前(節)へ   次(節)へ
第II部 平成21年度の観光の状況及び施策

第4章 国際観光の振興

第1節 外国人観光旅客の来訪の促進

1 我が国の観光魅力の重点的かつ効果的な発信



  (1) 我が国の観光魅力の海外発信等

1) ビジット・ジャパン・キャンペーンの概要 
 外国人旅行者の拡大は、日本人と外国人の交流の機会を通じた相互理解の増進により、国家間の外交を補完し、安全保障に貢献するとともに、我が国の少子高齢化に伴う人口減少といった課題の中、経済成長著しい周辺諸国からの人の流入の拡大によって、地域経済の活性化、雇用機会創出の効果がある。
 このため、平成15年度から、海外における日本の観光魅力の発信や訪日旅行商品の造成支援等を行うビジット・ジャパン・キャンペーンの取組を官民一体で推進してきている。ビジット・ジャパン・キャンペーンを始めた平成15年に521万人であった訪日外国人旅行者は順調に増加してきていたが、平成20年秋以降の世界経済の低迷及び昨今の円高、更には平成21年春以降の新型インフルエンザの流行等の影響から平成21年は679万人と大幅な減少となった。
2) ビジット・ジャパン・キャンペーン事業
 ビジット・ジャパン・キャンペーンでは、訪日外国人旅行者の増加が見込める12の国・地域(韓国、台湾、中国、香港、タイ、シンガポール、オーストラリア、アメリカ、カナダ、英国、ドイツ、フランス)を重点市場として定めて、訪日旅行促進のためのプロモーションを実施している。

平成21年6月 KOTFA併設商談会(韓国)



平成21年12月 トラム(路面電車)広告(香港)


 平成19年度より、インド、ロシア、マレーシアを有望新興市場として定めて調査を行ったところ、今後の訪日需要の拡大が見込まれることが確認されたため、平成22年度より重点市場とすることとしている。
 また、平成21年度より、6カ国1地域(イタリア、スペイン、インドネシア、フィリピン、ベトナム、メキシコ、湾岸諸国)を新興市場として定め、効果的なプロモーションに取り組むことができるよう戦略的な市場調査を実施している。
 外国人旅行者の訪日促進のための事業内容としては、主に海外メディアの日本への招請・取材支援、海外のテレビCM等による広告宣伝、ウェブサイトによる情報発信、海外の旅行博覧会への出展等を行い、旅行目的地としての日本への関心を高め、訪日旅行需要の喚起を図るとともに、海外旅行会社担当者の日本への招請や国内の旅行会社等との商談会の実施による魅力的な訪日旅行商品の造成・販売支援や青少年交流の拡大に向けた訪日教育旅行の誘致等を行っている。
3) ビジット・ジャパン・キャンペーンにおける具体的な取組の例
1) YOKOSO!JAPAN トラベルマート
 訪日旅行商品の造成を支援するため、海外の旅行会社、メディアを日本に招請し、国内の観光地を視察させるとともに、日本の旅行会社、宿泊業者等との情報交換やビジネス交渉等を行う大商談会「YOKOSO!JAPAN トラベルマート」を実施している。
 平成21年5月にパシフィコ横浜で行った「YOKOSO!JAPAN トラベルマート2009春」では、27の国・地域より海外の旅行会社279名が日本を訪れ、日本の402の観光関係団体・企業との商談会を実施した。
2) ビジット・ジャパン・イヤー
 訪日外国人旅行者1000万人の目標年次である平成22年を「ビジット・ジャパン・イヤー」と位置付け、海外プロモーションを効果的・集中的に展開する等の取組を進めていくこととしている。具体的には、同年の1月~3月を外国人誘客の集中期間と設定し、民間企業等の協力を得て、各種割引・特典の提供、特別イベントを実施した。
 また、初めての試みとして日本在住外国人に対して、親族友人の訪日を働きかけるための情報発信を行うとともに、1年間を通じて、平城遷都1300年祭等の特別なコンテンツの発信を行っている。
3) YOKOSO!JAPAN大使
 外国人旅行者の受入体制に関する仕組みの構築や外国人に対する日本の魅力の発信といった努力に公的評価を付与することにより、訪日促進の諸活動の裾野を更に広げ、一層の外国人旅行者の訪日を推進するため、他の関係者の手本となる優れた取組を行い、「YOKOSO!JAPAN大使」選定委員会において選定された者を「YOKOSO!JAPAN大使」に任命している。平成21年度は5月に10名、12月に14名を新たに任命し(図II-4-1-1)、合計63名となった。

