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平成18年度観光の状況

第II部 平成18年度の観光の状況及び施策

第3章 観光産業の国際競争力の強化及び観光の振興に寄与する人材の育成

第1節 観光産業の国際競争力の強化



  1 観光事業者相互の有機的な連携の推進


  (1) 中央での産業連携の動き

観光振興に向けて、様々な関係者による取組が行われているが、そうした取組をより効果的なものとするには、共通の目標に向かって関係者が連携して施策を進めること、すなわち、政府だけでなく、官民一体となって取り組むことが重要となる。そうした産業連携の動きの代表としては、ビジット・ジャパン・キャンペーンが挙げられるほか、観光立国実現のための施策を効果的かつ総合的に実施するために開催されている「観光立国推進戦略会議」(座長:牛尾治朗ウシオ電機会長)による取組を挙げることができる。「観光立国推進戦略会議」は、観光立国関係閣僚会議の下に開催されている民間有識者会議であり、観光地や観光産業の国際競争力の向上等のために政府、地方公共団体及び産業界等が取り組むべき4つの課題と55の提言からなる「観光立国推進戦略会議報告書」を平成16年11月30日に取りまとめた。最近では、第8回目の観光立国推進戦略会議が平成18年12月21日に開催され、同報告書に基づいた官民の取組のフォローアップが行われるなど、定期的に「観光立国推進戦略会議」が開催され、政府はもとより、地方自治体や産業界等の取組の進捗状況等が報告されている。

  (2) 地方での産業連携の動き

1)観光を考える百人委員会
地元自治体や観光団体、経済団体、交通事業者等、幅広い分野の人々が地域の観光地づくりにとって効果的な方策について検討・提言、情報交換等を行うことを目的として、民間を主体とした「観光を考える百人委員会」等が設立されている。平成18年度は、新潟県をはじめ、中部、中国及び関西地方でそれぞれ開催され、広域連携による地域の観光振興策等について意見交換が行われた。
2)中部広域観光推進協議会の活動
平成17年10月に設立された中部広域観光推進協議会は、平成18年に本格的に活動を開始した。
同年7月には台湾の長栄(エバー)航空の中部国際空港への新規就航に合せて台湾より旅行会社及びメディアの招請事業を実施し、同年8月にはミッション団(団長:愛知県知事)を中国広州・北京へ派遣しトップセールスを行った。また、同年11月には台北国際旅行博(ITF)及び中国(上海)国際旅游交易会(CITM)に同協議会として初めて出展するなど、中部地域の官民が一体となって、観光目的地としての中部地域の認知度向上、ブランド化を進めている。

▲平成18年台北国際旅行博(ITF)における中部ブース




  2 観光旅行者の需要の高度化及び旅行形態の多様化に対応したサービスの提供の確保


  (1) 観光産業の現状

1)旅行業
旅行業法に基づき登録を受けている旅行業者等の数は表II-3-1-1のとおりである。

表II-3-1-1 旅行業者等数の推移



平成17年の旅行業総取扱額は、前年比2.2%増の7.55兆円となった。このうち、海外旅行については、竹島領有問題、中国各地での反日デモ等のマイナス要因があったものの、台湾旅行が好調だったこと等から、前年比4.4%増の3.18兆円となった。国内旅行については、愛知万博の開催等により、前年比2.2%増の4.31兆円となった(図II-3-1-2)。

図II-3-1-2 旅行業取扱実績の推移



2)ホテル・旅館業
1)ホテル
平成17年度末現在における旅館業法による許可を受けたホテル軒数は、8,990軒、客室698,378室で、1ホテル当たりの平均客室数は77.7室となっている。
このうち、「国際観光ホテル整備法」による登録を受けている登録ホテルは、平成17年度末現在で、1,126軒、客室数は200,014室で、1登録ホテル当たりの平均客室数は177.6室となっている(表II-3-1-3)。

表II-3-1-3 ホテル数等の推移



2)旅館
平成17年度末現在における旅館業法による許可を受けた旅館軒数は、55,567軒、客室数850,071室で、1旅館当たりの平均客室数は15.3室となっている。
このうち、「国際観光ホテル整備法」による登録を受けている登録旅館は、平成17年度末現在で1,984軒、客室数は116,407室で、1登録旅館当たりの平均客室数は58.7室となっている(表II-3-1-4)。

表II-3-1-4 旅館数等の推移



3)民宿・ペンション等
民宿は、比較的低料金で宿泊することができ、かつ、家庭的サービスを受けられることから、多くの人々に利用されている。また、ペンションも若い世代を中心に利用されている。
民宿、ペンション等を含む簡易宿所数は、表II-3-1-5のとおりである。

II-3-1-5 簡易宿所数の推移



4)経営状況
過去の巨額の設備投資により、その返済に苦しんでいる宿泊施設がある一方で、創意工夫により新たな商品開発、接客サービスの向上を図って潜在需要を実需につなげ、業績を拡大している宿泊施設もあり、事業者ごとにその様相は異なっている。
ホテル・旅館の客室稼働率、定員稼働率については、表II-3-1-6のとおりとなっている。

表II-3-1-6 ホテル・旅館の客室稼働率、定員稼働率



また、ホテル・旅館のうち、赤字施設の割合については、表II-3-1-7のとおりとなっている。
平成17年度とその前年度を比較すると、赤字ホテルの割合は5.9%減、赤字旅館の割合は0.3%増となった。

表II-3-1-7 ホテル・旅館のうち赤字施設の割合




  (2) 宿泊産業の活性化

個人・小グループ旅行の増大等の旅行需要の動向変化に対応した新たなサービスの提供による宿泊産業の活性化に向けて、阿寒湖温泉等全国8地域において泊食分離の導入等に係る実証実験を実施し、新たなビジネスモデルの確立と全国への普及に向けたデータの収集・分析等を行った(図II-3-1-8)。

図II-3-1-8 宿泊産業活性化のための実証実験




  (3) 地域密着型旅行商品の創出

地域の観光魅力を熟知した地元の旅行業者や観光関係者による地域の特色をより強く反映した個性的な企画旅行商品の造成を促すため、第三種旅行業者も一定の条件の下で募集型企画旅行を行えるようにするための旅行業法施行規則の改正等を行った(図II-3-1-9)。

図II-3-1-9 旅行業法施行規則改正の概要



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