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平成18年度観光の状況

第I部 観光立国の新たな展開

第1章 観光立国推進基本法の成立

第4節 観光立国推進基本法制定の背景と法律概要



  1 観光立国推進基本法制定の背景

旧法制定から43年が経過し、先にも述べたように我が国の観光を取り巻く状況は著しく変化した。我が国において世界に例を見ない水準の少子高齢社会の到来と本格的な国際交流の進展が見込まれる中で、「住んでよし、訪れてよしの国づくり」を実現するものとして、観光は従来にも増して極めて重要な役割を担っていくことが見込まれるようになった。また、観光立国の実現のために克服すべき課題として、訪日外国人旅行者数と日本人海外旅行者数との間に存する著しい差異のほか、国民のゆとりと安らぎを求める志向の高まり等を背景とした観光旅行者の需要の高度化、少人数による観光旅行の増加等観光旅行形態の多様化、観光分野における国際競争の一層の激化といった、近年の観光をめぐる諸情勢の変化への的確な対応が求められるようになった。
政府においても、平成15年1月の小泉内閣総理大臣の施政方針演説において、2010年に訪日外国人旅行者数を1,000万人とする目標が示され、同年7月には、観光立国関係閣僚会議において「観光立国行動計画」が策定されるとともに、平成16年11月には、55の提言からなる「観光立国推進戦略会議報告書」が取りまとめられるなど、近年、観光立国の実現に向けた取組が一層強化されてきた。
これらの観光を取り巻く情勢変化及び観光立国の実現に向けた政府の取組の強化を踏まえ、観光立国の実現に向けた政府の取組を一層明確かつ確実なものとするため、今般、旧法の改正が行われることとなった。

  2 観光立国推進基本法の概要

■ 目的(第1条関係)
旧法は、観光に関する国の政策の目標を、国際収支の改善及び外国との経済文化の交流の促進、国民の保健の増進、勤労意欲の増進及び教養の向上に貢献する観点から、「国際観光の発展及び国民の健全な観光旅行の普及発達を図り、もつて国際親善の増進、国民経済の発展及び国民生活の安定向上に寄与し、あわせて地域格差の是正に資すること」と定めていた。これに対し、観光立国推進基本法(以下「新法」という。)は、21世紀の我が国経済社会の発展のために観光立国を実現することが極めて重要であるという観点から、「観光立国の実現に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、国民経済の発展、国民生活の安定向上及び国際相互理解の増進に寄与すること」を目的としている。
■ 施策の基本理念(第2条関係)
観光立国の実現に関する施策の基本理念としては、1)地域における創意工夫を生かした主体的な取組による「住んでよし、訪れてよしの国づくり」が重要であること、2)国民の観光旅行の促進が図られなければならないこと、3)国際的視点に立たなければならないこと、4)行政・住民・事業者らの相互の連携の確保が必要であること、が新たに規定されている。
■ 関係者の責務(第3条~第6条関係)
観光立国の実現に関する関係者の責務としては、1)国は、観光立国の実現に関する施策を総合的に策定し、実施する責務を有すること、2)地方公共団体は、自主的かつ主体的に施策を策定し、実施する責務を有すること、また広域的な連携協力に努めなければならないこと、3)住民は、魅力ある観光地の形成に積極的な役割を果たすよう努めるものとすること、4)観光事業者は、住民の福祉に配慮するとともに、主体的に取り組むよう努めるものとすること、と規定されている。
■ 基本的施策(第12条~第25条関係)
新法は、観光立国の実現のための施策を大きく四つに分類しており、「国際競争力の高い魅力ある観光地の形成」、「観光産業の国際競争力の強化及び観光の振興に寄与する人材の育成」、「国際観光の振興」、そして「観光旅行の促進のための環境の整備」としている。
「国際競争力の高い魅力ある観光地の形成」については、旅行関連施設や交通施設を整備することと併せて、良質なサービスが提供されるようにすること、保護、育成を図りつつ史跡、名勝、歴史的風土や優れた自然の風景地、良好な景観、文化、産業といった観光資源を活用した地域の特性を生かした観光地が形成されるようにすることが必要であると規定されている。
「観光産業の国際競争力の強化及び観光の振興に寄与する人材の育成」については、観光旅行者の需要の高度化や観光旅行の形態の多様化に対応したサービスを提供すること、観光事業の従事者の知識と能力を向上させること、地域に固有の文化・歴史等に関する知識の普及が必要であることが規定されている。これらはいずれも旧法にはなかった新しい規定である。
「国際観光の振興」については、外国人の来訪の促進について基本的に旧法を引き継ぎつつ、日本人の海外旅行を含めた国際相互交流の促進を図るため、諸外国との間における地域間交流や青少年交流の促進が必要であると規定されている。
「観光旅行の促進のための環境の整備」については、休暇に関する制度の改善その他休暇の取得の促進、観光旅行の需要の特定の時季への集中の緩和、また、旅行者に対する接遇の向上の観点からは、我が国の伝統のある優れた食文化その他の生活文化、産業等の紹介の強化、高齢者、障害者、外国人その他特に配慮を要する旅行者が円滑に旅行できるようにすること、新たな観光旅行の分野の開拓、観光地における環境及び良好な景観の保全、統計の整備等が必要であると規定されている。
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