場合の手続概要
(二) 事実上の倒産の場合(事業主が令第二条第一項第五号に該当する場合)の手続は次のとおりである。
1) 立替払請求者は、厚生省令第二条の状態になったことについて地方運輸局長に対して認定の申請を行う。(共同省令第一条)
2)地方運輸局長は、認定通知書を立替払請求者に交付する。(共同省令第二条)
3) 立替払請求者は、必要事項(共同省令第四条第二号)の確認を地方運輸局長に申請する。(共同省令第五条)
4) 地方運輸局長は、確認通知書を立替払請求者に交付する。(共同省令第六条)
5) 立替払請求者は、地方運輸局に立替払請求書に地方運輸局長の確認通知書を添付し提出する。
6) 地方運輸局におかれた分任資金前渡官吏は、立替払の決定をし、都道府県の主任資金前渡官吏に資金の交付を要求する。
7) 都道府県の主任資金前渡官吏は、地方運輸局の分任資金前渡官吏に資金を交付する。
8) 地方運輸局の分任資金前渡官吏は、原則として口座への振込により立替払請求者に送金する。
9) 都道府県は、事業主に対して求償する。
事実上の倒産の場合の手続概要
二 認定
(一) 認定についての基本的事項
イ 令第二条第一項第五号の地方運輸局長の認定は、当該申請に係る事業主が次の要件に該当する場合に行うこととする。
a 船員保険法の被保険者(同法第一五条の被保険者を除く。)を使用する事業主であること。(法第七条、第一六条)
b 一年以上の期間にわたってその事業を行っていた事業主であること。(厚生省令第一条)
c 令第二条第二項に規定する中小企業事業主であること。
d 破産の宣告を受け又は令第二条第一項第一号から第四号までの事由に該当するに至った事業主でないこと。(厚生省令第二条)
e 賃金を支払うことができない状態として次に掲げる状態となった事業主であること。(厚生省令第二条)
(i) 事業活動が停止していること。
(ii) 事業を再開する見込みがないこと。
(iii) 賃金支払能力がないこと。
ロ 認定は、地方運輸局長が当該認定の申請に係る事業主の事業を退職した者の申請に基づき行うものであり、申請がないのに地方運輸局長が職権により行うものではない。(令第二条第一項第五号)
ハ 認定は事業主単位で行われるものであるので、その効力は申請者以外の当該事業を退職した者にも及ぶものである。
ニ 認定は事業主単位に行うものであるので、事業主の主たる事務所(本社)の所在地を管轄する地方運輸局長が行うこととする。
ホ 認定に関する事務は、申請の受理、認定通知等の事務は船員部労働基準課において、認定に係る事業主の事務所、船舶への立入検査等に関する事務は船員労務官が行うこととする。
(二) 認定の申請
認定の申請に係る事務処理は、次により行うこととする。
イ 認定の申請は、当該申請に係る事業主の主たる事務所の所在地を管轄する地方運輸局長に対して行うこととし、申請者が当該地方運輸局から離れた地域に所在する場合はもよりの地方運輸局又はその海運支局を経由して行うことができること。(共同省令第一条第一項、第四項)
ロ 認定の申請は、別添第一号様式の認定申請書により行わせること。
ハ 認定は事業主単位で行うものであり、その効力は申請者以外の他の退職者にも及ぶものであるから、認定申請はできるだけ代表者一人が行う等の方法により行わせるよう指導すること。
また、既に認定済の事業主について他の者から認定申請が行われようとした場合は、認定の申請を行う必要のない旨を説明し、その了解を得ること。
ニ 申請を受理するに際しては、船員手帳を提示させるとともに、当該申請に係る事業主の事業活動の状況等に関する事項を明らかにすることができる資料をできるだけ添付するよう指導すること。(共同省令第一条第二項)
ホ 認定申請書の申請年月日欄には、主たる事務所の所在地を管轄する地方運輸局(もよりの地方運輸局又はその海運支局を経由して行われた場合は、その地方運輸局又はその海運支局)に申請書を提出する日の日付を記入させること。申請年月日は、立替払の対象となる退職の時期を認定する重要な意義をもつものであるので、認定申請書を実際に受理した日と異ならないよう注意すること。
