近畿圏の大都市地域における住宅及び住宅地の供給に関する基本方針


平成八年四月二十四日
建設省告示第千二百五十二号

大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)第三条の二第七項の規定に基づき、近畿圏の大都市地域における住宅及び住宅地の供給に関する基本方針を次のように変更したので、同条第六項の規定に基づき公表する。


1住宅及び住宅地の供給に関する基本的な事項

(1)本方針の意義近畿圏の大都市地域においては、平成7年1月の阪神・淡路大震災による住宅被害に対応して速やかに住宅の再建・確保を図るとともに、災害に強いまちづくりを推進することが強く要請されている。また、特に勤労者が新たに良質な住宅を確保することが困難であるほか、まとまった開発適地の減少、関連公共公益施設整備負担等により、住宅市街地の計画的な開発を取り巻く事業環境が非常に厳しくなっており、良質な宅地の安定的供給が図られにくい状況となっている。一方、通勤時間の増大による中堅所得者の住宅立地に対する不満や都市的な生活に対するニーズの高まりにより、都心の地域等立地条件の良い地域を中心として良質な住宅に対する著しい需要が存在する状況にある。近畿圏の大都市地域における社会経済活動の広域性や、阪神・淡路大震災を教訓とした代替性のある多核的な都市整備の必要性にかんがみ、その住宅宅地問題は今や一の府県の範囲内において対処しうるものではなく、重要な政策課題として、国、関係地方公共団体等が一致協力して取り組み、広域的な計画体系を整備し、これに基づき解決すべきものである。本方針は、勤労者が、通勤可能な立地において、適正な支出で居住できる価格、家賃の安全で良質な住宅を確保することができるよう、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和50年法律第67号。以下「法」という。)第3条の2の規定に基づき、近畿圏を構成する大阪府、京都府、兵庫県及び奈良県の大都市地域を対象として、平成17年(西暦2005年)を目標に今後10年間の住宅及び住宅地の供給に関する基本的な事項、供給目標量及びその目標量を達成するために必要な基本的な施策を定めるものであり、国、関係地方公共団体等が施策を講ずるに当たっての共通の指針となるべきものである。国、関係地方公共団体等は、相互に連携しつつ、本方針及び法第3条の3の規定に基づき本方針に即して府県の定める住宅及び住宅地の供給に関する計画(以下「供給計画」という。)の達成のため、住宅及び住宅地の供給促進策を総合的に講じていくものとする。また、住宅及び住宅地の計画的な供給を具体的に実現していくため、法第3条の3第2項第4号に定める住宅及び住宅地の供給を重点的に図るべき地域(以下「重点供給地域」という。)を供給計画において積極的に定めていくとともに、法第3条の6の規定に基づき、住宅市街地の開発整備の方針により都市計画と密接に連携した施策の推進を図っていくものとする。この場合において、震災により失われた大量の住宅ストックを早期に回復し、将来に向けて災害に強く、次世代につながる計画的で美しい住宅市街地を復興し、高齢者等にやさしい安全で快適な住宅の供給を図るためには、広域的な計画体系の中に復興に必要な住宅宅地供給目標量を加えて、この実現に努めることが必要である。さらに、住宅・土地問題の解決のためには、土地税制、住宅建設コストの低減のための施策等を実施することと併せて、中長期的に住宅及び住宅地の供給を促進し、需要に的確に対応した供給を確保することにより、住宅価格・家賃の適正化を図ることが重要である。(2)現状の認識1)住宅事情近畿圏の大都市地域では借家世帯を中心に最低居住水準未満世帯が多数残存しており、平成5年住宅統計調査によると、京阪神大都市圏の最低居住水準未満世帯率は平均10.0%、特に借家世帯で19.3%が未だこの水準を満たしておらず、また、誘導居住水準の達成状況をみても、34.8%と全国平均と比べ低い達成率となっている。また、賃貸住宅のうち老朽木造賃貸住宅の割合が高く、その密集している地区が既成市街地を中心に多数存在している。このほか、狭小かつ老朽化の著しい持家住宅が集合している地区も相当程度みられる。これらの地区は、狭小な道路、公園・オープンスペースの不足等居住環境、防災の面で様々な問題を抱えているほか、最近では、空き家の発生により、活力あるコミュニティの維持が困難となり、居住機能が低下しつつある地区もみられる。