図II-4-1-1 「YOKOSO!JAPAN大使」(平成21年度選定)の一覧



  (2) 知的財産立国との連携

 「知的財産推進計画2009」(平成21年6月24日、知的財産戦略本部決定)においては、コンテンツ、食、ファッション、デザイン等の日本の魅力ある知的財産を今後の我が国経済を牽引する戦略産業の一つとして位置付け、これら産業の振興や海外展開を訪日促進等を通じて総合的に推進することとしている。これに基づき、知財立国の実現に向け、ビジット・ジャパン・キャンペーンとの連携を進めた。

  (3) 海外拠点における情報発信等

 (独)国際観光振興機構(JNTO)(通称:日本政府観光局)においては、訪日外国人旅行者の多い国・地域に13の海外事務所を設置しており、現地の旅行業界、メディア、政府とのネットワークを駆使して、旅行市場情報の収集、我が国の観光魅力の広報・宣伝、現地旅行会社に対する訪日旅行商品の造成・販売支援、海外セールスを実施する日本の地方自治体・民間企業に対するコンサルティング等を行うとともに、ビジット・ジャパン・キャンペーンへの貢献を最大の使命として、活発な活動を展開し、訪日外国人旅行者の増大を図った。
 また、旅行目的地としての日本の認知度向上を図るとともに、訪日旅行者による旅行計画検討や各種予約等をサポートするため、9言語(英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、タイ語、ロシア語、ポルトガル語)による訪日旅行情報のポータルサイト(http://www.jnto.go.jp)の運営を行っており、情報発信に大きな効果を発揮している(図II-4-1-2)。

図II-4-1-2 日本政府観光局(JNTO)の海外事務所(13箇所)


 また、大使館、総領事館等の在外公館においても、JNTO等関係機関と連携し、日本の魅力を発信する活動を実施し、観光誘致のために積極的に取り組んでいる。具体的には、在外公館長を会長とするビジット・ジャパン・キャンペーン現地推進委員会の開催、海外における観光展や見本市等への出展、大使・総領事公邸や広報文化センターでの観光をテーマとする講演会の開催のほか、様々な広報文化事業を実施するとともに、現地マスメディア、インターネットを通じ、我が国の伝統及び現代文化、先端技術や美しい自然、地方の魅力等を総合的に紹介する取組を行った。さらに、地方公共団体等と連携したプロモーション事業も展開しており、平成21年度は、駐フランス大使公邸における和歌山県の観光・物産プロモーション等14件を実施した。

  (4) 地域の魅力の海外発信等

 各地方運輸局等においては、地方自治体を始めとする地域が行う外国人旅行者の訪日促進のための取組と連携して、地域の観光魅力を海外に発信するとともに、地域への魅力的な訪日旅行商品の造成等の支援を行う「ビジット・ジャパン・キャンペーン地方連携事業」を実施している。

  (5) 駐日各国大使の地方視察

 地方公共団体等地域の関係者と提携し、年に一度、駐日各国大使を対象に、地方の視察プログラムを実施し、地方独自の文化、伝統、産業、自然環境等我が国の多様性に富む魅力を知ってもらうよう取り組んでいる。平成21年度は10月14日~16日(2泊3日)の日程で福島県において実施しており、今後も引き続き実施することとしている。

  (6) 地域レベルの国際交流・国際協力の推進

 地域レベルの国際交流・国際協力を一層推進することを目的として、駐日外交団に対して各地方自治体がそれぞれの特色・施策に関する情報を発信するセミナー、及び姉妹友好都市交流等国際交流活動のためのネットワーク作りを支援する事業、並びに、重要外交政策の最新情報、国際会議誘致、外国要人の地方訪問等の各種情報提供を積極的に行っている。
 さらに、我が国の大使・総領事等が一時帰国時に地方自治体等を訪問し(平成21年度は60件実施)、最新の任国情報等を提供している。

第4回地域の魅力発信セミナー(東海・北陸ブロック)



  (7) 芸術家・文化人等による文化発信の推進

 芸術家、文化人等、文化に携わる者を、一定期間「文化交流使」に指名し、世界の人々の日本文化への理解の深化や、日本と外国の文化人のネットワークの形成・強化につながる活動を展開しており、平成20年度からは、芸術団体が海外公演する機会を活用して「文化交流使」としての活動をしていただく「短期指名型」を創設し、日本文化の海外発信を強化している。

  (8) 日本文化に関する情報の総合発信

 日本の文化芸術団体等の活動を調査し、これらの情報についてインターネットを用いて英語で海外に提供するウェブサイトの整備を進めている。
 また、在外公館や(独)国際交流基金による、公演、展示、映画祭といった文化交流事業を通じ、アニメや漫画といったポップカルチャーを含む日本の文化や社会、更には日本人の価値観に対する理解を深め、日本への信頼へとつなげていくための努力を行っている。特に、各国との外交上の節目の年には、文化事業を含めた規模の大きい総合的な周年事業を政府関係機関や民間団体・企業等と連携して行い、重点的な交流を行うことで、より一層効果的な対日理解を目指している。
 平成21年には、日本とメコン地域諸国の交流の拡大を実現するための日メコン交流年や、オランダとの日蘭通商400周年、オーストリア、ハンガリー、ブルガリア及びルーマニアとの外交関係開設140周年または再開50周年を記念した日本・ドナウ交流年が行われた。

