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第II部 平成24年度に講じた施策(平成24年度施策)

第7章 国際観光の振興

第1節 外国人観光旅客の来訪の促進

1 我が国の観光魅力の重点的かつ効果的な発信



  (1) 国を挙げた日本ブランドの海外発信の推進

 「国際広報連絡会議」において、関係省庁及び関係機関が情報共有・連携しながら、国家戦略として日本ブランドの更なる海外展開・強化を図った。また観光庁は、訪日促進を強化する上で、海外市場毎の趣向の違いを乗り越え、世界の誰が見ても素晴らしいと思える「普遍的な日本の魅力」について「日本人」を切り口に再構築し、日本の魅力を海外へ発信するにあたっての指針を定義するとともに、それを踏まえた新たなプロモーション映像及びガイドブック等を制作した。
「日本を旅行することでしか得られない3つの価値」
価値1:日本人の神秘的で不思議な「気質」に触れることができる。
1)震災のような困難なときにも示された高い美徳・規律、礼儀正しい気質。
2)シャイだけど親切。知らない人にも配慮し、人に温かい気質。
3)飽くなき好奇心と根気で独自の世界をつくりあげる気質。
4)あえて言葉にしない、「わびさび」や五感を越えた「暗黙知」の存在。
価値2:日本人が細部までこだわり抜いた「作品」に出会える。
1)歴史・伝統を継承し、現代の革新を加える「匠」や「専門家」による作品。
2)チームワークと擦り合わせの技から生まれた世界一「ハイテク」な作品。
3)洋の東西を問わず、「異国文化」を取り込み、日本的に昇華させた作品。
4)「自然」への畏怖・感謝をもとに、自然と一体化することで生まれた作品。
5)研ぎ澄まされた五感により、山海の素材の持ち味を引き出した「日本食」
価値3:日本人の普段の「生活」にあるちょっとしたことを経験できる。
1)「ちょっとしたこと(a little thing)」に楽しみやくつろぎを感じられる生活。
2)四季や伝統が深く入り込む一方、現代と「融合」した生活。
3)「世界一厳しい消費者」を満足させるレベルの高い消費ができる生活。
4)「お客様は神様」を合言葉に、完璧な「おもてなし」を享受できる生活。
5)都市から田舎まで、全国どこでも「便利」、「清潔」、「安全」な生活。
 JNTOでは、大きな訪日旅行市場を形成する国・地域に拠点を設置し職員を派遣している(図II-7-1-1)。各市場において現地の航空・旅行業界や有力メディア等と結びついた広範なネットワークを構築することで、ビジット・ジャパン事業の効果的な海外展開のためのマーケティングやプロモーションの進行管理に至るまで機動的に取り組んでいる。
 海外事務所を通じた情報発信としては、一般消費者向けには12の言語(英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、タイ語、ロシア語、ポルトガル語、イタリア語、スペイン語、アラビア語)による日本の観光魅力の紹介や訪日旅行の計画づくり等様々なサポートする機能を有したポータルサイトを、各市場別に13の国・地域でSNSを活用するとともに、現地の各種メディアによる訪日旅行記事・特集の掲載を目指した企画提案や支援活動等も積極的に行っている。また、現地の航空・旅行業界向けには季節の観光・イベント等の情報をまとめたニュースレターの配信や訪日旅行を取り扱うスタッフを対象とした専門家の育成研修を行う等様々な方法で情報提供している。さらに、在外公館、JETROやJF等の海外で活動する独立行政法人の海外事務所、民間企業の海外事務所等に対し、外国人旅行者の訪日促進事業についての理解が深まるように働きかけ、広報宣伝・情報提供等の分野での協力を求める等により、それら在外公館や各種海外事務所との連携の強化を図っている。各国で開催される旅行フェアや商談会等においては、日本ブースを設置し、我が国の観光、物産の魅力を発信し訪日旅行の需要喚起に貢献している。

図II-7-1-1 日本政府観光局海外事務所の所在地(13都市)



在外公館や民間企業等とオールジャパン連携で参加した旅行見本市の様子(バンコク)


コラム
「日本人に会いに来てください」というブランディング
 ある場所をもう一度訪れたいと思うのは、そこに「理由」を置いてきているからだ。その場所に思いを馳せると、映像と共に「自分を迎えてくれる誰か」の姿が浮かぶ。日本中の人が、海外の方にとってのそんな「誰か」になれるのではないか。
 海外6か国8人の外国人を含む、11人の委員と共に議論を重ねた「普遍的な日本の魅力」検討会の中で辿り着いた答えが、日本を観光する一番の魅力は「日本人」そのものだということであった。日本人の気質、作品に反映される細部へのこだわり、そして生活の中の楽しみ。その3つの価値を映像に集約し打ち出したプロモーションが、10周年を迎えたVJの新展開、「DISCOVER the SPIRIT of JAPAN」である。
 その基軸は、祭りに情熱を傾ける日本人を描いた映像だ。平成25年3月15日の公開から2週間で、動画投稿サイトでの再生回数は200万回を突破した。そして、「www.visitjapan.jp」に収められた160を超える日本の観光地映像には、その場所に生きる「日本人」とともに出来る経験が詰まっている。
 世界中の人々にとって、繰り返し訪れたい国になるためのブランディングのヒントは、日本人の日常のなかにあるのではないか。コンビニエンスストアの利便性を享受するすぐ傍らの畑には、野菜の無人販売所があり、スマートフォンをタッチし改札をくぐると、車窓から山裾に祠を見つける。ハイテクノロジーで生活の便利さを追求し、食事は海外の富裕層が自身の生活に取り入れる質の高さを持つ。祭りでは揃いの法被と足袋で御輿を担ぎ、祈りや座禅で心を落ち着ける。
 心の美を持ち、1人でも多くの海外の方にそれを感じて頂ける国であるために。観光コンテンツと3つの価値を合わせたアプローチで「日本は楽しそう」「日本人と出会うのは面白そう」だから日本に来たと言われるように。鍵は私たち日本人自身にある。



  (2) 地域の魅力の海外発信等

 訪日外国人旅行者数を増加させるため、リピーターの多い市場である韓国、香港、台湾等について、ゴールデンルートを経験したことのある旅行者はもちろんのこと、初訪日の旅行者も含め、ゴールデンルートに加えその他の地域への誘客を行った。例えば、中部・北陸地域は、中部・北陸9県を「昇龍道プロジェクト」と命名し、知名度向上を図る官民挙げた地域一体型の「プロジェクト」を立ち上げた。「昇龍道プロジェクト」では、9県の連携による観光資源の総合的・効果的なプロモーション、地域の一体感を高めたホスピタリティと受入体制のレベルアップ等を狙い、「広域」で連携した地域の魅力の発信に努めた。

  (3) 大使・総領事公邸等を活用した観光プロモーション等の推進

 海外において、政界、経済界及び観光業界幹部を含む任国国民に我が国の地方の魅力を発信し、観光広報等を推進するため、在外公館施設を活用する「地方の魅力発信プロジェクト」を実施しており、平成24年度は9件実施した。

和歌山県産品及び観光プロモーション(在キルギス日本国大使公邸)



  (4) 駐日各国大使等による我が国の魅力の発信

 駐日各国大使及び外交団を対象に、地方公共団体と共催で地方視察を実施し、地方独自の文化、伝統、産業、自然環境等我が国の多様性に富む魅力を直接見聞し、任期中・離任後を通じ我が国の魅力を各国に発信してもらうよう取り組んでいる。駐日外交団が、平成24年7月11日~12日に新潟県、11月1日~2日に静岡市、平成25年2月21日~22日に神奈川県を、駐日各国大使が、平成24年11月7日~9日に三重県を視察した。今後も引き続き、地方視察プログラムを実施する。

駐日外交団の地方視察(神奈川県)



駐日各国大使の三重県視察訪問



  (5) 地域レベルの国際交流・国際協力の推進

 地域レベルの国際交流・国際協力を一層推進することを目的として、駐日外交団に対して各地方公共団体が地域の特色・施策に関する情報を発信するセミナーを開催するとともに、地方公共団体間及び地方公共団体と駐日外交団とのネットワーク作りを支援する事業を行っている。また、重要外交政策の最新情報、国際会議誘致、外国要人の地方訪問等の各種情報提供を積極的に行っている。さらに、我が国の大使・総領事が一時帰国時に地方公共団体等を訪問し(平成24年度は、62件実施)、最新の任国情報等を提供している。

第12回地域の魅力発信セミナー(地方公共団体のプレゼンテーション)



  (6) クールジャパンの海外展開

 「知的財産推進計画2012」(平成24年5月29日、知的財産戦略本部決定)においては、クールジャパン関係施策の一つで、ビジット・ジャパン事業として、コンテンツと訪日旅行を組み合わせた訪日旅行プロモーションを実施する旨を謳っている。また、平成25年2月には、訪日旅行の促進等のクールジャパンの推進・発信力の強化を行うために、クールジャパン推進会議を立ち上げ、同年3月には第1回会合を行った。
 「クールジャパン発信事業」として、日本のクールジャパン各分野の専門家を海外に派遣し、現地の業界関係者等を対象に講演会やネットワーキングの機会となる交流会等を実施している。平成24年度には、イタリア、リトアニア、ベトナム、ミャンマーに酒造関係者を派遣し、業界関係者等を対象に、日本産酒類に関するセミナーや試飲会等を実施した他、香港(ものづくり分野)、イラン(ショートフィルム)で案件を実施した。
 在外公館では、現地機関等との協力のもと、周年事業のオープニング等二国間交流の機会も捉えながら、クールジャパンを含む日本文化紹介事業を実施している。また、11か国13都市でクールジャパン支援現地タスクフォースを立ち上げ、海外の重要拠点における関係諸機関・団体の情報共有・連携の体制を整備した。これは、在外公館やJF、JETRO、JNT0、商工会議所・日系企業、日本人会、現地企業関係者、日本文化関連の団体などが、情報共有と具体的な連携・協力を行うプラットフォームであり、現地の関連事業・イベントの情報の共有や、今後のクールジャパン展開の方策に関する意見交換等を行っている。

  (7) 日本文化に関する情報の総合発信

 芸術家、文化人等、文化に携わる者を、一定期間「文化交流使」に指名し、世界の人々の日本文化への理解の深化や、日本と外国の文化人のネットワークの形成・強化につながる活動を展開している(文化交流使ホームページ:http://www.bunka.go.jp/kokusaibunka/bunkakouryu/index.html)。
 在外公館においては、管轄地域における対日理解の促進や親日層の形成を目的として、外交活動の一環として、日本文化を紹介する事業を実施している。事業内容は年々多様化しており、例として映画上映会、文化講演会、音楽演奏会、柔道・空手等武道デモンストレーション、版画、陶芸、郷土玩具、日本人形、書道、カレンダー、折り紙作品、生け花等の展示事業、俳句コンクール、日本語作文コンクール、日本語弁論大会等が挙げられる。また、近年では、アニメ・マンガ等の「ポップカルチャー」や日本の食文化紹介事業も積極的に実施している。

  (8) 日本食・日本食材等の海外への情報発信

 海外で実施する日本食文化週間等の輸出促進事業や日本食・食文化発信事業において、日本へ観光客を誘致するためのパンフレット等の活用を図った。さらに、「生産者と消費者の絆を深める」、「日本と世界の絆を深める」をテーマとする「食と農林漁業の祭典」を開催し、日本の「食」と「農林漁業」のすばらしさを国内外に対し発信した。
 在外公館においては、日本の食文化紹介事業を在外公館文化事業の中でも特に推奨すべき事業のひとつとして位置づけて実施している。特に、東日本大震災を受けて訪日外国人旅行者数が減少する等の影響が出ていたことを踏まえ、日本食や、郷土の多様性も含め豊かな我が国の食文化を世界に伝えることで、日本の多面的な魅力への関心を高め、被災地を含む我が国全体の復興に資することを主たる目的としており、東北産の食材等を活用した事業、被災地の郷土料理や酒を紹介する事業等についても積極的に実施している。

  (9) 外国人富裕層向けの和のコンテンツの情報発信

【再掲】第5章第2節6(5)

  (10) 国際放送による情報発信の強化

 平成21年2月に、外国人向けに特化した新テレビ国際放送が開始され、日本やアジア、世界の最新情報、我が国の文化など日本の魅力を発信する多彩な番組が英語で放送されている。平成24年度においては、引き続き、世界各国における視聴世帯数の更なる拡大及び認知度向上等の取組を行った(平成25年3月末時点の視聴可能世帯数は約1億6000万世帯)。
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