さらに、阪神・淡路大震災により兵庫県及び大阪府において約43万世帯の住宅が全半壊の被害を受けた。2)地価、住宅価格及び家賃の動向昭和62年以降の住宅地における地価高騰は平成2年の末頃から大都市地域では下落がみられるようになり、平成3年には近畿圏全域の平均で22.9%下落し、その後も下落傾向が続いている。近畿圏の新規分譲マンション価格(70m2換算)の勤労者平均年収に対する倍率は、地価高騰により、平成2年には7.2倍まで高騰したが、その後、地価の下落とともに住宅価格も下がり、平成6年には、地価高騰前(昭和50年代)の水準である4.8倍まで下落している。また家賃については、新規家賃はやはり地価高騰に伴ってかなりの上昇を見せたが、平成3年頃をピークとして最近は下落傾向が続いている。3)住宅及び住宅地の供給の動向昭和60年代から平成初期のいわゆるバブル経済の時期には、民間貸家が多数建設されたが、ワンルームマンション等の小規模なものが多く、必ずしも良質なストックの増加にはつながらなかった。新設住宅着工戸数について、低金利等を背景として持家・分譲住宅を中心に近年増加傾向にあるが、新設住宅の規模・環境ともに十分な水準には至っていない。また近年、住宅立地の遠隔化の改善の状況は十分ではなく、昭和50年代に近畿圏の新築分譲マンションの30%程度が大阪市内で供給されていたが、昭和60年代以降減少し、地価の下落等を背景に、現在は10%程度となっている。住宅地の供給に関しては、根強い土地保有志向による用地取得の困難化、事業期間の長期化に伴う金利の負担増等による事業環境の悪化や関連公共公益施設整備の負担等により、新市街地開発などによる新規の宅地供給量は近年停滞状況にある。また、個々の住宅宅地供給を支える都市施設の整備は未だ十分とは言えず、これが円滑な住宅宅地の供給を進めていく上で、支障となっている状況を見られる。一方で鉄道の整備、輸送力の強化等交通アクセスの改善により沿線において住宅立地が急速に進んでいる地域もみられる。大阪市などの都心部においては、郊外への人口流出の結果住宅が減少し、活力あるコミュニティの維持が困難となっている地区もみられる。4)住宅及び住宅地の供給の可能性阪神・淡路大震災の被災地域においては、既成市街地において、面的整備を行いつつ、まちづくりと一体となった住宅建設が可能であり、これに加え、ウォーターフロント地域や西神地域等のニュータウンで良質な住宅の供給が可能である。また、現在、平野部を中心に、低・未利用地で一定規模以上のものは約3,000ha、市街化区域内農地のうちいわゆる宅地化農地が平成7年1月現在約5,000ha存在している。例えば、大阪湾の臨海部、河川沿い等のウォーターフロント地域では、低・未利用地の発生が見込まれ、その活用により、良質な市街地住宅の供給が可能である。また、良好な居住環境を備えた新市街地開発が北摂・北神地域、京阪奈丘陵、和泉丘陵、阪南丘陵等において進行中であり、これらの地域においては今後とも住宅及び住宅地の供給が見込まれる。さらに、昭和30年代から40年代にかけて大量に建設された木造賃貸住宅が密集した地域が多数存在し、これらの地域で建て替えを行うことにより、相当量の住宅の供給が期待できる。このように、相当量の土地において住宅地としての開発可能性があることから、新市街地の計画的な開発や土地の有効・高度利用等を支援・誘導するため適切な施策を実施することにより、厳しい事業環境にもかかわらず需要に見合う住宅及び住宅地の供給が可能となる。(3)施策の展開に当たっての基本的考え方1)基本目標本方針に従って各種施策を総合的に実施し、需要に的確に対応した住宅及び住宅地の供給を計画的に行うことにより、今後10年間に、勤労者が、通勤可能な立地において、適正な支出で居住できる価格、家賃の良質な住宅を確保できるようにすることを基本目標とする。その際、21世紀初頭において半数の世帯が第七期住宅建設五箇年計画に定める誘導居住水準を確保できるようにすることを目標とするとともに最低居住水準未満世帯の解消に努める。この場合、借家世帯の居住水準の向上を図るため、世帯人員3〜5人の標準的な世帯向け賃貸住宅の供給を拡大するとともに、根強い持家需要に的確に対応することにより、良質な住宅ストックの形成に努める。