森、日本の誇り

森、日本の誇り

 今年の夏、日本中が豪雨に襲われました。産経新聞は、次のように報じました。
「活発な前線と低気圧の影響で、関東、東海地方は29日未明にかけて記録的な豪雨となり、(中略)、愛知県岡崎市では29日午前2時までの1時間に146ミリの猛烈な雨を観測。観測史上全国7番目の豪雨で、8月としては国内の観測史上最大を更新した。」
『観測史上最大』と言うことばが、私の恐怖心をかりたてました。数年前から続く、異常なまでの集中豪雨と災害。私は、本州が、すでに、温帯から亜熱帯の気候に変わったのではないかとさえ思いました。

 昨年、『気候変動に関する政府間パネル』の報告が、示されました。第一に、このまま、化石燃料に頼って成長路線を進むと、今世紀末に、前世紀末より4度気温が上昇する。第二に、気温が90年より2、3度上昇すると温暖化の影響は、水、食糧、感染症、生態系の変化と、広範囲に及ぶ。第三に、地球温暖化による悪影響を食い止めるためには、二酸化炭素の排出量を、遅くとも20年までに減少に転じさせないといけないと。」
「特に沿岸域や低平地では、海面水位の上昇、大雨の頻度増加、台風の激化等により、水害、土砂災害、高潮災害等が頻発・激甚化するとともに、降雨の変動幅が拡大することに伴う渇水の頻発や深刻化の懸念が指摘されている。」とも。

 地球温暖化に伴う気候変動は、人類の生存を危ぶませるまでになりました。確かに、例年よりも、エコに対する意識は高まっているように感じます。街中に、マイバックを持って買い物に出かける人が増えたし、電気の節約が大切だという人も、増えました。そして、「もったいない」の考えも、広まったと思います。しかし、『政府間パネル』に示された警告を活かすには、小さなことを大勢でするばかりでは、まだ、足りないと思うのです。

 私の住む東京には、ゼロメートル地帯が広がっています。ここに、海面上昇が影響し始めたら。高潮災害や水害が、十分想定されます。バングラディシュのように、海岸浸食に襲われるかも知れません。しかし、我が国は、周り中を海に囲まれ、多くの河川が流れている厳しい条件下、今まで、多くの堤防、砂防ダムを築き、世界でも有数の治水を行って来ました。だから、きっと、専門家と行政、そして、国民の協力で、解決出来ると思います。

 しかし、森は、どうでしょうか。政府間パネルの警告を活かす方法を考える時、森は、重要な存在だと思います。大気中から二酸化炭素を取り込み、酸素を分離、再循環させ、余分な二酸化炭素を幹・葉・根・周囲の土壌に蓄積します。人類に残された、唯一の酸素産出源です。森は、木材や工業原材料などを供給してくれます。森の土壌は雨水をためて、土壌を濡らし、地下水を作ります。雨の時にも土地の浸食がほとんどなく、山崩れ、土石流などの災害を防ぎます。森は、温度変化や強風を防ぎ、穏やかな気象条件を作るのです。このようなすぐれた森の持つ機能を考えると、森の活用が、地球環境の問題、異常気象による災害の問題を解く『鍵』であることが、わかるのです。

 しかし、いま、わが国の森は、元気がありません。C・W・ニコル先生がおっしゃいました。
「日本は、世界でも数少ない、森の美しい国です。しかし、いま、その多くが放置されている。人によって保護されていない。」

 そんな時、植樹と森の管理による、豊かな森づくりが進められたら、どうでしょう。日本は、環境先進国の名に恥じない、すばらしい国になるはずです。すぐれた環境技術と、豊かな森。これらが両輪となれば、予測される気候変動による悪影響も、その被害も回避低減させられると思うのです。

 しかし、それには、森への人々の関心を生み、森を復活させようとする意気込みに燃えた人材をつくらなければなりません。そのためには、どうしたらよいか。私は、森や里山に積極的に関わりを持たせる活動を、全国の学校で進めたらよいと、思います。山菜採り、たけのこ掘り、植樹・間伐などを、どんどん、児童生徒に経験させるのです。日本各地に置き去りにされている山間部の廃校跡を、森林体験の学校にするのもよいです。森づくりは、まず、人づくりから。森好きな人をつくることから始めるのがよいと思います。

 いま、地球は、危機的状況にあります。地球温暖化による異常気象は、人類の生存を危険にさらし始めました。わが国も、例外ではありません。そんな時だからこそ、私は思うのです。森に培われた緑豊かな国土を、しっかり、国民で支えて行きたいと。そして、強く思うのです。きっと、国民の力により、日本は、環境問題を克服出来ると。

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