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平成13年度観光の状況に関する年次報告

第1章 観光の現状はどうなっているか

第5節 ●アメリカ同時多発テロ事件の旅行に与えた影響

2 観光関係事業者,国内観光地への影響



  (1) 沖縄への影響と対策

沖縄への入域観光客は,平成13年9月は対前年度比1.5%の伸びを示し増加していたが,10月からテロ事件の影響が顕著になり,対前年度比19.4%の減少を示した。特に修学旅行は平成12年実績の約65%に当たる19万人を超えるキャンセルが発生する(平成14年3月14日現在)等,沖縄観光は大きな打撃を受けた(図1-5-14)。

図1-5-14 沖縄県月別入域観光客数の推移



このような状況にかんがみ,沖縄観光の回復とより一層の促進を図るべく,沖縄県民の生活は平常どおりである旨の正確な情報提供と,観光需要の喚起のための対策を講じている。平成13年10月には,1)国土交通大臣による観光関係業界トップへの沖縄観光促進に係る協力要請,2)沖縄での地元関係業界からのヒアリングによる現状把握,3)各都道府県教育委員会等を通じた沖縄修学旅行実施の依頼,4)沖縄観光振興セミナーの開催による旅行業者,旅行マスコミ等を通じた沖縄に関する正確な情報提供と旅行商品の企画・販売強化の要請,5)全国の都道府県観光連盟,地方公共団体に対し,日本観光協会を通じての沖縄観光支援要請,6)沖縄観光振興会議代表幹事会の開催による大型キャンペーンの実施等の決定等の対策を講じた。
さらに平成13年11月には国土交通大臣のほか,旅行会社,交通事業者,沖縄県等のトップが出席する沖縄観光振興会議を沖縄で開催し,沖縄観光振興宣言を採択するとともに,12月には全国から旅行業者,交通関係者等1,000人余りが那覇に集まり,沖縄の魅力を再確認し,全国に発信することを目的にした沖縄観光促進シンポジウムを開催した。
また,国土交通省主催の都道府県等観光主管課長会議等の会議を沖縄で開催したり,沖縄の魅力を再認識してもらい沖縄への修学旅行の実施を促すための修学旅行関係者沖縄招へい事業を実施するとともに,平成14年1月から3月に沖縄への修学旅行を実施する学校に対し,学生一人あたり2,000円を限度とした助成を行った。
これらの対策により,入域観光客数の対前年比は,11月の24.4%減少から,12月は12.7%減少,1月は2.8%減少と減少幅が縮小した後,2月は1.2%の増加に転じた。また,年末年始の沖縄方面の航空旅客数も対前年比5.9%増加しており,沖縄への観光客数は回復している。

  (2) 航空,旅行関連事業者への影響と対策

1)航空事業者関係
ア 経営への影響
テロ事件は,旅客や貨物の減少による収入減や航空保安体制の強化による費用増加により航空会社の経営に大きな影響を与えている。
イ 政府が講じた対策
平成13年9月11日のアメリカ合衆国におけるテロ攻撃に関連して,航空保険契約のテロ等による乗客,貨物以外の第三者への損害に対する賠償責任の支払い限度額が,従前より大幅に引き下げられた。このような中で,十分な被害者救済の確保等の観点から,テロ等による航空機事故が発生し,第三者への損害が発生した場合に20億米ドルを限度として賠償金の支払いが可能になるよう,日本国政府として平成13年10月2日以降6ヶ月間適切な措置を講ずる旨を閣議決定した。その後,平成14年3月29日に,当該措置について機動的かつ迅速に対応することができるよう,当該措置の対象期間を「国土交通大臣が財務大臣と協議して定める期間」に変更するとともに,平成14年7月1日まで3ヶ月間延長することとした。また,テロ事件の影響を受けている航空会社に対して,日本政策投資銀行から,「緊急対策等支援制度」等により緊急融資を実施することとした。
2)旅行関連事業者関係
テロ事件により,航空機を利用した旅行への不安感等の理由により海外旅行のキャンセル,手控え等が相次ぎ,旅行関連業者は経営面に多大な影響を受けた。このため政府は13年11月,旅行関連事業者に対して,中小企業金融公庫等による運転資金の貸付,信用保証枠の拡大等の措置を講じている。
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