また、都心の地域で賃貸住宅を中心とした良質な共同住宅の供給を重点的に推進し、居住機能の回復を図る。震災の復興に当たり、住宅に困窮する被災者が安心できるよう速やかに住宅の大量供給を行うとともに、21世紀の街づくりの範となる防災性の高く、高齢者にやさしく安全で快適な居住環境の創造を図る。2)施策の方向イ基本的方向施策の展開に当たっては、土地基本法(平成元年法律第84号)の理念に従い、土地は適正にかつ計画に従って利用されるものであることを国、地方公共団体、事業者及び国民がそれぞれの立場で認識し、地価の高騰を招くことのないように十分配慮しながら、国土利用計画法(昭和49年法律第92号)及びこれに関連する土地利用関係法令の適切な運用等を図ることにより適正かつ合理的な土地利用の推進に努めるとともに、土地の有効・高度利用を促進する。適正な価格・家賃の良質な住宅宅地の供給、緑・景観その他環境、高齢者支援等に配慮した安全で良質な市街地整備の推進、不良ストックの形成の防止及び長寿社会への対応を図るため、地方公共団体、住宅・都市整備公団、地方住宅供給公社等の公的な事業主体による先導的な供給を計画的に実施するとともに、民間による住宅及び住宅地の供給の重要性にかんがみ、優良な計画的開発に対する適正な支援・誘導策を講ずることにより、土地所有者による賃貸住宅建設の推進、民間事業への支援による良質な住宅及び住宅地の供給の推進等を図る。その際、世帯数が引き続き増加傾向にあること等のほか、住み替え・建て替え等による居住水準の向上のための需要もあり、宅地需要はなお相当量が見込まれる中、きわめて厳しい事業環境にもかかわらず住宅及び住宅地が着実に供給されるよう、計画的開発への幅広い支援措置の充実、関連公共施設の一体的な整備による公民連携の強化、民間保有土地の早期事業化への環境整備、定期借地権の積極的活用の促進等を図ることにより、量的にも着実な住宅及び住宅地の供給の推進を図る。さらに、良質な住宅ストックを有効活用するため、住宅流通市場の整備等を進める。ロ震災復興の推進阪神・淡路大震災の被災地域においては、震災によって多大な被害を被った市街地と住宅の緊急整備及び災害に強い活力ある市街地の形成並びに良好な住宅の供給を目的として、「神戸市震災復興緊急整備条例」「西宮市震災に強いまちづくり条例」「芦屋市震災復興緊急整備条例」「伊丹市震災復興緊急整備条例」及び「宝塚市震災復興緊急整備条例」に基づき、甚大な被害を被った「震災復興促進区域」「重点復興地域」において、震災復興のための事業等の整合を図り災害に強いまちづくりを進める。また、阪神・淡路大震災からの市街地及び住宅の復興に関する計画として、阪神・淡路都市復興基本計画、ひょうご住宅復興3カ年計画、神戸市震災復興住宅整備3カ年計画、ひょうご宅地需給3カ年計画等を踏まえ、公的賃貸住宅を中心とした住宅の大量、早期かつ計画的な供給並びに建築物の集中的倒壊及び面的焼失を被った地域の面的整備事業を進める。この結果、今後10年間のうち前半においては、震災復興需要に対応した住宅供給が特に兵庫県を中心に活発に行われることが見込まれる。ハ計画的供給の推進住宅及び住宅地の計画的な供給を行うに当たっては、住宅マスタープランの策定を推進しつつ、低・未利用の状態にある工場跡地、埋立地、国公有地等、市街化区域内農地、新市街地、低層住宅密集市街地などの既存住宅地等のそれぞれの地域の特性に応じた施策を、公共施設の整備の状況を勘案しながら展開する。このため、供給計画において重点供給地域を適切に定め、規制、誘導、事業等の各種施策を総合的に実施する。ニ都心の地域等における取り組み都心の地域及びその周辺の地域については住宅立地改善に対する居住者のニーズにこたえるとともに、都心の地域等における居住機能の回復を図るため、地権者や民間事業者の積極的な取り組みを促進しつつ、これらの地域において、良質な中高層共同住宅の供給を促進する。また、都心の地域等における住宅供給については、周辺の密集住宅市街地を整備する際の移転先として活用することに配慮する。ホ関連公共公益施設整備の推進住宅宅地開発に伴って必要となる関連公共公益施設については、既存ストックの有効活用の視点を踏まえ、良好な居住環境を確保し、住宅宅地開発事業の円滑な推進と開発コストの適正化を図るとともに、地域整備に寄与する点にも配慮しつつ、その整備を総合的、計画的に推進する。この場合、住宅宅地開発とこれに必要な関連公共施設の整備が調和するよう配慮するものとする。