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平成18年度観光の状況

第II部 平成18年度の観光の状況及び施策

第5章 観光旅行の促進のための環境の整備

第1節 観光旅行の容易化及び円滑化



  1 休暇の取得の促進


  (1) 休暇取得の動向

平成18年における労働者1人平均総実労働時間(事業所規模30人以上)は1,842時間(うち所定内労働時間は1,687時間)となった。
平成18年の週休2日制の普及状況をみると、「何らかの週休2日制」の適用を受ける労働者の割合は、92.2%、うち完全週休2日制の適用を受ける労働者数の割合は60.2%となっている。
平成17年における労働者1人平均の年次有給休暇の付与日数等についてみると、付与日数は17.9日、そのうち労働者の取得した日数は8.4日で、取得率は47.1%となっている。

  (2) 休暇取得による旅行需要喚起のための環境整備

大都市以外での地域で人口減少が見込まれる中、観光を通じた交流人口の拡大による地域活性化を目指す地域が増えてきており、こうした地域の取組を交流人口の拡大につなげていくためには、国内の旅行需要を喚起することが求められている。そこで、休暇の在り方や休暇の取得と一体となった国内旅行の需要を喚起する諸方策について検討するため、「国内旅行需要喚起のための休暇のあり方懇談会」を開催するとともに、平成19年3月には、長期家族旅行を含めた旅行の意義と休暇取得の重要性について、広く国民へ喚起することを目的としたシンポジウム「長期家族旅行の促進に関するシンポジウム-国内旅行需要喚起と休暇のあり方を考える-」を開催した。
また、一時期に集中する傾向のある休暇の分散化を推進するため、(社)日本ツーリズム産業団体連合会では「秋休みキャンペーン」を実施しており、平成18年度は、ポスター等による広報活動や「秋休み」に合わせた各種旅行商品の販売促進活動等を実施した。

  2 観光旅行の需要の特定の時季への集中の緩和


  (1) 公共交通機関等における多様な割引運賃等の提供

1)航空
国内航空運賃については、表II-5-1-1のとおり各種割引運賃が設定されている。
2)バス・タクシー
乗合バス事業においては、割引運賃制度の導入が着実に進展するなど事業者のサービス改善努力が行われている。例えば、鉄道駅、市街地や市町村内の主要施設等を結ぶ循環型バスとして、最低運賃を100円に設定したワンコインバスの運行等が全国的に拡大している(全国340地域、民営261事業者、公営13事業者)。
タクシー事業においては、観光地における主要施設(最寄駅、主要宿泊施設等)を拠点とした名所・旧跡等を巡るルートをあらかじめ設定した運賃(観光ルート別運賃)で運行する観光タクシーの取組が行われている(全国240地区、2,130ルート)。

表II-5-1-1 主な国内航空旅客運賃



3)鉄道
鉄道事業においても、ファミリー向け割引、フリー区間一日乗り放題乗車券、観光施設割引入場券やレンタサイクル割引利用券付き割引切符等、地域における季節に応じた企画商品等とタイアップした割引運賃等多様な商品の販売がより一層進展している。
4)船舶
旅客船事業においては、高速バスとの連携による通しきっぷや鉄道及びホテル等とのタイアップによる企画商品の販売等、観光旅行を促進する割引運賃が設定されている。また、観光施設入場券付き乗船券の販売や観光地周遊、イベントと連携した船舶の運航、地域と密着した企画商品の販売等の多様な商品の販売が行われている。

  (2) 環境衛生対策の実施

観光地では、観光客が集中する特定の季節に、ごみ、し尿の排出量が著しく増大するため、廃棄物の質・量の季節的変動を考慮に入れた廃棄物処理施設の能力設定に沿って交付金を交付した。

  3 観光に係る消費者の利益の擁護


  (1) 旅行業に関する施策

旅行業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的として、旅行業法に基づき、旅行業等を営む者に対して登録制度を実施し、業務の範囲に応じた額の営業保証金を供託させるとともに、旅行取引に係る所定の手続きを遵守すること等を義務付けている(表II-5-1-2)。

表II-5-1-2 旅行業の登録制度の概要



また、旅行に関する電子商取引市場の規模の拡大、技術の進歩に伴う旅行取引形態の多様化を踏まえ、平成18年5月に有識者からなる「旅行業における電子商取引に係る検討委員会」を立ち上げ、旅行取引における電子商取引を巡る消費者保護上の課題を整理するとともに、インターネット等による旅行契約の手順の標準化、「旅行業法」の適用関係の整理等について検討を行った。併せて、コンビニエンスストアにおける旅行取引についても、契約手順の適正化を図った。
さらに、旅行業者が募集型企画旅行として取り扱う、単に2地点間の移動のみを主たる目的とした「ツアーバス」と呼ばれる旅行商品について、旅行者保護を図る観点から、当該募集型企画旅行の実施にあたっての注意事項について徹底を図った。
一方、旅行等における公正な競争を確保し、一般消費者の適正な商品選択に資するため、旅行業公正取引協議会に対し、「募集型企画旅行の表示に関する公正競争規約」及び「旅行業における景品類等の提供の制限に関する公正競争規約」が適正に運用されるよう、引き続き指導を行った。
なお、平成18年度には、同協議会において旅行に関する新聞広告やパンフレットを収集し、表示内容を検討する表示適正化検討会を首都圏で開催し、ツアー名に記載した観光施設等の費用に関する表示、旅行代金の強調表示、旅行目的地のイメージや旅情等を写真又はイラストを用いてイメージ表現する場合の表示等について、一般消費者及び関係省庁を含めて検討を行い、旅行に関する表示の適正化への取組を行った。