ヘ 認定申請書が当該事業主の事業を退職した日の翌日から起算して六月を超える時点で提出された場合は受理しないこと。(共同省令第一条第三項)
ト 認定申請書をもよりの地方運輸局又はその海運支局で受理した場合は、その写しを保存するとともに速やかに主たる事務所の所在地を管轄する地方運輸局に送付すること。
(三) 認定の方法
認定の申請書を受理し又は他の地方運輸局又はその海運支局から送付された主たる事務所の所在地を管轄する地方運輸局は、次により認定を行うこととする。
イ 申請書を受理し、また送付された場合は、別添第二号様式の認定調査報告書により所要の調査を行い、その結果に基づき認定又は不認定の処分を行うこと。
ロ 認定に関する調査は、船員労務官が行うものとすること。
ハ 認定申請者が退職した事業の事業主に対しては、当該事業主の認定に関する調査が円滑に行えるよう協力を求めること。
ニ 船員とともに陸上労働者をも使用していた事業主については、労働基準監督署長も認定を行うので、認定にあたっては当該事業主の主たる事務所を管轄する労働基準監督署長と密接に連絡協議を行うこと。
(四) 認定の通知
イ 認定に関する処分(認定又は不認定)を行った場合は、遅滞なくその処分の結果を別添第三号様式の認定(不認定)通知書により申請者に通知する(共同省令第二条)とともに、本省(労働基準課)に電話等により連絡し、認定(不認定)通知書の写しを送付する。
ロ 本省は、各地方運輸局に認定に関する処分の内容について連絡する。
ハ 各地方運輸局長は、認定(不認定)事業主台帳又は認定(不認定)通知書編を作成し、認定に関する記録又は通知書の写しを保管するとともに、その内容を管内の海運支局に連絡する。
ニ 認定(不認定)通知書の年月日は、地方運輸局長の決裁の日の日付を記入することとする。
なお、この認定通知書の年月日は立替払請求書を提出するにあたっての除斥期間の起算日となり(厚生省令第五条第四項)、重要な意義を有するので決裁の日と異ならないよう注意されたい。
認定手続概要図
三 確認
(一) 確認についての基礎的事項
イ 立替払の請求を行うためには、本事業の健全な運営を図る見地から立替払の事由、未払賃金の額等所要の事項について裁判所等の証明又は地方運輸局長の確認を必要とする。
ロ 地方運輸局長の確認を必要とする者は、次に掲げる者である。
a 破産の宣告を受けた事業主又は令第二条第一項第一号から第四号までに掲げる事由に該当するに至った事業主を退職した者にあっては、共同省令第三条第一号イからホまでに掲げる事項について当該倒産事案を所管する裁判所又は破産管財人等の証明書の交付を得られなかった者(共同省令第三条第一号)
b 令第二条第一項第五号の事由に該当するに至った事業主を退職した者(共同省令第三条第二号)
ハ 地方運輸局長の確認を必要とする事項は、次のとおりである。
a ロのaに掲げる者にあっては、共同省令第三条第一号イからホまでに掲げる事項のうち裁判所等の証明書の交付を得られなかった事項(共同省令第四条第一号)
b ロのbに掲げる者にあっては、令第二条第一項第五号の認定があった日、当該認定に係る最初の申請があった日及び共同省令第三条第一号ハからホまでに掲げる事項(共同省令第四条第二号)
ニ 確認は当該申請者の主たる労働管理の事務を行っていた事務所の所在地を管轄する地方運輸局長が行うこととする。(共同省令第五条第一項)
ホ 確認に関する事務は、申請の受理、確認通知等の事務は船員部労働基準課において、確認に係る事業主の事務所、船舶への立入検査等に関する事務は船員労務官が行うこととする。
(二) 確認の申請
確認の申請に係る事務処理は次により行うこととする。