ヘ開発抑制方針の見直し等現在の深刻な住宅宅地問題に対処し、近畿圏の大都市地域全体の需要に対応する供給を確保するため、市街化調整区域における計画的開発の規模要件を定めた府県規則(以下「5ヘクタール規則」という。)の内容を含め一部の地方公共団体における住宅地開発の抑制方針について必要な見直しを図る。良好な住宅市街地を形成し、住宅宅地開発事業を推進するために、供給計画に適合するように都市計画のマスタープランである市街化区域及び市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針において住宅市街地の開発整備の方針を定め、法第3条の6第1項第2号に定める地区(以下「重点地区」という。)を明らかにするとともに、住宅地高度利用地区計画等の都市計画の決定、土地区画整理事業等の面的整備事業の実施、公共施設の整備等の積極的な推進を図る。3)施策の推進本方針に基づく住宅及び住宅地の供給の推進に当たっては、国及び関係地方公共団体が、近畿圏の大都市地域全体で広域的な対策が必要であるという理解の下に、一体的に取り組むことを基本とする。このため、宅地開発協議会の活用等により、具体的な施策の推進について国、関係地方公共団体等の連携・調整を円滑に行うものとする。また、国、関係地方公共団体等は、居住環境の良好な住宅に対する需要は地域ごとにその内容が様々であること、高齢化社会を迎え、よりきめ細かな施策が必要であること等を踏まえ、地域の課題に対応するとともに、都市の防災性の向上を図るため、住宅及び住宅地の供給の推進、民間による住宅及び住宅地の供給の誘導等を図る必要がある。この場合、地方公共団体における住宅宅地対策は、広域的な取り組みの一環であると同時に、多様な世代、世帯からなる活力ある地域社会を形成し、良好な居住環境を整備していく観点から行うものである。このため、地域に密着した行政主体である市町村の果たす役割が重要であることにかんがみ、関係市町村が自主的・主体的に地域の実情に合わせて住宅宅地対策に取り組んでいくとともに、国及び関係府県がその施策を積極的に援助していくものとする。さらに、関係地方公共団体の諸施策を積極的に支援する必要があり、住宅宅地関連投資の大幅な拡充、地方公共団体の財政負担の軽減に十分配慮する。なお、本方針の目標を達成するため、国、関係地方公共団体等による施策の一体的な推進のための連絡体制を整備し、その実施状況を的確に把握するとともに、施策の効果的な推進を図るものとする。

2住宅及び住宅地の供給の目標年次並びにその全域及び府県に係る区域別の目標量

(1)住宅及び住宅地の供給の目標年次平成17年(西暦2005年)(2)住宅及び住宅地の供給の目標量近畿圏の大都市地域(市町村でその区域の全部又は一部が近畿圏整備法(昭和38年法律第129号)第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域内にあるものの区域並びにその周辺の自然的及び社会的に密接な関係がある別表に掲げる市町村の区域をいう。)における平成8年度から平成17年度までの10年間の住宅及び住宅地の供給目標量は、下表のとおりとする。
住宅 住宅地
全域 185万戸 10,000ha
うち、都心部に係る区域 37万戸
大阪府に係る区域 92万戸 3,500ha
京都府に係る区域 26万戸 1,400ha
兵庫県に係る区域 53万戸 3,700ha
奈良県に係る区域 14万戸 1,400ha
(別表)
府県 市町村
京都府 宇治田原町、笠置町、南山城村、京北町、丹波町、日吉町、和束町、瑞穂町
兵庫県 姫路市、明石市、加古川市、三木市、高砂市、小野市、吉川町、稲美町、播磨町、篠山町、丹南町、今田町、淡路町、東浦町、東条町
奈良県 室生村
