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平成19年度観光の状況
第II部 平成18年度の観光の状況及び施策
第5章 観光旅行の促進のための環境の整備
第5節 新たな観光旅行の分野の開拓
1 ニューツーリズムの創出・流通
ニューツーリズム創出・流通の
ヘルスツーリズム、産業観光等の新しい形態の旅行市場を活性化するため、「ニューツーリズム創出・流通促進事業」を進めている。各地域の地域密着型の「ニューツーリズム」に係る取組を支援するため、各運輸局ごとに旅行会社や有識者等によるコンサルティングを行うとともにモニターツアーの実施の支援等を行い、旅行商品化を進めるための留意点等をまとめたマニュアルや事例集を作成した。また、これらの地域密着型の「ニューツーリズム」旅行商品の流通を促進し、大都市部の旅行会社によるパッケージツアーの造成や旅行者への情報提供を進めるため、データベースを構築した。
今後もこれらの取組を引き続き実施していくこととしている。
2 各ニューツーリズムの推進
(1) 長期滞在型観光の推進
団塊世代の大量退職時代を迎え、長期滞在型観光へのニーズの高まりが見込まれるとともに、この受入れを通じた地域の活性化が重要な課題となっている。このため、九州内の8地域(佐世保・波佐見、平戸、上五島、阿蘇、別府、竹田、綾、北薩摩)と民間事業者等が連携・協働して行った、長期滞在型観光・二地域居住のマーケット創造のための取組(23の滞在プログラムを用意してモニターツアーを実施)を「ニューツーリズム創出・流通促進事業」において支援した。
(2) エコツーリズムの推進
エコツーリズムの一層の普及・定着を図るため、これまでの事業に新たな施策を加えた普及啓発事業、ノウハウの確立、人材育成、地域の取組支援等を総合的に実施した。
普及啓発事業では、「JATA世界旅行博2007」でのフォーラム開催や、外国人受入れ体制整備の一環としてエコツアー等の情報を提供する「エコツアー総覧」の英語版製作、「第3回エコツーリズム大賞」(大賞1団体、優秀賞3団体、特別賞6団体)の環境大臣表彰を、ノウハウの確立では、事業者等を対象とした全国セミナーの開催やモデル事業(平成16~18年度)の成果と課題を反映させた推進マニュアルの改訂を、人材育成では、自然学校のインストラクターやエコツアーガイドの育成を、地域の取組支援等では、世界自然遺産地域や国立公園等でのエコツーリズムの推進や仕組みづくりを実施し、エコツーリズムの考え方に基づいた自然や歴史文化資源の保全と活用の全国的な展開を図った。さらに、「エコツーリズム推進法」に定める政府の基本方針の検討会を開催し、基本方針策定に向けた作業を進めている。
(3) グリーン・ツーリズムの推進
グリーン・ツーリズム(農山漁村で楽しむ余暇活動)の提案・普及を図るため、都市住民の農山漁村情報に接する機会の拡大、都市と農山漁村の出会いの場の設定、都市と農村の多様な主体が参加して行う共生・対流への支援、都道府県の区域を越えた広域的な連携の取組を実現するために必要な施設の整備、地域資源を活用した交流拠点の整備等を総合的に推進した。
また、森林等の地域資源を生かしたツーリズム等を推進するとともに、都市と山村の交流等の山村活性化に資する意欲的で先導的な取組への支援、森林環境教育活動の指導者等の人材育成、子供たちの森林・林業体験活動の場となる森林・施設の情報提供等を行った。
これらの諸施策を今後とも引き続き実施することとしている。
(4) 文化観光の推進
外国人旅行者の日本への観光交流を単に一回限りの異文化との出会いにとどめることなく、より深い相互理解につなげていくためには、我々日本人の自国の歴史や文化への理解を深めるとともに、外国人の視点をも取り入れて文化観光資源を発掘し、それらを多くの旅行者の好みに応じて触れ、体験できるようにすることが重要である。こうした知的欲求を満たすことを目的とする観光を文化観光と位置づけ、その意義や普及方策等について、検討を行うため「文化観光懇談会」(座長:赤坂憲雄東北芸術工科大学大学院長)を発足させ、平成17年7月より検討を進めた。
平成19年度は、外国人旅行者に対して、日本の風土、文化、歴史を分かりやすく興味深いものとして伝えられる手法等について検討するとともに、具体的な旅行商品開発を見据えたモニターツアーを実施したほか、観光関係者に「文化観光懇談会」における成果等を周知した。
