3 目標量を達成するために必要な住宅及び住宅地の供給の促進に関する基本的施策2に定める住宅及び住宅地の供給目標量を達成するため、以下の施策を推進するものとする。この場合において、地域の特性に対応した施策の推進を図るものとする。(1) 地域の特性別の施策1) 震災復興対策阪神・淡路大震災により住宅を失った被災者に対し、公営住宅、特定優良賃貸住宅、公団住宅等の制度を活用して公的賃貸住宅を大量に供給する。被災市街地においては、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅市街地総合整備事業、住宅地区改良事業、密集住宅市街地整備促進事業等を積極的に活用し、住宅の供給、住環境の整備改善と公共施設等の整備を一体的に推進するとともに、高齢社会に対応した快適で安全な住宅街区の形成及びオープンスペース等により構成される防災性の高い環境空間ネットワーク作りを進める。自力復興に対する支援を行うため、住宅金融公庫による災害復興住宅貸付の積極的活用を図るほか、各種被災住宅再建対策事業の積極的活用及び阪神・淡路大震災復興基金の活用を行う。共同住宅の建て替えに関しては、住宅金融公庫融資、優良建築物等整備事業等を積極的に活用するほか、総合設計制度等による容積率の割増等により支援を行うとともに面的整備事業区域以外においても、まちづくりと一体となるよう震災後、再建されず長期に空地化する宅地の有効利用を促進するため住宅の共同・協調化等に支援を行う。2) 低・未利用地等の有効利用低・未利用の状態にある工場跡地、埋立地、国公有地等で住宅地としての利用に適するものについて、良好な住環境の形成に配慮しながらその有効・高度利用により住宅供給を促進する。このため、再開発地区計画の決定や遊休土地転換利用促進地区の指定により土地利用転換の促進を図るとともに、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅市街地総合整備事業等による公共施設整備と併せた住宅宅地開発の促進等を図る。また、国有地について、使用状況等の点検結果も踏まえ、公共用地の確保に努めつつ、有効利用の一環として公共的住宅プロジェクトの用地としての活用等に努める。さらに、公有地についてもその確保を図りつつ同様の観点から活用に努める。また、国鉄清算事業団用地については、その効果的処分に留意しつつ、住宅地としての利用に適するものは住宅供給を促進する観点からその有効活用に努める。これらの施策を推進するに当たっては、それぞれの地域の状況を勘案して周辺市街地整備と併せた住宅供給を推進する。このほか、区画整理済地及び低・未利用地の有効利用による住宅供給を促進するため、優良な民間賃貸住宅に対する低利融資等を活用するとともに、優良な住宅供給事業に対して助成を行うほか、一括借上げ、定期借地権その他の借地方式、土地信託、事業受託等の活用による賃貸住宅等の供給を促進する。具体的には、大阪市、淀川沿岸地域、播磨臨海地域、堺北臨海部地区等の工場跡地等について大規模開発を進める。また、淀川及び大和川におけるスーパー堤防の整備の促進と併せた土地区画整理事業、住宅市街地総合整備事業等の活用により住宅の供給を推進する。さらに、住宅地等の地下空間を利用した地下放水路、地下調節池等立体河川の整備を推進し、治水安全度の向上と土地の有効・高度利用の促進を図る。また、北港南地区等の大阪湾岸埋立地においては、産業機能、コンベンション機能等と併せ居住機能を整備し、職住近接の都市型中高層共同住宅の供給を促進する。なお、臨海地域の開発整備に当たっては、工場立地や港湾施設の機能維持に十分配慮した上で再開発地区計画の積極的活用等を図るものとする。3) 市街化区域内農地の計画的利用市街化区域内農地については、郊外部の10〜30km圏を中心に広い範囲にわたって存在しており、住宅及び住宅地の供給の適地として計画的な利用を図る。特定市の市街化区域内農地に係る計画的市街化及び良好な住宅・宅地の供給促進を図るため、農地所有者等の合意形成を図りつつ農地所有者自身による基盤整備、賃貸住宅、定期借地権付き住宅建設等を促進する。この場合、特定市ごとに策定する整備プログラム等に基づき、計画的な市街化等へ誘導するための税制上の措置、地区計画等の策定の積極的な推進、支援体制の充実等による土地区画整理事業のより一層の推進、住宅街区整備事業の推進、農住組合の設立の促進等により、農地所有者等の意向を踏まえつつ、良好な住宅地の形成を誘導する。