  (2) ツアーバスに関する施策

ツアーバスにおける輸送の安全及び利用者利便の確保を図るため、着地における運転者の休憩仮眠施設の確保等について指導の徹底を図ったほか、平成19年2月の貸切バスによる死亡事故を受け、平成19年3月に全国13都市においてツアーバスに対する実態調査を行った。

  (3) 観光土産品に関する施策

観光土産品における公正な競争を確保し、一般消費者の適正な商品選択に資するため、全国観光土産品公正取引協議会に対し、「観光土産品の表示に関する公正競争規約」が適正に運用されるよう指導を行った。また、同協議会の各地方協議会において審査会を実施し、同公正競争規約に基づき各地方協議会及び全国観光土産品公正取引協議会の審査に合格し、適正な表示が行われていると認めた観光土産品について、会員に対して認定証書を交付した。併せて、各地方協議会において観光土産品を収集し、必要表示事項、強調表示、過大包装等について表示の検査を実施した。

  4 観光の意義に対する国民の理解の増進


  (1) 観光週間の実施

「観光週間」は、観光に関する正しい概念の普及と観光資源の保全等について広く国民に広報するため、閣議了解(昭和40年5月)により設けられたもので、毎年8月1日から7日までの1週間実施している。
平成18年度は「ようこそ!にっぽんへ」を統一標語に、関係省庁、都道府県が主体となり、関係団体の協力を得て、「観光の意義や重要性の啓発と普及」、「観光資源の保護」、「地域の魅力に対する自信と誇り」、「観光マナー、もてなしの心等意識の喚起」、「観光地の美化」、「連続休暇の意義の普及」を実施目標としたイベント等を実施した。

▲「観光週間」ポスター(平成18年度)




  (2) 旅の総合見本市(旅フェア2006)の開催支援

国内旅行の促進を通じた交流人口の拡大による地域の活性化を図るため、地方公共団体と観光業界が協力し、首都圏の消費者をターゲットに、新しい国内旅行の提案、旅についての総合的な情報の発信・交流や、旅の魅力をアピールする展示・実演等を行う旅の総合見本市「旅フェア」の開催を支援した。「旅フェア2006」は、平成18年4月21日から3日間にわたり幕張メッセで開催され、14万人を超える入場者数を記録した。

▲旅フェア2006会場風景




  (3) JATA世界旅行博2006の開催支援

世界各地の旅行関係者が一堂に会し、旅行者に対して最新の旅行情報を提供するとともに、旅行関係者の情報交換・商談の場を設け、より良い旅行商品の企画・開発を通じて旅行産業の発展及び旅行需要の活性化に寄与することを目的として(社)日本旅行業協会が開催した「JATA世界旅行博2006」を支援した。
平成18年9月22日から24日の3日間にわたって東京ビックサイトにおいて開催された同旅行博には、世界131の国や地域から924ブースの出展があり、10万人を超える来場者が訪れた。

  (4) スカイレジャーの普及

スカイレジャーに係る安全の確保及び振興・普及を目的とし、関係スポーツ航空団体を通じた安全教育の充実を図るとともに、「スカイ・レジャー・ジャパン'06in但馬」等のイベント開催支援を実施している。

  (5) 出入国管理の現状等

近年、主要空港のみならず、地方空港からチャーター便等を利用し海外へ赴く日本人旅行客も増加していることから、円滑な出帰国審査を実施するため、引き続き、職員が常駐していない地方空港への職員の派遣等を実施した。

  (6) 海外での感染症予防及び検疫の実施

海外渡航者に対し、リーフレット、ホームページ等による海外における検疫感染症等の発生状況及びその予防の方法についての情報の提供を行うほか、入国時においては、航空機等から事前に情報を収集するとともに、検疫感染症の流行地域からの入国者に機内等で事前に配付した質問票を記入してもらうことにより、検疫手続の円滑化を図っている。

  (7) 通関手続の迅速化

旅行者の携帯品の通関手続は、その特性及び迅速に通関する必要があること等を考慮して、一般の貿易貨物に比べ簡便な手続を行っている。
免税範囲を超える携帯品を通関する場合には、関税、内国消費税等の率を統合した簡易税率が適用される。
そのため、通関案内のパンフレットを作成し、旅行者の携帯品に係る通関手続や免税範囲等を周知している。

  (8) 為替管理

円貨及び外貨を持ち出すことあるいは持ち込むことは金額を問わず、何ら制限なく自由に行うことができるが、対外的な資金の流れを把握するため、100万円相当額を超える円現金又は外貨現金等の携帯による輸出入については事前届出制を導入している。

  (9) 海外での薬物犯罪及び持込みの防止対策

近年、日本人が、海外で覚せい剤、大麻等の薬物を不法に所持したり、日本国内に持ち込もうとするなどの事案が発生している。このため、水際での取締りを徹底するとともに、各種広報啓発活動を展開し、薬物の危険性・有害性についての正しい知識の周知を図っている。

  (10) 銃器持込みの防止対策等

銃器持込みに対する水際での取締りを徹底するとともに、銃器犯罪根絶のための広報啓発活動を実施している。

  (11) 海外での児童買春防止対策

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」等に基づき、日本国民が国外で犯した児童買春事犯等の取締りを推進するとともに、国際捜査協力を強化するため、東南アジアにおける児童の商業的・性的搾取対策に関するセミナー等を開催し、外国捜査機関等と意見交換を行った。
旅行業界においては、平成17年3月に(社)日本旅行業協会、(社)日本海外ツアーオペレーター協会及び旅行会社60社が、ユニセフが進める「旅行と観光における性的搾取からの子どもの保護に関する行動規範」に調印し、買春防止に取り組んでいる。
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