  (9) 日本食・日本食材等の海外への情報発信

 我が国の農林水産物・食品の輸出促進対策として、平成21年度には、日本食・日本食材等の海外への情報発信に積極的に取り組んだ。具体的には、1)在外公館等で開催するレセプションにおいて、高品質な日本食・日本食材等を提供し、その魅力を伝える「WASHOKU-Try Japan's Good Food」事業、2)海外に在住し日本食・日本食材等の海外での紹介・普及等に多大に貢献してきた功労者に対して表彰を行う「日本食海外普及功労者表彰事業」、3)海外の百貨店・スーパー等において日本食材等を展示紹介するPRイベントの企画運営、4)海外の大規模国際食品見本市等への日本パビリオンの出展の企画運営、5)新興市場における日本食品のアンテナショップの企画運営、6)海外のニュースメディアでの日本食材のCM放送及び輸出先国メディアの国内農水産品産地への招へい等を行った。
 また、日本食のショールームである海外日本食レストランの信頼度を高め、我が国の農林水産物・食品の輸出促進を図る取組を実施した。平成21年度はローマ・ミラノ、パリ、香港、シドニー、トロント、サンフランシスコ、北京に日本食レストラン関係者のネットワークを新たに作るとともに、平成20年度に設立された地域を含め、それぞれの国・地域において、日本食・日本食材等に関する情報を発信する普及啓発活動や料理人の調理技術・衛生知識の向上を目指す教育研修活動を実施した。また、全米レストラン協会主催の全米レストラン協会展(NRAショー(シカゴ))において、日本食の特徴である「うま味」を紹介するブースを出展した。

  (10) ポップカルチャーに関する情報の発信

 日本のポップカルチャーへの関心を日本そのものに対する理解、関心へとつなげていくことを目的として、在外公館及び(独)国際交流基金を通じ各種文化事業を展開している。平成20年3月「アニメ文化大使」事業を創設し、ドラえもんが大使に就任、平成22年3月までに80の在外公館で141回のアニメ映画の上映を行った。また、第3回国際漫画賞では、55の国と地域から303作品の応募を得た。さらに、ポップカルチャーを通じた日本文化紹介の一環として、まずファッション分野で活躍している若者リーダーを平成21年2月にポップカルチャー発信使(通称「カワイイ大使」)に委嘱し、平成21年度にタイ、フランス、ブラジルを始め多くの国を訪問し、大きな反響を得た。

委嘱状を手にするポップカルチャー発信使


 また、日本が誇るゲーム、アニメ、マンガ、音楽、映画等のコンテンツの海外情報発信力強化を目指し、平成19年より世界最大の国際コンテンツ見本市である「JAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)」を開催している。
 3年目を迎える平成21年は、ファッションや観光等他分野を含む3イベントを追加し、ソフトパワーとして一体的な発信を図り、来場者数が過去最多の100万人超に達するなど、より大きな枠組へと成長した。また、海外に対して積極的に発信していくため、フランスの「JAPAN EXPO」(平成21年7月)への出展や、ブラジル(平成22年3月)で海外初の単独開催を行った。

  (11) 和のコンテンツの情報発信及びネットワーク化

 高品質な地域資源・サービス等プレミアムなコンテンツの外需による消費で経済の活性化を図るとともに、我が国のブランド価値向上を図ることを目的とした、「ラグジュアリー・トラベル・マーケット」の整備推進の一環として、全国の隠れたプレミアム・コンテンツの発掘を行い、これらのコンテンツの商品化のための商談会「ジャパン・ラグジュアリー・トラベル・フォーラム(JLTF)~地域フォーラム~」を京都及び金沢で開催した。さらに、実際に外需の取り込みを図るため、富裕層を顧客に持つ海外バイヤーを招聘した商談会「JLTF2010」を京都で開催した。
 また、海外に対するプロモーション強化を目的として、フランス・カンヌで毎年開催される、高級・豪華旅行をテーマとした旅行博「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット(ILTM)」に昨年度に引き続き出展し、日本の「和」のコンテンツの魅力を発信した。

  (12) 国際放送による情報発信の強化

 平成21年2月に、外国人向けに特化した新テレビ国際放送が開始され、伝統文化やポップカルチャー等、日本の魅力を発信する多彩な番組が英語で放送されている。平成21年度においては、引き続き、世界各国における視聴世帯数の更なる拡大及び認知度向上等の取組を行った。
前(節)へ   次(節)へ
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport