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第II部 平成24年度に講じた施策(平成24年度施策)

第5章 国際競争力の高い魅力ある観光地域の形成

第2節 観光資源の活用による地域の特性を生かした魅力ある観光地域の形成

4 優れた自然の風景地に関する観光資源の保護、育成及び開発



  (1) 優れた自然の風景地を生かした地域づくりの推進


  1) 日本風景街道の推進

 多様な主体による協働の下、道を舞台に、地域資源を生かした美しい国土景観の形成を図り、観光の振興や地域の活性化に寄与することを目的とする「日本風景街道」を推進した。平成25年3月末現在130ルートが風景街道として登録されており、地域の方々による沿道の植樹・植栽、ビューポイントの整備や清掃活動など、道路を活用した美しい景観形成や地域の魅力向上に資する活動を実施しており、引き続き推進する。

地域の方々との協働による景観に配慮した防護柵の塗替作業【八ヶ岳南麓風景街道(山梨県)】



  2) 自然保護思想の普及

 自然保護思想を普及するため「自然に親しむ運動」等を通じて、自然とふれあう各種活動を実施したほか、平成24年11月に石川県白山市において「白山国立公園指定50周年記念式典」を開催した。また、小中学生に自然保護官の業務を体験してもらうなど、自然保護の大切さを学ぶ機会を提供した。さらにラムサール条約登録湿地関係市町村会議にサステイナブルツーリズム(sustainable tourism)を実践している専門家を講師として派遣するなど、湿地の保全と賢明な利用について普及啓発活動を行った。

  3) 森林等の観光への活用

 森林環境教育、健康づくり等の森林利用に対応するため、教育関連施設・健康増進施設等と連携を図った森林の整備を行い、森林の多様な利用を推進し、地域の観光資源としても活用した。また、自然探勝、ハイキング、キャンプ等の森林レクリエーション利用に供すること等を目的とする森林については保健保安林として、名所、旧跡の風致の保存を目的とする森林については風致保安林として、平成24年3月末現在、合わせて730,000haを指定している。さらに、観光地周辺の森林において、周辺の景観に配慮しつつ、治山事業等を実施し、安全の向上と併せて観光資源の資質向上に寄与した。国有林野では、自然休養林等の「レクリエーションの森」を人と森林とのふれあいの場として積極的に提供した。また、国民による森林づくり活動の場を提供する「ふれあいの森」、学校等による体験活動等の場を提供する「遊々の森」の設定・活用を推進した。
 国有林野において、優れた自然環境を有する森林については、「保護林」や「緑の回廊」を設定し、適切な保全・管理を行った。特に、西表島では、保護林の1つである「西表島森林生態系保護地域」の拡充を行い、適切な保全・管理に努めた。また、地域住民等との協力による自然環境の保全活動のほか、グリーンサポートスタッフ(森林保護員)による清掃活動や利用者へのマナー啓発活動を推進した。さらに、陸域のほとんどを国有林野が占める世界自然遺産のほか、世界文化遺産と一体となった森林等の保全対策を推進した。平成24年1月に世界遺産一覧表に記載するための推薦書を提出した「富士山」について、景観に配慮した適切な森林の整備・保全を推進した。また、平成24年7月にユネスコエコパークに登録された「綾地域」について、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を図る観点から、国有林野を核とした照葉樹林の保護・復元を目指した適切な森林の保全・管理を推進した。

  4) 良好な都市景観を形成する自然環境の保全と創出

 首都圏及び近畿圏において、自然環境の総点検を実施し、まとまりのある貴重な自然を「保全すべき自然環境」として抽出し、この「保全すべき自然環境」の保全とそれを中核とした水と緑のネットワークの形成を推進するため「都市環境インフラのグランドデザイン」を策定(首都圏平成16年、近畿圏平成18年)している。平成24年度は、都市環境インフラのグランドデザインから得られた知見等を踏まえ、良好な都市環境を有する大都市圏の形成に向けた施策を進めた。
 河川整備にあたっては、「多自然川づくり基本指針(平成18年10月策定)」に基づき、治水上の安全性を確保しつつ、生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観の保全・復元に努めている。

  5) 北海道の美しい自然景観の観光への活用

 北海道では、地域の活動団体が主体となり、関係省庁をはじめとする関係者と連携し、「美しい景観」「活力ある地域」「魅力ある観光空間」づくりを行う「シーニックバイウェイ北海道」を推進している(シーニックバイウェイ北海道ホームページ:http://www.scenicbyway.jp)。
 現在、制度発足9年目を迎え、11の指定ルートと1つの候補ルートで約350の団体が活動している。平成24年度には、これまでのルート内連携に加えて、新たにルート間による広域的な連携事業の「人と未来をつなぐ100年の木プロジェクト」や、民間企業等との包括連携協定の締結など、更なる広がりを見せている。また、北海道では、自然とのかかわりの中でアイヌの人々が独自の伝統文化を育んできており、新千歳空港における歓迎メッセージ「イランカラプテ」(こんにちは)の表示や工芸品の展示、阿寒湖温泉におけるアイヌ文化の伝承・保存・普及と一体となった観光振興の取組等が行われている。

シーニックバイウェイ北海道の活動(シーニックdeナイト2012-2013)



  (2) 快適な散策ネットワークの整備

 歩きやすさに十分配慮しつつ、周辺景観や地域の個性を生かした歩行者専用道路等を目的としたベンチ等の休憩施設、案内標識及び駐車場等の整備を支援した。
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