また、比較的まとまった農地において中高層住宅市街地の形成を促進するため、住宅地高度利用地区計画の積極的活用を図るほか、農地が介在している地区において基盤整備を促進するため、大都市農地活用住宅供給整備促進事業及び緑住まちづくり推進事業を推進する。これらとともに、無秩序な市街化の防止を図るため、開発許可制度、建築基準法(昭和25年法律第201号)上の道路位置指定等現行制度の適切な運用に積極的に取り組む。一方、住宅建設に際しては、農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給制度、特定優良賃貸住宅制度、住宅金融公庫の特定民間賃貸住宅融資制度、住宅・都市整備公団の民営賃貸用特定分譲住宅制度等の助成措置の活用、優良建築物等整備事業、借地方式による公共賃貸住宅の供給等を推進するとともに、一括借上方式の推進等を図る。さらに、国、地方公共団体、住宅・都市整備公団、農業関係団体、財団法人都市農地活用支援センター等の関係各機関の連携の下に、農地所有者に対するノウハウ提供等の総合的支援を推進する。また、地方公共団体における庁内関係部局間の緊密な連携及び農業団体との連携体制の整備、活用を促進する。4) 計画的な新市街地開発の推進新市街地開発においては、将来にわたって地域の資産となる優良な水準の市街地の形成を図る観点から、計画的開発による良好な居住環境を有する相当量の住宅地の供給を推進する。これらの施策に当たっては、新たに住居を求めるより多くの勤労者について、そのニーズを踏まえながら、おおむね1時間程度を目安としつつ、職住がより近接することの支援に重点を置いて実施する。まず、地方公共団体、住宅・都市整備公団、地方住宅供給公社等の公的主体による計画的宅地開発を強力に推進する。このため、現在事業を実施しているニュータウンにおける優良な住宅及び住宅地の供給推進を図るとともに、土地区画整理事業区域内の民有地において、地権者と協力して計画的な住宅建設を図る。さらに、長期的・安定的に相当量の優良な住宅及び住宅地の供給を推進する観点から、開発構想の具体化及び用地の先行取得を推進することにより、新規の事業着手に努めるとともに、その際、良質な宅地の供給に資する事業計画内容の確保に努める。また、民間事業者の開発意向を適切に誘導して優良な住宅宅地の供給がなされるよう、開発許可及び土地区画整理事業による優良な宅地開発の促進を図る。このため、住宅金融公庫融資、関連公共施設の整備促進、税制等の支援措置により、大都市地域における優良宅地開発事業認定制度の活用も図りつつ、民間開発が計画されている宅地開発適地において、緑・景観対応や高齢者支援にも適切に配慮した優良な宅地開発の事業化を促進する。また、市街化調整区域における計画的開発の規模要件を定めた5ヘクタール規則の内容について、住宅地の供給が促進されるよう必要な見直しを行うとともに、宅地開発等指導要綱に基づき開発者に過度の負担を求めるものについては、「規制緩和推進計画」等これまでの閣議決定等を踏まえ、適正な見直しを促進する。土地区画整理事業においても、その推進体制等の強化を図り、同意施行制度、参加組合員制度、業務代行方式による組合施行等民間活力を活用した事業をより一層積極的に推進する。大都市地域の開発可能性の高い広域的な地域において、すぐれた景観と環境を有する快適で質の高い生活空間を備えた良質な住宅宅地の供給を推進するとともに、自立的都市圏の形成による多核的な地域構造の再編を図るため、住む・働く・遊ぶ・学ぶ等の多機能を有し、自然環境と調和し、質の高い生活空間を備えたまちづくり(広域多機能都市開発事業(ニュータウン21))を公民協調を図りつつ推進する。さらに、鉄道等の交通施設が未整備であるために、未開発のままに残されている地域において、鉄道整備一体型宅地開発等促進事業等の活用により、鉄道の新設、新駅の設置等交通アクセス整備と一体となった宅地開発事業を推進することにより開発可能地の拡大を図りつつ、職住近接に資する宅地供給を推進する。特に、現在事業を実施している神戸三田国際公園都市、西神ニュータウンの大規模宅地開発事業を積極的に推進して早期の供給を図ることとする。また、関西文化学術研究都市については、区域内の事業の促進、公的主体による開発構想・計画の具体化並びに区域内及び周辺地域における優良な民間宅地開発の事業化を促進するとともに、国際文化公園都市についても、住宅・都市整備公団による事業を推進する。