3 目標量を達成するために必要な住宅及び住宅地の供給の促進に関する基本的施策2に定める住宅及び住宅地の供給目標量を達成するため、以下の施策を推進するものとする。この場合において、地域の特性に対応した施策の推進を図るものとする。(1) 地域の特性別の施策1) 震災復興対策阪神・淡路大震災により住宅を失った被災者に対し、公営住宅、特定優良賃貸住宅、公団住宅等の制度を活用して公的賃貸住宅を大量に供給する。被災市街地においては、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅市街地総合整備事業、住宅地区改良事業、密集住宅市街地整備促進事業等を積極的に活用し、住宅の供給、住環境の整備改善と公共施設等の整備を一体的に推進するとともに、高齢社会に対応した快適で安全な住宅街区の形成及びオープンスペース等により構成される防災性の高い環境空間ネットワーク作りを進める。自力復興に対する支援を行うため、住宅金融公庫による災害復興住宅貸付の積極的活用を図るほか、各種被災住宅再建対策事業の積極的活用及び阪神・淡路大震災復興基金の活用を行う。共同住宅の建て替えに関しては、住宅金融公庫融資、優良建築物等整備事業等を積極的に活用するほか、総合設計制度等による容積率の割増等により支援を行うとともに面的整備事業区域以外においても、まちづくりと一体となるよう震災後、再建されず長期に空地化する宅地の有効利用を促進するため住宅の共同・協調化等に支援を行う。2) 低・未利用地等の有効利用低・未利用の状態にある工場跡地、埋立地、国公有地等で住宅地としての利用に適するものについて、良好な住環境の形成に配慮しながらその有効・高度利用により住宅供給を促進する。このため、再開発地区計画の決定や遊休土地転換利用促進地区の指定により土地利用転換の促進を図るとともに、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅市街地総合整備事業等による公共施設整備と併せた住宅宅地開発の促進等を図る。また、国有地について、使用状況等の点検結果も踏まえ、公共用地の確保に努めつつ、有効利用の一環として公共的住宅プロジェクトの用地としての活用等に努める。さらに、公有地についてもその確保を図りつつ同様の観点から活用に努める。また、国鉄清算事業団用地については、その効果的処分に留意しつつ、住宅地としての利用に適するものは住宅供給を促進する観点からその有効活用に努める。これらの施策を推進するに当たっては、それぞれの地域の状況を勘案して周辺市街地整備と併せた住宅供給を推進する。このほか、区画整理済地及び低・未利用地の有効利用による住宅供給を促進するため、優良な民間賃貸住宅に対する低利融資等を活用するとともに、優良な住宅供給事業に対して助成を行うほか、一括借上げ、定期借地権その他の借地方式、土地信託、事業受託等の活用による賃貸住宅等の供給を促進する。具体的には、大阪市、淀川沿岸地域、播磨臨海地域、堺北臨海部地区等の工場跡地等について大規模開発を進める。また、淀川及び大和川におけるスーパー堤防の整備の促進と併せた土地区画整理事業、住宅市街地総合整備事業等の活用により住宅の供給を推進する。さらに、住宅地等の地下空間を利用した地下放水路、地下調節池等立体河川の整備を推進し、治水安全度の向上と土地の有効・高度利用の促進を図る。また、北港南地区等の大阪湾岸埋立地においては、産業機能、コンベンション機能等と併せ居住機能を整備し、職住近接の都市型中高層共同住宅の供給を促進する。なお、臨海地域の開発整備に当たっては、工場立地や港湾施設の機能維持に十分配慮した上で再開発地区計画の積極的活用等を図るものとする。3) 市街化区域内農地の計画的利用市街化区域内農地については、郊外部の10〜30km圏を中心に広い範囲にわたって存在しており、住宅及び住宅地の供給の適地として計画的な利用を図る。特定市の市街化区域内農地に係る計画的市街化及び良好な住宅・宅地の供給促進を図るため、農地所有者等の合意形成を図りつつ農地所有者自身による基盤整備、賃貸住宅、定期借地権付き住宅建設等を促進する。この場合、特定市ごとに策定する整備プログラム等に基づき、計画的な市街化等へ誘導するための税制上の措置、地区計画等の策定の積極的な推進、支援体制の充実等による土地区画整理事業のより一層の推進、住宅街区整備事業の推進、農住組合の設立の促進等により、農地所有者等の意向を踏まえつつ、良好な住宅地の形成を誘導する。また、比較的まとまった農地において中高層住宅市街地の形成を促進するため、住宅地高度利用地区計画の積極的活用を図るほか、農地が介在している地区において基盤整備を促進するため、大都市農地活用住宅供給整備促進事業及び緑住まちづくり推進事業を推進する。これらとともに、無秩序な市街化の防止を図るため、開発許可制度、建築基準法(昭和25年法律第201号)上の道路位置指定等現行制度の適切な運用に積極的に取り組む。一方、住宅建設に際しては、農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給制度、特定優良賃貸住宅制度、住宅金融公庫の特定民間賃貸住宅融資制度、住宅・都市整備公団の民営賃貸用特定分譲住宅制度等の助成措置の活用、優良建築物等整備事業、借地方式による公共賃貸住宅の供給等を推進するとともに、一括借上方式の推進等を図る。さらに、国、地方公共団体、住宅・都市整備公団、農業関係団体、財団法人都市農地活用支援センター等の関係各機関の連携の下に、農地所有者に対するノウハウ提供等の総合的支援を推進する。また、地方公共団体における庁内関係部局間の緊密な連携及び農業団体との連携体制の整備、活用を促進する。4) 計画的な新市街地開発の推進新市街地開発においては、将来にわたって地域の資産となる優良な水準の市街地の形成を図る観点から、計画的開発による良好な居住環境を有する相当量の住宅地の供給を推進する。これらの施策に当たっては、新たに住居を求めるより多くの勤労者について、そのニーズを踏まえながら、おおむね1時間程度を目安としつつ、職住がより近接することの支援に重点を置いて実施する。まず、地方公共団体、住宅・都市整備公団、地方住宅供給公社等の公的主体による計画的宅地開発を強力に推進する。このため、現在事業を実施しているニュータウンにおける優良な住宅及び住宅地の供給推進を図るとともに、土地区画整理事業区域内の民有地において、地権者と協力して計画的な住宅建設を図る。さらに、長期的・安定的に相当量の優良な住宅及び住宅地の供給を推進する観点から、開発構想の具体化及び用地の先行取得を推進することにより、新規の事業着手に努めるとともに、その際、良質な宅地の供給に資する事業計画内容の確保に努める。また、民間事業者の開発意向を適切に誘導して優良な住宅宅地の供給がなされるよう、開発許可及び土地区画整理事業による優良な宅地開発の促進を図る。このため、住宅金融公庫融資、関連公共施設の整備促進、税制等の支援措置により、大都市地域における優良宅地開発事業認定制度の活用も図りつつ、民間開発が計画されている宅地開発適地において、緑・景観対応や高齢者支援にも適切に配慮した優良な宅地開発の事業化を促進する。また、市街化調整区域における計画的開発の規模要件を定めた5ヘクタール規則の内容について、住宅地の供給が促進されるよう必要な見直しを行うとともに、宅地開発等指導要綱に基づき開発者に過度の負担を求めるものについては、「規制緩和推進計画」等これまでの閣議決定等を踏まえ、適正な見直しを促進する。土地区画整理事業においても、その推進体制等の強化を図り、同意施行制度、参加組合員制度、業務代行方式による組合施行等民間活力を活用した事業をより一層積極的に推進する。大都市地域の開発可能性の高い広域的な地域において、すぐれた景観と環境を有する快適で質の高い生活空間を備えた良質な住宅宅地の供給を推進するとともに、自立的都市圏の形成による多核的な地域構造の再編を図るため、住む・働く・遊ぶ・学ぶ等の多機能を有し、自然環境と調和し、質の高い生活空間を備えたまちづくり(広域多機能都市開発事業(ニュータウン21))を公民協調を図りつつ推進する。さらに、鉄道等の交通施設が未整備であるために、未開発のままに残されている地域において、鉄道整備一体型宅地開発等促進事業等の活用により、鉄道の新設、新駅の設置等交通アクセス整備と一体となった宅地開発事業を推進することにより開発可能地の拡大を図りつつ、職住近接に資する宅地供給を推進する。特に、現在事業を実施している神戸三田国際公園都市、西神ニュータウンの大規模宅地開発事業を積極的に推進して早期の供給を図ることとする。また、関西文化学術研究都市については、区域内の事業の促進、公的主体による開発構想・計画の具体化並びに区域内及び周辺地域における優良な民間宅地開発の事業化を促進するとともに、国際文化公園都市についても、住宅・都市整備公団による事業を推進する。以上の施策により、今後10年間に、一定規模(おおむね5ha)以上の計画的な新市街地開発により約5,000haの住宅地供給が見込まれる。5) 都心の地域その他既成市街地内における住宅供給の促進都心の地域その他既成市街地内では、防災性の向上、住環境の向上、居住水準の向上、土地の有効・高度利用、職住近接の実現、公共公益施設の有効活用の観点等から中高層共同住宅の供給と建て替えによる住宅供給を促進し、特に都心の地域等、老朽木造住宅地区、老朽公共賃貸住宅地区については、次のような施策を講ずる。