イ 確認の申請は、当該申請者に係る主たる労務管理の事務を行っていた事務所の所在地を管轄する地方運輸局長に対して行うこととし、申請者が当該地方運輸局から離れた地域に所在する場合は、もよりの地方運輸局又はその海運支局を経由して行うことができる。(共同省令第五条第一項及び第三項)
ロ 確認の申請は、別添第四号様式の確認申請書により行わせること。
ハ 確認の申請者は個々の退職船員であるが、手続の早期処理の見地から、できるだけ一括して申請するよう指導すること。
ニ 確認を受理するに際しては、船員手帳を呈示させるとともに、確認を受けようとする事項を明らかにすることができる資料を確認申請書に添付するよう申請者を指導すること。(共同省令第五条第二項)
ホ 確認申請書をもよりの地方運輸局又はその海運支局で受理した場合は、その写しを保存するとともに速やかに申請者の主たる労務管理の事務を行っていた事務所の所在地を管轄する地方運輸局に送付すること。
(三) 確認の方法
確認の申請書を受理し、又は他の地方運輸局又はその海運支局から送付された申請者の主たる労務管理の事務を行っていた事務所の所在地を管轄する地方運輸局は、次により確認を行うこととする。
イ 確認の申請を受理した場合は、別添第五号様式の確認調査報告書により所要の調査を行い、その結果に基づき確認又は不確認の決定を行うこと。
ロ 確認とは、1)確認申請書に記載されている内容のとおりを確認する場合、及び2)確認申請書に記載されている内容とは異なる確認をする場合の決定であり、不確認とは確認申請書に記載されている内容が確認できない場合の決定であること。
例えば、未払賃金額一〇〇万円という確認申請について、そのうち八〇万円の証明資料しかない場合は、八〇万円と確認し、未払賃金額を全く証明する資料がない場合には不確認とすること。
ハ 確認に関する調査は船員労務官が行うこと。
ニ 確認にあたっては、偽りその他不正の手段により未払賃金の立替払を受けようとするものを把握するため、次のことに留意すること。
a 申請者が令第三条に掲げる日(破産の申立て、地方運輸局への認定の申請等のあった日)の六月前程度の日以後新たに雇用されたものである場合は、次の事項について調査し、社会通念上合理的理由がないのに、当該事業主に使用されるに至った者であるか否かについて明らかにすること。
(i) 就業の動機、(ii)採用の経緯、(iii)事業主、役員との関係、(iv)就職時期の事業の状態及び人手不足の状況、(v)当該申請者の勤務状況
b 令第四条第二項及び厚生省令第四条にいう未払賃金の額のうち不相当に高額な部分とは、未払賃金の立替払事業がなければ行われなかったであろう賃金改定(立替払賃金の額を増額する目的のために行われた賃金改定)の結果増額された賃金の部分であること。例えば次のような場合であって、合理的な理由がないにもかかわらず賃金改定が行われた結果増額した賃金の部分については、「不相当に高額な部分」に該当することが多いと思われるので、慎重な調査を要すること。
(i) 令第三条に掲げる日の六月前程度の日以後の期間又は未払賃金が発生して期間に、賃金ベース改定時期でないにもかかわらず、賃金改定が行われている場合
(ii) 令第三条に掲げる日の六月前程度の日以後の期間又は未払賃金が発生している期間に賃金ベース改定時期がある場合であって、賃金の増加率又は増加額が当該事業主と同種の事業を営む事業主でその事業規模が類似のものが行った賃金ベース改定による賃金の増加率又は増加額と比較して大きい場合
ホ 申請者が退職した事業の事業主に対して、確認に関する調査が円滑に行えるよう協力を求めること。
(四) 確認の通知
確認に関する処分を行った場合は、別添第六号様式による確認通知書又は別添第七号様式による不確認通知書により遅滞なく申請者に通知するものとする。(共同省令第六条)
四 立替払賃金の請求
(一) 立替払賃金の請求についての基本的事項
イ 立替払賃金の支給事務については、確認事務と密接な関連を有する事務であるので、請求者の主たる労務管理の事務を行っていた事務所の所在地を管轄する地方運輸局(本局)において行うこととする。
