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平成13年度観光の状況に関する年次報告

第2章 21世紀における持続可能な観光に向けて ~WTO大阪総会の開催~

第1節 ●第14回世界観光機関総会の開催について

2 総会における決議等



  (1) 米国におけるテロ攻撃に関する決議

総会は,米国におけるテロ事件後に開催される初の大規模な国際会議という点で,世界から着目された。
日本と韓国のイニシアティブにより,米国でのテロ攻撃を強く非難するとともに,テロ行為によるリスクを軽減するため,観光関係者が旅行者の理解と協力を得つつ,講ずる安全確保対策に対して支援する旨の「米国におけるテロ攻撃に関する決議」が採択された。
  (骨子)  

1.米国において多数の人命の損失等をもたらしたテロリズムを強く非難するとともに,米国など犠牲者を生じた国々への哀悼と連帯の意思を表明する。
2.観光は,大きな危機を乗り越える柔軟性を持つ産業であることを強調しつつ,観光産業が打撃を受けた加盟国に対する全面的な支援を行う。
3.全ての観光関係者,特に航空産業が,旅行する人々の理解と協力を得て,現実的な安全確保対策を講じ,テロ行為によるリスクを減少させようとする努力を,とりうる限りのあらゆる手段により支援する。
4.観光を通じた対話や交流が文明間の相互理解を深め,そして,テロリズムのような問題の防止に力強く貢献すると確信することを表明する。

  (2) ミレニアム観光サミット・「大阪ミレニアム宣言」

21世紀最初の総会を記念して,世界の官民有識者が一堂に会し,ミレニアム観光サミットが開催された。このサミットでは,21世紀の観光を見据えた3つのテーマ「観光マーケットの質的・量的変化」「自然・文化遺産の継承」「情報技術革命と観光」につき,活発な議論が行われ,その成果が「大阪ミレニアム宣言」として取りまとめられた。
この大阪ミレニアム宣言においては,観光の現状の分析として
●観光を通じて異なる文化や伝統を経験することは,平和の実現と世界の人々の相互理解を推進し,また,観光の発展には平和と安全が不可欠であること,
●観光の成長は目ざましく,21世紀初頭における最大のリーディング産業の一つとなること,
●米国での悲劇的な事件を克服し,これを乗り越えて,観光は必ずや再び高い成長を示すこと,
●国の経済,特に雇用の創出に観光が建設的な影響力を有する一方,責任をもった管理が行われない場合には文化的,環境的,社会的な危険をもたらす潜在的な影響力をもつこと,
●このため,雇用を創出し,経済成長に貢献するのは持続可能な観光の発展が唯一の方法であること
等が確認された。
その上で,世界観光機関及び各国政府及び民間企業に対しては,
●観光の有する絶大な経済効果,人,文化,自然環境にもたらす影響を考えると,今後観光が更なる発展を遂げる上で正確な統計,健全な研究調査が求められること,
●政府及び観光業者は旅行の目的地の治安情勢に関する正確な情報を提供しなければならないこと,
●先進国及び政府間国際団体から低開発国に対し,技術的,財政的援助を行っていくべきこと,
●多くの国では長時間の労働と短い休暇が観光の成長の障害となっているとともに,集中と混雑の原因となっていることを,政府及び民間分野は真剣に取り上げるべきこと,
●観光開発は,地域コミュニティのニーズ,自然・文化遺産の保護,訪問者の満足の間でバランスを保つべく,持続可能な原則に堅く基づいて行わなければならないこと,
●情報技術は観光目的地に新しい機会を創出する一方,観光データベースを構築,維持するには多大なる投資を必要とすることから,政府機関,政府観光機関は,民間機関や地元との協力関係のもとにインフラ整備を積極的に推進すること,
●政府機関,政府観光機関は,観光目的地について一般の人々や旅行業者がインターネット上で情報を容易に見つけ,アクセスが可能になるよう推進すること等の遂行が要請された。
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