港湾法等の一部を改正する法律(昭和四八年法律第五四号。以下「改正法」という。)は、先に昭和四八年七月一七日に公布され、その一部は同日から施行されているところであるが、残余の部分のうち港湾法第三条の二に関する部分は昭和四九年五月三〇日から、その他の部分は昭和四九年七月一六日からそれぞれ施行され、ここに改正法の全面施行をみた。また、改正法の施行に伴い、港湾法施行令等の一部を改正する政令(昭和四九年政令第二六五号)及び港湾法施行規則の一部を改正する省令(昭和四九年運輸省令第二八号)がともに昭和四九年七月一三日に公布、同月一六日に施行され、港湾の施設の技術上の基準を定める省令(昭和四九年運輸省令第三〇号)が昭和四九年七月一六日に公布、即日施行され、港湾計画の基本的な事項に関する基準を定める省令(昭和四九年運輸省令第三五号)が昭和四九年八月三日に公布、即日施行され、昭和四九年運輸省告示第二七八号(港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針を定めた件)及び陸域を定める告示(昭和四九年運輸省告示第二七九号)がともに昭和四九年七月一三日に公布された。
改正法の公布の日に施行された諸規定の解釈及び運用については、港湾局長通達(昭和四八年一〇月一日付け港管第二三六三号)をもつて既に通達しているところであるが、今回施行された諸規定の解釈及び運用については、左記の点に留意し、遺漏なきよう努められたい。
なお、この通達において「法」とは港湾法(昭和二五年法律第二一八号)を、「令」とは港湾法施行令(昭和二六年政令第四号)を、「則」とは港湾法施行規則(昭和二六年運輸省令第九八号)をいう。
一 臨港地区内における行為の届出等について(法第三八条の二、令第一五条の二〜第一五条の四並びに則第五条第三項及び第六条関係)
(一) 趣旨
従来より臨港地区内においては分区の規制が存しているが、これは、分区内における構築物の建設等を規制することにより各分区の目的を全うしようとするものである。今回新たに加えられた本制度は、港湾における環境の保全、安全の確保、機能の維持等を図るため、従来からの分区の規制に加え、新たに臨港地区内の行為規制を行うことにより、総合的に実効のある規制を行い、港湾の管理運営の適正化を図ろうとするものである。
(二) 届出の履行について
1 届出(通知を含む。本項において同じ。)の対象となる事業者等に対し、対象施設の範囲、届出手続等の周知徹底を図るとともに、これらに関し必要な指導を行うこと。
2 届出された施設についてその現況を整理し、常時正確に把握すること。特に工場又は事業場については、港湾環境整備負担金の基礎資料ともなるので、台帳を整備する等正確な把握に努めること。
(三) 届出の対象となる行為について
1 廃棄物処理施設の建設又は改良(法第三八条の二第一項第二号及び令第一五条の二)
廃棄物処理施設の建設又は改良は、一般的に港湾における環境の保全に著しい影響を与えるおそれがあることに鑑み、届出対象とされたものである。
工場又は事業場の敷地内の廃棄物処理施設は対象外とされているが、専ら当該工場又は事業場において発生する廃棄物を処理するための廃棄物処理施設以外のもの、たとえば共同処理施設、清掃工場等は届出対象となるので留意すること。
港湾管理者の長が廃棄物処理施設の種類及び廃棄物の数量の指定を行う際は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四六年政令第三〇〇号)第五条及び第七条並びに海洋汚染防止法施行規則(昭和四六年運輸省令第三八号)第二五条に規定する廃棄物処理施設の種類ごとの廃棄物の数量により定めること。
2 工場又は事業場の新設又は増設(法第三八条の二第一項第三号及び令第一五条の三)
