12水港第八八八号・港海第四一四号・建設省河政発第二五号
平成一二年四月一日

各都道府県知事・北海道開発局長・沖縄総合事務局長・各地方農政局長・各港湾建設局長・各地方建設局長・各港湾管理者の長・各漁港管理者の長あて

農林水産事務次官・運輸事務次官・建設事務次官通達


海岸法の一部を改正する法律の施行について


海岸法の一部を改正する法律(平成一一年法律第五四号)及び同法の附属法令は、平成一二年四月一日から施行されることとなったが、左記の事項に留意の上、(※)同法の施行に遺憾なきを期せられるとともに、速やかに関係事項を貴管内関係市町村に周知方取り計らわれ、海岸行政の運営に万全を期せられるようお願いする。
注一)北海道開発局長、沖縄総合事務局長、地方農政局長、港湾建設局長、地方建設局長あて通知については、(※)以下を、

「同法の施行に遺憾なきを期せられるとともに、速やかに関係事項を貴管下関係機関に周知方取り計らわれ、海岸行政の運営に万全を期せられたく、通知する。」

とする。
注二)港湾管理者の長及び漁港管理者の長あての通知については、(※)以下を、

「同法の施行に遺憾なきを期し、海岸行政の運営に万全を期せられるようお願いする。」
とする。


一 防護、環境及び利用の調和のとれた総合的な海岸管理の推進について

近年、海岸環境に対する関心の高まりとともに心の豊かさに対する意識が高まってきており、海岸管理者として、国民共有の財産である海岸の機能を適切に保持していく要請に的確に応えることが必要になってきている。このため、津波、高潮、波浪等による被害からの海岸の防護を目的とするこれまでの海岸法(昭和三一年五月一二日法律第一〇一号。以下「法」という。)について、その目的規定を抜本的に見直し、新たに海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図ることを法の目的に位置付けるものであること。
今後の海岸の管理に当たっては、海岸の防護に加え、海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用の確保を図り、これらが調和した総合的な海岸の管理を推進するよう努めるものであること。

二 「一般公共海岸区域」の創設と適切な管理の実施について

法は、これまで海岸保全区域をその適用対象としてきたが、新たに海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図ることが法の目的に位置付けられたこと並びに地方分権の推進の観点から、これまで法定外公共物として都道府県知事が国有財産法(昭和二三年法律第七三号)に基づき財産管理を行っていた国有海浜地について、新たに一般公共海岸区域として位置付け、法の適用対象としたこと。今後、一般公共海岸区域についても財産管理及び機能管理をともに適切に行うものであること。
なお、海岸保全施設の整備等による海岸防護の観点に立った管理を行う海岸は、従来どおり海岸保全区域として指定するものであること。さらに、海岸保全区域としての管理が必要でなくなった場合には、適宜これを廃止し一般公共海岸区域として管理する等適切に対処すべきものであること。

三 海岸の管理のための新たな計画制度の創設について

防護、環境及び利用の調和のとれた海岸の保全を計画的に推進し、地域の実情に応じた海岸の保全を進めていくためには、海岸保全についての基本的な方針を国が示し、さらに地域の実情に熟知した都道府県知事が海岸保全の基本的な考え方を示すとともに、海岸整備に当たり地域の意見が反映されるよう措置することが必要である。
このため、従来法にはなかった海岸保全についての基本的な方針を新たに海岸保全基本方針として主務大臣共同で策定することとしたこと。この海岸保全基本方針は、海岸保全区域及び一般公共海岸区域に係る海岸について、防護、環境及び利用の調和のとれた海岸の保全に関する基本的な方針を全国的観点から定めるものであり、今後の海岸行政の指針としての役割を果たすとともに、都道府県知事が海岸保全基本計画を策定するに当たっての方向性を示すものであることから、海岸保全基本計画はその内容・趣旨を十分反映するものであること。
また、海岸保全基本計画は、従来法にあった海岸保全施設に関する整備基本計画の内容を包含しつつ、さらに、防護のみならず環境及び利用の観点を加え、施設整備のみならず広く海岸管理全般に関する計画としたものであること。このような趣旨を踏まえ、都道府県知事は次に掲げる事項を考慮した上で、海岸保全基本計画を策定するものであること。
(一) 海岸保全基本計画は、海岸に係る総合的な保全の基本的な考え方及び海岸保全施設の整備について定め、海岸整備の計画的な実施の基本となるべきものであるので、海岸保全基本方針に沿って速やかに策定すること。
(二) 海岸保全基本計画の策定に当たっては、学識経験者、市町村長、地域住民等の意見を聴取すること等により、地域の意向等を適切に反映するように努めること。
(三) 都道府県知事は、法第六条及び法第三七条の二に基づき主務大臣による工事又は管理が行われる海岸において海岸保全基本計画を定める際には、関係地方農政局長、港湾建設局長、地方建設局長又は北海道開発局長と密接な連絡を保つこと。

四 市町村長への海岸管理の権限委任について

地域の実情がより海岸管理に反映されるよう、海岸の占用や行為の制限に係る許可等の日常的な海岸管理について市町村が実施できるようにするため、市町村長が、主体的に海岸管理者等と協議して、海岸保全区域及び一般公共海岸区域における日常的な管理事務を実施することができることとしたものであること。
このため海岸管理者等は市町村長から協議があった場合には積極的に対応するよう努めるとともに、市町村から積極的な申出があるようにこの制度についての周知に努めるものであること。

五 直轄管理制度の創設について

国土保全上極めて重要であり、かつ、地理的条件及び社会的状況により都道府県知事が管理することが著しく困難又は不適当な海岸について、全額国庫負担でその管理を主務大臣が行うことができることとしたものであり、その適用は極めて限定的に行われるものであること。
なお、昨年度から既に沖ノ鳥島の海岸(東京都小笠原村)について直轄管理を行っている。

六 適切な海岸管理の推進のための諸制度の整備について

防護に加え、環境及び利用の観点から、次のような新たな制度の整備を行ったところであり、これらを適宜効果的に活用して適切な海岸管理の推進に努めるものであること。
(一) 海岸保全施設としての砂浜の位置付け

今後の海岸の整備においては、砂浜の保全・回復を主体とした整備をしていくことが望まれることから、海岸を防護する機能を有する砂浜を海岸保全施設として位置付け、離岸堤等の沖合施設と砂浜、緩傾斜堤防等を組み合わせた面的防護方式の推進や砂浜の積極的な整備をできるようにしたこと。

(二) 海岸保全上支障のある行為の禁止

海岸保全施設等の損傷又は汚損を禁止するとともに、海岸環境の保全や海岸の適正な利用の確保の観点から、油その他の有害物質による海岸の汚損、自動車等の乗入れや船舶等の物件の放置、土石の投棄、さらに、動植物の生息地又は生育地の保護に支障を及ぼすおそれのある行為について、海岸の保全上特に必要がある区域に限定して、みだりに行うことを禁止できるようにしたこと。

(三) 簡易代執行制度等の導入

放置車両や船舶等の除却を促進するため、所有者が不明な場合にも海岸管理者等が代執行できる制度を導入するとともに、売却等の手続に関する特例制度を整備したこと。

(四) 原因者施行、原因者負担制度の拡充

油濁事故の処理等の海岸の維持について、原因者に施行させ、又は原因者の負担を求めることができるようにしたこと。

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