平成16年度 観光の状況に関する年次報告
第5章 観光交流空間の形成
第3節 文化遺産の保存と観光への活用
3 文化財・歴史的風土・文化遺産の観光への活用
地域伝統芸能等を活用し、地域の特色を生かした観光の振興を図るため、平成16年10月22日から3日間にわたり、水戸市において開催された「第12回地域伝統芸能全国フェスティバル」について後援を実施した。
国民共有の財産であり、地域の歴史的・文化的シンボルである史跡等については、城の石垣や古墳石室の修理といった保存のための整備、建物復元・遺構の露出展示やガイダンス施設の設置といった活用のための整備を行い、その魅力を高めることで、地域の観光資源として活用されている。
また、我が国の歴史を理解する上で極めて重要な街道、水路などのうち、往時のたたずまいを残しているものを「歴史の道」として選び、それに沿う地域を一体のものとして保存・整備し、活用を図っている。
「伝統的集落における歴史的環境整備を中心とした地域活性化方策の調査・検討報告書」では、約1,000地区が保存の望まれる地区としてリストアップされたが、この調査によって歴史的な価値が明らかにされた地区については、文化財保護法に基づき、市町村が行う伝統的建造物群保存地区の決定やその保存等に関し指導・助言を行うとともに、その中から重要伝統的建造物群保存地区の選定を積極的に進めており(平成16年末では66地区図5-3-1)、市町村が行う事業に対して助成措置が講じられ、地区内の整備が進められている。
重要伝統的建造物群保存地区では、公開活用施設の見学等を通して学習と交流が図られ、また、地元住民による個性的なまちづくりが進められ、歴史的集落・街並みの保存が地域づくりに生かされている。
さらに、文化財建造物や歴史的集落・街並みを保存・活用しつつ、より成熟した観光を促進するための方策検討の基礎的調査「国際観光に資する地域資源活性化方策調査」に基づき、文化財建造物等の保存・活用施策の展開を目指し、歴史的集落・街並みの保存事業と観光とのより成熟した連携について検討を行った。
図5-3-1 重要伝統的建造物群保存地区一覧
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福島県下郷町大内宿は、茅葺民家が街道筋の両側に建ち並ぶ宿場町で、昭和56年重要伝統的建造物群保存地区に選定された。選定後、これまで茅葺の主屋や土蔵等が修理されるとともに総合的な防災事業により放水銃や消火栓、自動火災報知器などが設置され、鉄板で覆われた屋根が伝統的な茅葺屋根に復原されるなどの保存事業が進められている。
一方で、ここでは、平成元年から2ヵ年かけて街道沿いに露出していた電柱、電線を街道から見えない裏へ移設する事業が行われ、さらに平成11年度には、舗装された街道筋を土の道に戻し、これにより国土交通省の第13回人間道路会議賞大賞を受賞するなど、街道筋全体の歴史的景観を向上させる事業が続けられてきた。
こうした取組により観光客数は大幅に増え、平成15年度には、おおよそ80万人を数えるまでとなった。「観光地だから携帯電話が繋がるべき」なのか、「携帯電話も繋がらないひなびた観光地が良い」のか、議論が分かれるところだが、大勢の観光客が訪れ、事故等が発生した場合には、やはり、より操作性の高い通信手段が確保されるべきということで、平成13年度、平成14年度には、地区内に携帯電話用のアンテナが複数本建設された。このときも、伝統的な街道筋の景観が損なわれないよう設置場所には十分な配慮がなされた。これは、地元行政が長年に亘って培ってきた「大内宿をより良き街並み」としようという意気込みや柔軟な姿勢、そして日々営々と積み重ねられたまちづくり、街並み保存のためのノウハウの結晶といえよう。
また、大内宿の地区中心に位置する旧本陣は、昭和59年に古資料等をもとに復原され「大内宿町並み展示館」として下郷町が運営しているが、平成15年度から2ヵ年をかけ、新たに茅葺研修施設としての機能も加えられた。研修施設といっても、専門家のためだけではなく、ここを訪れるすべての人に茅葺屋根の実際の葺き上げてゆく過程がよくわかるような展示を行なうとともに、車椅子利用者のための斜路の設置を行うなど、誰でも気軽に訪れることのできる観光文化施設として生まれ変わった。今後多くの研修施設としての活用とともに、多くの観光客の来訪が期待されている。
大内宿町並み展示館
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