港湾法(昭和二五年法律第二一八号。以下「法」という。)第三八条の二に規定する臨港地区における行為の届出については、昭和四九年一一月一日付港管第二七七四号及び同日付第二七七五号により通達されているところであるが、一部に解釈上明確を欠く点があるため、一部関係者に疑義があるので今後同条の運用にあたっては、前記通達によるほか、左記にも留意することとされたい。
一 届出の対象となる行為
(一) 工場又は事業場の新設又は増設(法第三八条の二第一項第三号)
法第三八条の二第一項第三号において用いられている用語は、次のように解釈するものとする。
1) 「事業場」とは、事業者がその権原に基づいて管理し、事業の経営の内容たる活動を行う一定の場所をいい、その活動は一定の目的のもとに反復継続して行われるものであれば、その場所が屋内であるか否か、また、その目的が営利であるか否かを問わない。したがつて、建設工事現場のように活動が反復継続して行われず、一時的にしか行われないものは事業場には該当せず、また、自動車運送事業者が有料道路において自動車を運行させる場合の当該有料道路のように当該事業者が権原に基づかず、単に使用しているに過ぎないものは当該自動車運送事業者の事業場には該当しないと解すべきである。
2) 作業場とは、元来、屋内であるか否かを問わないが、法第三八条の二では「作業場の床面積」と規定しているため、ここでいう「作業場」としては後述の「床面積」の存する建築物の屋内のみを対象とすれば足りることになる。
3) 「床面積」とは、建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積をいう(建築基準法施行令(昭和二五年政令第三三八号)第二条第一項第三号参照)。
4) 「敷地面積」とは、一の団地内における工場又は事業場の用地の全面積をいう。
(二) 増設の場合の取扱い
法第三八条の二の規定は、港湾の機能の維持、港湾における環境の保全等を図るために、一定の行為について届出をさせ、必要がある場合には、行為の規制を行うことを目的とするものであり、その及ぼす影響が微少なものについては、届出の対象とする必要はないから、政令で定める規模以上のものに限定されるものと解する。
したがつて、法第三八条の二の規定は、次の場合に適用されると解する。
1) 敷地面積は不変で床面積のみを増加させる場合にあつては、一回に増加する床面積が政令で定める面積以上であるもの
2) 床面積は不変で敷地面積のみを増加させる場合にあつては、一回に増加する敷地面積が政令で定める面積以上であるもの
3) 床面積及び敷地面積を共に増加させる場合にあつては、一回に増加する床面積が政令で定める面積以上であるもの若しくは一回に増加する敷地面積が政令で定める面積以上であるもの又は一回に増加する床面積及び敷地面積が政令で定める面積以上であるもの
二 経過措置
(一) 新たに臨港地区が指定された場合の経過措置
(イ) 港湾法等の一部を改正する法律(昭和四八年法律第五四号。以下「改正法」という。)による改正後の法第三八条の二の規定の施行の日以後において臨港地区となつた区域内において、法第三八条の二第一項各号の一に掲げる施設を設置している者(当該施設の建設の工事をしている者を含む。)に対しては、法律上規定は存しないが改正法附則第二条第四項に準じて届出等を行うよう指導するものとする。
(ロ) 法第三八条の二第一項各号の一に掲げる行為に係る工事を開始しようとする者は、同項の規定により、工事に着手する日の六〇日前までに届出を行うこととされているので、臨港地区の指定の日から六〇日を経過する日までにその工事を開始しようとする者については、臨港地区の指定の日から少くとも六〇日間は事実上工事に着手できないこととなり、前記の工事を行おうとする者に対し、過大な義務を課する結果となる場合も考えられるので、当該地区が臨港地区に指定されることが確実となつた時点で該当する者に対して、本制度の趣旨を周知徹底する等により混乱を生ずることのないよう努めるものとする。
(二) 廃棄物処理施設の種類等が指定された場合の経過措置
(イ) 廃棄物処理施設の種類若しくはその処理することができる廃棄物の数量、危険物又は揚水施設のストレーナーの位置につき、港湾管理者の長が港湾法施行令(昭和二六年政令第四号。以下「令」という。)第一五条の二及び第一五条の四の規定に基づき新たに指定を行い、又は指定を変更した場合において、法第三八条の二第一項各号の一に掲げる施設を設置している者(当該施設の建設の工事をしている者を含む。)に対しては、二(一)(イ)と同様に取り扱うものとする。
(ロ) 廃棄物処理施設の種類若しくはその処理することができる廃棄物の数量、危険物又は揚水施設のストレーナーの位置の指定の日から六〇日を経過する日までに指定に係る施設の工事を開始する者に対しては、二(一)(ロ)と同様に取り扱うものとする。
三 廃棄物処理施設の種類等の指定の促進
法第三八条の二第一項各号に掲げる行為のうち、廃棄物処理施設、危険物取扱施設及び揚水施設の建設又は改良については、令第一五条の二及び第一五条の四の規定に基づき、港湾管理者の長により廃棄物処理施設の種類及びその処理することができる廃棄物の数量、危険物並びに揚水施設のストレーナーの位置が指定されることが行為の規制を行う前提となつているので、港湾における環境の保全、安全の確保、機能の維持等を図ることができるよう、速やかにこれらを指定することとされたい。