イ 都心の地域等都心の地域及びその周辺の地域については、住宅を適切に確保することにより、都市サービスの享受に主眼を置いたライフスタイルを実現し、居住機能を回復することが求められている。そのため、住環境の整備を図りつつ、中高層階住居専用地区、用途別容積型地区計画、街なみ誘導型地区計画、都心居住型総合設計制度等の制度の活用により住宅供給を誘導するとともに、都心共同住宅供給事業をはじめ、住宅供給を組み込んだ市街地再開発事業、住宅市街地総合整備事業、優良建築物等整備事業、都心居住再開発等促進事業、街区高度利用土地区画整理事業等を推進する。なお、都心の地域等において供給される住宅については、地方公共団体、住宅・都市整備公団、地方住宅供給公社等の公的主体による住宅市街地整備の推進と住宅供給の拡大を図るとともに、公的主体による借上げを積極的に行い適正な家賃の住宅供給に努めるものとする。ロ 老朽木造住宅地区老朽木造賃貸住宅などの低層住宅が密集している市街地については、防災性及び居住環境を向上させる観点から、各地区ごとの明確な整備目標の下に、公共施設の整備と敷地の共同化等による土地の有効高度利用を図り、利便性の高い良質な住宅の供給を促進する。また、住宅と他の用途とが混在している市街地においては、住宅と産業施設の調和のとれた活力ある地域整備を推進していくものとし、施設併存住宅の供給等地域の特性に応じて良質な住宅の供給を促進する。この場合、密集住宅市街地整備促進事業、特定優良賃貸住宅供給促進事業、安全市街地形成土地区画整理事業等による共同建て替え、中高層化及び基盤整備を推進する。また、賃貸住宅の建て替えの促進を図るため、一括借上げ、定期借地権その他の借地方式、土地信託、事業受託等を活用する。さらに、一層の公的関与の拡大により建て替えの円滑な実施を図るため、移転用住宅の確保、公共施設の整備のための土地の先行取得の推進を図るとともに、従前居住者用賃貸住宅の建設、借上公共賃貸住宅制度の活用、家賃激変緩和措置等の従前居住者対策を推進する。このほか、コンサルタントの派遣、地権者等の協議会活動に対する支援等により、関係権利者間の合意形成の促進に努める。このため、地方公共団体を中心とした事業推進のための体制を整備し、相談、調整、情報提供などを行う。具体的には、特に、大阪市周辺部の寝屋川市、豊中市、門真市、堺市及び神戸市、京都市、奈良市等の老朽低層住宅密集地区において、これらの施策を集中的に実施する。この場合、大阪府の地域においては、財団法人大阪府まちづくり推進機構等も活用し公共・民間の協力による効果的な事業の推進を図る。また、大阪府、京都府南部地域等の昭和30年代以降の無秩序な市街化により敷地の狭小な住宅が連たんしている地域においては、土地区画整理事業等の活用により居住水準の向上や居住環境の改善に結びつく建て替えを積極的に進める。このほか、大阪市内の戦前長屋等老朽木造住宅等密集地域においても、その更新に努めるものとする。なお、京都市中心部の更新期を迎えた老朽住宅については、伝統ある街なみとの調和等に配慮しつつ、既成市街地の整備と併せてその建て替えを進める。密集住宅市街地については、防災上特に危険な地区を中心として整備を行うこととし、21世紀初頭までにその整備を概成する。また、今後10年間で、昭和45年以前に建築された約50万戸の木造賃貸住宅のうちおおむね3分の2程度の建て替えを誘導する。ハ 老朽公共賃貸住宅団地老朽公共賃貸住宅団地の建て替えによる住宅供給を促進する。この場合、公共賃貸住宅建替10箇年戦略を受けて策定された府県による建替事業の総合的計画である建替促進計画に即して、各事業主体において計画的な建替事業の推進を図る。さらに、建て替えの円滑な実施のため、移転用住宅の確保等を図るとともに家賃激変緩和措置等の従前居住者対策を推進する。このような施策の推進に当たっては、それぞれの地域の状況を勘案して周辺市街地整備と併せた住宅供給を推進する。(2) 都市計画との連携本方針及び府県の定める供給計画に基づき、住宅及び住宅地の供給を迅速かつ強力に推進していくため、供給計画に適合するように市街化区域及び市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針において、速やかに住宅市街地の開発整備の方針を定めるとともに、重点供給地域内において計画中の良好な相当規模の住宅宅地開発事業を行う地区については、重点地区とするよう配慮するものとする。