ロ 立替払賃金の支給事務は、地方運輸局(本局)の職員がその管轄区域のそれぞれの都道府県の地方事務官に併任され、船員保険特別会計の分任資金前渡官吏に任命されることにより行うこととする。
ハ ロの分任資金前渡官吏は、地方運輸局(本局)の船員職業安定所長が任命されることとなる。
なお、請求書の審査は船員部労働基準課に、その他の支給事務については労政課労政係長を船員職業安定所に併任の上担当させることとする。
(二) 立替払請求者に対する指導
立替払請求者に対しては、支給事務の円滑化を期するため、次のことについて十分な指導を行うこと。
イ 立替払の請求は、当該請求者に係る主たる労務管理の事務を行っていた事務所の所在地を管轄する地方運輸局に直接提出することにより行うこと。(郵送も認められる。)(厚生省令第五条第二項)
ロ 請求書は別紙第八号様式の立替払請求書により行わせること。
ハ ロの請求書には、地方運輸局長の確認通知書又は裁判所等の証明書を添付させること。(厚生省令第五条第三項)
ニ 基準退職日における請求者の年齢を確認するため、船員手帳、船員保険被保険者証、運転免許証等生年月日が明らかになる公的機関の発行する書類を提示させること。
ホ 送金方法については、原則として預金口座への振込払の方法を利用するよう指導すること。この場合において、立替払請求者の本人の預金口座番号、銀行名等の正確な記入をさせるよう指導するとともに、預金口座への振込払の方法が利用できない金融機関を指定することがないよう注意すること。
ヘ 立替払請求者が本年中に退職手当等の支払を受けている場合は、税務署備え付けの所定の退職所得の受給に関する申告書及び本年中に退職手当等の支払いを受けた際に交付された退職所得の源泉徴収票を添付させること。
なお、請求者が上記に該当しない場合には、立替払請求書に同時印刷されている略式の退職所得の受給に関する申告書及び退職所得申告書への記入のみでよいこと。
ト 同一事業主の事業を退職した立替払請求者が二人以上いる場合は、できるだけ一括して請求するよう指導すること。
チ 立替払の請求は、破産の宣告、認定等があった日の翌日から二年以内に行わねばならないこと。(厚生省令第五条第四項)
(三) 立替払の支給事務
立替払請求書を受理した立替払請求者の主たる労務管理の事務を行っていた事務所の所在地を管轄する地方運輸局では、船員部労働基準課が請求書の内容を審査のうえ船員職業安定所の担当者(労政課労政係長)に回付し、当該者は別途送付する社会保険庁作成の立替払賃金の支給事務についての取扱要領により支給事務を担当する。
(四) その他
立替払を行った地方運輸局は、都道府県の債権管理事務の円滑化に寄与するため、立替払をした者に係る事業主の支払能力について知りえた事実があるときは、当該事実を立替払をした者に係る主たる労務管理の事務を行っていた都道府県に連絡すること
五 経過措置について
(一) 未払賃金の立替払事業は、昭和五一年七月一日から施行することとしており(法附則第一条、令附則第一項、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律附則第一条第一項第三号、同法の一部の施行期日を定める政令)、同日以後破産の宣告、認定等があった場合について適用することとなっている。(法附則第三条)
(二) 立替払の事由のうち破産等裁判上の手続がとられているもので昭和五一年七月一日前に破産の申立て等がなされた場合については、法第七条の政令で定める退職の時期の期間は、令第二条の規定にかかわらず、昭和五一年一月一日から二年間とすること。(令附則第二項)
これは、立替払の事由のうち破産等裁判上の手続がとられていない場合については、認定の申請が昭和五一年七月一日前になされることはないことから、立替払の対象となる退職の時期の期間について破産等裁判上の手続がとられている場合と裁判上の手続がとられていない場合の間に生じる施行当初の不均衡を解消するための経過措置である。