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第I部 観光の状況

第3章 観光産業の強化

第2節 観光産業の強化のための方策

1 観光サービスの品質の維持・向上を通じた我が国観光産業のブランド確立



  (1) 観光産業のブランド力の確立

 今後、訪日ブランドの構築・強化に取り組んでいくこととしているが、それと併せて、我が国の観光産業の存立・発展の基盤として、観光産業が提供する観光サービスの品質の確保と一層の向上を図り、我が国の観光産業そのもののブランド力を確立することが必要である。

  (2) 観光サービスの品質の向上・明示

 グローバルな競争の下で競合国において安価な観光サービスが提供されていることを踏まえると、観光産業に関する日本のブランド力を強化するためには、観光産業が提供するサービスの質の向上・明示に取り組むことが非常に重要であり、その実現のための取組を進めていくことが不可欠である。
 特に、インバウンドの手配を行うツアーオペレーターのサービスは日本の観光に対する評価を左右しかねないことから、ツアーオペレーター業務を行う企業を対象として、その提供するサービスの質や当該企業に対する信頼性等が一定水準以上であることを明示するための認証制度を導入・普及させることに取り組んでいく必要がある(図I-3-2-1)。

図I-3-2-1 JATA(一般社団法人日本旅行業協会)が実施するツアーオペレーター品質認証制度


・JATAは、平成25年度より、インバウンド事業に携わるツアーオペレーターを対象に、企業の法令遵守、品質管理・サービス水準、CSRの観点から、一定基準以上の事業者を認証する「ツアーオペレーター品質認証制度」を運用開始予定。
・本制度で使用されるマークは、新潟・長野・群馬の3県にまたがる雪国観光圏における宿泊施設の品質認証のマーク(公益財団法人中ツアーオペレーター品質認証制度で使用予定のマーク部圏社会経済研究所策定)と共通性を持たせる予定。
 一方、ホテル・旅館などの宿泊施設についても、著名であっても施設が老朽化している、ソフト面が弱い、サービスが紋切り型であるといった事例など、必ずしも一般に認識されているイメージほど良質のサービスが提供されていない場合があり、改善のための取組を進めていくことが必要となっている。
 我が国においては、ホテル・旅館の施設やサービスの水準等を示す、いわゆる格付け制度は一般には導入されていないが、新潟・群馬・長野の3県にまたがる観光圏である雪国観光圏においては、公益財団法人中部圏社会経済研究所が策定した観光品質基準を活用し、主に訪日外国人旅行者を対象として宿泊施設の設備やサービスの品質に関する認証のための仕組みの構築に取り組んでいる。
 今後は、宿泊業についても、このように宿泊施設の施設・設備の状況や各種のサービスの有無等についての情報提供を行う仕組みの導入・普及を進めていくことが必要である。
 なお、他国においても、例えば、ニュージーランドでは、宿泊施設も含めた観光産業全般を対象とした品質認定制度(「クォールマーク」)があり、旅行者に対して分かりやすく観光サービスの情報提供を行う取組がなされている(図I-3-2-2)。

図I-3-2-2 ニュージーランドの観光サービスの品質認定制度(「クォールマーク」)


 この制度は、質の高い観光サービスを提供することを目的に、ニュージーランド政府観光局と自動車協会とが設立した組織によって2002年から運営されている。
(上左)認定された宿泊施設に与えられるマーク(ホテルの例)で、施設の内容や料金の目安を星の数で表示している。
(上右)認定された宿泊施設以外の観光関連事業者に与えられるマーク(ツアーオペレーターの例)。
(下)クォールマーク認定事業者で、環境負荷の軽減等に取り組む者に与えられるエンバイロ・アウォードのマーク。
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