▲東京下町モニターツアー
(5) 産業観光の推進
産業観光については、「観光立国推進戦略会議報告書」(平成16年11月)において、「国・地域は、近代のまちなみ、産業遺産、産業施設を観光資源として積極的に活用する」とされており、現在各地において産業観光への取組が行われ始めている。平成19年10月には、会津若松市において、全国産業観光フォーラムin会津若松2007実行委員会による「全国産業観光フォーラムin会津若松2007」が開催された。
また、産業観光を更に推進し、国内及び国外からの観光客の誘致を積極的に図るため、個別の現役工場が産業観光に取り組む際に手本となる事例集を作成した。平成20年3月には、名古屋市において、産業観光による訪日外国人旅行者の拡大策をテーマに「産業観光国際セミナー」を開催した。
明治から戦前における我が国の産業発展に寄与した建造物、機械等各地に所在する近代化産業遺産について、これらを活用することにより地域活性化に役立てるべく公募し、地域史・産業史を軸に近代化産業遺産の価値の普及を進めやすい形に整理・編集し、相互に関連する複数の近代化産業遺産により構成される33の近代化産業遺産群として取りまとめた。
11月には取りまとめた33の産業遺産群を構成する各々の近代化産業遺産について、近代化産業遺産として合計575件の認定を行った。
さらに、地域の特色ある産業等を観光・集客資源として活用した地域ぐるみの取組を支援するため、平成19年度から新たに「広域・総合観光集客サービス支援事業」を実施し、全国31件の応募の中から13件を選定した。
今後も引き続き、産業観光を一層推進していくこととする。
(6) ヘルスツーリズムの推進
健康長寿をテーマとする観光・交流等を積極的に推進している全国の自治体や産学官の取組を把握するとともに、都市住民の健康長寿ライフスタイルに対する志向・ニーズ・行動等を分析し、地域の多様な観光資源を活用した新しい観光プログラム(暮らし・文化体験、健康学習・実践、住民交流・協働等)及び地域資源を活用した健康長寿プログラム(地域の健康長寿資源・文化の発掘と活用、住民の健康づくり、健康長寿地域づくりの推進等)の確立に向けた検討を行い、健康で生き生きとした人生を全うできる社会づくりに資する地域滞在型観光等の実践モデルを構築し、健康長寿観光の推進による地域づくりの展開方策等を取りまとめ、シンポジウムを開催するなど情報発信を行った。
(7) 船旅の魅力向上の推進
一層厳しい経営環境となっている国内旅客航路においては、「船旅の魅力再生のための懇談会」の中間提言を踏まえ、国内旅客船を利用した船旅の魅力向上に向け、国、旅客船業界、旅行業界、地域の関係者等が連携し、一致協力して情報発信の強化やニーズに合った商品開発・販売促進の取組等の展開を進めている。
これまで、船旅の魅力向上策の一環として、一般の旅好きな方が気軽に手にとって「船旅」を楽しめるような船旅情報誌「日本すみずみ船の旅」の発行や、船上から見える景色等多様な魅力を紹介し、船旅の促進につなげるための「船から見る風景100選」を実施し、前期入選50作品の発表を行った。さらに、旅行商品としての船旅の価値を高めてもらうため、旅客船業界と旅行業界が連携して、旅行事業者の企画・販売担当者を対象に「船旅徹底活用セミナー」の開催や体験乗船(ファムトリップ)等を実施したところである。
(8) 都市と農山漁村の共生・対流の推進
都市と農山漁村を双方向で行き交う新たなライフスタイルの実現に向けて、農林漁家民宿開業の促進に向けた規制緩和措置等、都市住民の農山漁村に対する関心を高めるための取組の支援、都市と農山漁村の橋渡しや受け皿としての農山漁村の魅力の向上のための対策を「都市と農山漁村の共生・対流に関するプロジェクトチーム」での検討を踏まえ、関係府省が一体となって施策を推進した。
また、共生・対流を推進する民間主体の組織である「オーライ!ニッポン会議」が中心となって、ホームページ(http://www.kyosei-tairyu.jp/)による情報提供や都市と農山漁村の共生・対流を進めている優良事例の表彰等を通じて、都市と農山漁村の多様な主体と協調・連携した国民的な運動を推進した。
これら諸施策を今後とも引き続き実施することとしている。
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