以上の施策により、今後10年間に、一定規模(おおむね5ha)以上の計画的な新市街地開発により約5,000haの住宅地供給が見込まれる。5) 都心の地域その他既成市街地内における住宅供給の促進都心の地域その他既成市街地内では、防災性の向上、住環境の向上、居住水準の向上、土地の有効・高度利用、職住近接の実現、公共公益施設の有効活用の観点等から中高層共同住宅の供給と建て替えによる住宅供給を促進し、特に都心の地域等、老朽木造住宅地区、老朽公共賃貸住宅地区については、次のような施策を講ずる。イ 都心の地域等都心の地域及びその周辺の地域については、住宅を適切に確保することにより、都市サービスの享受に主眼を置いたライフスタイルを実現し、居住機能を回復することが求められている。そのため、住環境の整備を図りつつ、中高層階住居専用地区、用途別容積型地区計画、街なみ誘導型地区計画、都心居住型総合設計制度等の制度の活用により住宅供給を誘導するとともに、都心共同住宅供給事業をはじめ、住宅供給を組み込んだ市街地再開発事業、住宅市街地総合整備事業、優良建築物等整備事業、都心居住再開発等促進事業、街区高度利用土地区画整理事業等を推進する。なお、都心の地域等において供給される住宅については、地方公共団体、住宅・都市整備公団、地方住宅供給公社等の公的主体による住宅市街地整備の推進と住宅供給の拡大を図るとともに、公的主体による借上げを積極的に行い適正な家賃の住宅供給に努めるものとする。ロ 老朽木造住宅地区老朽木造賃貸住宅などの低層住宅が密集している市街地については、防災性及び居住環境を向上させる観点から、各地区ごとの明確な整備目標の下に、公共施設の整備と敷地の共同化等による土地の有効高度利用を図り、利便性の高い良質な住宅の供給を促進する。また、住宅と他の用途とが混在している市街地においては、住宅と産業施設の調和のとれた活力ある地域整備を推進していくものとし、施設併存住宅の供給等地域の特性に応じて良質な住宅の供給を促進する。この場合、密集住宅市街地整備促進事業、特定優良賃貸住宅供給促進事業、安全市街地形成土地区画整理事業等による共同建て替え、中高層化及び基盤整備を推進する。また、賃貸住宅の建て替えの促進を図るため、一括借上げ、定期借地権その他の借地方式、土地信託、事業受託等を活用する。さらに、一層の公的関与の拡大により建て替えの円滑な実施を図るため、移転用住宅の確保、公共施設の整備のための土地の先行取得の推進を図るとともに、従前居住者用賃貸住宅の建設、借上公共賃貸住宅制度の活用、家賃激変緩和措置等の従前居住者対策を推進する。このほか、コンサルタントの派遣、地権者等の協議会活動に対する支援等により、関係権利者間の合意形成の促進に努める。このため、地方公共団体を中心とした事業推進のための体制を整備し、相談、調整、情報提供などを行う。具体的には、特に、大阪市周辺部の寝屋川市、豊中市、門真市、堺市及び神戸市、京都市、奈良市等の老朽低層住宅密集地区において、これらの施策を集中的に実施する。この場合、大阪府の地域においては、財団法人大阪府まちづくり推進機構等も活用し公共・民間の協力による効果的な事業の推進を図る。また、大阪府、京都府南部地域等の昭和30年代以降の無秩序な市街化により敷地の狭小な住宅が連たんしている地域においては、土地区画整理事業等の活用により居住水準の向上や居住環境の改善に結びつく建て替えを積極的に進める。このほか、大阪市内の戦前長屋等老朽木造住宅等密集地域においても、その更新に努めるものとする。なお、京都市中心部の更新期を迎えた老朽住宅については、伝統ある街なみとの調和等に配慮しつつ、既成市街地の整備と併せてその建て替えを進める。密集住宅市街地については、防災上特に危険な地区を中心として整備を行うこととし、21世紀初頭までにその整備を概成する。また、今後10年間で、昭和45年以前に建築された約50万戸の木造賃貸住宅のうちおおむね3分の2程度の建て替えを誘導する。ハ 老朽公共賃貸住宅団地老朽公共賃貸住宅団地の建て替えによる住宅供給を促進する。この場合、公共賃貸住宅建替10箇年戦略を受けて策定された府県による建替事業の総合的計画である建替促進計画に即して、各事業主体において計画的な建替事業の推進を図る。さらに、建て替えの円滑な実施のため、移転用住宅の確保等を図るとともに家賃激変緩和措置等の従前居住者対策を推進する。このような施策の推進に当たっては、それぞれの地域の状況を勘案して周辺市街地整備と併せた住宅供給を推進する。