工場又は事業場の新設又は増設は、港湾に立地する工場又は事業場の貨物の搬出入による港湾施設の能力等への影響、工場又は事業場の事業活動に伴い生ずる廃棄物の処理方法等をチエツクする必要があることに鑑み、届出対象とされたものである。
「工場又は事業場」とは、あらゆる事業活動の行われる場をいい、事務所、官公署等も含まれる。
「一の団地」とは、敷地よりも広い概念であり、連接している客観的に一区画をなすと認められる土地の区域のほか、幅の狭い道路、水路等で分離されている場合でも、用途上不可分の関係にあり社会通念上まとまつた一区画の土地と認められるものは一の団地と解する。
「作業場」とは、事業の用に直接供する場をいい、資材倉庫等は含まれるが、食堂、社員の厚生施設等は含まれない。
3 危険物取扱施設の建設又は改良(法第三八条の二第一項第四号、令第一五条の四第一号及び則第六条)
危険物取扱施設は、それが一般的に港湾における消防防災等の体制等について著しい影響を与えるおそれがあることに鑑み、届出対象とされたものである。
4 揚水施設の建設又は改良(法第三八条の二第一項第四号、令第一五条の四第二号及び則第五条第三項)
揚水施設は、その取水の位置や量によつては地盤沈下をひき起し、港湾施設の損壊等港湾の保全に著しい支障を与えるおそれがあるので、工業用水法(昭和三一年法律第一四六号)及び建築物用地下水の採取の規制に関する法律(昭和三七年法律第一〇〇号)による規制地域外でも規制を行い、地盤沈下を未然に防止する必要があることに鑑み、届出対象とされたものである。
揚水施設のストレーナーの位置の指定にあたつては、当該臨港地区における地層、地下水脈の状況及び揚水の現状を調査すること。
なお、同様の趣旨から、揚水施設の規制は、港湾隣接地域においても行われることとされたので留意すること(令第一四条第三号)。
(四) 勧告及び変更命令について(法第三八条の二第七項及び第八項関係)
法第三八条の二第一項第一号及び第三号に掲げる行為に係る届出に対しては、勧告制度及び変更命令制度の二つの措置があるが、変更命令制度は水域施設、外郭施設、係留施設又は臨港交通施設の開発に関する港湾計画に著しい変更をもたらす場合に使用し、勧告制度はこれ以外の場合に使用する趣旨である。
従つて、変更命令は、勧告を必ずしも前提とするものではない。
二 港湾の施設に関する技術上の基準について(法第五六条の二、令第一九条、則第二八条及び港湾の施設の技術上の基準を定める省令関係)
(一) これは、近年の船舶の大型化、カーフエリー輸送の増大、危険物の海上輸送の増加、海洋性レクリエーシヨン活動の活発化等に伴い、港湾の施設の立地、構造等に起因する事故発生の危険又は利用上の支障が憂慮されているところであるので、技術上の観点からその基準を定めることにより港湾の安全の確保及び利用の円滑化を図ろうとするものである。
(二) 港湾の施設の技術上の基準は、法第五六条の三第二項の命令のほか、法第三七条第一項又は第五六条第一項の許可等の基準ともなるものである。
三 監督処分及び報告の徴収等について(法第五六条の四及び第五六条の五並びに則第三二条関係)
これについては、次の点に留意すること。
(一) 法第五六条の四第一項の規定による港湾管理者の長の監督処分の相手方は、法第三七条第一項の規定に違反した者、同項の規定による許可に付した条件に違反した者又は詐欺その他不正な手段により同項の規定による許可を受けた者である。
(二) 法第五六条の五の規定による港湾管理者の長の報告の徴収又は立入検査の相手方は、法第三七条第一項の許可を受けた者である。従つて、則第七号様式による身分証明書は、(表)中かつこ書を削除して発行すること。
(三) 港湾区域内における沈船、係留物等についてその所有者又は管理者を確知することができない場合においても、法第五六条の四第二項の規定により港湾管理者において排除措置を行うことができることとなつたので、同規定の積極的活用を図ること。