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平成16年度 観光の状況に関する年次報告

第5章 観光交流空間の形成

第2節 自然環境の保全と観光への活用

6 温泉保護と観光への活用



  (1) 温泉の保護

平成16年3月末現在における全国の温泉ゆう出源泉数は、2万7,347箇所(うち自噴するもの5,189箇所、動力によるもの1万3,559箇所、未利用のもの8,958箇所)、ゆう出量は1日換算約386万トンに及んでいる。
また、温泉地は全国に3,127箇所あり、温泉を利用する宿泊施設数は15,390軒である。温泉の利用等に当たっては、「温泉法」に基づき温泉の枯渇を防止し、将来にわたって有効に利用し得るよう温泉の掘削、増掘、動力装置の設置等の行為について規制を加え、その保護がなされている。

  (2) 温泉の観光への活用

温泉街の中には、これまでの団体型観光による需要を優先して個々の旅館が建設された結果、まちが無秩序に肥大化したうえ、これらの施設が老朽化している地域が存在する。
このような背景の下、平成16年度国土施策創発調査においては、東京からおよそ100キロ圏内に立地する「従来型観光地」である栃木県藤原町、群馬県伊香保町、山梨県石和町を対象として、「従来型観光地での地域の魅力の再発見または創出と、それを生かした集客力回復とまちの再構築に関する調査」を行った。
1)国民保養温泉地の指定
温泉利用の効果が十分期待され、健全な保養地として大いに活用される場を「温泉法」に基づいて環境大臣が指定した温泉地である。平成17年3月末現在、91箇所が指定されている。

  (3) 温泉の表示問題への対応

平成16年7月以降、長野県の一部の温泉利用施設の入浴剤混入問題に端を発し、全国各地で、温泉法上の定義に該当しない井戸水や水道水を加温したものを温泉であるかのように表示していた等の温泉表示に関する問題が発覚した。このような問題について、景品表示法違反(不当表示)のおそれがあるとして、公正取引委員会が、平成16年8月9日に福岡県所在の公衆浴場に対し、平成17年3月2日に北海道所在の温泉利用施設に対し、それぞれ警告を行ったほか、平成17年3月末までに、19府県が指示・注意等の措置を公表した。
このような温泉の表示に関する疑問を放置することは、温泉利用者の不信感を招くのみならず、外国人旅行者が日本を訪問する際の大きな魅力である温泉への信頼性の低下は、日本の魅力そのものを損ないかねないとの認識のもと、国際観光ホテル整備法に基づく登録ホテル・旅館における温泉表示に関する実態調査を実施した。
また、平成16年8月下旬から、全国約2万の温泉利用施設を対象とした実態調査を実施し、同年10月8日にその調査結果の概要を公表した。調査結果を踏まえ、特に、加水・加温、循環ろ過装置や入浴剤の使用について表示するなど、温泉事業者による利用者への情報提供を充実していくことが重要と考えられることから、温泉事業者による表示の在り方等について中央環境審議会に諮問した。同審議会では、温泉小委員会を設けて審議を行い、平成17年2月に答申がなされた。この審議会の答申を踏まえ、温泉成分に影響を与える項目を追加し、温泉事業者による温泉利用者への情報提供を充実させるため、平成17年2月に温泉法施行規則の改正を行った。
  COLUMN 15 温泉表示項目追加  

平成16年7月以降、表示無く温泉に入浴剤を使用したり、井戸水や水道水を沸かしたものを温泉と称するなどの温泉をめぐる問題事例が発生したことを契機として、温泉事業者による利用者への情報提供について、国民の関心が高まっています。
このような状況を踏まえ、温泉事業者による表示の在り方について検討を行い、平成17年2月温泉法施行規則を改正し、温泉法に基づく既存の掲示項目に加え、温泉成分に影響を与える項目を掲示することを義務付けました。
具体的には次の4項目となります。
(1)温泉に水を加えて公共の浴用に供する場合は、その旨及びその理由
(2)温泉を加温して公共の浴用に供する場合は、その旨及びその理由
(3)温泉を循環させて公共の浴用に供する場合は、その旨(ろ過を実施している場合は、その旨を含む。)及びその理由
(4)温泉に入浴剤(着色し、着香し、又は入浴効果を高める目的で加える物質をいう。ただし、入浴する者が容易に判断することができるものを除く。)を加え、又は温泉を消毒して公共の浴用に供する場合は、当該入浴剤の名称又は消毒の方法及びその理由
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