「一九七三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する一九七八年の議定書」(昭和五八年条約第三号)附属書V(船舶からの廃物による汚染の防止に関する規則)については、昭和六三年一二月三一日から実施されているところであるが、近年のプラスチックごみ等の不法排出等の増加に鑑み、同附属書について、廃物の排出要件を知らしめるプラカードの設置、廃物管理計画の策定・備置き等を義務付ける改正が、国際海事機関(IMO)海洋環境保護委員会(MEPC)において平成七年九月一四日に採択され、平成九年七月一日から実施されることとなった。
1 用語の意義について
(1) 船舶発生廃棄物
船舶発生廃棄物とは、船舶内にある船員その他の者の日常生活に伴い生ずるごみ又はこれに類する廃棄物及び輸送活動、漁ろう活動その他の船舶の通常の活動に伴い生ずる廃棄物(陸上活動に伴い生じた不要物を船上で焼却処理したもの、生鮮魚及びその一部、汚水並びに水底土砂を除く。)をいう。
(2) 海洋施設発生廃棄物
海洋施設発生廃棄物とは、海洋施設内にある者の日常生活に伴い生ずるごみ又はこれに類する廃棄物及び輸送活動、漁ろう活動その他の海洋施設の通常の活動に伴い生ずる廃棄物(陸上活動に伴い生じた不要物を海洋施設内で焼却処理したもの、生鮮魚及びその一部、汚水並びに水底土砂を除く。)をいう。
(3) 海洋施設
改正令第一条の四第二項は、海域にある鉱山保安法第二条第二項に規定する鉱山に属する工作物(廃水及び鉱さいの排出については、附属施設を含む。)に関する特例として、これらの工作物からの廃棄物(日常生活に伴い生ずる廃棄物を除く。)の排出については、改正法第一九条の二及び第一九条の二の二の規定は適用しないもとしている。これは、鉱山保安法により当該廃棄物の排出に関する規制がなされることとされており、二重の規制を避けるためである。これらの工作物については、日常生活に伴い生ずる廃棄物の排出に関する改正法第一九条の二の規定が適用される。
2 船舶に対する規制
(1) 排出規制
船舶発生廃棄物の排出の規制については、従来通りであり、法第一〇条第一項並びに第二項第二号(令第四条、別表第二の二)及び第四号(令第六条、別表第三)に定めるところに従う。
(2) 船舶発生廃棄物汚染防止規程
1) 規制の趣旨
船舶発生廃棄物の取扱いに関する作業を行う者が遵守すべき事項等について定めさせ、これを当該船舶内に備え置き、又は掲示させることによって、いつでも乗組員等がその内容に接することができるようにするとともに、当該作業を行う者に対し、本規程の内容について周知させることを義務付けることにより、不注意等による船舶発生廃棄物の不適正な排出の防止を図ることとした(改正法第一〇条の二)。
2) 規制対象船舶
改正省令第一二条の三の八に規定しているように「総トン数四〇〇トン以上の船舶及び最大搭載人員一五人以上の船舶(最大搭載人員の定めのない船舶にあっては、これに相当する搭載人員)」が規制対象となる。ただし、当該規制の趣旨に鑑み、救命艇等を含む搭載艇、競争・訓練用の短艇等あきらかに船舶発生廃棄物汚染防止規程を義務付ける必要性に乏しい船舶については規制対象としないものとする。
なお、「最大搭載人員」とは、昭和六三年九月二六日運環第六六号の1(1)1)に規定するもののほか、同通達に規定のない船舶については、船舶安全法の規定に準ずるものとする。
3) 新規策定又は改定
船舶発生廃棄物汚染防止規程を新規策定又は改定にあたっては、別添1(略)の標準船舶発生廃棄物汚染防止規程を参考として適正に措置するものとする。
(3) 船舶発生廃棄物記録簿
1) 規制の趣旨
船舶発生廃棄物の排出等の作業が行われた際、その都度、その廃棄物の種類及び量、船舶の位置等を船舶発生廃棄物記録簿に記載させることにより、不注意等による船舶発生廃棄物の不適正な排出の防止を図ることとした(改正法第一〇条の三)。
2) 規制対象船舶
国際航海に従事する船舶であって、総トン数四〇〇トン以上の船舶及び最大搭載人員一五人以上の船舶(最大搭載人員の定めのない船舶にあっては、これに相当する搭載人員)が規制対象となる。
3) 記載上の注意
イ 改正省令第一二条の三の一一の表の上欄に掲げる作業を行った場合に同表の下欄に掲げる事項について記載すること。
ロ 完了した作業については、当該作業の担当者が必要な事項を記載し署名すること。また、記載が完了したページには、船長が日付を付して署名すること。
ハ 容易に消せない筆記用具(万年筆、ボールペン等は可、鉛筆は不可)により記載し、誤って記載した場合には誤記内容が確認できるよう抹消し、当該作業の責任者が署名したうえで正しい記載を追加すること。
ニ 日本語に加え英語又はフランス語により記載しなければならないこととなっているが、この場合であっても時間、単位等を表す数字、記号等(例えば、一六時三〇分を「一六三〇」、四〇時間を「四〇h」、北緯五度四五分を「五―四五N」等記載すること)については、単にその数字、記号等を記載するだけでさしつかえない。