この場合、市街化調整区域にあっては、計画的な市街地整備の見通しが明らかになった時点において、随時市街化区域への編入を行うことができる土地の区域として、整備、開発又は保全の方針の附図にその位置を明らかにし得るもののうちから、重点地区を定めるものとする。(3) 関連公共施設等整備の促進住宅宅地開発に伴って必要となる道路、河川、砂防、下水道、公園等の公共施設の整備及び土地区画整理事業等の市街地整備事業を既存ストックの有効活用を図りつつ計画的に推進する。この場合、併せて住宅宅地関連公共施設整備促進事業等の活用を図るとともに、住宅・都市整備公団等の直接施行制度、立替施行制度等の活用による関連公共公益施設の整備を促進する。特に、市街化区域内農地等又は工場跡地等の低・未利用地において宅地化や住宅建設を促進するためこれに関連して必要となる施設への助成を行う緊急住宅宅地関連特定施設整備事業の活用を図る。(4) 住宅適地拡大に資する社会資本の整備安全で優良な住宅及び住宅地の円滑な供給に資する流域対策を含む治水対策の促進を図るとともに、宅地開発を誘導する道路の整備を推進する。(5) 住宅及び住宅地の供給に関する条件整備1) 宅地開発指導要綱等の見直し宅地開発指導要綱等については、開発協議に要する期間の短縮化、開発者への過度の負担の適正化等の観点から「規制緩和推進計画」等これまでの閣議決定等を踏まえ、適正な見直しを促進する。また、このうち、いわゆるマンション指導要綱においても、マンションの建築に当たっての日照に関する周辺住民の同意書の提出の義務付け、内容等の不適切な寄附金の徴収等、内容の一部に行き過ぎのあるものについては、その是正を図る。2) 公団住宅等の募集における地元優先枠の是正公団住宅等の募集においては地元優先枠の設定によりその当選倍率に著しい不均衡が生じている。これに対し、広域的な住宅宅地需要に対応するという公団の役割を十分に発揮させるため、地元優先枠の是正を行うものとする。このため、当面当該募集に係る住宅宅地の需要動向等を勘案して地元枠への配分比率を引き下げ、できるだけ早期に一般枠の平均応募倍率が地元枠の平均応募倍率のおおむね2倍程度となるよう適切な配分を実現する。3) 関連施策との連携住宅地供給に当たっては、交通アクセス等宅地化の条件整備を踏まえつつ、農林行政等関連施策との円滑な調整を進める。また、宅地開発等に関連する許認可事務について、臨時行政改革推進審議会等の答申の趣旨に沿って、その簡素化、迅速化等の改善合理化を引き続き推進する。(6) 配慮すべき事項1) 全国総合開発計画、近畿圏整備計画等との調和本方針に基づく住宅及び住宅地の供給の促進については、多極分散型国土の形成を基本とし、国土総合開発法(昭和25年法律第205号)に基づく第四次全国総合開発計画及び近畿圏整備法に基づく近畿圏整備計画との調和を図りながら推進していくものとする。2) 環境保全との調和住宅宅地開発の具体的な事業については、その内容に応じて環境保全上の観点から検討を行うこと等により自然環境、生活環境及び文化・歴史的環境の保全との調和を図りながら推進していくものとする。3) 地価の安定・適正化本方針に定める施策の実施に当たっては、土地の投機的取引及び地価の高騰が生ずることがないよう留意するものとする。この場合、必要に応じ、国土利用計画法の規定による監視区域の指定に努める等現行法制の的確な運用を図るものとする。4) 安全の確保国土の安全に配慮し適切な治山・治水対策等により安全性の確保に努めるとともに、宅地造成等規制法(昭和36年法律第191号)等に定めるところにより宅地造成に伴うがけくずれ等の防止を図るものとする。また、水資源についてもその確保に努めていくものとする。5) 福祉政策との連携等高齢者等を含めた全ての人々が生涯を通じて、健康で心豊かな生活を送ることができるようにするための住宅・社会資本の整備を推進する。また、高齢者等が、安全で便利な住宅に居住するとともに、福祉や医療のサービスを必要なときにいつでも受けられる社会を実現するために、福祉政策との連携を図るものとする。

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