新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針


平成十三年十一月七日
国土交通省告示第千六百二十二号

旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成十三年法律第六十一号)附則第二条の規定に基づき、新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針を次のとおり定め、平成十三年十二月一日から適用することとしたので、同条第一項の規定に基づき公表する。


I趣旨

日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)の経営形態の抜本的な改革(以下「国鉄改革」という。)は、国鉄による鉄道事業その他の事業の経営が破綻し、公共企業体による全国一元的経営体制の下においてはその事業の適切かつ健全な運営を確保することが困難となっている事態に対処して、これらの事業に関し、輸送需要の動向に的確に対応し得る新たな経営体制を実現し、その下において我が国の基幹的輸送機関として果たすべき機能を効率的に発揮させることが、国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、これに即応した効率的な経営体制を確立するため、実施されたものである。このような趣旨により実施された国鉄改革においては、国鉄の旅客鉄道事業の経営を分割し、北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社(以下「旅客会社」という。)に引き継ぎ、国鉄の貨物鉄道事業の経営を旅客鉄道事業の経営と分離し、日本貨物鉄道株式会社(以下「貨物会社」という。)に引き継いだが、その際、国は、旅客会社及び貨物会社が引き継いだ事業及び業務の健全かつ円滑な運営を阻害しない範囲において、国鉄の長期借入金及び鉄道債券に係る債務その他の債務を承継させる等の措置その他旅客会社及び貨物会社の収益を調整するための措置を講じた上で、国鉄の営業路線を旅客会社に引き継いだ。また、運賃及び料金の設定、線路その他の鉄道施設の使用その他の鉄道事業に関して旅客会社及び貨物会社の間の協力及び連携の体制の整備等を行った。さらに、旅客会社及び貨物会社には、鉄道事業以外の事業の経営を鉄道事業の適切かつ健全な運営に支障を及ぼすおそれがない範囲において幅広く認めて収益性の向上を図り、その経営の安定を図るとともに、旅客会社及び貨物会社にあっては、その営む事業が地域における経済活動に与える影響にかんがみ、その地域において同種の事業を営む中小企業者の事業活動を不当に妨げ、又はその利益を不当に侵害することのないように特に配慮することとした。国鉄改革においては、このような措置をとることによって、国鉄が事業を営む地域の経済及び社会の健全な発展の基盤の確保及び国鉄が経営していた鉄道事業に係る利用者の利便の確保及び適切な利用条件の維持を図った。そして、このような国鉄改革の経緯を踏まえた事業運営は、これまで旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の枠組みの中で行われてきた。今般、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)の施行により、改正法附則第二条第一項に規定する新会社(以下「新会社」という。)は、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の適用から除外されることとなるが、その営む鉄道事業に係る利用者の利便の確保及び適切な利用条件の維持並びにその事業を営む地域の経済及び社会の健全な発展の基盤の確保を図るためには、なお当分の間、国鉄改革の経緯を踏まえた事業運営が行われる必要がある。このため、新会社については、国鉄改革の経緯を踏まえ、会社間(改正法附則第二条第二項第一号に規定する会社間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項、国鉄改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項並びに新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項について、新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項をこの指針において定めることとしたものである。

II配慮すべき事項

新会社は、Iの趣旨を踏まえ、以下の1から3までに規定する事項に配慮してその事業を営むものとする。1鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項一新会社は、その営業路線及び他の新会社又は改正法による改正後の旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(以下「新法」という。)第一条第一項に規定する旅客会社の営業路線をまたがって乗車する旅客の運賃及び料金を定める場合には、次に掲げる事項に配慮してこれを定めるものとする。これを変更する場合も、同様とする。イ当該旅客が乗車する全区間の距離を基礎として運賃及び料金を計算すること。ロ当該旅客が乗車する全区間の距離に応じて運賃を逓減させること。二新会社は、その敷設する鉄道線路(鉄道線路に係る電気関係施設を含む。以下同じ。)を貨物会社に使用させる場合には、貨物会社との協議を経て、貨物会社が当該鉄道線路を使用することにより追加的に発生すると認められる経費に相当する額を基礎として、貨物会社が新会社に支払うべき当該鉄道線路の使用料を定めるものとする。これを変更する場合も、同様とする。三新会社は、他の会社(他の新会社又は新法第一条第三項に規定する会社をいう。以下同じ。)との駅、鉄道線路その他の鉄道施設の使用に関する協定その他の鉄道事業に関する協定を当該他の会社の鉄道事業の健全かつ円滑な経営及び利用者の利便に配慮した内容とし、当該協定を遵守するとともに、当該協定を締結し、変更し、更新し、又は廃止する場合には、当該他の会社の鉄道事業の健全かつ円滑な経営及び利用者の利便に配慮するものとする。2国鉄改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項一国鉄改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持に関する事項イ新会社は、国鉄改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえて現に営業する路線の適切な維持に努めるものとする。ロ新会社は、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第二十八条の二の規定により現に営業している路線の全部又は一部を廃止しようとするときは、国鉄改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を関係地方公共団体及び利害関係人に対して十分に説明するものとする。二駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項新会社は、駅(出入口、改札口その他の駅施設を含む。)その他の鉄道施設を整備するに当たっては、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成十二年法律第六十八号)の規定により同法第二条第二項に規定する移動円滑化のため必要な措置を講ずるなど当該鉄道施設の利用者の利便の確保に配慮するものとする。3中小企業者への配慮に関する事項新会社は、その営む事業が地域における経済活動に与える影響にかんがみ、その地域において当該新会社が営む事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動を不当に妨げ、又はその利益を不当に侵害することのないよう特に配慮するものとする。

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