前(節)へ   次(節)へ
平成13年度観光の状況に関する年次報告

第3章 国際観光振興の施策

はじめに


国際観光は,国民の幅広い各層で行われる民間国際交流であり,国際相互理解を増進させるとともに,国際親善を深め,国際平和に貢献する上で大きな意義を有するものである。相互理解のためには,このような国際交流は双方向で行われることが重要であるが,我が国の国際観光の現状は,訪日外国人旅行者数は日本人海外旅行者の4分の1程度という片方向の交流である。
国際的に見ても,我が国は世界で第10位(1999年世界観光機関(WTO)資料による。以下同じ。)の数の海外旅行者を送り出しているのに対し,海外旅行者の受入れ者数は世界第35位にとどまっている(図3-1-1,2,3,4)。

図3-1-1 主要国・地域の外国人旅行者受入数ランキング(1999年)




図3-1-2 主要国・地域の外国旅行者数ランキング(1999年)




図3-1-3 主要国・地域の外国への旅行者1人当たりの来訪外国人旅行者数(1999年)




図3-1-4 主要国・地域の人口1人当たりの来訪外国人旅行者数(1999年)



国際観光収支の点でも,このような片方向の交流の状況を反映し,支払は世界第4位であるのに対し,受取は世界第31位であり,この結果国際観光収支の赤字の規模は世界第2位である。我が国の経済産業規模と比べ,訪問外国人旅行者数,それに伴う国際観光収入は国際的に見て低水準である(第1章「国際旅行収支参照」)。
小泉内閣総理大臣は第154回国会における施政方針演説において,「ワールドカップサッカー大会期間中は,世界中の注目を集め,多くの人が訪れます。日本に関心をもち,日本について理解を深めてもらう,またとないチャンスです。我が国の文化伝統や豊かな観光資源を全世界に紹介し,海外からの旅行者の増大と,これを通じた地域の活性化を図って参ります。この大会が,経済面への波及効果も含め,日本と日本人が元気を取り戻す機会となることを強く期待しています。」とワールドカップ大会を契機とした訪日外国人旅行者の増加の基本姿勢を示した。
訪問外国人旅行者の増加は国際相互理解を増進させる効果があることに加え,国内等での消費に伴う国際収支の改善,地域の産業・雇用の確保,拡大といった経済効果があることを踏まえると,低迷する地域の経済・雇用の改善を図る,また輸出の減少等による貿易収支の悪化を補うためサービス収支の改善を図るという観点からも,訪日外国人旅行者を増加させるための施策の積極的な推進が必要である。
国際観光振興会が東京及び京都のツーリストインフォメーションセンター(TIC)を訪問した外国人(約600人)に対し,訪日外国人旅行者数増加のため我が国が強調すべき観光イメージや改善すべき施策について行った調査によれば,我が国が強調すべき観光イメージは,外国でイメージの強い「経済大国」としての近代性や科学技術ではなく,美しい景観・自然や伝統・文化のイメージとする意見が,欧米諸国を中心に圧倒的に多かった。また,改善すべき施策についても,日本の観光魅力の海外宣伝への意見が欧米諸国を中心に集中した。次いで,外国語表示・案内など言語に関する施策も物価と並んで改善すべきとの意見が多かった。言語に関しては,旅行しやすさのイメージがあるかとの質問への回答とともに,米国に比べアジアからの旅行者では評価が低く,改善の要望が多かった。
本章では,おおむね2007年(平成19年)を目処に訪日外国人旅行者を800万人に増加させるとの目標(12年5月に開催された観光産業振興フォーラムにおいて観光関係者が官民一体となって取り組むこととした「新ウェルカムプラン21」における目標)の下,訪日外国人旅行者の少なさの原因として今後の外客誘致の重要な政策課題である我が国の観光魅力の紹介の強化,外国人旅行者の受け入れ体制の整備の推進,国内での移動・宿泊等旅行費用の低廉化のための施策の強化などの観点で講じている施策を記述する。

表3-0-1 日本が強調すべきイメージ




表3-0-2 訪日外国人旅行者を増やすための日本への提案



  COLUMN  

■ 「新ウェルカムプラン21」

訪日観光交流拡大のための行動計画「新ウェルカムプラン21」の主要な項目は次のとおり,
●外国人来訪促進に関する国民的合意の形成
●訪日外国人旅行者数の増加目標の設定
・二国間協議で相互交流目標の設定
●訪日旅行需要の創造
・方面別マーケティングと,重点的訪日促進キャンペーンの実施
・国際会議,修学旅行等の誘致,青少年交流の拡大
・民間の観光業界における外国人対応旅行商品の開発,観光宣伝
●国内滞在の費用低廉化,利便性向上等の対策の実施
・ウェルカムカードの普及
・主要交通機関等の運賃等の低廉化・利便性向上
・低廉旅行に関する情報の提供
・国際コンベンション,大規模イベント・行事の支援
・i案内所の機能向上
・案内標識,表示の充実
・通訳案内サービスの向上
・外国人観光客接遇の改善
・査証発行の簡素化,入国手続きの簡素化
・民間の観光業界における個人客向け情報提供の充実,外国人案内サービスの改善
●地方圏への外国人観光客誘致対策
・地方空港・港湾における航空チャーター市場の育成,国際クルーズネットワーク形成の推進
・地方圏の国際観光振興
・国際観光テーマ地区の形成
前(節)へ   次(節)へ
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport