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平成18年度観光の状況

第II部 平成18年度の観光の状況及び施策

第2章 国際競争力の高い魅力ある観光地の形成

第3節 観光旅行者の来訪の促進に必要な交通施設の総合的な整備



  1 国際交通機関及びこれに関連する施設の整備


  (1) 空港の整備

平成18年度における空港整備事業は、東京国際空港(羽田)の再拡張事業・機能向上事業、関西国際空港の二期事業、成田国際空港の北伸による平行滑走路整備事業等、大都市圏拠点空港の整備により一層の投資の重点化を図りつつ、一般空港等については、滑走路の延長等の継続事業を着実に推進するとともに、既存空港の機能を保持するための整備を行った。
また、航空輸送サービスの質の向上を図り、観光立国の実現等に資するため、航空輸送サービスの高度化に関する重点戦略の拡充・展開、空港を核とした観光交流の促進、空港アクセス改善や空港運用の高度化等既存空港の機能の高度化及び空域・航空路の抜本的な再編をはじめとする運航効率の向上を推進した。
観光に係る様々な施策を総合的に進める「空港を核とした観光交流促進プログラム」については、平成17年度策定の4空港(新千歳、新潟、広島、福岡)に加え、新たに釧路、丘珠、函館、青森の4空港において策定した。

  (2) 港湾と航路の整備

クルーズ船誘致による観光交流の促進を通じた地域振興を図ると同時に、旅客交通の高速化への要請等に対応するため、石垣港等16港において、旅客ターミナルの整備を行った。また、プレジャーボートの増大に対応するため、マリーナ等の整備を推進した。船舶がふくそうする海域においては、船舶航行の安全を確保するため、関門航路等16航路において開発及び保全の事業を行った。

  (3) 空港、港湾、道路、鉄道等の連携

陸・海・空にわたる複数の交通機関の連携を通じて、スピードアップと乗継ぎの円滑化を図るなど、利用者のニーズに対応した効率的で良好な交通環境が提供されるマルチモーダル交通体系の構築に取り組んだ。
特に空港アクセスについては、道路や鉄道によるアクセス改善に一体的に取り組み、仙台空港では、平成19年3月に名取駅から仙台空港駅までを結ぶ仙台空港アクセス線が開業し、仙台駅から仙台空港駅までが最速17分(快速)で接続された。

  2 観光の基盤となる交通施設の整備等


  (1) 旅客輸送機関等による観光の利便向上

1)鉄道による観光の利便向上
日本の鉄道に不慣れな外国人旅行者でも乗降駅や乗換駅を特定しやすいよう、地下鉄等において、路線名と駅名をアルファベットや数字で表し、現在の路線名や駅名に併記するナンバリングを実施した(表II-2-3-1)。

表II-2-3-1 駅におけるナンバリングの導入状況



2)自動車による観光の利便向上
1)バス・タクシー
貸切バスは、大人数の団体から家族・友人の利用まで幅広いニーズに対応しており、17年度の観光客を含む輸送人員は、3.02億人(対前年比3.8%増)と年々増加している。
タクシーについては、昨年に引き続き、一定期間外国人旅行者向けに電話通訳コールセンター(英語・中国語・韓国語)を開設し外国人旅行者の便宜を図るとともに、通訳ニーズ等についての調査を実施した。
2)道路
外国人旅行者をはじめとする地理に不案内な観光客が、道路を通行して迷うことなく目的地に到着するためには、分かりやすい道路案内標識の整備が重要である。このため、通り名での道案内方式の実施、主要な幹線道路の交差点及び交差点付近におけるルート番号等を表示した案内標識の設置、歩行者系の地図標識を活用した多言語表記を推進した。
カーナビゲーションに道路交通情報通信をリアルタイムに提供する道路交通情報システム(VICS)については、全都道府県でサービスを提供しており、情報提供エリアの拡大、情報内容・精度の改善・充実により、観光地周辺等での安全で快適な道路交通環境の確立に努めるとともに、3メディア対応型VICS車載機の導入等についても積極的に推進した。
ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)の普及が進み、高速道路の料金所渋滞が緩和されるとともに、時間帯割引等のETCを活用した多様で弾力的な料金割引を実施した。また、スマートインターチェンジ(ETC専用インターチェンジ)の社会実験を実施し、整備効果が高い箇所について本格導入した。
地方道においては、地域の課題に対応して複数事業を一括して支援する地方道路整備臨時交付金を活用して「観光」の発展を目標とする事業を支援し、地域の自主性と創意工夫を生かした観光施策の推進を図った。
観光地へのアクセスや地域間の交流・連携の強化を図る観点から、各地の観光の振興にも重要な役割を担う道路整備を推進した。
特に、高規格幹線道路については、平成18年度に北海道縦貫自動車道(八雲~国縫)等新たに217kmを供用し、9,073kmとなった。
「道路の走りやすさ」について、道路の幅、カーブの大きさ・多さ、歩道の有無、すれ違いができるかどうかなどにより、主要な道路を6つのランクで評価を行い、道路の走りやすさを色で表現した「道路の走りやすさマップ」を作成した。平成18年度においては、各都道府県の道の駅やサービスエリア等で配布し、全国展開を行った。また、カーナビゲーションシステムの高度化を支援するため、道路の幅やカーブの大きさ等、道路構造上の「走りやすさ」に関する情報をカーナビゲーションシステムへ活用するための検討を官民共同で開始した(図II-2-3-2、図II-2-3-3)。
都市内道路の体系的な整備を図り、連続立体交差事業や交通結節点等の整備等、公共交通機関の利便性向上及び安全な歩行空間の整備を推進するほか、TDM(交通需要マネジメント)施策を推進し、交通の円滑化を進めた。
また、駐車需要が集中する地区において、駐車場の位置、満空状況、駐車場までの経路、交通渋滞等に関する情報を運転者に一体的に提供し、空き駐車場への誘導を行う駐車誘導システムの整備を推進した。

図II-2-3-2 走りやすさの評価方法




図II-2-3-3 走りやすさマップの特徴



3)飛行機による観光の利便向上
1)航空路線網の充実
国際旅客輸送の多くが航空によって担われていることに鑑みると、国際交流の拡大に向け、国際航空路線網の充実は必要不可欠である。
このため、乗入れ地点の追加や増便等を図るべく、関係国との間で航空協議を行ってきており、平成18年においては、世界12か国との間で計14回の航空協議を行った。その結果、平成19年1月現在、我が国26都市と世界42か国・地域100都市との間で国際航空旅客便路線網が形成されている。
また、地方空港については、中国・韓国・台湾との定期便が増加している。
4)旅客船による観光の利便向上
1)外航クルーズの振興
外航クルーズ旅行の需要拡大と外航クルーズ客船の誘致は日本人の海外旅行促進、外国人の訪日旅行促進の双方の観点から重要である。このため、(社)日本外航客船協会と共に、北海道、関西、中国、九州及び沖縄の5地区において、船舶運航事業者、地方公共団体、港湾関係者、観光事業者及び関係省庁等を会員とした「地方クルーズ振興協議会」を開催し、官民一体となった取組を行っている。
また、(社)日本外航客船協会及び(社)日本旅行業協会で実施している「クルーズアドバイザー認定制度」では、外航クルーズについての専門知識を身に付けたスペシャリストの育成を目的として研修及び試験が実施され、平成18年には351名(これまでに計1,047名)のクルーズアドバイザーが誕生している。クルーズアドバイザーは、外航クルーズに対する相談や問い合わせに的確に対応するとともに、外航クルーズ商品の販売を通じ、外航クルーズの魅力を広く一般に紹介し、外航クルーズ旅行の需要の拡大に寄与している。
さらに、我が国における外航クルーズ旅行の振興を図る上での具体的な取組方策を議論するため、平成18年6月に東京で「第2回ジャパン・クルーズ・シンポジウム」を開催した。
他方、日中韓観光大臣会合(平成18年7月)や北東アジア港湾局長会議(平成18年11月)において、日中韓の域内及び第三国からの外航クルーズ旅行の活性化に三国が連携して取り組むことを確認した。
これらを踏まえ、平成18年12月には、日本人の海外旅行促進、外国人の訪日旅行促進の双方の観点から外航クルーズ旅行の振興を図り、外航クルーズ客船の誘致や、外航クルーズ旅行商品の造成及びPR等を進めるための官民の関係者による情報交換・情報共有と戦略のすり合わせ等を行うことを目的として、官民の観光関係者、港湾関係者、外航クルーズ関係者をメンバーとし、中韓の政府観光局をオブザーバーとする「外航クルーズ旅行振興全国協議会」を立ち上げた。
平成19年3月には、ビジット・ジャパン・キャンペーン事業の一環として、マイアミで開催された「シートレードショー」に日中韓共同で出展し、日本をはじめ北東アジア地域のクルーズの魅力をPRした。
こうした外航クルーズ振興の動きに連動して、(社)日本旅行業協会では外航クルーズ需要の喚起を図るべく平成18年からクルーズイヤー事業を開始し、平成19年も継続して取り組んでいる。

  (2) 様々な情報提供

1)道の駅における情報提供
快適な休憩スペースを提供するとともに、案内員や情報端末、パンフレット等により、道路、観光、医療等の地域情報を提供する「道の駅」の整備を推進した。
2)駐車場案内システムの整備
都市中心部において、駐車待ち車両やうろつき交通を排除し道路交通の円滑化を図るとともに、市街地の活性化や観光客等地理に不案内な来街者の利便性向上を目指して、駐車場の位置や満空情報を提供する駐車場案内システムの導入を促進した。
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