(2) 都市計画との連携本方針及び府県の定める供給計画に基づき、住宅及び住宅地の供給を迅速かつ強力に推進していくため、供給計画に適合するように市街化区域及び市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針において、速やかに住宅市街地の開発整備の方針を定めるとともに、重点供給地域内において計画中の良好な相当規模の住宅宅地開発事業を行う地区については、重点地区とするよう配慮するものとする。この場合、市街化調整区域にあっては、計画的な市街地整備の見通しが明らかになった時点において、随時市街化区域への編入を行うことができる土地の区域として、整備、開発又は保全の方針の附図にその位置を明らかにし得るもののうちから、重点地区を定めるものとする。(3) 関連公共施設等整備の促進住宅宅地開発に伴って必要となる道路、河川、砂防、下水道、公園等の公共施設の整備及び土地区画整理事業等の市街地整備事業を既存ストックの有効活用を図りつつ計画的に推進する。この場合、併せて住宅宅地関連公共施設整備促進事業等の活用を図るとともに、住宅・都市整備公団等の直接施行制度、立替施行制度等の活用による関連公共公益施設の整備を促進する。特に、市街化区域内農地等又は工場跡地等の低・未利用地において宅地化や住宅建設を促進するためこれに関連して必要となる施設への助成を行う緊急住宅宅地関連特定施設整備事業の活用を図る。(4) 住宅適地拡大に資する社会資本の整備安全で優良な住宅及び住宅地の円滑な供給に資する流域対策を含む治水対策の促進を図るとともに、宅地開発を誘導する道路の整備を推進する。(5) 住宅及び住宅地の供給に関する条件整備1) 宅地開発指導要綱等の見直し宅地開発指導要綱等については、開発協議に要する期間の短縮化、開発者への過度の負担の適正化等の観点から「規制緩和推進計画」等これまでの閣議決定等を踏まえ、適正な見直しを促進する。また、このうち、いわゆるマンション指導要綱においても、マンションの建築に当たっての日照に関する周辺住民の同意書の提出の義務付け、内容等の不適切な寄附金の徴収等、内容の一部に行き過ぎのあるものについては、その是正を図る。2) 公団住宅等の募集における地元優先枠の是正公団住宅等の募集においては地元優先枠の設定によりその当選倍率に著しい不均衡が生じている。これに対し、広域的な住宅宅地需要に対応するという公団の役割を十分に発揮させるため、地元優先枠の是正を行うものとする。このため、当面当該募集に係る住宅宅地の需要動向等を勘案して地元枠への配分比率を引き下げ、できるだけ早期に一般枠の平均応募倍率が地元枠の平均応募倍率のおおむね2倍程度となるよう適切な配分を実現する。3) 関連施策との連携住宅地供給に当たっては、交通アクセス等宅地化の条件整備を踏まえつつ、農林行政等関連施策との円滑な調整を進める。また、宅地開発等に関連する許認可事務について、臨時行政改革推進審議会等の答申の趣旨に沿って、その簡素化、迅速化等の改善合理化を引き続き推進する。(6) 配慮すべき事項1) 全国総合開発計画、近畿圏整備計画等との調和本方針に基づく住宅及び住宅地の供給の促進については、多極分散型国土の形成を基本とし、国土総合開発法(昭和25年法律第205号)に基づく第四次全国総合開発計画及び近畿圏整備法に基づく近畿圏整備計画との調和を図りながら推進していくものとする。2) 環境保全との調和住宅宅地開発の具体的な事業については、その内容に応じて環境保全上の観点から検討を行うこと等により自然環境、生活環境及び文化・歴史的環境の保全との調和を図りながら推進していくものとする。3) 地価の安定・適正化本方針に定める施策の実施に当たっては、土地の投機的取引及び地価の高騰が生ずることがないよう留意するものとする。この場合、必要に応じ、国土利用計画法の規定による監視区域の指定に努める等現行法制の的確な運用を図るものとする。4) 安全の確保国土の安全に配慮し適切な治山・治水対策等により安全性の確保に努めるとともに、宅地造成等規制法(昭和36年法律第191号)等に定めるところにより宅地造成に伴うがけくずれ等の防止を図るものとする。また、水資源についてもその確保に努めていくものとする。5) 福祉政策との連携等高齢者等を含めた全ての人々が生涯を通じて、健康で心豊かな生活を送ることができるようにするための住宅・社会資本の整備を推進する。また、高齢者等が、安全で便利な住宅に居住するとともに、福祉や医療のサービスを必要なときにいつでも受けられる社会を実現するために、福祉政策との連携を図るものとする。 |