運観旅第七二号
平成八年二月九日

(社)日本旅行業協会会長・(社)全国旅行業協会会長あて

運輸省運輸政策局観光部長通達


改正標準旅行業約款について


今般、旅行業法(昭和二七年法律第二三九号)第一二条の三の標準旅行業約款について、従来の標準旅行業約款(昭和五八年運輸省告示第五九号)の全部を改正し、新たな標準旅行業約款を制定し、平成七年一二月一九日付け運輸省告示第七九〇号として公示したところである。
ついては、左記事項を貴協会傘下会員に対し周知徹底するとともに、その旅行業代理店業者に対しても周知徹底するようによろしく取り計らわれたい。

1 標準旅行業約款と同一の旅行業約款の設定

旅行業約款は、特別の理由がある場合を除き、改正後の標準旅行業約款(以下「改正標準旅行業約款」という。)と同一のものに変更するようにすること。

2 新旅行業約款の設定及び掲示

改正標準旅行業約款と同一の旅行業約款(以下「新旅行業約款」という。)の設定は、平成八年三月三一日までに行い、旅行業法第一二条の二第三項に基づいて、営業所における掲示等を行うこと。

3 新旅行業約款の適用

新旅行業約款は、平成八年四月一日以降に締結される旅行契約について適用すること。ただし、改正標準旅行業約款主催旅行契約の部第二五条に規定する旅程保証の適用については、平成八年五月一〇日以降に出発する旅行者について適用すること。

4 平成八年三月三一日までの主催旅行契約の取扱い

平成八年三月三一日までに締結する契約で、平成八年五月一〇日以降に出発する主催旅行に係る契約については、以下の取扱いとすること。
旅行契約は、従前の旅行業約款により締結することとなるが、旅程保証の適用については、平成八年四月一日以降速やかに、この適用がある旨当該旅行者に通知すること。また、当該旅行者に交付した従前の旅行業約款主催旅行契約の部第九条に規定する書面が、改正標準旅行業約款主催旅行契約の部第九条の契約書面の要件を満たしていない場合、要件を満たした書面を添付して通知すること。

5 主催旅行契約に係る旅程保証の取扱い

改正標準旅行業約款主催旅行契約の部第二五条に規定する旅程保証の適用については、別添の「旅程保証の趣旨及び適用について」を踏まえ、適切に実施するものとすること。

6 企画手配旅行の取扱い

改正標準旅行業約款手配旅行契約の部第六章企画手配旅行については、第二三条に規定する企画書面の交付、第二八条に規定する特別補償等を適切に実施するものとすること。

7 事務手続

新旅行業約款は、平成八年四月一日から三〇日以内に、別記様式による届出を登録行政庁(旅行業法施行令及び地方公共団体手数料令の一部を改正する政令(平成七年政令第三九九号)に規定する平成八年四月一日以降の登録行政庁)に届け出ること。
なお、登録行政庁が運輸省である旅行業者においては、地方運輸局又は沖縄総合事務局を経由して届け出ること。


(別添)

旅程保証の趣旨及び適用について

1 旅程保証の趣旨

(1) 主催旅行業者は、運送・宿泊機関等のサービス提供機関と主催旅行業者との間で締結されている契約の内容や旅行業務取扱料金を旅行者に対して明らかにしているものではないにもかかわらず、一定の旅行計画を示して不特定多数の旅行者を募集するものである。したがって、主催旅行業者は、計画内容に従った旅行サービスが実現しない場合の一定のリスクを負担する責任を有するものである。
(2) 特に、昨今、主催旅行の増加、その形態、目的地の多様化が進んでおり、計画内容に従った旅行サービスが実現しない場合の主催旅行業者の責任負担をすべて当事者間の個別の調整に委ねておくことは必ずしも適当ではなくなってきている。
(3) 従って、主催旅行業者の債務不履行があった場合の損害賠償責任とは別に、今般、特に重要な主催旅行契約の変更に係る主催旅行業者の最低限の責任を標準旅行業約款に「旅程保証」として定めることとしたところであり、各主催旅行業者においては、前記の趣旨を踏まえ、これを適切に実施されたい。

2 旅程保証の適用

(1) 支払事由について

旅程保証の支払事由となる特に重要な契約変更の解釈等については、以下のとおりである。

1) 「契約書面に記載した旅行開始日又は旅行終了日の変更」について

・ 「旅行開始日又は旅行終了日の変更」とは、当該主催旅行に旅行者の集合、解散が設定されている場合には旅行者の集合又は解散の行われる時刻の属する日の変更をいい、これ以外の場合には、当該主催旅行における最初又は最後に利用する運送・宿泊機関等の利用開始時刻又は利用終了時刻の属する日の変更をいう。
・ 旅行開始日、旅行終了日ごとに、各々、一件と算出する。

2) 「契約書面に記載した入場する観光地又は観光施設(レストランを含みます。)その他の旅行の目的地の変更」について

・ 「入場する観光地・観光施設(レストランを含みます。)」とは、観光地、観光施設のうち、通常、当該観光地、観光施設に入場しなければ目的が達せられないものをいう。契約書面に記載した観光地、観光施設については、入場する観光地、観光施設であるか否かを明示すること。
・ 「その他の旅行の目的地」とは、当該都市又は地域を訪問することが旅行の目的であるものをいい、入場する観光地、観光施設が当該旅行目的地に含まれていない場合においては、契約書面において、経由地、乗継地、休憩地等と区別できるように明示すること。
・ 旅行中に訪問し得なかった観光地又は観光施設、都市又は地域ごとに、各々、一件として算出する。
・ 「都市又は地域」に「入場する観光地、観光施設」が含まれている場合は、入場する観光地、観光施設の変更について補償を行い、この場合、都市又は地域の変更については補償を要しない。

3) 「契約書面に記載した運送機関の等級又は設備のより低い料金のものへの変更(変更後の等級及び設備の料金の合計額が契約書面に記載した等級及び設備のそれを下回った場合に限ります。)」について

・ 本事項中の「料金」とは、いわゆる「等級又は設備の対価としての運賃・料金の総額」にあたるものを意味するものであり、本事項の変更とは、航空機のファーストクラス利用からビジネスクラス利用への変更、新幹線の利用から新幹線以外の特急列車の利用等、契約変更後の当該運賃・料金の総額が当初契約において利用することとなっていた運送機関の運賃・料金の総額より低い運送機関を利用することとなった場合(○○航空ファーストクラス利用から△△航空ファーストクラス利用への変更等異なる航空会社で同一の等級又は設備を利用した場合を除く。)を意味する。
・ 旅行中に利用し得なかった運送機関一フライト、一乗車、一乗船ごとに、各々、一件として算出する。

4) 「契約書面に記載した運送機関の種類又は会社名の変更」について

・ 「運送機関の種類の変更」とは、「航空」、「鉄道(軌道・索道を含む。)」、「船舶」、「自動車」、「その他の運送機関」の別に応じ、契約書面に記載した種類とは別の運送機関を利用した場合をいう。
・ 「運送機関の会社名の変更」とは、同一の種類の運送機関を利用した場合において、契約書面にその会社名を記載した運送機関とは別の会社の運送機関を利用した場合をいう。
・ 旅行中に利用し得なかった運送機関一フライト、一乗車、一乗船ごとに、各々、一件として算出する。
・ 運送機関の種類の変更と会社名の変更が同時に発生した場合は、運送機関の会社名の変更について補償を行い、この場合、運送機関の種類の変更については補償を要しない。

5) 「契約書面に記載した宿泊機関の種類又は名称の変更」について

・ 「宿泊機関の種類の変更」とは、「ホテル」、「旅館」、「コンドミニアム」、「民宿」、「ペンション」、「その他の宿泊機関」の別に応じ、契約書面に記載した種類とは別の宿泊機関を利用した場合をいう。
・ 「宿泊機関の名称の変更」には、契約書面に「○○ホテル本館」等と宿泊機関の名称が特定されている場合に「○○ホテル別館」等を利用した場合を含む。
・ 旅行中に利用し得なかった宿泊機関一泊ごとに、各々、一件として算出する。
・ 契約書面に記載した宿泊機関の名称の変更が発生した場合は、契約書面に記載していない宿泊機関の種類の変更については補償を要しない。

6) 「契約書面に記載した宿泊機関の客室の種類、設備又は景観の変更」について

・「客室の種類の変更」とは、「和室」、「洋室」、「和洋室」の種類の別、また、洋室については「シングル」、「ツイン」、「ダブル」、「トリプル」、「スタンダード」、「スイート」等の別に応じ、契約書面に記載した種類の客室とは別の種類の客室を利用した場合(明らかに好条件の種類の客室を利用した場合を除く。)をいう。
・ 「客室の設備の変更」とは、客室に専属して客室としての基本的な機能を果たすバス、シャワー及びトイレの設備並びに客室の特徴を明確にするための特に客室に専属することを契約書面に記載したプール等の設備(テレビ、エアコン、ドライヤー等の機械、器具等は含まれない。)の有無に応じ、当該設備のない客室を利用した場合をいう。
・ 「客室の景観の変更」とは、契約書面に、当該客室が自然風景、建築物、祭り、イベントが見える場所に位置している旨記載しているにもかかわらず、このような状態でない客室を利用した場合をいう。
・ 宿泊機関一泊ごとに、各々、一件として算出する。(同一日の宿泊で、例えば、客室の種類の変更と設備の変更が同時にあっても一件として算出する。)

7) 「1)から6)に掲げる変更のうち契約書面のツアー・タイトル中に記載があった事項の変更」について

・ 「ツアータイトル中に記載があった事項」とは、募集広告において、「○月○日に出発する」、「○○美術館を訪問する」、「ファーストクラスで行く」、「○○航空で行く」、「○○ホテルに泊まる」、「オーシャンビューの客室に泊まる」等、特定の旅行出発日、観光施設、運送・宿泊機関等を旅行者が当該主催旅行を選択する上で重要な要素として表示した場合(明らかに旅程の説明の一環として表示した場合を除く。)の当該表示事項をいい、これを契約書面に明記すること。
・ 1)から6)までの事由中、契約書面のツアー・タイトルに記載があったものについて、各々、一件として算出する。

(2) 免責事由について

「免責事由項目」の解釈等については以下のとおりである。

1) 「天災地変」、「戦乱」、「暴動」

・ 出発地、旅行の目的地等に天災地変等があり、当該旅行の目的地を訪問し得ない状態をいう。

2) 「運送、宿泊機関等のサービス提供の中止」

・ 「運送機関のサービスの提供の中止」とは、○○航空○便等の運行(航)中止をいう。
・ 「宿泊機関等のサービスの提供の中止」とは、休業を意味する。
(宿泊機関の一部の客室が提供されている状態は、休業には含まれず、博物館等の突然の休館は、当該施設全体が旅行者の訪問時に閉鎖されていれば休業に含まれる。)
・ 運送・宿泊機関等のサービス提供の中止に伴い生じた旅行開始日又は旅行終了日の変更、運送・宿泊機関等の名称等の変更は、補償を要しない。
・「運送機関のサービス提供の中止」が原因となって発生した運送・宿泊機関等の名称等の変更については、目的地到着日に利用予定のものに限って、補償を要しない。

3) 「当初の運行計画によらない運送サービスの提供」

・ 当該運送機関の出発及び到着の時刻並びに到着地の変更をいい、これによる旅行開始日又は旅行終了日の変更については、補償を要しない。
・ 「当初の運行計画によらない運送サービスの提供」が原因となって発生した運送・宿泊機関等の名称等の変更については、目的地到着日に利用予定のものに限って、補償を要しない。


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