ホ 作業が同一港内で同一の廃棄物について、反復かつ継続して行われる場合にあっては、当該一連の作業について、一日を最大限として一括して記載することも同項により「その都度」記載したものとみなして取り扱ってさしつかえない。
ヘ バルティック海域、北海海域等条約附属書V第五規則に定める特別海域内で食物くずを令別表第二の二に定める焼却式排出方法で排出する場合、改正省令第一号の五の五様式の種類六の欄ではなく、種類五の欄に記載すること。また、その際、食物くずのみ焼却したことを「焼却される廃棄物の概量」の欄に明記すること。
4) 作業に関する事実を証する書類
イ 作業に関する事実を証する書類(以下「証拠書類」という。)の船舶発生廃棄物記録簿への添付は、改正規則第一二条の三の一一第一項の表第二号上欄に掲げる作業が行われた都度、船舶発生廃棄物記録簿の記載とあわせて行うこと。また、添付にあたっては、当該作業を記録した船舶発生廃棄物記録簿に記載内容と証拠書類が対比しやすいように措置すること。
ロ 証拠書類とは、改正規則第一二条の三の一一第一項の表第二号下欄に掲げる事項が記載してある書類であって、当該受入作業又は移載作業を行った作業担当責任者の署名又は捺印があるものとする。
ハ 証拠書類には、英語又はフランス語による付記が行われることが望ましい。
(4) 船舶発生廃棄物の排出に関して遵守すべき事項等の掲示
1) 規制の趣旨
船舶内にある船員その他の者に対し、遵守すべき事項を掲示し知らしめることにより、不注意等による船舶発生廃棄物の不適正な排出の防止を図ることとした(改正法第一〇条の四)。
2) 規制対象船舶
改正省令第一二条の三の一二に規定しているように「全長一二メートル以上の船舶(海底及びその下における鉱物資源の掘採に従事しているものを除く。)」となる。ただし、当該規制の趣旨に鑑み、救命艇等を含む搭載艇、競争・訓練用の短艇等あきらかに当該掲示を義務付ける必要性に乏しい船舶については規制対象としないものとする。
3) 遵守すべき事項
改正法第一〇条の四の「船舶発生廃棄物の排出に関して遵守すべき事項」とは、法第一〇条第二項第二号及び第四号の「排出海域及び排出方法に関し政令で定める基準」をいう。ただし、旅客等の船舶発生廃棄物の取扱いに関する作業を行わない者に対しては、船舶発生廃棄物の排出禁止又は収集に関する事項としてもさしつかえない。
3 海洋施設に対する規制
(1) 排出規制
海洋施設発生廃棄物の排出の規制については、従来通りであり、法第一八条第一項並びに第二項第二号(令第九条の二、別表第二の二)及び第三号(令第一〇条第二号)に定めるところに従う。
(2) 海洋施設発生廃棄物汚染防止規程
1) 規制の趣旨
海洋施設発生廃棄物の取扱いに関する作業を行う者が遵守すべき事項等について定めさせ、これを当該船舶内に備え置き、又は掲示させ、当該作業を行う者に対し、本規程の内容について周知させることを義務付けることにより、不注意等による海洋施設発生廃棄物の不適正な排出の防止を図ることとした(改正法第一九条の二)。
2) 規制対象海洋施設
改正省令第一二条の一七の三に規定しているように「一五人以上の人を収容することができる海洋施設」が規制対象となる。ただし、当該規制の趣旨に鑑み、一五人以上の者が利用することとなる海洋施設であっても、事務所、休憩室等の居住設備を持たないもの等あきらかに海洋施設発生廃棄物汚染防止規程を義務付ける必要性に乏しい海洋施設については規制対象としないものとする。「一五人以上の人を収容することができる」とは、単に物理的な海洋施設内の収容場所の面積から算定するものではなく、当該海洋施設の使用目的、居住設備の形態等を勘案して想定される海洋施設内の居住設備の最大収容人員が一五人以上であることをいう。
3) 新規策定又は改定
海洋施設発生廃棄物汚染防止規程の新規策定又は改定にあたっては、別添2(略)の標準海洋施設発生廃棄物汚染防止規程を参考として適正に措置するものとする。
(3) 海洋施設発生廃棄物の排出に関して遵守すべき事項等の掲示
1) 規制の趣旨
海洋施設内にある者に対し、遵守すべき事項を掲示し知らしめることにより、不注意等による船舶発生廃棄物の不適正な排出の防止を図ることとした(改正法第一九条の二の二)。
2) 規制対象海洋施設
改正省令第一二条の一七の五に規定しているように「人を収容することができる構造を有する海洋施設であってその水平投影の最大径が一二メートル以上のもの(海底及びその下における鉱物資源の掘採のために設けられているものを除く。)」が規制対象となる。「水平投影の最大径」とは、当該海洋施設の水平面への投影の外郭上の二点を結んで引かれる直線のうち最大のものをいう。
3) 遵守すべき事項
改正法第一九条の二の二の「海洋施設発生廃棄物の排出に関して遵守すべき事項」とは、法第一八条第二項第二号の「排出海域及び排出方法に関し政令で定める基準」及び第三号の「政令で定める排出方法に関する基準」をいう。ただし、旅客等の海洋施設発生廃棄物の取扱いに関する作業を行わない者に対しては、海洋施設発生廃棄物の排出禁止又は収集に関する事項としてもさしつかえない。