前(節)へ   次(節)へ
平成16年度 観光の状況に関する年次報告

第1章 「外国人旅行者倍増」に向け飛躍の年

第2節 平成17年に向けた展望


国際観光旅行は、海外の多様な文化、国民性に対する理解を増進させるものであり、こうした国際相互理解の積み重ねは、国の安全保障、ひいては世界平和に貢献するものである。昨今、特に民族紛争、テロ事件等一般の人をも巻き込んだ平和を脅かす行為や行動が世界で頻発するなかにあって、国際観光の推進は極めて意義深いことといえる。
例えば、我が国についていえば、豊かな自然と文化を有するにもかかわらず、海外では「ものづくり」を中心とした工業大国、経済大国というイメージが根強く、それに伴い日本人の国民性もとかく誤解されがちである。したがって、外国人旅行者に多く日本を訪れてもらい、我が国について正しく理解してもらうことは非常に意義深いことであり、外国人旅行者の訪日促進を通じて日本の真の魅力を海外にアピールしていくことが必要である。
こうした意義を持つ人的交流は、東アジアを中心にその拡大が世界的な流れとなっている。
平成15年の全世界の延到着客数6.9億人はアジアにおけるSARSの影響(アジアへの旅行の減少とSARS地域からの旅行自粛)と中東におけるイラク戦争の影響から前年比2%マイナスとなったが、平成16年に入って東アジアの各国を中心に旅行市場は回復傾向にある。
また、東アジアの諸都市では空港の巨大化が引き続き進行しており、4,000メートル級の滑走路2本を有するシンガポールのチャンギ国際空港のほか、韓国では平成13年にソウル近郊にインチョン国際空港が、中国では平成11年に上海郊外に浦東国際空港が開港したところである。
日本においても、平成17年2月に海外25都市、国内24都市(開港時・旅客便のみ)を結ぶ中部国際空港が開港した他、平成19年には関西国際空港の第二滑走路の供用、平成21年には羽田空港の再拡張による国際線の乗り入れ等、国際拠点空港の容量拡大が予定されており、東アジアを取り巻く国際的な人的交流を支えるインフラの整備も急速に進行している状況にある。
さらに、航空機材についてもさらなる大型機が開発されており、平成18年にはシングルクラスで最大で840席を超える超大型機エアバスA380型機が市場に投入される予定である。こうした動きも背景に、世界観光機関(WTO)によれば、世界の国際ツーリズム市場(延到着客数)は拡大基調で推移すると予測されており、平成15年実績の6.9億人から平成22年には10億人、平成32年には15億人に達するとされる。とりわけアジア太平洋地域については、地域別では最も高い年7.7%の海外旅行者の伸びが予測されており、世界平均の4.2%よりもはるかに高い予測値となっている。
こうした中で、平成17年は、外国人150万人の来場を見込む愛・地球博が我が国で開催されることから、これを機会に近隣のアジア諸国から我が国へ多くの観光客が訪れることが期待される状況にある。
そのため、平成17年度のビジット・ジャパン・キャンペーンにおいては、1)客観評価に基づく効果の高い事業への集中化・重点化、2)愛・地球博開催、中部国際空港開港、ビザ規制緩和等を踏まえたキャンペーンの重点実施、3)日韓国交正常化40周年を記念した「日韓友情年・日韓共同訪問の年」関連事業、4)地方の魅力のPRを行う地方連携事業の強化、5)オーストラリア、カナダ、タイ及びシンガポールの重点市場への追加等の高度化を図ることとしている。
平成18年以降も、平成20年の北京オリンピック、平成22年の上海万博といった世界的なイベントが東アジアで開催されることとなっており、国際観光旅行は、東アジアを中心に今後とも拡大していくことが見込まれる。そのため、国際拠点空港の容量拡大やビザ規制緩和を踏まえた重点的キャンペーンの展開、北京五輪や上海万博を訪れる第三国からの旅行者の日本への誘客等の取組を行い、平成22(2010)年に訪日外国人旅行者1,000万人との目標の達成に向けて着実に取り組んでいく。
前(節)へ   次(節)へ
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport